ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第107話「悪魔くん復活」

あらすじ

「悪魔くん」放送の翌日、絹代(竹下景子)と修平(風間杜夫)は、貧乏時代から様変わりした村井家を見て回り、境港に帰った。「悪魔くん」のテレビ放送は、子どもたちの心をつかみ人気番組となる。それがけん引役のひとつとなり「週刊少年ランド」は、年末の特大号で刷り部数100万部を達成。菅井(柄本佑)は、いずみ(朝倉えりか)にひそかに思いを寄せる。そしてクリスマスイブの日、布美枝(松下奈緒)を陣痛がおそって…。

107ネタバレ

水木家

階段

絹代「しげさん 早こと 起きなさい! もう! しげさん!」

客間

絹代「あ~あ ダメだわ さっぱり 起きてこん!」

修平「朝っぱらから 大声出すな! 茂の寝坊は 今に 知った訳じゃあるまい。」

絹代「親が来とる時くらい 朝ご飯 一緒に食べようという 気持ちには ならんもんですかねえ。」

光男「エヒン エヒン! まだ 熱が。 エヒン エヒン! すいません。 今日も1日 休ませてもらいます。 はい いや いや いや 明日は 出勤します。 よろしくお願いします。 エヒン!」

(受話器を置く音)

光男「まいったなあ。 案の定 嫌み言われたわ。」

修平「お前の せきは わざとらしい。 仮病 使っとるのが丸分かりだ。」

光男「そげか?」

修平「せきは こげするんだ。 ウフン! ウフン! ウハ~ ウフッ ウハ~ エヘッ! エヘ!」

光男「うまいもんだな!」

修平「やってみろ。」

光男「デヘッ! エヘヘヘ! エヘッ!」

修平「違う 違う! もっと奥から突き上げるように。 ウヘッ! ウヘ~!」

(2人の せきこみ)

絹代「だらず親子だわ! デヘン!」

修平「うまい! 母さんの方が うまい!」

絹代「困った。」

いずみ「フフフ!」

布美枝「いずみ!」

いずみ「変わってるね。 境港のお父さん達。」

布美枝「ちょっこしね。」

いずみ「フフフ!」

台所

絹代「わざわざ 朝ご飯 2とおり作ってくれたかね。」

布美枝「ええ。」

絹代「めったに会わんのに よう好みを覚えとってくれたねえ。」

布美枝「いえ。」

修平「布美枝さん バナナないか?」

布美枝「え?」

修平「牛乳の入った 紅茶の底に バナナを沈めて そのまま しばらく置く。 バナナが 温まって 格別にうまい。」

絹代「やめてごしなさい そげな おかしな食べ方は。 茂 やっぱり 朝は起きんのだねえ。」

布美枝「朝方まで仕事しとりますけん 起きるのは いつも 11時頃です。」

絹代「昔と違って 助手の人達も お~だけん 示しがつかんだないの?」

修平「今更 変わらんわ。 尋常小学校だてて 1日たりとも 間に合ったためしがねだけん。」

いずみ「毎朝 遅刻ですか?」

修平「うん。」

いずみ「うちだったら 父の雷が落ちて 大事ですよ。」

絹代「友達が来ようが 布団ははがそうが 一向に起きんのだけん。 ハハハ! 叱る方も 根負けしてね。 フフフ!」

光男「兄貴 よう学校で 立たされとったな。」

修平「でも 絵だけは 子供の頃から 人より 秀でとったぞ。 ゆうべ テレビに 茂の絵が 映ったのを見たら いろいろ 思い出したわ。」

絹代「展覧会 開いた事もありましたね。 あれ 6年生の時でしたかいね?」

布美枝「展覧会ですか?」

光男「新聞にも載ったんですよ。 『少年天才画家 現る』と 見出しがついて。 僕は 兄貴は 少々 足りん奴だと 思っとったんで 記事 見て びっくりしましたわ。」

修平「あの時 一遍だけだったなあ。 茂が 天才などと 言われたのは。」

(絹代と修平の笑い声)

茂「天才って 誰の話だ?」

布美枝「お父ちゃん 早いね。」

茂「腹が減って 目が覚めたわ。 ゆうべは 食い足らんだったかな。 ふわ~!」

絹代「天才の影も形も見えん!」

茂「ん? どげした?」

(一同の笑い声)

