ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第110話「鬼太郎ブームがはじまった」

あらすじ

いずみ(朝倉えりか)に思いを寄せる北村(加治将樹)や菅井(柄本佑)とは対照的に、倉田(窪田正孝)は漫画を描くことだけに集中しようとしていた。ある出版社が嵐星社との合併話を深沢(村上弘明)にもちかける。同じころ、郁子(桜田聖子)は豊川(眞島秀和)に頼んで、大手の雄玄社で仕事をするようになっていた。いずみは、自分の見合い話が実家でもちあがっていると布美枝(松下奈緒)から聞くが、気乗りしない様子で…。

110ネタバレ

水木家

玄関前

北村「原稿 ありがとうございました。」

布美枝「ご苦労さまでした。 あ~ 今日も 暑いなあ。」

客間

(電話の呼び鈴)

布美枝「はい はい! はい 村井でございます。 あら! お父さん! うん こっちは 変わりないよ。 藍子も 喜子も元気よ。 いずみ? 今 ここには おらんけど。 いずみに お見合い?」

休憩室

倉田「ん?」

菅井「やっぱり まずいよ!」

倉田「何がや?」

菅井「北村さん 今日も 奥に 顔 出してた。 下心 見え見えなんだよなあ。 いずみさんが ああいうタイプを 好むとは 思えんけどさ。」

いずみ「私が どうかしたの?」

2人「うわっ!」

菅井「いや 何でも…。」

いずみ「入っても ええ? テーブル 片づけに来たんだけど。」

菅井「あ どうぞ どうぞ! どうぞ!」

いずみ「こんなとこで さぼっとって ええの?」

菅井「今 『少年ランド』片づけたとこで…。」

いずみ「ああ。」

菅井「ちょっと 一息。」

いずみ「茂兄さんは?」

菅井「トイレかな。 何か 最近 先生 ネタに 詰まると トイレこもるから。」

いずみ「フフフ!」

菅井「ハハハ!」

いずみ「仕事 今夜も遅くなります?」

倉田「ああ これから一本 締め切りあるからな。」

いずみ「ほんなら 幸洋軒に 夜食の出前 頼みましょう。」

菅井「はい! 僕 チャーハンで。」

いずみ「倉田さん あれ まだ 考えつかんのですか?」

倉田「ん?」

いずみ「この間の お礼 頂いてないな。」

菅井「え?」

倉田「ああ…。」

菅井「何 何 お礼って?」

倉田「いや…。 今 仕事中やから。」

(襖の開く音)

小峰「スガちゃん!」

菅井「ん?」

小峰「北村さんに渡した原稿 例のコマ 直してないだろう。 描き直したコマ ここにあるんだけど 貼らずに 渡しただろう。」

菅井「え? 僕じゃないよ。」

倉田「あかん! 原稿 渡したん 俺や。」

仕事部屋

倉田「ほんまに 頼んで ええんですか?」

いずみ「ええ 私 一度 出版社を のぞいてみたかったです。 皆さんは お仕事 続けて下さい。」

倉田「すんません お願いします。」

いずみ「また一つ 貸しが できましたね。 ほんなら 行ってきます!」

菅井「いい人だなあ いずみさんは。」

倉田「うん。」

小峰「しかし クラさんにしては 珍しいな。」

菅井「僕がやったと思ったでしょう。 よくないなあ そういう先入観は。」

小峰「悪い。」

倉田「すんません ボケっとして。」

小峰「ちょっと 頑張りすぎなんじゃないのか?」

倉田「え?」

小峰「片っ端から 新人賞に応募するのはいいけど 幾ら若くても 徹夜ばかりじゃ 体がもたないぞ。」

倉田「俺は 丈夫なんが取り柄やから。」

茂「あれ 何かあったのか?」

倉田「すんません。 自分が ヘマやりました。」

雄玄社

少年ランド編集部

豊川「わざわざ届けてもらって すいませんね。」

いずみ「とんでもな。 うちの者が 間違って お渡ししたので。」

北村「いえいえ ありがとうございました。」

豊川「おい 北村 修正個所 分かったのか?」

北村「はい!」

豊川「全く!」

いずみ「フフフ!」

福田「違うでしょう! 指定したとおり やって下さいよ! 困りますよ こういうの!」

(編集部のざわめき)

