【 連続テレビ小説「あまちゃん」】97回のネタバレです。
あらすじ
アイドルを目指していた春子(有村架純)は、太巻(古田新太)と共に抱えた秘密のため、デビューできないまま3年がたった。ついに東京を去るとき、上野駅に向かうために乗ったタクシーの運転手こそ、若き日の黒川正宗(森岡龍)だった…。正宗は、前にも春子と太巻を乗せたことがあり、その秘密も知っていたのだ。そんな両親のなれ初めを正宗(尾美としのり)から聞いたアキ(能年玲奈)は、新たな夢を抱く。
97回ネタバレ
天野家
アキ「『新助 その火を 飛び越えてこい』。」
回想
<おらが 何度も繰り返し見た 鈴鹿(すずか)ひろ美(み) 主演の映画『潮騒のメモリー』。 その主題歌を歌っていたのは なんと おらのママでした>
春子♬『来てよ その火を 飛び越えて』
<ママは 鈴鹿さんの影武者だったのです>
荒巻「歌ってくれないかな? 鈴鹿ひろ美の代わりに。」
<しかも 黒幕は太巻さん>
荒巻「いずれ 君が デビューする。 必ず デビューできるように 僕が後押しするから。」
<しかし チャンスに恵まれないまま 2年がたち…>
春子「もう一度 あの歌を歌わせて下さい。 今度は 自分の名前で。」
荒巻「君には プライドってものがないの?」
(テーブルをたたく音)
春子「プライドなんて あるに決まってるじゃない。 なかったら とっくに諦めてます! プライドあるから このままじゃ終われないから! 今日まで あんたの言う事 聞いてきたんです! バカにしないでよ!」
<え~ という 今週は 割と ヘビーな幕開きですが 徐々に いつものバカみでえな感じに 戻ると思います>
春子「上野まで。」
黒川「お客さん どちらまで?」
春子「上野って 言ったよね。」
黒川「う… 上野。 上野ですね。 かしこまりぃ。」
1989(平成元年)
回想終了
黒川家
黒川「驚いたよ! 同じ お客さんを 偶然 乗せる事自体 珍しくないけど ママの印象は強烈だったからね。 だけど パパ 印象薄いだろ? 向こうは 全然 覚えてなくて。」
アキ「言えばよかったべ。『その節は どうも』って。」
首を横に振る黒川
アキ「なして?」
黒川「口止めされたから。」
回想
荒巻「もし あほんだら どっかに漏れたら あほんだら 己の仕業やからな あほんだら! 自分 東京湾に沈められたいんか! あほんだら! あほんだら! あほんだら! あほんだら!」
回想終了
黒川家
黒川「苦手なんだよ 関西弁。 全部 脅し文句に聞こえるでしょ。 大体 英語の『YOU』に相当する 単語が多すぎる。『われ』とか『おんどれ』とか『あほんだら』とか『自分』とか! 自分は『YOU』じゃなくて『ME』でしょうが!」
アキ「懐かしい。」
黒川「何が?」
アキ「パパの そういう理屈っぽい 学級委員っぽい 近所のおばちゃんっぽい感じ 久しぶりだ。」
黒川「フフッ たまには いいもんだろ。」
アキ「うん。 イラッと来る。」
黒川「野菜 食べなさい。」
アキ「きれいだね。 ママといた頃より 片づいてる。」
黒川「掃除ぐらいしか やる事ないんだよ。」
アキ「ごめん。」
黒川「野菜 食べなさい! 野菜 食べたら 泊まっていきなさい!」
アキ「いい 帰る。 門限あるし。」
黒川「部屋ないのに門限あんのか 理不尽だな。」
アキ「ベッド取られただけだよ。」
黒川「寝袋で寝てるんだろ?」
アキ「最下位だもん しょうがないよ。」
黒川「天野春子の娘だから じゃないのか?」
アキ「そんな いくら何でも そんな露骨な嫌がらせ。」
黒川「太巻なら やりかねないよ。」
アキ「…。」
黒川「とにかく ママを乗っけて 上野まで行ったんだ。」
回想
黒川「上野って事は あれですか? ご旅行か何かですか。」
春子「東北の方です。」
黒川「東北 いいですね。 東北 いいですよね。」
回想終了
黒川「思い出してほしくて いろいろと 話を振ってみたんだけど 全然 駄目で 結局 上野駅で降ろして…。」
アキ「そんで?」
黒川「ロータリーで車回して 世田谷へ引き返そうと思ったら…。」
回想
黒川「あれ?」
春子「世田谷まで。」
黒川「いや お客さん さっき 世田谷から 乗りましたよね。」
春子「えっ? あ…。」
