ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「あまちゃん」70回「おら、東京さ行くだ!」

【 連続テレビ小説「あまちゃん」】70回のネタバレです。

あらすじ

大手芸能事務所の社長でプロデューサーの太巻(古田新太)の代理としてやってきた水口(松田龍平)。アキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)を、地元アイドルユニット「GMT47」の正式メンバーとして迎え入れたいと言う。水口は春子(小泉今日子)の説得を試みるが春子は頑として聞き入れない。春子はアキの真意を確かめようと、二人だけで話をする。そこで、アキがなぜアイドルを目指したいのか、本当の気持ちを知った春子は…。

70回ネタバレ

スナック・リアス

春子「今日これから 話し合うんです。 本人と。」

水口「え?」

春子「あっちは 東京に行くつもり。」

春子「あこっちは 絶対に行かせないつもり。 どっちが 勝つかなあ。」

天野家
玄関前

大吉「ユイちゃんも いたのか?」

アキ「水口さんは?」

春子「スナックで待たせてる。 お父さん もう帰ったよ 疲れちゃったんだって。」

ユイ「そうですか。 しょうがないな。」

春子「おばあちゃんは?」

アキ「分かんね 海女カフェでねえか?」

春子「そっか。 どれ 2階行くよ。」

2階

春子「ここで しゃべったよね アイドルの事。」

アキ「あ そうだね。」

春子「デモテープ聴いたよね。」

アキ「あん時 ママ面白かった。 話に夢中になって スナックさ休んで。」

春子「そうそう そうそう。 さては あれが よくなかったか?」

アキ「え?」

春子「どういうつもり?」

アキ「すいません。」

春子「そうか そうか ママにもできるんだから 私もできるかな なんて 思っちゃった?」

アキ「違うよ。」

春子「そういう話じゃないからね あれは。 むしろ逆。 東京なんか 行かなきゃよかった アイドルになんか憧れて バカみたい 人生やり直したいって そういう話だからね。」

アキ「そしたら おら この世にいねえ。」

春子「また そういう。 いいからアキ。 聞いて ママね あんたが東京に行くのを 全然反対しない。 韓流(はんりゅう)スターの 追っかけになるとか なでしこジャパンに入るとか 全然OK! ガールズバーで働きたいとかでも 全然OK!」

春子「アイドル以外だったら 何に憧れても 全然いい! それぐらいアイドルは 駄目! 許さない!」

アキ「何で?」

春子「不幸になるからよ。」

アキ「やってみなきゃ 分かんねえべ!」

春子「分かるの! 純粋な気持ち もてあそばれて 利用されて 消費されて 心が折れる。 水口も その社長の 太巻って人も 誰も決して 手を差し伸べてくれない。 そういう世界なのよ。」

アキ「それでもいい。 やるだけ やってみでえんだ。」

1階

(戸が開く音)

夏「ただいま! あ~!」

ユイ「お帰りなさい。」

夏「ああ アキは?」

ユイ「春子さんと。」

夏「そうか。」

ユイ「お邪魔しました。」

夏「気ぃ付けてな。」

2階

アキ「聞いてけろ ママ。 おらが アイドルになりてえって 思ったのは ママの歌 聴いた時なんだよ。」

春子「え?」

アキ「かっこよかった。 御飯作ってるママや 洗濯物干してるママも 好ぎだけど 歌ってるママは 最高だど思った。 だいぶたってから 本物聴いたべ。」

春子「本物?」

回想

アキ「『新助! その火を飛び越えてこい!』。」

回想終了

アキ「鈴鹿ひろ美の『潮騒のメモリー』も かっこよかった。 やっぱり 女優は違うなあと 思った。 でも おら ママの歌の方が好ぎだ。 先に聴いたからかもしんねえが ママの歌の方が 本物だって思った。 今でも そう思ってるよ。」

春子「ありがとう。」

アキ「お座敷列車で歌った時 海女カフェで歌った時 楽しかった。 もちろん ママの足元にも 及ばねえが おらの歌が お客さんに届いたような気がして うれしがった。」

アキ「もっと届けてえ もっともっと 元気になってもらいてえ 1人じゃ無理だが ユイちゃんと2人なら やれそうな気がするんだ。」

春子「(ため息)」

アキ「駄目か?」

春子「分がんね。」

アキ「ママ。」

春子「何て 答えていいのか 全然分かんない。 ちょっと 待ってて。 お母さんに 聞いてくるわ。」

アキ「え?」

1階

春子「どうしたらいいか 分かんないよ。 夏さん…。 起きてよ 夏さん。 起きてんでしょう? あんたなら どうする? ねえ 夏さん!」

回想

春子「ねえ 母ちゃん! 私 やっぱり 海女やりたくねえ! 東京さ 行きてえ。」

回想終了

春子「ふん! あん時と一緒か。」

夏「待で!」

夏「何だって?」

春子「アキが東京行くって言って 聞かないの。」

夏「うん。」

春子「アイドルになるんだって。」

夏「うん。」

春子「どうしたらいいと思う?」

夏「行がせてやったら いいべ。」

春子「何で?」

夏「本人が 行きてえって 言ってるからだ。」

春子「私も 行きたかったけど。 同じように 私も夢があって 東京行きたくて オーディション 受けたいって相談したじゃん。」

夏「いつの話してんだ?」

春子「あん時 夏さん 私に 何っつったか覚えてる?」

夏「へへ! くっだらねえ。」

回想

夏「くっだらねえ!」

春子「お願い 二度とないチャンスだから 行かせて下さい!」

回想終了

春子「そんな冷たい夏さんがさ どうしてアキには 甘いの? 孫だから? 娘の事は 突き放したけど 孫の事は守るんだ。」

夏「…。」

春子「ねえ 答えてくんないとさ 私もアキに 何て言っていいか 分かんないんだよ!」

夏「なしてだべなあ。 やっぱし あん時の事が 引っ掛かってんだべな。」

春子「え?」

夏「母親として 娘の将来も 考えねばなんねえ。 同時に 海女クラブの会長として 地域の活性化に 貢献せねばなんねえ。」

夏「北鉄(きたてつ)が開通して あのころは みんな 前向いてたもんで。 地元のために 娘を犠牲にした事 今やっぱし 後悔してんだべな。」

春子「ちょちょ え やめてよ。 え?」

夏「あの晩 おめえは 本気で訴えかけてきた。 おらも 本気で応えるべきだった。」

夏「『大事な娘を 欲の皮の突っ張った 大人たちの犠牲にしたくねえ』って。 市長さんや 組合長さ たんか切るべきだった。」

夏「その事を ず~っと ず~っと 悔やんでたから。 おめえの顔 見んのが つらかった。 すまなかったな。 春子。 25年かかった…。 このとおりだ。 許してけろ。」

春子「お母さん。 顔 顔上げてよ お母さん。 お母さん。」

夏「すっとした。 やっと言えたべ。」

春子「私も すっとした。」

夏「そうかい。」

春子「へへ! 謝ってほしかったのか 私。 よく分かったね?」

夏「まあな。 腹減ったな。 うどんでも食うか?」

春子「やっぱ かっこいいわ お母さんは。」

夏「ああ?」

春子「何でもねえ。」

2階

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