茂「何だ? 何が おかしいんだ? 朝から。」

仕事部屋

茂「ここが 仕事場だわ。」

修平達「ほう~!」

絹代「なかなか 立派なもんだねえ。」

修平「前のボロ屋より 格段にええわ!」

佐知子「おはようございます。 今 ご挨拶に伺うとこでした。」

絹代「ええがね 佐知子さんは ここで 勤めとるんだけん 家庭の方に 顔を出す事は ありません。」

佐知子「はい。」

絹代「身内の会社だと思って 甘えずに しっかり 働いてね。」

佐知子「はい。」

修平「また 頭ごなしに ガミガミと。」

光男「ほう~ 面白いもんだな!」

絹代「光男! お前も 今の会社が つまらんだの 何だの 文句 言っとるなら いっそ 東京へ来て 茂の仕事を手伝ったら どげかね?」

光男「え~?!」

修平「それも ええな。 雄一も こっちにおる事だし。」

絹代「私らも 老い先 短いんだけん 兄弟 仲よく 助け合っとるところを見せて ちっとは 安心させえもんだわ。」

光男「むちゃくちゃ 言うなあ。」

絹代「さあ 行きましょう。 しげさんの 仕事の邪魔したら いけん。」

修平「ああ。」

絹代「皆さん! 茂の力になってやって下さい! お願いします!」

一同「はい。」

玄関前

茂「せっかく出てきたのに 本当に もう帰るのか?」

修平「光男も 明日は 出社せんと クビになるかもしれんけん ハハハ!」

光男「嫌な事 言わんでくれよ!」

絹代「あんた 仕事中でしょう? もう ええけん はよ 仕事に 戻りなさい。」

茂「ああ。」

絹代「助手の人達を 待たせたらいけん。」

茂「うん。 ほんなら 元気でな。」

絹代「うん。」

布美枝「私 駅まで送っていきます。」

絹代「ええけん 光男もおるけん…。 それより 布美枝さん。」

布美枝「はい。」

絹代「くれぐれも 体を大事にね。 年明けに 元気な赤ん坊の便りが 聞けるのを 私ら 楽しみに待っとるけん。」

布美枝「お母さん。」

絹代「茂も あんたも 今が大事な時だわ。 頑張~なさいよ。」

布美枝「はい。 次はもっと ゆっくり いらして下さい。」

絹代「だんだん! やっぱり 寒い時は 東京の方が ええわ。 境港は 西風が びゅ~ びゅ~ 吹くけん。」

修平「そげだな。」

絹代「うん。 さてと 行きましょか。」

修平「布美枝さん また。 邪魔したな。」

布美枝「お父さん これ…。」

修平「ん?」

布美枝「新しいテレビを買う足しにって 茂さんが。」

修平「あれは 嘘だ。」

布美枝「えっ?」

修平「テレビは 壊れとらんが。 母さんが 急に 東京で茂と一緒に 放送が見たいと 言いだすもんだけん。 ハハハ! でも まあ これは ありがたく ちょうだいしとくか。 ハハハ!」

台所

いずみ「お疲れさま。 台風が 通り過ぎたみたいだね。」

布美枝「うん。 けど 茂さんの事 本当に 応援してくれとるんだわ。」

いずみ「同居じゃなくて よかったね。 一緒に暮らしたら 大変だよ。」

布美枝「そげだね。 あれ?」

回想

絹代「やっぱり 寒い時は 東京の方が ええわ。 境港は 西風が びゅ~ びゅ~ 吹くけん。」

修平「そげだな。」

回想終了

布美枝「何か今 ぞくっとした。」

いずみ「大丈夫? 妊婦さんが 風邪ひいたら いけんよ。」

布美枝「あ… うん。」

<『悪魔くん』のテレビ放送は 子供達の心をつかみ 人気番組になりました。 それも 牽引役の一つとなって 『週刊少年ランド』は 刷り部数 100万部を達成したのです>

仕事部屋

(小鳥の鳴き声)

