ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「あまちゃん」103回「おら、地元に帰ろう!?」

【 連続テレビ小説「あまちゃん」】103回のネタバレです。

あらすじ

事務所を解雇されたアキ(能年玲奈)を助けようと、北三陸からやってきた春子(小泉今日子)は、すし屋へ。鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)と春子との対面は空気が張りつめ、秘密を知るアキや水口(松田龍平)はヒヤヒヤ。春子は、夢をあきらめた自分とアキは違うこと、地元でいかにアキが愛されているかを語り、鈴鹿にアキのアイドルとしての資質を問う。その問いに鈴鹿は…。

103回ネタバレ

東京EDOシアター前

回想

荒巻「鈴鹿ひろ美のデビュー曲を歌ったのは 彼女のお母さんだ うちにいる限り俺が潰すから。」

アキ「アキ そっち帰りたいよ。 もう帰っていい? いいよね。」

春子「駄目よ。」

回想終了

<そして ママは上京しました>

無頼鮨

種市「いらっしゃいませ!」

梅頭「いらっしゃい!」

アキ「あっ ホテルは とらなくていいです。 おらの うちさ泊まって下さい。 海 近いがら。 7月から9月は 海女のシーズンで 海さ入ってます。 ウニ1個500円ですけど 鈴鹿さんなら…。」

春子「アキ!」

アキ「じぇじぇじぇじぇじぇ!」

春子「ビール頂戴。」

梅頭「はい。」

アキ「ママです。」

春子「すいません。 じゃあ はい 鈴鹿さんも どうぞ。」

鈴鹿「結構です。 初めまして。」

春子「あっ 初めまして…。」

種市「逃げてきちゃったんすか?」

水口「うん。 何か あっち 熱気が すごくて。」

春子「娘が お世話になって…。 ホントは もっと早くに ご挨拶に 伺うつもりだったんですけど なかなか…。」

鈴鹿「いえいえ。 お住まいが 遠くにいらっしゃいますもんね。」

春子「遠いって言っても 盛岡まで出れば 新幹線で 2時間半なんですよ。」

鈴鹿「まあ そうなんですか。」

春子「ええ。 2時間半なんです。」

鈴鹿「2時間半で。」

春子「ええ。 ご存じかと思ってました。 静御前 やってらっしゃいますよね? あれって 確か 岩手が舞台でしたよね。」

鈴鹿「でも 京都で撮ってるんです。」

春子「あ~ら そうなんですか。」

鈴鹿「第一 静御前の時代に 新幹線なんてございませんもの。 アハハハハッ」

春子「ハハハハハッ! ホントだ。 フフフッ。 ビール頂戴!」

種市「はい。」

水口「ずっと ビールでいく気かな…。」

種市「鈴鹿さんも ああ見えて 焼酎1本 空けてますからね。」

鈴鹿「すてきな声だわ。」

春子「え?」

鈴鹿「歌手 目指してらしたんでしょ? 私と似てる気する 声が。 ねえ 天野さん 似てるわよね。」

春子「似てませんよ。」

鈴鹿「似てるわよ。」

春子「似てないと思いますけど。」

鈴鹿「あれじゃない? 自分の声って ほら 自分じゃ 違って聞こえるじゃない? 客観的に聞いたら 似てるわよ。 ねえ 大将!」

鈴鹿「何それ デ・ニーロのつもり? 腹立つ…。」

春子「何の話してたんでしたっけ?」

鈴鹿「録音したら分かるわよ。 似てるわよ きっと。」

春子「どうなの? アキ。 ちゃっと やってるの?」

鈴鹿「『ちゃんと やってるの?』。 ほらね そっくり! ハハハハッ! ごめんね しつこいわよね。 やってましたよ もちろん 立派に。 だから 辞められたら 困っちゃうの。 天野さんがいないと 私… 迷惑メールの拒否のしかたも 分からないんだもの。」

春子「そんな事 褒められても うれしくないんですけどよ。 付き人としてじゃなくて アイドルとしての資質の話です! 正直 分かんないんですよね。 親の欲目もありますし。」

鈴鹿「自分の娘は かわいいものよね。」

春子「まあ 離れて暮らしてるしね。 だから ちょっと その… 安心してた部分もあって 鈴鹿さんが その アキの親代わりじゃないけど…。」

鈴鹿「『親代わり』?」

春子「…じゃないけど。」

鈴鹿「私が? 天野さんの親!? 何で? 何の因果で?」

春子「『…じゃないけど』って 言いましたよね? ちゃんとね。」

鈴鹿「困るんです。 そういう過剰な期待。 あなたが そうだとは言わないけど 厚かましいのよね ステージママって。 付き人なんだから 面倒見てもらって 当然だと思ってるのよ。」

春子「ステージママ!?」

鈴鹿「あなたが そうだとは言ってないけどね。」

春子「私が アキの? ステージママ!?」

鈴鹿「だから あなたは違うのよ。」

春子「ステージママ~!?」

アキ「やめてけろ ママ! 鈴鹿さんと おらは 確かに親子ではねえ。 何つうか 友達っつうか…。」

鈴鹿「友達!?」

アキ「いやいや…。」

鈴鹿「私の事 友達だと思ってたの!? だから ずっと タメ口だったの!?」

アキ「いや いや いや!『友達っつうか』って言ったべ?」

鈴鹿「だったら 払ってよ! たまには おすし おごってよ! 友達でしょ~?」

春子「…つうか 辞めんの?」

鈴鹿「え?」

春子「さっき 辞められたら困るって おっしゃいましたよね。 あんた 辞めんの? 付き人 辞めちゃうの?」

鈴鹿「そうですよ。 だから 今日は ねぎらいの宴だったんです。」

春子「辞めんの!?」

水口「え? ええ。 もともと 太巻さんの紹介で いろいろ 勉強させて頂いてましたので…。」

春子「太巻さんのとこ クビになったら こっちも お払い箱なんだ。」

鈴鹿「彼の事 ご存じ?」

春子「知ってますとも。 有名人ですもんね~。 本も読みましたよ。 あれ 何だっけ?『太いものには巻かれろ』とか『続・太いものには巻かれろ』とか『細いものには巻かれない』とか『巻かれて太くなれ』とかね どれも 自慢話でしたけどね。」