回想終了
アキ「じぇじぇ! なして? どういう事?」
黒川「二度あることは三度あるだろ。 何か 運命 感じちゃってさ。 もう何か『東京湾に 沈んじゃってもいっか』なんて。」
アキ「いいがら 早ぐ声掛けろよ!」
黒川「せかすなよ アキ。 デザート食べなさい。」
アキ「要らねえ!」
黒川「どうした?」
アキ「だって パパとママが くっつかねえと おら この世さ生まれてこねえべ!」
黒川「くっついたから生まれたんだよ。」
アキ「そうだけど…。」
黒川「会話も途切れて 半ば諦かけてたら 原宿(はらじゅく)だか 表参道(おもてさんどう)辺りで 奇跡が起こったのよ。」
回想
(ラジオ)『それでは【転校生は つらいよ】さんのリクエストで【潮騒のメモリー】』。
♬~(『潮騒のメモリー』)
春子(ラジオ)♬『来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー』
黒川「♬『北へ帰るの(鼻歌)』懐かしいな… いいですよね この曲。 確か 鈴鹿ひろ美でしたっけ? 好きなんだよなあ…。 歌うまいっすよね。」
春子「止めて。」
黒川「え?」
春子「降ろして。 …っていうか 戻って 上野に。 やっぱ帰る。」
黒川「いやいや お客さん。」
春子「止~め~て!」
黒川「いや…。 これ歌ってるの お客さんですよね!」
春子「え?」
黒川「知ってますよ。 覚えてませんか? あの時の運転手です。」
(クラクション)
春子「どの時の?」
黒川「ほら あの時の あほんだらです 私。」
黒川「もう 3年も前ですか。 じゃあ ずっと一人で 秘密を抱えてたんですか。」
春子「誰にも打ち明けられなくて しゃべったら 楽になりました。 もう 思い残す事はないです。 帰ります。」
黒川「え?」
春子「上野まで送って下さい。 ここは 私が払っておきますんで。」
黒川「ずっと 応援してたんです! あなたを。」
春子「え?」
黒川「あの時 まだ 鈴鹿ひろ美も デビューする前だったでしょ。 だから僕 先に あなたのファンになったんです。 ファン第1号なんです あなたの。 だけど あなたは 表に出てこない。 絶対 出てこれない。」
黒川「しょうがないから レコード 買いましたよ 鈴鹿ひろ美の。『潮騒のメモリー』も『縦笛の天使』も『DON感ガール』も! あなたが歌ってる あなたの歌声だって思いながら 運転しながら 聴いた 聴いた 聴いた! リクエスト葉書だって送りましたよ。 あなたの声が聴きたくて。」
黒川「何か そのうち あなたの事が好きなんだか 鈴鹿ひろ美の事が好きなんだか 分かんなくなってきて 今じゃ 鈴鹿ひろ美の大ファンなんです もちろん春子さんのファンである事に 変わりないんですけど だけど 誰にも言えないからさ! 鈴鹿ひろ美の声をやってる人が 好きだなんて言えないじゃん! 言えないじゃん! ね? 言えないじゃん! ね?」
甲斐「警察 呼ぼうか?」
黒川「あっ お構いなく! すいません。 すぐ正気に戻りますんで。 ただ ファン第1号として ひと言だけ いいですか?」
春子「はい。」
黒川「あのね ここで諦めるなんて もったいないですよ。 あなたの歌に励まされて 僕は ここまで 頑張ってこれたんです。 横柄な客に罵られても 酔っ払いに絡まれても 後部座席 ガンガン蹴られても あなたの歌を聴いて 彼女も頑張ってるんだからって。 ないも 俺だけじゃない タクシー業界の みんな あんたのファンですよ!」
春子「鈴鹿ひろ美のファンでしょ?」
黒川「だけど 歌ってるのは あなたです! 日本全国のドライバーが あなたの歌声に癒されて 安全運転を心掛けるから 事故が減る! 春子さんの歌声には そういう力があるんです! ここは 僕が出します。」
春子「え? あ…。」
黒川「送りますよ 世田谷まで。 行きましょうよ。 歌いましょうよ。 東京には あなたの歌 必要としてる人が いっぱい いるんですよ!」
春子「ありがとう。」
回想終了
黒川家
黒川「それから その純喫茶店の常連になって 春子さんは 歌手には なれなかったけど 僕のお嫁さんになったんだ。」
アキ「かっけえ…。 かっけえよ パパ!」
黒川「そうか?
