ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第109話「鬼太郎ブームがはじまった」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、車の免許を取ろうと自動車学校に通いはじめる。倉田(窪田正孝)は茂(向井理)のアシスタントをしながら、漫画の新人コンクールに出すための作品を描いていた。しかし応募の締め切り当日、倉田は水木プロの仕事で、郵便を出しに行けずに困っていた。そこで、いずみ(朝倉えりか)が代わりに郵便を出しに行くことに。アシスタントの菅井(柄本佑)と編集者の北村(加治将樹)は、いずみに気がある様子で…。

109ネタバレ

水木家

台所

布美枝「体は ハンドルに向かって まっすぐ。 曲がり角の所に前輪が来たら ハンドルを 全部 回すような感じで ぶつかりそうになったら バックして…。 あっ!」

茂「お前 何しとるんだ? 鍋のふた 持って…。」

布美枝「…見てたんですか?」

茂「ああ。 見てたと言えば 見てたな。」

<布美枝は 運転免許を取ろうと 自動車学校に通い始めていました>

昭和四十二年 初夏

玄関

倉田 いずみ「あっ! わ~!」

いずみ「ああ 助かった! 卵 割らずに済んだ。 どうも ありがとう。」

倉田「いや。」

いずみ「『新人まんが賞』?」

倉田「ああ ちょちょっと…。 そしたら 俺 急いでるんで…。」

菅井「クラさん ちょっと待った!」

倉田「何や?」

菅井「大変だよ。 『マンガセブン』さん 今晩 原稿 取りに来るって。」

倉田「明日の夜の約束やろ?」

菅井「一日 間違えてたらしい。 先生 『急いで仕上げる』って 言ってるけど 参るよなあ! あ 荷物 持ちましょうか?」

いずみ「あ ええです。」

菅井「そうすか。」

倉田「今日までに出さんとあかんのに…。 しゃあない。 仕事や。」

いずみ「何だろう…?」

台所

いずみ「お鍋のふた?」

布美枝「乾物屋の和枝さんが 『ハンドル操作の練習になるから』って 教えてくれたんだけど。」

いずみ「う~ん 効果あるかなあ?」

布美枝「補修つける訳には いかんけんね。」

いずみ「なして?」

布美枝「その度に お金 取られるんだもの。」

いずみ「そりゃ そうだ。 フフッ…。」

布美枝「うちのお金は みんな しげさんが ペン一本で 稼いでくれたもんだけん 一円たりとも 無駄にはできん。」

いずみ「フミ姉ちゃん まじめだなあ。」

布美枝「フフッ…。」

いずみ「そろそろ 郵便局 閉まる時間だね。 ええのかな…?」

布美枝「郵便局が どげしたの?」

いずみ「あ…。 倉田さん さっき 郵便 出しに行こうとしとったみたい。」

布美枝「ん? お使い?」

いずみ「さあ? あて先 新人まんが何とかって なっとったけど。」

布美枝「新人まんが…。 ほんなら 雑誌のコンクールに 応募するのかもしれんね。」

いずみ「コンクール?」

布美枝「倉田さん 応募用の漫画 毎日 家で描いとるらしいわ。 『こっちの仕事も忙しいのに よう頑張る』って うちの人も感心しとった。」

いずみ「郵便 『今日 出さないと』って 言っとったけど…。」

布美枝「もしかしたら 今日が締め切りかもしれんね?」

いずみ「そげだね!」

仕事部屋

倉田「こっち 上がりました。」

茂「うん。 これ 頼む。」

倉田「はい。」

いずみ「失礼します。 私 出してきます。」

倉田「え?」

いずみ「さっきの封筒。」

客間

布美枝「ああ ギリギリ セーフかな…。」

玄関前

(自動車の走行音)

