ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第10話「ご縁の糸」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】10話のネタバレです。

あらすじ

昭和35年、布美枝(松下奈緒)は28歳になっていた。洋裁学校時代の友人たちは、結婚してすでに母親になった者もいれば、仕事を頑張っている者もいて、まだ独身で家事手伝いの布美枝には出遅れの感があった。兄・哲也(大下源一郎)が妻・邦子(桂亜沙美)を迎え、布美枝は家にいづらい気持ちが強まりはじめる。ある日、友人のチヨ子(平岩紙)が、客を前にしてのインスタントラーメンの実演販売の手伝いに布美枝を誘うが…。

10話ネタバレ

飯田家

登志「『とんと昔が あったげな。 飯田の おばばがな ちょっこしの間 あの世に行って ご先祖様に お伺いしてきたげな。 ご先祖様はな 【布美枝は のっぽで ちょこし 内気だなあ。 だども 気持ちの優しい ええ子だけん いつか きっと ご縁のある所に 導いてあげる】そげ 言っとらしたげな』。こっぽし。」

昭和三五年 秋

喫茶店

布美枝「いないいない ばあ!」

チヨ子「フミちゃん 子供あやすの うまいねえ ハハハハ!」

布美枝「フミちゃんまで 笑う事ないわ。」

(戸の開く音)

松代「あれ~ 子供! いつの間に~?!」

節子「うわ 驚いた。 大ニュースだ~!」

チヨ子「久しぶり! まっちゃんも節子も 元気しちょった? これ うちの子よ~。」

節子「知っとるよ。 出産祝 あげたでしょう。 それより フミちゃん いつ 結婚したかね?」

松代「何で 教えてくれんだった? 水くさいがね!」

布美枝「フフッ!」

<昭和35年 布美枝は28歳。 女学校時代の仲間達と 今日は 久しぶりの同窓会です>

松代「びっくりした。 本当の親子かと思った!」

布美枝「この子 兄の子供。 兄嫁さん おなかが大きいけん 私が 子守を おおせつかっとるの。」

節子「そげなら フミちゃんは?」

布美枝「独り者。 まだ 実家におるの。」

節子 松代「な~んだ!」

節子「お兄さん夫婦と同居しとるの?」

布美枝「そげだよ。」

松代「兄嫁さんとは うまくいっとる?」

布美枝「仲ようしとるよ。 本当の姉妹みたい。 あ でも どっちが姉なんだろう? 私の方が 3つ年上だけんね。」

松代「のんきな事 言っとるわ。 兄嫁さんの方は 気ぃ遣ってるんじゃないの?」

チヨ子「『小姑一人は 鬼千匹』って 言うけんねえ!」

布美枝「私 そげな意地悪せんわ!」

松代「けど フミちゃんも そろそろ 急がないけんよ。」

3人「結婚!」

松代「相手 ちゃんと探してるの?」

布美枝「探すっていっても… なかなか 話も 来んしねえ。」

節子「分かる 分かる。 この年になると 再婚の口しか来んもんねえ。」

チヨ子「節子 お勤めは?」

節子「続けとるよ。 この前 勤続10年で 表彰されたが。」

チヨ子「あら すごい!」

節子「すごい事ないが。 仕事くらいせんと 家に 居づらいもん。 フミちゃんは?」

布美枝「私は ずっと 店の手伝いしとるよ。」

チヨ子「けど お兄さん夫婦も 弟さんも おりなさるんでしょう。 今は当てにされとっても そのうち 邪魔に されるんでねかや?」

布美枝「そげな事…。」

チヨ子「仕事か 家庭か 何かないと 先行き厳しいよ。 私ら もう 28なんだけん。」

節子 松代「そげだねえ! 早いねえ!」

<この頃 女性は 二十歳過ぎれば 結婚適齢期といわれていました。 28歳で独身 家事手伝いの布美枝は 大幅に出遅れていたのです>

島根県安来市大塚町

道中

布美枝「帰ったら メンチカツ 食べようね。」

<大塚は 6年前に安来町と合併し 今は安来し大塚町となっています>

飯田家

玄関

俊文「ただいま~。」

布美枝「はい ただいま~。 ひぃふぅみぃ… 8人も おる!」

客室

(源兵衛と客達の話声)

