【 連続テレビ小説「あまちゃん」】96回のネタバレです。
あらすじ
アキ(能年玲奈)は、1985年秋に春子(有村架純)、太巻(古田新太)、鈴鹿ひろみ(薬師丸ひろ子)の3人が抱えることになった大きな秘密を知り、衝撃を受ける。その秘密をめぐり、春子はアイドルになる道をあきらめ、ついに東京を去ったのだった。アキは、追い込まれていた当時の春子の気持ちが今の自分に重なり、不安になる。
96回ネタバレ
無頼鮨
アキ「おそろいだ!」
<おら また鈴鹿(すずか)ひろ美(み)の 付き人に復帰しました。 鈴鹿さんど ママど 太巻(ふとまき)さんの過去を もっと深く知りでえ。 知る必要があると 思ったからです>
アキ「鈴鹿さんの夢って何?」
鈴鹿「世界征服と結婚。 …は 無理だから 上野に銅像でも建てようかしら。 西郷(さいごう)どんの隣に。 フフフフ!」
回想
荒巻「鈴鹿ひろ美が『テレビで歌いたい』って言いだした。
春子「え?」
荒巻「しかも生意気にも 口パクは 嫌だって。 参った! どうしよう。」
司会 男(テレビ)『さあ 今夜も生放送で お送りしております。【夜のベストヒットテン】いよいよ 第1位の発表です』。
司会 女(テレビ)『ホントに皆さん それでは第1位の発表です』。
(ドラムロール)
司会 女(テレビ)『4週連続第1位 鈴鹿ひろ美さん【潮騒のメモリー】です!』。
司会 女(テレビ)『うわ!』。
司会 男(テレビ)『とうとう この日が』。
司会 女(テレビ)『ホントに今夜 いよいよ生出演です。 鈴鹿ひろ美さんで いらっしゃいます 皆さん! うわ! まあ ホントにかわいらしい』。
甲斐「かわいいなあ!」
常連客「う~す! マスターいつもの。」
甲斐「ああ。」
常連客「あれ? 春子ちゃんは。」
甲斐「おなか痛いから休むって。」
常連客「おなか弱いね あの子。」
甲斐「急いで!」
常連客「おお 鈴鹿ひろ美!」
甲斐「手拭いて 見て!」
司会 女(テレビ)『そんなにね 緊張なさらなくても 大丈夫だと思いますけれども』。
司会 男(テレビ)『ご準備の方 よろしくお願い致します』。
鈴鹿(テレビ)『お願いします』。
司会 女(テレビ)『お願いします。 うわ! ホントにかわいらしい方で いらっしゃいます! 先ほど 私が あめを差し上げましたら おいしいっていうふうに 言って下さいました。 レモン味が 好きみたいです』。
司会 男(テレビ)『そうですか そんな事まで』。
司会 女(テレビ)『あなたも おなめになります? 私のあめ』。
「そろそろ歌いくよ!」
司会 女(テレビ)『それでは ご準備の方が 済んだみたいですね。 それでは 今週の第1位【潮騒のメモリー】。 鈴鹿ひろ美さんです!』。
♬~
(音程の外れた歌)鈴鹿♬『来てよ』
荒巻「こっちじゃない そっちだよ!」
春子♬『その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー 北へ帰るの 誰にも会わずに』
手紙・春子『鈴鹿ひろ美の影武者として ママはいくつかの 歌番組に出た。 出た? 出てはいません 声だけです。 鈴鹿ひろ美より早く スタジオに入り 人目につかない ブースに 閉じ込められる。 本番 鈴鹿ひろ美の 口の動きを モニターで見ながら歌い 鈴鹿ひろ美が 帰った事を 確認してスタジオを出る。 絶対に 顔を合わせない事が 鉄則でした』。
春子「ありがとうございます。 ホットコーヒーとミックスサンドで 650円です。」
手紙・春子『一回歌うと 3万円もらえました。 もちろん その中には 口止め料も含まれています』。
春子「あの…。」
荒巻「大丈夫。 君の経歴に 傷がつくような事は 絶対にないから。」
回想終了
鈴鹿「歌番組?」
アキ「はい 出たんですよね? アイドル時代は。」
鈴鹿「何か うっすら記憶あるわね。 でも2~3回よ。『潮騒』の時 一番忙しかった頃。」
アキ「歌ったんですか?」
鈴鹿「そりゃそうよ 歌番組だもの。」
アキ「中には 口パクの人もいるべ。」
鈴鹿「私駄目なの バレちゃうの 合わせられないの。」
アキ「ふ~ん。」
手紙・春子『昭和61年 夏に発売された セカンドシングル『縦笛の天使』は 3週連続1位。 サードシングル『DON感ガール』は 惜しくも1位を逃しましたが B面のバラード『私を湖畔に連れてって』が 翌年の春の 甲子園の 入場行進曲に選ばれました』。
回想
春子「どうぞ!」
荒巻「ファーストアルバムの 話がきている。」
春子「私の?」
荒巻「バカな! 鈴鹿ひろ美だよ。 フフフ! ごめん。 本人は それほど 乗り気じゃない。 もともと歌は そんなにやりたがる 女の子じゃなかったから。 ただ 社長が出すんなら 早く出そうと言ってる。 セールスの方も 落ちてきてるしね。 本人もそれは 分かって…。」
春子「嫌です。」
荒巻「え?」
春子「やりたくありません。」
荒巻「本当に これが最後だから。」
手紙・春子『このまま 1曲3万円で 影武者をやってたら 永遠に デビューできない。 田舎者で 世間知らずな私でも 分かりました』。
荒巻「春子ちゃん いずれ君がデビューする。 必ず デビューできるように 僕が後押しするから。」