鈴鹿「ハハハハハッ!」

春子「ビール頂戴!」

種市「はい!」

水口「俺が行く。 大将 悪いんだけど 今日 貸し切りで。」

種市「とっくに そうしてますけど。」

梅頭「こんなムードじゃ握れねえよ。」

水口「タクシー呼んでおこうか。」

種市「あっ はい。 …っていうか 何なんすか あの2人。 何で あんなに ギスギスしてんすか?」

水口「それは 神のみぞ知るだ。 ビール お待たせしました。」

春子「ああ ありがとう。」

鈴鹿「…で 今日は どういった用件で はるばる東京まで?」

春子「ゆうべ 電話したんです。 虫の知らせっていうか 何となく。 そしたら この子 泣いてたんです。『もう帰りたい』って言ったんです。」

鈴鹿「『帰ってらっしゃい』って 言わなかったんですか? 東京から2時間半なんでしょ?」

春子「『帰ってきたら後悔する』って 言いました。」

鈴鹿「あら。」

春子「私が そうだったんですよ。 つまんない ホントに つまんない事で 歌手の道を諦めたんです。 それは ある人に言われた ここで 話題にする気にも ならないほど ささいな ある ひと言が きっかけだったんですけど…。」

回想

荒巻「がっかりだな! 君には プライドってものがないの?」

回想終了

春子「その方の その言葉が私 どうしても許せなかったんです。」

回想

(テーブルをたたく音)

春子「プライドあるから このままじゃ終われないから 今日まで あんたの言う事 聞いてきたんです! バカにしないでよ!」

回想終了

春子「ごめんなさいね。 何の事やら さっぱり分かんないですよね!」

鈴鹿「分かるわ。 誰に 何を言われたか 知らないけど 許せない事ってあるわよ 誰にでも。 要するに あなたは 過去の傷を 引きずってらっしゃるのね。 今も 後悔してらっしゃるのね。」

春子「…全然。」

鈴鹿「あら。」

春子「1㎜も後悔なんかしてません。」

鈴鹿「あら まあ 迷路だわ。」

春子「あそこで見切りをつけたから 結婚して アキが生まれたんです。 むしろ あなたには 感謝してます!」

鈴鹿「私に!?」

アキ「うわ~! うわ~!」

鈴鹿「な… 何よ。」

アキ「すいません。 何か もう 極度の緊張で 叫ばずにはいられませんでした。 あ~ すっきりした!」

春子「あ~ よかった。」

鈴鹿「それ ここでは いいけど 現場でやったら 一発で降ろされるわよ。 あ~ びっくりした! 何… あれ? 何の話してました?」

水口「電話したんですよね ゆうべ。」

春子「ああ そうそう そうそう。 今 諦めたら 後悔するって言いました。 ねっ!」

鈴鹿「ご自身は後悔してないのに?」

春子「ええ。」

鈴鹿「娘が後悔するって言うの?」

春子「娘がしなくても私がします。」

鈴鹿「天野さんが?」

春子「はい。 この子 すごいんですよ 少なくとも 私とは 全然違う。 ごめんなさい 親バカで。 本人 目の前にして言うのも あれだけど この子 すごいんです!」

アキ「うわ~!」

春子「えっ? えっ?」

アキ「すいません。 褒められ慣れてねえもんで。」

鈴鹿「どんなふうに すごいの?」

春子「アイドルだったんですよ。 鈴鹿さんの前で言うのも 変なんだけど どんなに 歌がうまくても お芝居が上手でも それだけじゃ アイドルになれないでしょ? う~ん 何か こう… 私には分かんないんだけど 何かが ある訳でしょ? ねえ 大将!」

梅頭「え?」

春子「そのね 何かが 何なのか 私自身が知りたいんです。 アイドルって『偶像』だっけ? シンボルとかね。 アキは アイドルだったの。 小さい田舎の しょうもない町だけど そこでは間違いなく アイドルだったんですよ。 ねえ 種市君!」

種市「はい!」

春子「みんなの期待を 一身に背負って 出てきたの。 だから みんな 私に声かけるの 今でも!『アキちゃん 元気? どうしてる?』。 もう とっくに いないのによ。 それって アイドルでしょ? そこに いないのに みんなの心に アキがいるって事でしょ?」

鈴鹿「そうね。」

春子「『そうね』って…。 無理に分かって頂かなくて 結構ですよ。」

鈴鹿「確かに あなたの娘さんは 一緒にいて楽しいし 度胸もあるし お顔だって かわいいし…。」

アキ「うわ~!」

鈴鹿「こんな感じだけど アイドルの資質あるかもしれません。 でもね お母さん そんな子は ごまんといるんです。 原石なんか ゴロゴロ転がってるの。 そんな中で 磨いて光るのは たった一個なんです。」

(引き戸が開く音)

アキ「じぇじぇじぇじぇじぇ…!」

水口「社長! えっ 何で?」

荒巻「こっちのセリフだ。 何で…。」

春子「初めまして! 天野アキの母です。 娘が 大変お世話になりました。」

鈴鹿「私が呼んだの。」

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