鈴木「源兵衛さん 今回は 駅前から 攻めた方が ええや。」

源兵衛「鈴木さん そう思うかね…。」

台所

<これが 兄嫁の邦子です>

布美枝「ただいま~!」

2人「あ~ お帰り。」

布美枝「お店で メンチカツ 揚げてもらってきたけん。 お弁当 出さんといけんでしょう? 『選挙に カツ』な~んて!」

ミヤコ「ああ…。 高かったろう。 すまんねえ!」

布美枝「ええのんよ。 でも 数が足らんかも。 8人も 来とられると 思わんかった。」

ミヤコ「お父さんの選挙の応援団 いつの間にか増えて ウフフ!」

布美枝「まあ ええか。 切ったら分からんね!」

邦子「俊文 ぐずらんかった?」

布美枝「ああ 大人しくしてたよ。『いつの間に子供 産んだかね』って 友達に びっくりされたけん。」

邦子「よう なついとるから 間違われるんだわ。」

ミヤコ「子供が おっても 当たり前の年だしなあ。」

邦子「よいしょ!」

布美枝「あっ ええよ。 私が運ぶ。」

邦子「あ だんだん!」

布美枝「『鬼千匹』には なりたくないけんね。」

邦子「え? 何の事?」

布美枝「フフッ 何でもない…。」

<源兵衛は 4年前に 市議会議員に当選…>

回想

後援者代表「飯田源兵衛 当選! 万歳~!」

<2度目の出馬を控え 飯田家は 来客が絶えません>

回想終了

客室

布美枝「どうぞ。 どうぞ。」

客1「あ だんだん。 こちら ご長男の お嫁さんですかや?」

源兵衛「いやいや これは あの 娘ですわ。」

客1 客2「なるほど!」

客2「選挙のお手伝いに 里帰り さっしゃったかね。」

源兵衛「あ いやいや まだ 嫁には やっとらんのです。」

客2「いや これは ご無礼しましたわ。」

源兵衛「あ もう とうに あの 嫁に行っとる年ですけんね。 じき 30娘ですわ。 いや お恥ずかしい。 ハッハハハハ!」

布美枝「お父さん…。」

客1「いやいや~ 娘さんが お父さんを支えておればこそ 後願の憂いなく 選挙活動に 励めるっちゅうもんですなあ。」

客2「そげですな! 家族の協力なくしては 選挙は 勝ち抜けませんけんなあ!」

源兵衛「まあ いつまでも 家に おられては 親は 困りますがな!」

(一同 大笑いする声)

源兵衛「鈴木さん!」

鈴木「あ~ そげじゃ そげじゃ…。」

廊下

布美枝「はあ… 『30娘』って あんな言い方 せんでいいのに…。」

台所

ミヤコ「ごめんな。 あの子 あんたが トンカツの準備している事 知らんかったけん。」

邦子「ええんですよ。 これは 明日にでも うちのみんなで 食べましょう。」

ミヤコ「布美枝も 先に ひと事 聞いてくれたら ええのにねえ。」

邦子「誰でも考える事は同じですけんね。 『選挙に カツ』。 フフフッ。」

ミヤコ「気ぃ遣わせて すまんねえ。」

邦子「ううん。」

回想

松代「兄嫁さんの方は 気ぃ遣ってるんじゃないの?」

チヨ子「『小姑一人は 鬼千匹』って 言うけんねえ!」

回想終了

廊下

源兵衛「おう 布美枝。 ちょっこし ええか?」

布美枝「あ はい!」

源兵衛「金井さんから 注文が来とった。 出雲錦の特級 3本 届けてくれ。」

布美枝「はい。」

源兵衛「『還暦祝の席に出す』と 言っとったけん きれいに包んで 持ってきけよ。」

布美枝「分かりました。 貴司は?」

源兵衛「配達に出とる。 ミヤコや邦子じゃ 分からんけん 頼むぞ!」

布美枝「はい。」

玄関

(戸の開く音)

貴司「ただいま~!」

布美枝「あ お帰り!」

貴司「へえ! うまい事 包むなあ。」

布美枝「還暦のお祝いって言うから 鶴みたいに 折ってみたよ。 どげかな?」

貴司「ええよ ええよ! さすが 姉ちゃん。」

(柱時計の鳴る音)

