【 連続テレビ小説「あまちゃん」】31回のネタバレです。
あらすじ
北鉄の車内でウニ丼を売っていたアキ(能年玲奈)は、亡くなったはずの祖父・天野忠兵衛(蟹江敬三)と出くわす。忠兵衛は、遠洋漁業の漁師で、1年に10日間ほどしか家に帰らず、祖母・夏(宮本信子)が、航海に出る忠兵衛を送り出す際、万が一のことを覚悟するつもりで仏壇に写真を飾っておいたのだ。再会を喜ぶ夏と忠兵衛だが、春子(小泉今日子)は怒りだして…。
31回ネタバレ
北鉄
アキ「じぇじぇじぇじぇじぇ…!」
ユイ「何 どうしたの?」
<驚くのも無理はありません>
忠兵衛「何だよ。」
<ついさっき アキから ウニ丼を購入し 今 それを 目の前で 貪り食う初老の男 それは紛れもなく 死んだはずの祖父 天野忠兵衛 だったのです>
<ショックのあまり アキは言葉を失い…>
アキ「じぇじぇじぇじぇ…。」
<『じぇ』しか 言えなくなっていました>
ユイ「アキちゃん?」
アキ「じぇじぇじぇ じぇじぇじぇ。(お化け お化け)」
ユイ「『じぇじぇじぇ』じゃ分かんないよ。 大丈夫?」
アキ「じぇじぇ じぇじぇじぇじぇ。(あの人 おじいちゃん)」
ユイ「えっ? あの人が どうかしたの?」
道中
<ウニ丼を放り出し アキは 男の後をつけました。 そのころ 天野家では…>
天野家
居間
夏「男!? おらが? はっ バカも休み休み言え。」
春子「私だって そう思ってるわよ。 だけど うわさになってんの。」
夏「はっ 言いでえ奴には 言わせでおけ!」
春子「ちょっと まだ 話 終わってないでしょ?」
夏「おらも大事な約束があるんだ。」
春子「約束って 誰と?」
玄関前
アキ「やばい やばい やばい! おらんちだ…。 おらんちさ行ぐ。」
居間
春子「誰と? 組合長と?」
夏「組合長!? 長内さんと おらが? ハッハッハッハッ!」
春子「笑い声じゃないでしょ!? あんた いくつよ? 64でしょ? しかも お父さん死んで まだ1年しか たってないんでしょ? 何 笑って…。」
忠兵衛「ただいま~!」
春子「お帰り! …っていうか『ただいま』?」
夏「やんだ 忠さん 帰ってきちゃった。」
春子「え?」
忠兵衛「お~ 夏ちゃん 会いでかった~。」
夏「言ってくれりゃ 駅まで迎えに行ったのに~。」
忠兵衛「びっくりさせでえと思って! ハハハハハッ! ほれ ハグ ハグ!」
夏「忠さん 忠さん 忠さん!」
2人「お~!」
忠兵衛「おっ?」
夏「あっ 春子がね 帰ってきたんだ。」
忠兵衛「何だ そうかい! どっかで見た顔だなと思ったら おめえ 春子かい?」
春子「あ… こっちです。」
忠兵衛「うん? おめえが? 年取ったなあ。」
夏「出てった時は 高校生だもの。」
2人「アハハハハッ!」
忠兵衛「いくつになった? 春子! 30か?」
春子「いいえ もうちょっと…。」
忠兵衛「50か?」
<お騒がせして すいません。 我が家の主 天野忠兵衛は 実は生きていたのです。 アハハッ びっくりした?>
春子「…したわよ! ちゃんと説明しなさいよ。」
夏「おめえが 勝手に死んだと 思い込んだんだべ。」
春子「仏壇に写真飾ってあったら 誰だって 死んだって思うでしょ!?」
夏「思うのは勝手だが おら ひと言も 死んだなんて言ってねえからな。」
長内「忠兵衛さん 帰ってきたってか!?」
忠兵衛「あ~ 組合長!」
長内「忠兵衛さん!」
かつ枝「いや~ いがった! 今年は 随分 遅えなって 心配してたんだ~。」
アキ「何で? なして おじいちゃん 生きてんの?」
忠兵衛「死んでねえからだ。」
長内「死んだ!? 誰が? 忠兵衛さんが?」
かつ枝「バカこの アキ! 縁起でもねえ事 語んな!」
アキ「でも『いつ死んだの?』って 聞いたら ばっぱ『去年』って言ったべ?」
夏「毎年 そういう覚悟で 送り出してんだ。」
忠兵衛「『俺の事は 死んだと思え』って 毎年 そう言って 船さ乗んのさ。」