台所

布美枝「こう回して…。」

倉田「奥さん 奥さん!」

布美枝「へっ?! あっ! お疲れ様です。 お仕事 片づきました?」

倉田「はい。 あの ほんま おおきに!」

布美枝「え?」

倉田「郵便の事 奥さんが気ぃついて くれはったって いずみさんが…。」

布美枝「ああ やっぱり 応募原稿だったんですね。」

倉田「今日の消印が 締め切りやったんです。 間に合わんとこでした。」

布美枝「もう少し早く言ってくれれば ギリギリになる前に出しに行けたのに。」

倉田「仕事やないですから お願いできた筋やないんです。 朝 出すつもりが ギリギリまで 直してて 出しそびれて…。 ほんまに すんませんでした。」

布美枝「お礼なら いずみに。 『車 出そう』って言いだしたの あの子だから。 ほら 私は まだ これしか運転できん。」

倉田「鍋のふた?」

布美枝「うん…。」

(2人の笑い声)

布美枝「入選すると ええですね!」

倉田「はい。」

客間

いずみ「マヨちゃん こっちかなあ? あっ。」

藍子「マヨちゃん いた~!」

いずみ「じゃあ 一緒に オネンネしようか?」

藍子「は~い! マヨちゃん オネンネしょう!」

倉田「いずみさん。」

いずみ「あ…。」

倉田「今日は… おおきに!」

いずみ「どういたしまして。 ほんのドライブついでですから。」

倉田「ははっ…。 何や せやったら お礼言わんでも ええか。」

いずみ「まあっ アハハ!」

倉田「口ばっかりやのうて 何か お礼させてもらいたいんやけど。 何が ええやろか?」

いずみ「そうだな…。」

倉田「あ 高いもんは… 無理やで。」

藍子「いずみちゃ~ん。」

いずみ「あ ごめんね。 もう眠たいよね。」

藍子「うん。」

いずみ「お任せします。 何か ええもの 考えて下さい。 でも お金で買えるもんは ダメですよ。 うんと考えて すてきなお礼 待っとりますけん。」

倉田「金では買えんもんか…。」

<それから しばらくして 久しぶりに 豊川が やってきました>

仕事部屋

茂「『墓場の鬼太郎』の歌…?」

豊川「はい!」

茂「例のテレビの件ですか?!」

豊川「ああ すいません。 そっちは まだ 埒が明かなくて。 これは また 別の話です。」

茂「はあ…。」

豊川「人気漫画のイメージソングを 10曲ほど作って 『少年ランド人気漫画ソング集』という LPレコードにする企画なんです。」

茂「ふ~ん。」

豊川「ラインナップは こういう予定で。」

茂「う~ん。」

豊川「それで… 『墓場の鬼太郎』の作詞は 水木先生にお願いしたいんですが。」

茂「またですか?」

豊川「あ いや 原作者が詞を作るというのが 今回のレコードの売りなんですよ。」

茂「しかし 仕事も詰まっとるしなあ。」

豊川「そこを ひとつ お願いします。 前に 作って頂いた 『悪魔くん』のマーチも好評でしたし。 3番まで お願いします。」

茂「え~っ!」

台所

いずみ「わあ 水ようかん! おいしそう!」

布美枝「いつも すいません。」

北村「いいえ。」

いずみ「漫画から歌を作るなんて 面白そうですね。」

北村「ああ あの うちのグループのレコード会社が 漫画の人気に あやかろうというんです。 で 今回は 『少年ランド』の人気漫画 トップ10を そろえました!」

布美枝「ほんなら そこに『墓場の鬼太郎』も 入っとるんですね。」

北村「もちろんです。 『鬼太郎』の人気 ググッと 上がってますからねえ!」

菅井「北村さん やっぱり ここで 油 売ってる。」

北村「また来た…。」

菅井「豊川さん 呼んでますよ~!」

北村「今 行きますよ。 それじゃ また…。」

いずみ「はい。 これ 仕事部屋に持っていくね。」

布美枝「あ うん 頼むわ。」

菅井「あ それ 僕 持っていきます!」

いずみ「はい?」

菅井「いずみさん 来なくていいっすからね!」

いずみ「はあ。」

(犬の遠ぼえ)

