2020年10月2日放送の【 連続テレビ小説「エール」】80話のネタバレです。
連続テレビ小説「エール」はNHKで放送しているドラマです。
現在は(2022年1月現在)NHKオンデマンドでも視聴可能です。
テレビまたはNHKオンデマンドが見れない方やこのドラマに興味のある方はこの記事をご覧になってください。
あらすじ
音楽挺身隊の活動に取り組んでいた音(二階堂ふみ)は、戦争が激しくなっていくにつれ、戦争に協力していくことへの疑問を抱き始める。一方、鉄男(中村蒼)が木枯(野田洋次郎)をつれて、一緒に飲もうと突然やって来る。久しぶりに裕一(窪田正孝)たちは楽しい時を過ごすが、鉄男や木枯は、今の世の中の空気が合わず、創作から離れていると話す。裕一は戦争の今、やれることをやるしかないのではないかと話す。
80話ネタバレ
エール (80)「不協和音」
音楽挺身隊
潔子「合唱?」
音「うん 慰問先の方々も 一緒に歌ったら 楽しいんじゃないかなと思って。」
蓮沼「いいかもしれません 戦意高揚のためにも。」
潔子「そういえば 音さん 歌を教えてたって言ってたもんね。」
音「うん。」
蓮沼「じゃあ 古山さん 選曲して下さる?」
音「はい!」
古山家
裕一「ただいま。 ただいま~。 ただいま!」
音「わっ! あ~ お帰りなさい。」
裕一「ハハハ…。」
音「ごめんなさい。 気が付かなくて。」
裕一「ううん 全然。」
音「すぐ ごはんの用意するね。」
裕一「うん。」
居間
音「ドイツ語だと難しいし…。 やっぱり日本語の曲の方がいいかな…。」
華「お母さん。」
音「うん?」
華「おやすみ。」
音「あ~ おやすみなさい。 ドイツ…。」
寝室
華「お母さんって マグロみたいだよね。」
裕一「マグロ?」
華「うん。 マグロって寝てる時も止まらないで ず~っと泳いでんだって。」
裕一「確かに。 お母さんが じっとしてるとこ 見たことないかも。 ず~っと動いてる。」
華「うん。」
裕一「うわ~っ…。」
華「うわ~って。」
裕一「ハハハ。」
居間
裕一「華 寝たよ。」
音「あっ ごめんなさい。 ありがとう。 挺身隊の合唱の選曲を任されたんだけど 難しいね。」
裕一「お茶いれようか。 一息ついたら?」
鉄男「ごめんください。」
裕一「大将かな?」
玄関
裕一「おお どうした?」
鉄男「悪いな こんな時間に。」
裕一「ううん。」
鉄男「おでん屋やってた頃 買っといた酒が 出てきたから 誰かと飲みてえと思って。」
裕一「おっ!」
音「いいんですか? 裕一さん お酒弱いですけど。」
鉄男「大丈夫。 ザルみてえな人も連れてきたから。」
木枯「久しぶり」
裕一「木枯君!」
宴会
鉄男「いや~ 木枯さんの曲は名曲! 全部 名曲だから!」
裕一「『酒は涙か 溜息か』 いや… これが一番かな~。 でもね『丘を越えて』も捨て難い!」
鉄男「だから 言ってっぺ 全部名曲だって。」
裕一「ハハハハハ。」
木枯「今は さっぱりだけどな。 全然書いてないし。」
裕一「何で?」
木枯「書いても通らないんだよ。『お前の音楽は軟弱だ。 もっと 世の中の空気に合わせろ』だってさ。」
裕一「ふ~ん…。」
木枯「でも 俺 そういうのって無理だし。」
鉄男「いや~ もう それで正解! 木枯さんの個性 無理に曲げる必要なんてないんですよ。」
裕一「うん そうだね! その方がね 木枯君らしいよ。」
木枯「ありがとう。」
鉄男「俺も正直 今の音楽業界には違和感ある。 戦意高揚 忠君愛国 そればっかしじゃ つまんねえし やりがいもねえと思ってな…。 だから一旦 作詞から離れてみることにしたんだ。」
裕一「だから新聞社に行ったんだ。」
鉄男「うん。」
木枯「裕一は大したもんだよ。」
裕一「うん?」
木枯「求められてる音楽を 質を落とすことなく 次々に生み出してる。」
裕一「いや… 僕はね ただ お国のために 頑張ってる人を応援したいだけ。 それが今の僕にできる たった一つのことだからね。」
木枯「真面目だね。」
(笑い声)
酔いつぶれる裕一と鉄男
木枯「頑張れよ。」
居間
音「できた! あっ… ごめんなさい。」
木枯「2人とも寝ちゃいました。」
音「ああ… 随分飲んだんですね。 お布団 出さなきゃ。 木枯さんも泊まっていかれます?」
木枯「ああ… いや ちょっと これが待ってるんで。」
音「あっ… フフッ。」
玄関前
木枯「変わんないですね 裕一は。 まっすぐで純粋で。」
音「フフフ。」
木枯「利用されなきゃいいけど。」