夏「漁師の家さ嫁いだ 女の宿命さ。」
春子「いやいや 納得いかない!」
弥生「忠兵衛さん お帰り~!」
忠兵衛「弥生ちゃ~ん!」
かつ枝「危ねえ 危ねえ こら!」
今野「皆さん こんな集まって 夏さん この度は さっぱり分かんね…。 生きてる!」
忠兵衛「当たりめえだ!」
春子「大吉さん! よくも だましてくれたわね。」
大吉「だ… だましてはいねえ。 黙ってただけだ。」
春子「黙ってた?」
大吉「最初は そんな訳ねえって思ったさ。 だけど そのあとも 春ちゃん『死んだ 死んだ』って あんまり 春ちゃんが死んだって 言うから ちょっとしたら 生きてるっていうのは 俺の思い込みで 死んだのかなって…。」
弥生「その割には 葬式出した覚えもねえなって。」
大吉「もはや 俺の中では半分ぐらい 死んだ事になってたっぺ。」
忠兵衛「半殺しか!? この野郎!」
弥生「おらも 人に聞かれた時『どうも死んだらしい』って 答えてた!」
今野「何だよ おらなんか 何の疑いもなく 喪服着てまっだ!」
(笑い声)
かつ枝「それ やりすぎだべ!」
大吉「まあ 生きでて 何よりだな。」
(笑い声)
春子「全然 笑うところじゃない! 全然 納得いかない!」
ユイ「アキちゃん…。」
アキ「あっ ユイちゃん!」
夏「ユイちゃん ウニ丼 売れたか?」
ユイ「あっ 全部 売れました。 大丈夫?」
アキ「うん。 あのね おじいちゃん生きてたの。」
<その夜 夫の慰労会が開かれました。 急きょ スナックは休みにしましたが スナックの客のほとんどが 家に来ました>
夏「おらと組合長が不倫だとや。」
弥生「いやいや おらでなくて 勉さんが言いだしたんだ。」
勉「毎日おしゃれして 漁協さ来てましたよね。」
長内「ハハハハッ 残念ながら それは濡れ衣だべな。 遠洋の船が着く 着かねえの連絡は まず無線で漁協さ入るからな。」
回想
夏「組合長 まだ連絡ない?」
長内「ないない ないない。」
夏「はあ もう… 絵葉書には 八戸さ 5日に着ぐって 書いでだのに~。」
長内「心配しなくても 無線入ったら 電話するすけえ。」
夏「いろいろ準備あるのよ。 美容院さ行ったり…。」
夏「じゃあね 勉さん! ハブ ア ナイス デー! ヘッヘッヘッヘッ。」
回想終了
忠兵衛「へえ この野郎 この! おめえは黙って 琥珀でも磨いてろ!」
(笑い声)
かつ枝「まっ 正確には不倫ではねえべ。 おらたち 今 結婚はしてねえからな。」
長内「んだな!」
(笑い声)
長内「夏さんさえ その気なら…。」
忠兵衛「何だと この…!」
長内「冗談だじゃ! 冗談!」
忠兵衛「表出ろじゃ こら!」
長内「冗談 冗談 いや~ ハッハッハッ!」
大吉「誰も忠兵衛さんには かなわねえべな!」
(笑い声)
大吉「ふう~! どうだい 春ちゃん これで納得いったか?」
春子「いかない! 無理! てんで 納得できない!」
忠兵衛「相変わらす 面倒くせえな 春子は。 ところで 旦那は どこだ?」
春子「…旦那?」
忠兵衛「孫が いたって事は おめえ 旦那もいたべ。 挨拶さ来ねえっつうのは どういう了見だ!?」
春子「別れました。 東京行って 結婚して 娘を産んで 別れて 帰ってきました。」
忠兵衛「あっ そう。」
春子「『あっ そう』って…。」
忠兵衛「そろそろ 焼酎にすんべ。」
春子「ちょっと待ってよ 何それ…。」
忠兵衛「人生いろいろあるさ。」
春子「はあ!?」
夏「薄め? 濃いめ?」
忠兵衛「濃いめで。 まあ 頑張れや。」
春子「焼酎の薄めと濃いめの間で 慰めないでよ。 そんな 単純な話じゃないじゃないよ!」
忠兵衛「陸(おか)の上の事は天野家では 全て かあちゃん任せだ。 一年のうち 350日は 海の上だすけなあ。」
アキ「そんなに?」
長内「んだ! 延縄漁は 一年中 帰ってこねえのは当たり前だ。」
<延縄漁とは 長さ100kmもある縄に のれん上に 釣り針を垂らした 仕掛けで マグロを釣る 伝統的な療法です。 冷凍技術にお向上により 1年以上に及ぶ航海も可能に…>
