2020年10月6日放送の【 連続テレビ小説「エール」】82話のネタバレです。
連続テレビ小説「エール」はNHKで放送しているドラマです。
現在は(2022年1月現在)NHKオンデマンドでも視聴可能です。
テレビまたはNHKオンデマンドが見れない方やこのドラマに興味のある方はこの記事をご覧になってください。
あらすじ
裕一(窪田正孝)は、東都映画の三隅(正名僕蔵)から依頼された海軍航空隊の予科練習生を主題とした映画の曲づくりに取り組む。曲づくりで国に多大な貢献をしているということを理由に召集を解除になった裕一だったが、一度は覚悟を決めていただけに、喜ぶ音(二階堂ふみ)とは対照的に内心複雑だった。一方、豊橋では集会での礼拝を禁止された光子(薬師丸ひろ子)たち信徒が集まって話し合っていた。
82話ネタバレ
エール (82)「歌の力」
古山家
音「♬~(歌声)」
(ドアの開閉音)
華「聴かせてよ~。」
音「恥ずかしいの。 練習してないから。」
華「お父さん よかったね。」
音「そうね…。」
華「どうしたの?」
音「お父さんは来たかったみたい。」
華「お国のため?」
音「う~ん…。 もっと複雑な…。」
華「まあいいや。 お父さんがいるなら。」
音「そうね。」
華「ねえ お母さん。」
音「うん?」
華「私のために… 歌をやめたの?」
音「んっ。(床をたたく音)」
音「私が選んだの あなたを。 それに 夢は諦めてない。 お父さんに預けてある。」
華「夢って預けられるの?」
音「うん。」
華「2人でかなえるの。」
音「うん。」
華「そっちの方が楽しそうだね。」
音「フフフ…。 華 いいこと言うね。 フフッ そうね。」
華「いつか見たい。 大きな劇場のお母さん。」
音「うん…。 華も大きくなったし 戦争が終わったら 私も始めたい。」
華「ねえ…。」
音「うん?」
華「その前に聴きたい。 歌って。」
音「え~?」
華「お願い。」
音「♬『君を思えば はるかなり 波のかなたを はるかなり たよりをよめど かすかにて 涙のうちに はるかなり』」
華「いい歌!」
音「でしょ?」
華「うん。」
音「この曲で お父さんと恋に落ちたの。」
華「いや~ 聞きたくな~い。」
音「どうして? 華だって 弘哉君のこと…。」
華「えっ? 違う… 違うよ!」
音「何が違うの?」
華「えっ 違う 違う…。」
音「えっ 何が違うの?」
華「えっ 違う~!」
音「アハハハハ…。」
打ち合わせ中の裕一と三隅
三隅「こちらになります。」
裕一「はい。『若鷲の歌』。『若い血潮の予科練の 七つボタンは桜に錨 今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ でかい希望の雲が湧く はあ ヨカレン ヨカレン すばらしい詞です。」
三隅「でしょ!? 西條さんも とても苦労されてたのですが 実際に予科練を見学して頂きまして そうしましたら そこで いきなり 最初の2行が浮かばれまして もう それからは一気でした! いいですよね~! 特に 僕は その『七つボタンは桜に錨』ってところが 何とも詩的で…。」
裕一「ただ…。」
三隅「はい?」
裕一「あの… この『ハア ヨカレン ヨカレン』が ちぐはぐかなと…。」
三隅「そうですかえね~? ここは聴かせどころですし…。」
裕一「いや そうなんですけど… この部分 なくしてもいいか 西條先生に聞いてもらえませんか?」
三隅「いや~…。 最後の一番盛り上がるところですよ? ♬『ハア ヨカレン』あっ 違うっか? まあまあ それは先生に任せるとして え~ みんなが歌う場面 浮かびますけどね~。」
裕一「いや… 最後は この『でかい希望の雲が湧く』締めた方が 力強くなります。」
三隅「では3日後 上野待ち合わせでお願いします。」
裕一「よろしくお願いします。」
三隅「これだから音楽家は…。 んっ!」
古山家
裕一「彼らのような若者のおかげで… 今 この国はもってるんだ。 頑張らないと…。」
礼拝
礼拝も厳しく監視されるようになった 信徒たちはひそかに集まって対応を話し合いました。
柿澤「殺されたんだわ。」
瓜田「ほだほだ! 許せんって!」
光子「声 抑えて。」
梨本「光子さん あんた ず~っと黙っとるが どう思っとるだ?」
光子「私は… 私の信仰は捨てたくない。 守りたい。」
瓜田「ほだらあ…。」
光子「だからといって 危険を冒すくらいなら 今は…。」
梨本「あんた 戦争に協力するっちゅうことかん?」
