ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「あまちゃん」42回「おらのママに歴史あり」

【 連続テレビ小説「あまちゃん」】42回のネタバレです。

あらすじ

海への思いを断ち切れず、再就職したスーパーマーケットから逃亡した忠兵衛(蟹江敬三)は、再び遠洋漁業に出ることを宣言する。別れのつらさをこらえる夏(宮本信子)に、アキ(能年玲奈)と春子(小泉今日子)は、そっと寄り添う。忠兵衛の送別会。町の人々が勢ぞろいし、みんな大いに盛り上がる中、ついに春子がマイクを持った。長年、封印してきた歌を歌う瞬間が!?

42回ネタバレ

天野家
居間

夏「あんた 船さ乗りてえんだべ。」

春子「お母さん。」

夏「顔見てたら分かる。 あんた 海恋しくなったんだべ。 マグロ船さ乗って 沖さ出たくなったんだべ。」

忠兵衛「んだなあ。」

一同「じぇじぇじぇじぇ!」

春子「行くのは勝手だけどさ。 温泉くらい つきあってあげなよ。」

忠兵衛「いや 別れが つらくなるじゃ。」

作業場

アキ「ばっぱ 大丈夫か?」

夏「ああ…。 こん時ほど 漁師の家さ嫁いだ事 後悔するわ。 せわしねえ男だ。 ちょっとは のんびりすりゃいいのに。」

忠兵衛「夏さん。 すまねえ。 おら どうやら 自分で思ってたほど じじいじゃ なかったみてえだ。 陸さいてえのは やまやまだけど そしたら 本格的に じじいになっちまう。」

忠兵衛「じじいと一緒にいたら 夏さん あんたも ばばあになっちまうべ。 それだけは 我慢ならねえ。 夏さんが ばばあになっちまうのは 耐えられねえ。」

夏「とっくに ばばあだ。 あ~ ハハハ! いがった いがった。 このまま ずっと家さ いられたら 息が詰まるわ。 毎日 弁当こさえて 洗濯して 晩酌の支度して おらが先にくたばるわ。」

春子「お母さん。」

夏「春子 写真館電話しろ! 遺影撮り直しだ。」

忠兵衛「夏さん すまねえ。 もう今年で 最後にすっから。」

夏「去年も おととしも そう言ったべ。 行け行け インド沖でも どこでも さっさと行け! もう帰ってくんな。」

忠兵衛「去年も おととしも そう言われた。」

<その日 おとうさんの送別会が 急きょ行われました>

スナック・梨明日

大吉「は~い 皆さん 注目! え~ 宴も たけなわでは ございますが ここで中締めとして 本日の主賓 天野忠兵衛さんから ひと言 頂きたいと思います。」

(拍手と歓声)

忠兵衛「え~ この度は 醜態をさらして 申し訳ございません。 私 天野忠兵衛 昭和36年に 初めて遠洋に出て以来 マグロ一筋で やってまいりました。」

長内「や~!」

忠兵衛「今年は 娘夫婦と孫にも会えで 一時は 引退を考えましたが こうなったら 生涯現役のつもりで 人生という航海を楽しみたい 所存でございます!」

(拍手)

忠兵衛「私同様 今後とも 天野家を 温かく 見守ってやって下さい。」

(拍手)

忠兵衛「よろしくお願いします!」

弥生「忠兵衛さん。 頑張れ 夏ばっぱ!」

(拍手)

北三陸駅

長内「あっという間だったな。」

忠兵衛「弥生ちゃん 泣くな! 泣くな。」

弥生「(泣き声)」

磯野「先輩! くれぐれも ご無事で!」

忠兵衛「おう!」

かつ枝「若(わけ)え者に引っ張り合ってよ 無理すんでねえぞ!」

忠兵衛「ああ 留守は頼んだぞ!」

長内「夏さんの事は おらに任せろ!」

忠兵衛「何だと この野郎!」

(もめる声)

美寿々「その元気があったら 心配ねえ!」

スナック・梨明日

春子「ねえ ホントにいいの? 寂しくないの。」

夏「去る者は追わずだ。」

春子「また それだ。」

夏「毎年毎年 大騒ぎして いなくなって清々すら。」

春子「あのね 全然追ってこないって いうのは それは それで 寂しいもんなんだよ。」

夏「あ? 勝手な事言うんでねえ バカこの!」

春子「去る者だって ちゃんと 送り出してもらいたいんだよ。」

黒川「いらっしゃい!」

弥生「ごめん 夏ばっぱ! 結局 一人も減ってねえ。」

勉「むしろ 増えてしまいました。」

春子「あら 先生!」

功「この近くまで来たんでね。 お父さんの送別会だって?」

春子「そうなんです。 にぎやかで。」

水口「いいんですか? 僕 全然関係ないですけど。」

勉「大丈夫 俺も関係ねえがら。」

北三陸駅

アキ「はい おじいちゃん。」

忠兵衛「おう ありがとう。」

アキ「はい ユイちゃん。」

ユイ「ありがとう!」

(発車のベル)