布美枝「少しは うちの役に立っとるよね 私も…。」

<私が あの世に呼ばれてから 7年が 経ちました>

玄関

哲也「ただいま。」

俊文「お帰りなさい!」

邦子「お帰りなさい!」

<長男の哲也は 師範学校を出て 今は 中学校の先生を しています>

哲也「よいしょ!」

<妹の いずみは 17歳の高校生になり テニスに 熱中しています>

飯田酒店

貴司「はい 飯田酒店でございます。」

<随分様変わりした 飯田家の中で… 布美枝は 良縁に恵まれず 変わった事といえば 背が また 1センチ 伸びた事ぐらいでした>

貴司「姉ちゃん 電話だけんね。」

布美枝「あ は~い! ありがとう。」

貴司「はい。」

布美枝「もしもし。 あ チヨちゃん? ラーメン? ラーメンが どげしたかね?」

貴司「即席ラーメン?」

布美枝「チヨちゃんの ご主人が 食品会社にお勤めでな この間 売りにだした 即席ラーメンの実演販売会 やるとね。」

貴司「実演販売って 何するんだ?」

布美枝「ラーメン 作って お客さんに 試食してもら~とね。 で『手が足りんけん 手伝いに 来て』って頼まれたんだけど。」

貴司「そげな仕事 した事ないだろう。 大丈夫なのか?」

布美枝「ラーメンくらい 私だって 作れるよ。 でも 今日の今日だし 出かけたら 店 困るよね。」

貴司「う~ん まあ ええよ。 行ってくれば?」

布美枝「ええの?」

貴司「今日は 配達 少ないし。 姉ちゃんも うちにばっか おらんで たまには そげな事もした方が ええだろ。」

布美枝「そう… なら 行ってくるかね!」

試食販売会

(会場のざわめき)

布美枝「うわ~!」

チヨ子「フミちゃん! こっち こっち! 悪かったね うちの人が 急に言うもんだけん。」

布美枝「なあ この人達 みんな お客さんかね?」

チヨ子「大勢 詰めかけとって もう大変だわ!」

布美枝「ラーメン 作るだけだよね? 『私にもできる仕事』って 言っちょったよね!」

チヨ子「フミちゃんなら すぐ できるが。 ええから 早く こっち来て!」

販売員「料理いうほどの もんでもないけん。 こげして お湯入れて ふたしといたら 誰でも できるが。」

布美枝「はい!」

販売員「2分たったら 小鉢に取り分けて。 食べてみてごしない。」

布美枝「おいしい!」

販売員「お客さんに うまい事 すすめ~だよ。 1個35円。 店で食べるラーメンより 安くて おいしい。 ここ 強調して売ってごしない。」

布美枝「売るんかね? 作るだけじゃなくて…。」

販売員「お釣りは 手もとの箱に入っとるけん よろしく頼むけんね。 う~ん 危ないがね! 気をつけて!」

飯田家

貴司「俺 ちょっこし出てくるけん。 店 見とってな。」

源兵衛「布美枝は どげした?」

ミヤコ「ああ 『チヨちゃんの手伝いだ』 言って さっき 出かけましたわ。」

貴司「即席ラーメンの実演販売だけな。」

源兵衛「実演販売? そげな事 布美枝に できんのか?」

ミヤコ「う~ん あの子 料理は 上手ですけん。」

源兵衛「だらず! 『実演販売』言うたら ガマの油売りや バナナのたたき売り みたいなもんだわ。 うまい事やらんと 売れるもんも売れんのだぞ!」

ミヤコ「そげですか?」

源兵衛「お得意さん相手に うちで 酒 売るのとは 訳が違う。 そげなとこ行ったら 布美枝が 恥かくだけだわ!」

ミヤコ「あら…!」

試食販売会

布美枝「うわ!」

販売員「どうぞ~! こっちでも 作りますけん!」

客達「あ~っ こっち こっち!」

販売員「お客さん 待たせとるけん 早(はや)こと してね。」

布美枝「はい…。」

チヨ子「奥さんも 食べてみて ほんと おいしいけん!」

布美枝「チヨちゃん これじゃ 話と違うわ…。」

客1「ちょっと おねえさん! 早ことして!」

布美枝「はい。」

客1「あんた 手 震えとるよ。」

布美枝「お待たせしました。」

客1「箸は?」

布美枝「あ 箸…。」

客達「あ~! あ~あ!」

販売員「慌てんでね。」

布美枝「はい!」

客2「は~あ あっち並んどったら もう試食できとったなあ!」

客3「私のは? 待っとるんだけど!」

布美枝「あ~ はい どうぞ!」

客3「ちょっと 気ぃつけ~だわ!」

布美枝「すいません! すいません すいません。」

客4「おねえさん! これ 3つ もらうわ。」

布美枝「あ ありがとうございます。」

客4「やっぱり 5つにするかな。 いくら?」

布美枝「5つですか…。」

販売員「はっ! あんた ほら! 子供が ほら!」

布美枝「あっ それ! 勝手み持ってったら いけんよ! あっ キャッ!」

一同「あ~あ!」

販売員「あんた 何しとるの~?!」

布美枝「すんません!」

客3「手際 悪いねえ! ラーメンと 一緒で 売り子さんも即席かね?」

(一同の笑い声)

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