アキ「初めて かっけえと思ったよ パパの事! マジ リスペクトだよ パパ!」
黒川「そっか? よしよし ビールついでくれよ。」
アキ「でも 何でだべ。」
黒川「何が?」
アキ「なして ママは 一回 上野まで行ったのに 電車さ乗んねえで パパのタクシーで 世田谷さ戻ろうとしたんだ?」
黒川「ああ… それは ママに 聞いてみないと分からないよな。」
スナック・梨明日
(電話の呼び鈴)
ユイ「もしもし 梨明日(りあす)です。 あっ アキちゃん。 あ… ちょっと待ってね。 何か『手紙読んだ』って。」
大吉「手紙!?」
春子「いいから。 もしもし。」
黒川家
アキ「読んだよ。 感想? びっくりして とにかく びっくりして パパと御飯食べてた。」
スナック・梨明日
春子「何それ 意味分かんないんだけど。」
黒川家
アキ「『じぇ!』が 10個じゃ足りねえほど びっくりで ちょっと理解するのに 時間かかると思う。 でも 一つだけ言わせて。」
スナック・梨明日
春子「何?」
黒川家
アキ「ママ かっけえ~!」
スナック・梨明日
春子「アハハハッ あ~ ありがとう。」
黒川家
アキ「こちらこそだ。『潮騒のメモリー』が ママの歌だったなんて。」
電話・春子『いや ママの歌ではないけどね。』
アキ「ママが歌ってんだから ママの歌だべ!」
スナック・梨明日
春子「パパ 元気?」
電話・アキ「うん。」
黒川家
アキ「相変わらず イラッと来るほど 元気だ。」
スナック・梨明日
春子「ああ そう。 まあ よろしく伝えて。」
黒川家
アキ「あのさ おら 目標が出来た。」
電話・春子『目標?』
アキ「今まで ユイちゃんが こっちゃさ来るまでとか…。」
スナック・梨明日
電話・アキ『鈴鹿ひろ美みでえに なりでえって思って 頑張ってきたべ。 でも もう一つ 新しい目標が出来た。』
春子「何よ。」
黒川家
アキ「おら ママみでえな歌手になりでえ!」
スナック・梨明日
春子「駄目よ ママなんて 顔も出せない影武者だよ。」
黒川家
アキ「んだけど ママの歌が パパの心さ響いて それで 2人が結婚して おらが生まれたんだもん。」
スナック・梨明日
電話・アキ『ママの歌がねがったら おら この世さ生まれてねえんだぞ。』
黒川家
アキ「だから おら そういう 人の心さ響く 歌っこ歌いでえ。 何万枚も売れなくてもいい。 そのかわり ちゃんと 一人さ届く 歌っこ歌った ママみでえな歌手に なりでえんだ!」
スナック・梨明日
春子「…。」
電話・アキ『ママ? 聞いてるか? ママ。」
春子「あ~ ごめん! 大吉さんの『GHOSTBUSTERS』が うるさくて 聞こえなかったわ!」
大吉「いやいや えっ!? そんな そんな…。♬『(Ghostbusters)』」
春子「フフフッ もう一回 言ってよ。」
電話・アキ『やんだ。』
春子「ケ~チ。」
黒川家
アキ「エヘヘッ。」
スナック・梨明日
春子「フフフッ。」