忠兵衛「いいのか? 高校生 最終出るぞ。」

アキ「大丈夫 おら 大吉さんに 送ってもらう。」

ユイ「うちも パパがいるから大丈夫。」

忠兵衛「そうか。」

アキ「ねえ じいちゃん。 遠洋漁業って面白(おもしれ)え?」

忠兵衛「え? 何だ いきなり。」

アキ「だって 船の上 ずっといるんでしょ? 退屈しねえの?」

忠兵衛「するさ そりゃ。 ものすげえ ストレスだ。 男ばっかり 四六時中 顔 突き合わせてよ 飯も ほぼ毎日一緒 狭いベッドさ 横になっても 疲れ取れねえ。」

ユイ「私 無理 絶対。」

忠兵衛「俺も無理だ。 ハハハ!」

アキ「じゃあ なして行ぐの?」

忠兵衛「余計な事 考えなくて済むからな。」

アキ「余計な事?」

忠兵衛「陸さ いる限り おら日本人だ。 日本の常識で 量られるべ。 んでも 海は 世界中つながってるべ。」

忠兵衛「中国の鳥だからって 中国語しゃべる訳じゃあねえ。 アメリかのマグロも 英語しゃべんねえ。 だから おらも 日本語しゃべんねえ。 マグロは魚類。 鴎は鳥類。 おらあ人類だ。」

アキ「かっけえ!」

忠兵衛「ん? 何。」

ユイ「かっこいいって 言ったんです。」

忠兵衛「ほらな 日本語も 分からなくなってる。 ヘヘヘヘ! もう どこで死んでも一緒だべ。」

アキ「死んじゃ駄目だよ!」

忠兵衛「アキ 北三陸が好きか?」

アキ「うん おら ここが一番好きだ。」

忠兵衛「そうか。 アキが そこまで言うんだったら 帰ってくるべ。」

アキ「副駅長 ちょっと 売店開げて。」

吉田「え? 閉めたばっかり なんですけど。」

アキ「おじいちゃんに プレゼント買うの。 おじいちゃん! ありがとう! これ あげる。」

吉田「おう 何だ? こりゃ。」

アキ「手首さ巻くの。 お守り。 自然に切れる時 願い事が かなうんだって。」

忠兵衛「ああ 漁協で おばちゃんたちが編んでる。」

ユイ「それ言っちゃ駄目! 効き目が薄れるから。」

忠兵衛「ん? 願い事か 特にねえな。」

ユイ「まあ いいんじゃん。 それ見たら 家族の事 思い出せるし。」

アキ「そうだね。 おそろいだしね。」

黒川「アキ 大変! 大変!」

アキ「何?」

黒川「ママが カラオケ歌うって言ってる。」

アキ「じぇじぇじぇ!」

スナック・梨明日

長内「おお 忠兵衛さん! ほらほら! 夏さんの隣に座って。 ほら!」

かつ枝「あれは何だっけ?」

大吉「ちょっと正宗さん。」

黒川「はい?」

大吉「あんだが こないだ入れた歌 何だっけ?」

黒川「ああ『潮騒のメモリー』。」

大吉「んだ んだ。」

<ついに 母が歌を生で聴く機会が やって来た。 アキは 期待に 胸を躍らせていました。>

春子「1番だけね 1番だけ。」

大吉「入った入った!」

長内「いよっ! 待ってました!」

(拍手と歓声)

♬『来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー』

(拍手)

♬『北へ帰るの 誰も会わずに 低気圧に乗って 北へ向かうわ 彼に伝えて 今でも好きだと ジョニーに伝えて 千円返して 潮騒のメモリー 17才は 寄せては 返す 波のように 激しく 来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー 来てよ タクシー捕まえて 波打ち際の マーメイド 早生まれの マーメイド』

(拍手と歓声)

♬『置いていくのね さよならも言わずに 再び会うための 約束もしないで 北へ行くのね ここも北なのに 寒さ こらえて 波止場で待つわ 潮騒のメモリー 私はギター』

<ふだん 不機嫌でガサツな母が この時ばかりは まるで別人に見え アキは ただ その歌声に 身を委ねていました>

♬『来てよ その火を 飛び越えて』

アキ「かっけ~!」

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