ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第114話「鬼太郎ブームがはじまった」

あらすじ

昭和43年1月、「ゲゲゲの鬼太郎」のテレビ放送が始まり、茂(向井理)が作詞した主題歌とともに番組は人気をよぶ。放送が始まって半年もたつと、漫画の注文のみならず取材の申し込みも殺到するようになり、茂の弟・光男(永岡佑)を九州から呼び寄せ、マネージャーを務めてもらうことが決まる。倉田(窪田正孝)と小峰(斎藤工)は、水木プロから巣立ち、修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)が東京の村井家に同居することに。

114ネタバレ

水木家

客間

♬~(『ゲゲゲの 鬼太郎』のテーマ曲)

テレビ♬『ゲッ ゲッ ゲゲゲの…』

<昭和43年1月3日。 ついに 『ゲゲゲの鬼太郎』の テレビ放送が始まりました>

昭和四十三年 初夏

すずらん商店街

子供達♬『お化けにゃ学校も』

<茂が作詞した主題歌とともに 番組の人気は うなぎのぼりでした>

子供達♬『ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲー』

山田家

和枝「あの歌 子供達に大人気だよ。」

靖代「うちの風呂屋でさ 大人も歌ってるよ。 『ゲッゲッゲー』って。」

(一同の笑い声)

布美枝「地元は ありがたいです。」

徳子「嫌だ! 地元だけじゃないのよ。 お店のお客さんが 言ってたんだけどさ新橋辺りの1杯飲み屋でも 仕事帰りのサラリーマンが 合唱してるんだってさ。」

靖代「そ~お。」

回想

サラリーマン達♬『楽しいな 楽しいな お化けにゃ会社も 仕事も なんにもない』

回想終了

布美枝「そうなんですか?」

靖代「でも 先生も テレビが当たって ますます忙しくなっちゃうねえ。」

布美枝「実は それで 姉1人では手が足りなくなって…。」

水木家

仕事部屋

(電話の呼び鈴)

佐知子「はい。 水木プロダクションでございます。 水木に インタビューですか? 今 マネージャーに代わります。 光男さん すみません。」

光男「はい。 お電話 代わりました。 ええ。 時間は 30分あれば いいですかねえ?」

<放送が始まって 半年もすると 漫画の注文は もちろん 取材の申し込みも殺到。 弟の光男を 九州から呼び寄せ マネージャーを 務めてもらう事になったのです>

台所

布美枝「あら お兄さん いらっしゃい。」

客間

布美枝「あら 藍子 上手に描けとるねえ。 ねえ お父ちゃん達 何しとるの?」

藍子「サンシャカイダンだって。」

布美枝「サンシャカイダン?」

茂「おい ちょっこし来てくれ。」

布美枝「はい…。」

台所

布美枝「境港のお父さん達 こっちに出てくるんですか?」

茂「今朝 兄貴のとこに 電話があったそうだ。」

雄一「『子供も孫も みんな 東京におるのに 年寄り2人 境港にいる事はない』と 言うんだ。」

布美枝「はあ…。」

茂「秋から冬は こっちで暮らしたいらしいぞ。 境港は 西風が吹いて 年寄りには こたえるけん。」

布美枝「冬の間の別荘みたいなもんですね。」

茂「別荘? そりゃええな。」

(2人の笑い声)

雄一「笑い事じゃないぞ! イカルは 『3人の家を 順番に 泊まって回る』と言っとるが…。」

布美枝「順番に…。」

雄一「うちは 厳しい。 都営住宅で 狭いし 風呂もない。」

布美枝「お姉さんは 何て? さっきまで ここにおったが なんか急に 『頭痛がする』と言って 帰ってった。」

布美枝「まあ…。」

雄一「光男。 お前のとこは どうだ?」

光男「うちは マンションで狭いけん。 それに 前に 1週間ほど 九州に 泊まってった事があったんだが 俺も かみさんも ほとほと疲れた。」

布美枝「まあ…。」

雄一「やっぱり 茂のとこだな。」

光男「うん。」

茂「待て待て! うちも狭い。 それに アシスタントもおるし 出版社の人間も出入りするけん どげなトラブルが起こるか分からん。 第一! 俺は 忙しくて とても 相手にしとる暇はないわ。」