昭和四十一年十二月二十四日

ラジオ『ジングルベル』

茂「ここに 点々を打ってくれ。」

菅井「はい。 こういったところ 線とか足しとかなくて…。」

茂「線は ええけん 点だけ 打ってれば ええんだ。」

菅井「はい。」

ラジオ『ジングルベル』

台所

いずみ「ただいま~!」

布美枝「お帰り ご苦労さま。」

いずみ「いろいろ 買いそろえてきましたよ。 はい これ 藍子の誕生祝の デコレーションケーキ。」

布美枝「わあ~ だんだん!」

いずみ「こっちが 藍子に クリスマスプレゼント。」

布美枝「かわいい!」

いずみ「こっちは ちょっと ちっちゃいけど クリスマスツリー。」

布美枝「オモチャ屋さんまで 行ってくれたの? 悪いねえ。」

いずみ「あ クリスマスプレゼントは 隠しておこうか?」

布美枝「そうだね。」

いずみ「フフフ!」

ラジオ『ジングルベル』

いずみ「けど クリスマスイブが誕生日なんて ちょっこし かわいそうだね。」

布美枝「なして?」

いずみ「だって 誕生日と クリスマスで プレゼント合わせて1個だもん。」

布美枝「それでも 今年は ちゃんと お祝い できて ええわ。 去年までは そんな余裕 とても なかったけんね。」

いずみ「今日は 盛大に お祝いしよう。」

布美枝「うん。」

いずみ「あ 茂兄さんは? まだ仕事?」

布美枝「うん。 今日と明日で 締め切りが 2本あって 朝まで仕事だって 言っとった。」

いずみ「藍子の誕生祝は?」

布美枝「仕事の合間に 顔出してくれると思うけど。」

仕事部屋

茂「よし! スガちゃん これ ベタと ホワイト! おい 菅井! あれ?」

倉田「ん? いつの間にか おらへん。」

茂「便所にでも 行ったか?」

小峰「さて…。」

廊下

菅井「これ クリスマスプレゼントです。 いつも お世話になっているので お礼に。 よし! 待てよ 奥さんと2人で行くと 言われると困るから…。 やっぱ 渡すの1枚にしよう。」

藍子「スガちゃん。 何してんの?」

菅井「え~ プレゼント。」

藍子「藍子に?」

菅井「え? わ!」

布美枝「あら 菅井さん。 どうしたんですか?」

菅井「いや その…。」

藍子「藍子に プレゼントだって。」

布美枝「あら すいませんね。」

菅井「いや~ その…。 あ! いずみさん!」

いずみ「どげしたの?」

倉田「お~い スガちゃ~ん! こんなとこで 何してんの? 先生 呼んでるで。 はよ仕上げんと 時間ないやろ?」

菅井「分かってるよ 今 行くよ!」

倉田「はよ来い ほら!」

菅井「藍子ちゃんに お祝いです。」

布美枝「え…。 ニューイヤーコンサート? 藍子には まだ早いよね?」

いずみ「これ 私にかな?」

布美枝「え?」

客間

いずみ「う~ん 出来た! ねえ やっぱり 車 買った方が ええよ。 これで 2人目が生まれたら 大変だよ。」

布美枝「一遍 聞いてみたけど いらんと 言っとったけんねえ。 私も 運転できんし。」

いずみ「運転は 私がするけん!」

布美枝「けど 車は まだ ぜいたくな気がするけどね。」

いずみ「安い買い物じゃないけど 仕事にも使えるんだけん。 私から一遍 茂兄さんに 頼んでみるよ。 姉ちゃんだって そしたら 暇ができたら 免許 取って。 ね! 藍子。」

藍子「お母ちゃん!」

いずみ「姉ちゃん! 大丈夫? どげしたの?!」

布美枝「何か おかしい。」

いずみ「もしかして 産まれそうなの?」

布美枝「予定日まで まだ 半月以上あるのに…。」

いずみ「姉ちゃん!」

藍子「お母ちゃん!」

布美枝「嘘でしょう。 また クリスマスに?」

<まあ 何という 巡り合わせでしょう? またも クリスマスイブに 陣痛が始まったのです>

客間

茂「どげかね? え?! 帝王切開?」

病院

いずみ「そげです。 お腹の中で 赤ちゃんが くるっと 一回転してしまって 逆子になっとるそうです。 予定日より 半月 早いけど 陣痛も来とるし…。 すぐ 手術する事になって。」

看護婦「村井布美枝さんの ご家族の方 いらっしゃいますか?」

いずみ「呼んどる。 手術の方は 心配いらんと お医者さんが言っとられました。 私は 姉に付き添って こっちに泊まりますけん。」

水木家

客間

茂「よろしく 頼むわ。」

いずみ☎『茂兄さんは 藍子の誕生日と クリスマス 祝ってあげて下さいね。 楽しみにしてましたけん。』

茂「ああ 分かった。」

病院

いずみ「料理の方は 大体 出来とります。 ケーキは 冷蔵庫の中に。 それから プレゼントのブーツが 棚の中に隠してありますけん。 ほんなら また電話します。」

看護師「村井さんの ご家族の方!」

いずみ「はい 今 行きます!」

モバイルバージョンを終了