春子「もう 二十歳になっちゃったんですよ。」
荒巻「それは… それは おめでとう。」
春子「私 アイドルって もうきついですか? だったら そう言って下さい!」
荒巻「全然 だって二十歳に見えないもん せいぜい19だよ。」
春子「デモテープ 社長に聴かせるって 約束してくれましたよね?」
荒巻「え? ああ 聴かせたよ。」
春子「え? ホントですか?」
荒巻「うん。」
春子「反応は?」
荒巻「『似てる』って。」
春子「似てる? 誰に?」
荒巻「鈴鹿ひろ美。『鈴鹿ひろ美の声に似てる』って 社長。」
春子「はあ?」
荒巻「うん 分かる 分かる。 うん 分かる 分かるよ。」
春子「何言ってんの! バカなの? お宅の社長! バカ社長なの!」
荒巻「落ち着こうか! 春子ちゃん 一旦落ち着こうか!」
春子「似てるよ だって私じゃん! どっちも 私じゃん! 似てて 当然じゃん!」
荒巻「落ち着け うるさいよ! もう おっぱい触るぞ! あ 嘘です。 ごめんね。」
(ドアベル)
荒巻「だってさ 社長 知らないじゃん 君が歌ってるって。」
春子「じゃ 何ですか? 声変えて 歌えばいいんですか? わざと 下手に歌いましょうか?」
荒巻「できる?」
春子「できるけど やりたくないです。」
荒巻「だよね それじゃ バレちゃうもんね。」
春子「他人が歌ってても バレませんけどね!」
荒巻「あ~!」
荒巻「要するに今じゃないんだ。 今 いくら売り出しても うちの事務所に圧力をかけられる。 潰される! 君は デビューできない!」
春子「もう じゃ いつですか?」
荒巻「必ず 僕に任せて。 ね! ね!」
手紙・春子『だまされている』。
春子「分かりました。」
手紙・春子『だけど 当時のママには ほかに頼る人もなく ただ太巻さんを 信じるしかなかったのです』。
まごころ第2女子寮
(ノック)
(ノック)
アキ「眠れません。 私 ホントに デビューできるんでしょうか?」
水口「そっか ごめん。 2段ベッド マメりんが 使っちゃってるんだよね。」
アキ「はい。」
水口「そっか。」
アキ「それはいい! 急に 不安になったんです。 おらがいる限り GMTは デビューできねえんじゃねえかって。 そうなのか? 水口さん おらが邪魔なら そう言ってけろ! なあ!」
水口「落ち着いて 落ち着いて! アキちゃん。 こないだも言ったけど 君を売り出す事に 僕は…。 無理… あの駄目だ! あの 睡魔と戦いながら いい事 言うの難しいよ。」
アキ「言ってけろ! 水口さん言ってけろ!」
水口「分かった 分かった! ちょっと待って! 絶対デビューできるから 夢は かなうから。」
アキ「はい。」
水口「おやすみ。」
回想
手紙・春子『あっという間に 2年がたちました。 年号が昭和から 平成に変わり オバタリアン セクハラという 流行語が生まれた年です』。
1989(平成元年)
(ドアベル)
荒巻「そうそうそう。 ザギンで し~め食い~の…。」
ウエイトレス「いらっしゃいませ!」
荒巻「酒飲み~の 腹下し~の。」
手紙・春子『太巻さんは チーフマネージャーに 昇格していました。 まだ29歳でした。 後で分かった事ですが 彼は その2年間 私の事を 真剣に 売り込んでくれて いたようです』。
荒巻「『イカ天』ブーム 来ちゃったね! どう? 春ちゃんも バンドやってみる? ねえ。」
春子「田舎に帰ります。 お世話になりました。」
荒巻「もうちょっと やってみないか? 君には恩がある。 君のおかげで 出世ができた。 もちろん 才能も認めている。 このまま埋もれさせてしまうのは 惜しい。 せめて あと1年。 せめて 携帯電話が もう少しコンパクトになるまで! 頼む!」
春子「だったら お願いがあります。」
荒巻「何 何?」
春子「『潮騒のメモリー』を 歌わせて下さい。」
荒巻「え?」
春子「私のデビュー曲です。 もう一度 あの歌を歌わせて下さい。 今度は 自分の名前で。」
荒巻「それは カバーするって事なの?」
春子「もともとは 私が歌って…。」
荒巻「世間は そう取らないよ。 リバイバルだと思うよ。 鈴鹿ひろ美の知名度に 頼るって事なんだよ それは。」
春子「そんなの分かってます。」
手紙・春子『そんなの分かってる。 だけど ママは それほど追い込まれていた。 その事を 太巻さんに 知ってほしかったのです』。
太巻「がっかりだな! 君には プライドってものがないの?『潮騒のメモリー』歌えば ヒットするよ。 そりゃ当たるよ。 けどさ それ なしでしょ! 禁じ手じゃん。 それをやらないために あらゆる…。」
(テーブルをたたく音)
春子「プライドなんて あるに決まってるじゃない! なかったら とっくに諦めてます! プライドあるから このままじゃ 終われないから! 今日まで あんたの言う事 聞いてきたんです! バカにしないでよ!」
甲斐「おい!」
ウエイトレス「ありがとうございました。」
甲斐「春ちゃん!」
(ドアベル)
手紙・春子『それ以来 太巻さんとは 会っていません』。
手紙・春子『その日 私は荷物をまとめて 東京を出ました』。
春子「上野まで。」