音「うん?」
木枯「あっ いや… お邪魔しました。」
音「あっ お気を付けて。」
木枯「それじゃあ。」
喫茶店 竹
鉄男「これは…?」
保「うどんかん。 寒天の中に うどん入れてみたの。」
華「怖い…。」
保「やっぱ 駄目か…。」
音「また新しいの期待してます。」
保「いや… 実は この店 一旦 閉めることにしたんだ。」
恵「この人ね 近くの工場で働くことになったの。 勤労動員で。」
音「そうなんですね。」
保「こんな状態で店続けるのも しんどいなって思い始めてたんだよね。 代用コーヒーなんて コーヒーじゃないし そんなんじゃ もはや喫茶店とは言えないでしょ。」
音「そっか… 寂しくなるね。」
華「うん…。」
ラジオ『大本営 海軍部発表。 南太平洋 某方面において 我が海軍部隊…』。
(ラジオを切る音)
保「しかたないよね。 そういう時代だから。 まあ 今日は ゆっくりしてってよ。」
恵「うん。 2人とも 今日はお休み?」
鉄男「いや 午後から取材です。」
裕一「これから ラジオ局。」
恵「日曜日なのに大変ね。」
保「裕一君 ラジオ聴いてるよ。 相変わらず 戦果が上がる度に 放送局に呼び出されてるの? 大変だね。」
裕一「まあ 今は 戦意高揚の曲 求められてますからね。」
鉄男「まあ… 大本営の発表と実際の戦況は 結構違うみてえだけどね。」
裕一「うん?」
鉄男「うちの記者の大本営担当が言うには かなり旗色が悪いらしい。 ガダルカナルも転進じゃなくて 本当は退却だった。 米英軍は 南方で 着実に反撃に転じてる。」
裕一「でも 局に来てる軍人は 今は わざと隙を見せて 敵を引き付けてから 一気にたたく大作戦 準備してるって もう少しの辛抱だからって。」
鉄男「そりゃ 軍人は そう言うべな。」
裕一「いや… 新聞社だって 同じ報道してるでしょ? 事実と違うなら どうして それを報道しないの?」
鉄男「そだ単純な問題じゃねえんだよ! あのな 俺たちだって本当のこと…。」
(ドアが開く音)
保「あっ いらっしゃいませ。」
恵「いらっしゃいませ。」
保「奥のテーブル どうぞ。」
回想
「先生 今こそ 更なる戦意高揚が必要な時期です。 ここが ふんばりどころですよ。 気弱になってる連中を 先生の音楽で 奮い立たせてやりましょう!」
音楽挺身隊
蓮沼「さすがですね。 御見それいたしました。」
潔子「どれも みんなで歌いやすそう。 さすが音さんね!」
音「よかった。」
蓮沼「神林先生。」
神林「ご苦労さまでした。 今日は練習日と聞きましたが?」
蓮沼「はい。 慰問先の皆さんと合唱する案が 出まして 今 選曲しておりました。」
神林「合唱?」
蓮沼「こちらが候補の曲でございます。」
神林「これは… どういう基準で 選んだのでしょうか?」
蓮沼「あっ… はい それは…。」
音「私が選曲しました。 歌いやすく 心豊かになれる曲を と思って選びました。」
神林「何をなまぬるいことを! いいですか? 我々の使命は 軍需産業に従事する者たちの士気を高め 日本の勝利に貢献することです。 音楽は軍需品なんですよ。」
音「軍需品?」
神林「今は芸術だの楽しみなどといった のんきなことを言っている時勢では ありません。 必要なのは決戦意識と戦力の増強。 戦争の役に立たない音楽など 要らないのです! それが分からないのですか!?」
音「よく分かりません。 音楽は 音楽だと思います。 その音楽を聴いて 誰が 何をどう思うかは 人それぞれで…。」
神林「あなたは 何のために ここに来たんですか?」
音「歌を聴いてくれた人たちに 笑顔になって頂くためです。」
神林「話になりませんね。 お帰りなさい。 挺身隊に非国民は必要ありません。」
古山家
縁側
音「ありがとう。」
裕一「どうしたの?」
音「神林先生に… 非国民って言われてしまって。 さすがに こたえるね。 でも… みんなが 同じ考えでなくてはならないのかな? そうじゃない人は要らないっていう 世の中は 私は嫌。 もちろん 私も自分の国は好き。 でも… 何よりもまず 家族や友達 周りの人たちに 幸せでいてほしい。 それって 自分勝手なことなのかしら…。」
裕一「でも… こうなってしまった以上 この国に生きる人間として… できることを やっていくしかないんじゃないのかな?」
「ごめんください。」
玄関
裕一「はい。」
「古山裕一さんですか?」
裕一「…はい。」
「おめでとうございます。 召集令状です。」