布美枝「お父ちゃん 『鬼太郎』の歌 作るんですってね。」

茂「ああ また 詞を頼まれたわ。」

布美枝「今度は どげな歌にするんです?」

茂「う~ん…。 うんと恐ろしくしてみるかねえ。」

2人「ふ~ん。」

布美枝「レコードになるなんて 楽しみだねえ 藍子。 ついとる…。」

茂「漫画の仕事は詰まっとるし 『鬼太郎』の歌は 作らねばならんし…。」

布美枝「お父ちゃん お茶は?」

茂「あっち 持ってきてくれ。 朝までに ネームやるけん。」

布美枝「はい。」

茂「ああ 『鬼太郎』の歌ねえ…。 どげするかなあ。」

いずみ「頭の中 仕事だらけだね。」

布美枝「うん…。」

いずみ「少しは 断ったら ええのに。」

布美枝「仕事が あるのは ありがたい事だよ。 仕事がない苦しみは 身に染みとるけん。」

いずみ「ふ~ん…。」

布美枝「ねえ いずみ。」

いずみ「ん?」

布美枝「この間から ちょっこし 気になっとる事が あるんだけど。」

いずみ「何?」

布美枝「北村さんと菅井さん。」

いずみ「うん。」

布美枝「あんたの気を引こうと しとるんじゃないのかしら?」

いずみ「そげかなあ?」

布美枝「仕事関係の人達だけん 軽はずみな事は せんでね。」

いずみ「分かってるって。」

布美枝「そろそろ あんたも 大塚に戻らんと いけんのだし。 こっちで どうこう あってもね…。」

いずみ「心配いらんって。 私 何とも 思っとらんもん。 けど モテて悪い気は せんね。」

布美枝「いずみっ…。」

いずみ「冗談…。 フフフッ!」

布美枝「もうっ…。」

純喫茶・再会

菅井「先生も大変だよね。 漫画の仕事だけでも忙しいのに 作詞なんか頼まれて。」

倉田「う~ん せやな。」

菅井「いくら先生でも そうそう 簡単に 詞は作れないよね?」

倉田「う~ん せやな。」

菅井「…あのさ。」

倉田「あ…?」

菅井「北村さんの事 どう思う?」

倉田「どう どう? ん? どうって 別に 何?」

菅井「あの人 いずみさんの事 狙ってると思うんだよね。」

倉田「え?」

菅井「よく藍子ちゃんに お土産 持ってくるでしょ。 あれ いずみさんの 気を引く作戦だよ。」

倉田「い いや せやろか…?」

菅井「向こうは いい大学 出てるし 出版社の社員って 稼ぎも いいからな。 こっちは しがないアシスタントで 比べられたら 勝ち目ないよ。」

倉田「ん? 勝ち目って何のや?」

菅井「実はさ…。 僕 前から いずみさんの事…。」

倉田「えっ!」

菅井「一目ぼれなんだよ。 去年の夏 いずみさんが来た日から。」

倉田「あ… 知らんかった。」

菅井「いずみさん 短大 出てるし お父さん 市議会議員 やってるらしいし。 僕なんか 不釣り合いかもしれない。 でも 北村さんだけには 負けたくないんだ。 ねえ どうしたら いいと思う? クラさん?」

倉田「どうもこうも あらへんわ! 学歴もない 金もない。 漫画 描いてても 一丁前の漫画家やない。 どっこも ええとこ ないやんか!」

菅井「そこまで言わなくたって…。」

倉田「俺はな 俺やったらな まず 新人賞 取って 漫画家として デビューするわ! …で バリバリ稼いでやるの。 そっからが勝負や! あ~う~ 俺 何 言うてんやろ。」

倉田「帰る。 こんな事してる暇ない。 どうどん 漫画 描いて 新人賞 応募せにゃ。 ごちそうさん!」

水木家

客間

布美枝「急な下り坂での 追い越しは 禁止と…。 いずみ 本当に大丈夫かなあ。」

回想

いずみ「モテて悪い気は せんね。」

回想終了

布美枝「あ いけん。 勉強 勉強…。 落ちたら お金が もったいない。」

<若い いずみの活発さが ちょっと心配になってきた 布美枝でした>

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