編集部員達「すげえな! やっぱ 橋本先生は 天才だよな!」

いずみ「漫画って こういうとこで 作ってるんですね!」

豊川「がっかりしたでしょう。 おっさんばっかりの 汚いとこで。」

いずみ「いいえ 活気があって 楽しそうです。」

梶谷「しかし 驚いたね。 水木先生に こんなかわいい 妹さんがいるとは。」

高畑「どうりで 北村が いそいそと 原稿 取りに行く訳だ。 ハハハ!」

北村「え?」

福田「行ったら なかなか戻ってこないし。」

北村「いや 別に そんな…。」

高畑「いっその事 ここに アルバイトに来てもらったら。 もっと 仕事に 精が出るんじゃないか?」

豊川「いやいや 逆効果かもよ。 北村は そわそわして 仕事が 手につかなくなるんじゃないの?」

(笑い声)

北村「編集長まで!」

いずみ「失礼します!」

男「じゃあ よろしく。」

いずみ「あれ?」

郁子「はい。」

いずみ「加納さん?」

郁子「あら 水木先生の奥様の?」

いずみ「妹の いずみです。」

郁子「どうしたの?」

いずみ「ちょっと 届け物があって。 郁子さんは どうして ここに?」

郁子「うん ちょっと 仕事でね。」

いずみ「あ…。」

<ちょうど その頃…>

嵐星社

編集部

浜野「深沢さん うちと組んでみませんか?」

深沢「え?」

浜野「私達は 青年漫画誌を手に入れる。 そちらは 十分な資金と 環境を手に入れる。 お互い メリットのある話でしよ。」

<『ゼタ』の編集部では 思いがけない話が 持ち上がっていたのです>

水木家

台所

いずみ「雑誌の編集部って 面白いね。 ビルは 大きくて立派だけど 中は 散らかっとって タバコ臭いし 汗臭いし。」

布美枝「もっと パリっとしとると 思っとったけど 出版社は どこも変わらんのだね?」

いずみ「うん。 手伝いに来ないかって 誘われちゃった。」

布美枝「え?」

いずみ「からかわれただけよ。 けど あげなとこで働いたら 楽しいかもしれんね。」

布美枝「うん。 あのね いずみ。」

いずみ「ん?」

布美枝「今日 お父さんから 電話があったんだけど。」

いずみ「『しっかりやれ』って お説教でしょう? お父さんの言う事は いつも同じだけん。」

布美枝「今日は そげじゃなくて…。」

いずみ「あ! 郁子さんに会ったよ。」

布美枝「え? どこで?」

いずみ「雄玄社 編集部の前で バッタリ!」

布美枝「郁子さんが なして 雄玄社に?」

いずみ「内職。 アルバイトで 雑誌の記事を 書いておられるんだって。」

布美枝「アルバイト?」

回想

郁子「取材記者のデータを 記事に まとめる仕事。 私が書いているのは あれよ。」

いずみ「『ヤングウーマン』 ?! 私も よう読んでます!」

郁子「そう?」

いずみ「お料理の記事 役に立ちますよね。 ほんとは 芸能界のゴシップが面白くて 読んどるんですけど。」

郁子「みんな そうよ。」

(2人の笑い声)

