2020年9月28日放送の【 連続テレビ小説「エール」】76話のネタバレです。
連続テレビ小説「エール」はNHKで放送しているドラマです。
現在は(2022年1月現在)NHKオンデマンドでも視聴可能です。
テレビまたはNHKオンデマンドが見れない方やこのドラマに興味のある方はこの記事をご覧になってください。
あらすじ
太平洋戦争が始まり世の中の戦時色はさらに深まり、裕一(窪田正孝)は戦時歌謡のほかに、戦果を伝えるニュースとともに流す歌、ニュース歌謡の作曲にも関わるようになって忙しい日々を送っていた。戦争が激しさを増すにつれ、日本は次第に苦境に立たされて食料の配給も少なくなり、音(二階堂ふみ)も日々の食事づくりに苦労するようになっていた。そんなある日、久志(山崎育三郎)の元に、召集令状が届く。
76話ネタバレ
エール (76)「不協和音」
「12月8日 6時。 帝国陸海軍は 本8日 未明 西太平洋において 米英軍と戦闘状態に入れり
昭和16年 太平洋戦争が勃発。世の中の戦時色は 更に深まろうとしていました。
日本放送協会
丸井「先生 こちらです。」
丸井「え~ 皆さん 本日 マレー沖にて 海軍航空隊が 英国東洋艦隊の戦艦 プリンス・オブ・ウェールズとレパルスを 撃沈したそうです!」
裕一「すごいじゃないですか!」
丸井「7時のニュース原稿です。 そのあとに ニュース歌謡流したいので 大至急 詞と曲をお願いします。 あと編曲も。」
裕一「あと3時間… 分かりました。」
丸井「お願いします。」
開戦後 裕一は 戦時歌謡のほか ニュース歌謡にも 関わるようになっていきました。
ニュース歌謡とは 戦果を伝える ニュースの内容を盛り込み 短時間で作詞 作曲され 生放送された 歌のことです。
古山家
音「華 お父さん 今日も遅くなるみたいだから 先に頂きましょうか。」
華「はい。」
日本放送協会
「お疲れさまでした。」
裕一「お疲れさまでした。」
裕一は 戦時歌謡の第一人者として 多忙を極め 多くの曲を世に送り出しました。
「未明には 首都 マニラを 一気に占領することになるしょう。」
「おお… 無敵皇軍ですね! 先生 腕が鳴るでしょう?」
裕一「いや 恐れ多いです。 頑張らないと。」
ミッドウェー海戦以降 日本は次第に苦境に立たされ 物資は不足し 人々の生活も苦しくなっていきました。
「確かに。」
「ありがとうございます。」
「はい。」
「お願いします。」
音「お願いします。」
「古山さんとこは3人だね。」
音「はい。」
「1円50銭です。」
音「はい。」
「ご苦労さま。」
「ありがとうございます。」
「はい 確かに。」
音「ありがとうございます。」
「はい 次の人。」
音「お願いします。」
古山家
音の音楽教室
♬『蛙のなくねも かねの音も さながら』
華は11歳になりました。 弘哉も変わらず 音楽教室に通っていました。
音「はい 今日はここまで。 せっちゃん。」
音「残念ですが 今日で節子ちゃんが この教室をやめることになりました。 せっちゃん またいつでも遊びに来てね。」
節子「はい。」
「大丈夫だよ。 また一緒に歌えるよ。」
「ねっ。」
居間 夕食
音「華 また お芋ごはんでごめんね。」
華「あっ ううん 大丈夫。 お芋 好きだし。」
裕一「音楽教室の方は? どう?」
音「また一人 やめちゃった。 こんなご時勢だしね。」
裕一「あんまりよく思わない親御さんも 多いんだろうね。」
音「近所の奥さんにも いろいろ言われる。 発表会も 戦争中に不謹慎だって 結局 できなかったし。」
裕一「食べよう。 頂きます。」
華「頂きます。」
音「頂きます。」
(電話の呼び鈴)
裕一「誰だろうね? こんな時間に。 はい。 あっ 久志?」
日本放送協会
智彦「古山先生!」
裕一「お義兄さん!」
智彦「視察で参りました。 先生 ご活躍で何よりです。」
裕一「お義兄さんもお忙しそうで。」
智彦「早く前線に出られるよう 志願してるところです。 それでは また。」
裕一「あっ 大将。」
鉄男「おう。」
裕一「ごめん わざわざ 来てもらって。」
鉄男「いや 古山裕一の知り合いって言ったら入れた。」
鉄男「あの人も随分偉くなったみてえだな。」
「先生 原稿です。」
鉄男「裕一のおかげか?」
裕一「いや 僕は関係ない。」
鉄男「…で 話って何だ?」
裕一「うん。 久志から電話があってね。」
鉄男「うん。」
裕一「召集令状が来たって。」
鉄男「ついに来たか…。 あいつ 何か言ってたか?」
裕一「うん… いや それがね…。」
回想
久志☎『ちなみに 壮行会なんて 絶対 やんなくていいから。」
裕一「うん? うん?」
久志☎「いやいや 本当に。 うん。 気を遣わなくていいから。」
裕一「それって つまりさ…。」
鉄男「やれってことだよね。」
裕一「…ことだよね。」
鉄男「うん。 フッ…。」
古山家
恵「こんばんは~。」
保「こんばんは。」
2人「こんばんは。」
恵「こんなご時勢だし 大したもの持ってこれなかったけど。」
音「いやいや うちも もう これぐらいしか…。 そういえば お店の名前 変わってましたね。 看板に『竹』って。」