春子「納得いきません!」
アキ「ねえ おじいちゃん おらも潜水土木科なんだよ。」
忠兵衛「じぇじぇ! 北高のか? したら おらの後輩でねえか。『南部ダイバー』歌うか!」
長内「待ってました!」
♬『白い鴎か 波しぶき』
長内「それそれ!」
♬『若い血潮が』
長内「それ!」
春子「アキ! あんた ユイちゃんと一緒に 2回行ってなさい!」
アキ「えっ 何で?」
春子「じいちゃんと ばあちゃんと 納得いくまで話し合うからよ!」
隠し部屋
ユイ「面白いね アキちゃんち。」
アキ「そうだよね。 うん。 ばっぱだけでも強烈なのに…。 まさな じいちゃん生きてるとは…。」
ユイ「うん。 相当 変だよ。」
アキ「でも ばっぱ うれしそうだった。」
ユイ「そりゃ そうだよ。 だって ずっと 一人で暮らしてたんでしょ。 …っていうかさ 何 この部屋!」
アキ「え?」
ユイ「うわっ! 松田聖子のLPじゃん! うわ~!『時をかける少女』のチラシじゃん! えっ 何これ! 誰? えっ 誰?」
アキ「ごめん おら 全然詳しくねえがら。」
ユイ「すごい…。 すごいよ これ! 何で こんなに宝の山なの~!?」
アキ「ママの部屋だから。 ママが高校生の頃 使ってた部屋 そのまま残ってたの。」
ユイ「すごい すごいよ これ。 中野とか 神田とかに行ったら 絶対 高く売れるよ! ちょっと 時々 遊びに来ていい? …ってか 今晩 泊まっていい?」
アキ「じぇじぇ!」
ユイ「明日も車内販売だし…。 ねっ いいでしょ?」
アキ「おら 全然 構わねえが…。」
ユイ「やった~! じゃあ ちょっと 家に電話する。」
居間
春子「父親が死んで 悲しくない娘なんて いる~? いくらさ 年に10日しか うちに いなくてもさ 18の時から 絶縁状態だとしてもさ ショック受けるわ!」
春子「それなりに! それなのに あの人よ。 夏さんよ! いつ どこで なぜ死んだかも 言わない! …っていうかさ! それどころかさ 死んでないじゃないの! ねえ!? 町のみんなで 口裏合わせちゃってさ~!」
美寿々「それは考え過ぎだって 春子さん!」
大吉「んだ んだ! 被害妄想だべ。」
春子「違うね。 みんなで 私の事 だましてたんだね!」
大吉「いやいや だから 黙ってただけだ! だましては いねえ。 何の得がある?」
春子「東京でさ 暮らしてるとさ『母の日には カーネーションを贈りましょう』とかさ『父の日には ネクタイを』とかさ そういうのが こう… 目に入るじゃない? でもね 嘘でも思い出す訳よ。」
春子「嘘でも『元気かな? どうしてるかな?』って 思う訳よ! 分かる これ!? でね 帰ってきたら 仏壇に写真! はい これ! 100人中100人が 死んだとお思います! そうでしょ だって! そうでしょ!?」
長内「よかったべ 生きてて!」
春子「あ?」
長内「それとも 死んでた方が よかったか?」
春子「そんなの 生きてた方が いいに決まってんじゃん。」
かつ枝「生きてる事に 訳なんてねえべ。 生きてるだけで 儲けだべ。」
大吉「納得したか?」
春子「納得した…。」
かつ枝「そしたら いつまでも むくれてねえで 素直に『お帰りなさい』って言え! なあ? 忠兵衛さん!」
春子「お帰りなさい! …っていうか 誰? 違う。」
アキ「夏ばっぱ~! 今晩 ユイちゃん 泊めでもいい?」
春子「うん?」
弥生「あれ 夏ばっぱ どこ行ったんだ?」
花巻「消えだ。」
アキ「消えた?」
花巻「2人して 手つないで出てったべ。」
(笑い声)
春子「何だよ もう~! 何なの もう!」
(笑い声)
かつ枝「やられだ。」
春子「もう嫌だ~。 もう嫌だ~。」
かつ枝「さすがだ。」
春子「やだ~。」
かつ枝「乾杯!」
港
忠兵衛「ただいま。」
夏「お帰り。」
<何か すいません。 1年に10日しか 一緒にいられない夫婦なもんで>