いずみ「けど 『ゼタ』は どうされたんですか?」

郁子「うん。 こっちは アルバイト。 週に3日ぐらい 『ゼタ』の仕事の後に やってるの。」

いずみ「仕事を2つも…。 大変ですね。」

郁子「いずみさん お仕事は?」

いずみ「田舎では 産休補助の教員を してましたけど 郁子さんみたいな仕事 恰好ええですね。

郁子「楽じゃないのよ。 これから徹夜で 原稿 書くんだから。」

小林「よう 加納君!」

郁子「あっ!」

小林「今週号の記事 評判いいよ!」

郁子「ありがとうございます! 次号の『女の履歴書』なんですが…。」

回想終了

いずみ「郁子さんは さっそうととって ほんとに すてきだわ。」

布美枝「その事 深沢さん ご存じなんだろうか…。」

いずみ「憧れるな… ああいう人。」

布美枝「あのね いずみ。」

いずみ「ん?」

布美枝「お父さんからの電話の事だけど 落ち着いたら そろそろ 戻ってきなさいって言っとったの。」

いずみ「何 言っとるのよ。 まだ 私が おらんと無理だわ。 喜子は 1歳にもならんし。 藍子だって 目が離せんし。 幼稚園の送り迎えも 私が やっとるのよ?」

布美枝「いつも すまんね。」

いずみ「茂兄さんの仕事だって 忙しくなる一方で とてもじゃないけど 姉ちゃん1人 置いて帰れんわ。」

布美枝「けど… もともと1年の約束で 来てもらっとるんだけん。 いつまでも あんたを当てにして 頼っとる訳には いけんって 思っとったのよ。」

いずみ「お父さんだって 姉ちゃんが まだ 大変だって事が分かれば 私の お手伝い期間 きっと 延長してくれるよ。」

布美枝「あんたに… 見合いの話が来とるのよ。」

いずみ「え?」

布美枝「ええ お話しだって 言っとったよ。」

いずみ「見合いの話…。」

布美枝「相手の人 立派な所に お勤めで 親御さんも しっかりしてて お金の苦労せんですむけん あんたには ちょうど ええんじゃないかって お父さんが。」

いずみ「それ… 姉ちゃんから 断ってごしなさい。」

布美枝「え…?」

いずみ「大所帯の買い物 どげするの? 藍子 連れて 喜子 抱いて 姉ちゃん1人で 遠くまで行ける?」

布美枝「頑張って 急いで 免許取るけん。」

いずみ「私 これでも 結構 役に立っとるつもりで いたんだけどな。」

布美枝「お陰で 助かっとるよ。 けど あんただって これからの事 いろいろ考えんといけんのだし。」

いずみ「私… 見合いはせんけん! もう少し こっちにおる!」

布美枝「もしかして… 誰か 好きな人でもおるの? 北村さんか 菅井さん?」

いずみ「おかしな事 言わんでよ。」

布美枝「ほんなら 他に誰か?」

いずみ「誰もおらんよ! 仕事 探そうかな。」

布美枝「え?」

いずみ「姉ちゃんが もう 家の手伝いは いらん 言うなら…。 そうだ! 豊川さんに頼んでみよう!」

布美枝「本気で言ってるの? 仕事って あんた そげん 簡単にはいかんよ。」

いずみ「郁子さんは さっそうと1人で 働いとるじゃない!」

布美枝「あの人は 特別に優秀なんだけん!」

いずみ「郁子さんだけじゃないよ! 女の人だって 今は フミ姉ちゃんみたいに 旦那様 当てにして 生きとる人 ばっかりじゃないけんね! あ…。」

藍子「けんかしちゃ ダメだよ~。」

布美枝「あ… うん。 けんかなんかしとらんよ。」

いずみ「私 もう少し こっちにおるけん。」

2階

布美枝「やっぱり 誰か好きな人でも おるんだろうか…。」

回想

いずみ「フミ姉ちゃんみたいに 旦那様 当てにして 生きとる人ばっかりじゃ ないけんね!」

回想終了

布美枝「痛い事 言われちゃった…。」

仕事部屋

茂「そうですか。 『ゼタ』を引き受ける…。 まあ 悪い話では ないかもしれんですが 大手は 大手で それなりに ありますからなあ。 いやいや 相談には いつでも乗りますが 決めるのは 深沢さんですよ。 ええ。 はい それじゃ。」

茂「おう。」

布美枝「あ… コーヒー置いときますね。」

茂「ああ。」

布美枝「深沢さん どげされたんですか?」

茂「『ゼタ』も いろいろ あるようだなあ。」

布美枝「あの… ちょっこし 相談したい事が…。」

茂「あっ!」

布美枝「えっ?」

茂「いかん…。 『鬼太郎』の歌が まだだった。 早こと作らんと 後ろにも 締め切りが つかえとる。」

茂「(ため息) 漫画も ネタ詰まりだし こげしとっても何も思いつかんな。 よし… ちょっこし 自転車で そこら辺 ブラブラ回ってくるわ。 ああ。 何か急ぐ用か?」

布美枝「あっ ええんです。 行ってらっしゃい。」

茂「ああ。」

布美枝「(ため息) とっても 相談なんかできん。」

<日々 締め切りに追われ 仕事のことで 頭が いっぱいの茂には いずみの進路相談など できそうにありませんでした>

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