恵「敵性語は禁止だからね。 あっ… ジャジャ~ン!」
華「わっ クッキーだ!」
保「それはね おからで作ったんだよ。 小麦粉が手に入らないからね。」
恵「華ちゃん たくさん食べてね。」
華「うん!」
音「ありがとうございます。」
裕一「久志 連れてきたよ。」
こける久志
保「わっ!」
久志「フフフ…。」
出直そうとする久志
裕一「久志 久志 久志…。」
久志♬『土も草木も 火と燃える 果てなき曠野 踏みわけて 進む日の丸』
恵「普通 送り出す方が歌うんじゃないの?」
音「本人たっての希望で。」
久志♬『明日の命を 誰か知る』
(拍手)
久志「みんなのおかげで 今の僕がいます。 私 佐藤久志は 明日 出征いたします。 お国のために 力を尽くしてまいります!」
居間
音「さようなら。 気を付けてね。」
弘哉「裕一さん。」
裕一「うん?」
弘哉「ちょっといいですか?」
裕一「うん。 どうしたの?」
ハーモニカを修理する裕一
裕一「はい。 できた。」
(ハーモニカの音)
裕一「うん。」
弘哉「ちゃんと鳴る! よかった。 ありがとうございます。」
裕一「いいえ。」
弘哉「僕 お礼に肩もみます。」
裕一「えっ? いいの? ありがとう。 じゃあ お願いします。」
裕一「ああ… うまいね。 気持ちいい!」
弘哉「母ちゃんにも いつも褒められます。」
裕一「へえ~ お母さんの肩も もんであげてるんだ。」
弘哉「父ちゃん死んでから 母ちゃん 女手一つで僕を育ててくれたんです。 仕事も家のことも 一切 手を抜かず きっちりやって すごいんです。」
裕一「お母さん お仕事 何してるの?」
弘哉「銀行の事務員です。」
裕一「へえ~。 僕もね 昔は銀行にいたんだ。」
弘哉「えっ そうなんですか?」
裕一「うん…。 でもね どうしても 音楽 諦めきれなくてね…。 自分の道は自分で選ばなきゃと思ってね。」
弘哉「自分の道は自分で選ぶ…。」
裕一「うん。」
弘哉「裕一さん。」
裕一「うん?」
弘哉「今 楽しいですか?」
裕一「う~ん… 最近… 楽しいか楽しくないかっていうより う~ん… とにかく必死っていうのが 正直なところかな‘~。」
玄関
音「また来週ね。」
裕一「気を付けて。」
弘哉「はい 失礼します。」
音「うん。」
裕一「あれ? 大将?」
鉄男「よう。 ちと 話があんだ。」
喫茶「竹」
久志「いや 確かに見た目はコーヒーだけどさ…。」
保「あっ いらっしゃい。」
恵「いらっしゃい。」
裕一「えっ!?」
久志「やあ。」
裕一「や… いやいや『やあ』じゃない。」
音「何でいるの?」
鉄男「どういうことだ?」
裕一「だって この前 派手に送り出したばっかりだよ?」
久志「ご覧のとおり 戻ってきました。 即日帰郷ってやつさ。」
裕一「えっ?」
久志「身体検査で落とされた。 戦うよりも しばらくは歌の仕事で お国に尽くせってさ。」
裕一「うん… そっか。 まあ… よかった。 とりあえず 座って。 座ろう 座ろう。 ねっ?」
久志「いや 座んない。」
裕一「うん?」
鉄男「うん? 何で?」
久志「いや… 大丈夫だから。」
鉄男「うん?」
音「久志さん どこが悪かったんですか?」
久志「いや まあ いいじゃない それは。」
裕一「いやいや… よくないよ。 どこ 何?」
久志「(小声で)いや… お… お尻…。」
裕一「えっ? えっ?」
鉄男「えっ えっ 聞こえねえ。 何?」
久志「痔! 痔でした!」
鉄男「痔?」
久志「痔!」
裕一「痔って お尻の?」
久志「いや お尻以外に痔… どこがあんだよ!?」
音「何で 痔に…。」
恵「いつから痔なの?」
保「痔って いぼの方? 切れる方?」
久志「いや そんな みんなで連呼しないでよ。」
当時 痔が理由で招集免除となることは 珍しくありませんでした。
久志「情けないよな。 もう あんな盛大に 送ってもらったのにさ…。」
裕一「いや そんなことないよ 華もさ 寂しがってたから喜ぶ。」
久志「いや… この機会に 福島に戻ろうと思ってる。」
裕一「福島?」
久志「親父が心配なんだ。 まあ もう 年だからさ あちこちガタが来てて…。 向こうを拠点に 慰問に回ろうかと思ってる。」
音「そっか… お父さん 喜びますね。」
久志「国に役立たずの烙印を押された僕だけど 親孝行だったらできる。 あの人の息子は僕一人だけだから。」
鉄男「実は… 俺も 作詞の仕事は一旦休むことにした。」
裕一「えっ…何で?」
鉄男「昔の上司が こっちの新聞社に勤めてて 人手が足りねえから来てほしいって。 世話になった人の頼みだしな。」
裕一「そっか…。」
音「福島三羽ガラスの次の曲 楽しみにしてたんだけど。」
裕一「いや… 諦めないよ僕は。 諦めない! 今は… ねえ こういう時だから しかたないけど。」
鉄男「ああ… またいつかやろう。」
裕一「うん!」
久志「ああ 3人で。」
裕一「絶対!」
いつ何が起こるか分からない戦時下に 確かな約束などありませんでした。 それでも この時の3人は 再会を信じていたのです。