光子「どうしようもないことはある。」
柿澤「都合がよすぎるわ。 まあ それも しょうがないわ あんたら 軍のお金で ごはん食べとるで。 そのおかげで 兵役逃れの人もおるし。」
梅「ひどい…。 取り消して下さい!」
柿澤「違っとる? 違っとるなら謝るわ。」
司祭「ともかく こういう集まりは危険だで。 しばらくは やめとこまい。」
関内家
梅「『聖書』読んどるの?」
五郎「何か寝れなくて。 みんなが危険を冒してまで 信仰してるものを 僕も もっと知りたくなって。」
梅「そっか… 本当 不自由な時代よね。 本も自由に書けんし…。」
五郎「でも 書いてんでしょ?」
梅「まあね。」
五郎「すごいな~ 梅ちゃんは。 本のアイデアは どこから来んの?」
梅「昔ね 裕一さんが突然 うちに来たの。」
五郎「先生が?」
梅「フフ… お姉ちゃんを奪うためにね。」
五郎「あの先生が そんな大胆な行動を?」
梅「そう 意外でしょう。 …で その時 言われたことがあって。」
回想
裕一「音さんいないと 曲 書けないんだ。 ものを作るには 何かもきっかけとか つながりが必要なんだ。 ほら 梅ちゃん 今 自分の中から出そうとしてっけど 書けないなら ほら… 外に 目 向けてみっといいかも。」
梅「その言葉が突破口だったんだ。」
五郎「僕だけじゃなく 梅ちゃんまで。 先生は偉大だ。」
梅「うん。」
裕一「(くしゃみ)」
梅「つまりね 五郎ちゃん あなたがいるから 書くことができるの。」
五郎「梅ちゃん…。」
梅「梅って呼びん。」
五郎「えっ? う う…。 梅。」
(五郎のすすり泣き)
梅「フフフ…。」
古山家
裕一「よし… じゃあ 行ってきます。」
華「気を付けて。」
裕一「いい子でね。」
華「うん。 行ってらっしゃい。」
裕一「行ってきます。」
華「お父さん どこ行くの?」
音「予科練。」
華「よかれん?」
音「兵隊さんになる訓練をするところ。 そこで作った歌を披露するんだって。」
華「ふ~ん。」
海軍飛行予科練習生 いわゆる予科練の制度は 海軍の航空機 搭乗員育成のため 10代の志願者に 厳しい基礎訓練を施すものでした。 その採用試験は大変に狭き門であり 練習生の七つボタンの制服は 少年たちの憧れの的でした。
汽車
三隅「先生がおっしゃるとおりでした。 明るくて力強い! これ いけます!」
裕一「そうですか。」
三隅「完璧ですよ~。」
裕一「西條先生は 詞のこと 何か言われてました?」
三隅「いいえ… というか『なるほど! そこは削った方がいい』と おっしゃってました。」
回想
三隅「そこをなんとか! ひとつ!」
西條「う~ん…。」
裕一「そうですか。 よかった。 ただ…。」
三隅「はい?」
裕一「何か違う気がするんです。 三隅さん…。」
三隅「先生 そんなことはありません!『若鷲の歌』は最高です! 史上最高の映画主題歌です。」
裕一「いや…。」
三隅「気のせいです。 訓練する若者を勇気づけます。」
裕一「でも…。」
三隅「何ですか?」
裕一「まだ何かあります。」
三隅「何か?」
裕一「明日って 朝一番で曲の発表ですよね?」
三隅「はい… その手はずです。」
裕一「それ 待って頂けませんか?」
三隅「へっ?」
裕一「もっと彼らのことを知りたいんです。」
三隅「はい?」
裕一「3日… いや… 1日だけでもいいです とにかく 彼らのことを知りたい。」
三隅「つまり… 見学したいと?」
裕一「予科練の若者の気持ちを もっと こう 熱く… もっと深く こう 表現できるんじゃないかって。 何か こう… この辺りまで 来てるんですけど 引っ掛かってて。」
三隅「ここですか?」
裕一「こ… この辺です。」
三隅「あっ それ 魚の骨じゃありませんか?」
裕一「ご迷惑なのは承知してますが どうか…。」
三隅「う~ん… 僕は これで十分だと思うけどな~…。」
裕一「何か… この心の内を まだ昇華できてないんです。 三隅さんも おっしゃいましたよね この作品に懸けると。」
三隅「そのお気持ちは ありがたいんですが… うちにも予算と予定がありまして。」
裕一「三隅さん!」
三隅「はい…。」
裕一「もう一曲だけ書かせて下さい! お願いします! どうか お願いします! お願いします…。」
三隅「分かりました!」
裕一「ありがとうございます。」
三隅「うん… うん…。」
(戸の開閉音)
三隅「んんっ! ああっ! もう 何なんだよ 何なんだよ! ああっ!(じだんだを踏む音)」