雄一「誰も お前の事なぞ あてにしとらん。」

茂「何?」

雄一「布美枝さんしか おらんだろう。」

菅井「光男さん テレビ局から 取材依頼の電話 来てます。」

光男「ああ 今 行く。」

菅井「あと 先生も そろそろ お願いします。 『8時には 原稿 取りに来る』って 言ってました。」

茂「ああ 分かった。」

雄一「よし。 この件については また 日を改めて 協議するか。」

茂「うん。」

仕事部屋

茂「同居といってもなあ…。 せめて もう1つ 2つ 部屋がないと。」

2階

布美枝「あった あった… よいしょ。 お母さん 戦争中でも よう大事に取っといたもんだなあ。」

藍子「これ な~に?」

布美枝「お父ちゃんが 子供の頃に 描いとった絵だよ。」

藍子「ふ~ん。」

布美枝「これが 境水道。」

回想

絹代「これ… 復員してくる前に 茂が送ってきた葉書。 茂を よろしく頼みますね。 あげな息子だけど 末永く!」

回想終了

布美枝「『末永く』か…。」

玄関前

布美枝「虹!」

倉田「奥さん 奥さん! 見て下さい! ほら! 大賞 倉田圭一…。 えっ! 倉田さん?」

倉田「はい! 大賞です!」

布美枝「おめでとうございます!」

倉田「やりました! 奥さん。 ハハハハハ。 やった~! やったぞ~! ハハハ。」

布美枝「おめでとうございます。」

仕事部屋

菅井「これで クラさんも プロとして 独り立ちか。」

茂「うん。 講評も ええようだし これなら 連載も決まるだろう。」

倉田「はい…。」

小峰「おめでとう!」

倉田「おおきに!」

(電話の呼び鈴)

光男「はい 水木プロです。 『マンガウィーク』さん? 来月 読み切り 1本ですか? 32ページで はい はい…。」

菅井「うちは どうなるの? 先生 仕事 断らないし。 クラさん いなくたって やっていけるのかなあ。」

客間

(風鈴の音)

一同「おおっ!」

布美枝「おめでとうございます!」

倉田「奥さん これ…?」

布美枝「ささやかですけど 受賞のお祝いです。」

茂「おめでとう!」

(拍手)

茂「そのうち 送別会もやらんと いかんのだが こう忙しくては 今日が 受賞祝 兼 送別会に なるかもしれんな。」

倉田「え?」

茂「連載 持つようになったら こっちの仕事する時間はないぞ。」

菅井「やっぱり そうか…。」

倉田「先生… ほんまに ええんですやろか? 今 仕事 増えとる時やし 先生も みんなも フル回転で やってはるのに 自分が抜けたら…。」

茂「人の心配しとる場合じゃないぞ! これからが 描き続けられるか どうかの 闘いだからな! まあ しっかり やんなさい。」

倉田「はい。」

菅井「あの アシスタントの補充は…?」

茂「深沢さんに頼んで また 『ゼタ』に 募集広告を出してもらおう。」

菅井「ああ 僕も 3年前 『ゼタ』の募集を 見て 決ましたからね。」

布美枝「ああ そうでしたね。 あの時は エレキギター弾く人や トラックの運転手さんや 変った人ばかりでしたね。」

茂「うん。 絵の描けるのは 1人も おらんだったな。」

(倉田と小峰の笑い声)

菅井「そんなあ…。」

茂「小峰君も抜ける事だし 何人か 来てもらわんとな。」

布美枝「え?」

菅井「小峰さんも…?」

小峰「先生には 前から相談してたんですが 旅に出ようと思いまして。」

布美枝「旅ですか…?」

小峰「あの日 お堂の前で 先生に出会わなければ 絵を描きながら あちこち 旅をするはずでしたから。 そろそろ 潮時です。」

菅井「みんな いなくなるのか…。」

茂「また 新しい人も来る。 あんたにも しっかりしてもらわんとな。」

菅井「はあ。」

倉田「頼むで スガちゃん!」

小峰「しっかりな!」

菅井「うん。」

茂「よし! まあ 食え! いただきなさい!」

3人「いただきます。」

<水木プロの立ち上げから 苦労を共にしてきた仲間達も それぞれ 旅立ちの時を迎えていました>

仕事部屋

布美枝「お父ちゃん お茶 はいったよ。  あら ご不浄かいな?」

茂「おう。 これな…。 そろそろ また 改築せんといけん。 アシスタントの泊まる部屋もいるし。」

布美枝「そげですね。」

茂「ついでに 台所も もう一つ作って。」

布美枝「え?」

茂「イトツとイカル うちに呼ぶぞ。 当分は 冬の間だけだ。 まあ なんとか やってくれ。」

布美枝「はい。」

茂「俺は 仕事があるけん 相手は お前が する事になるが 知ってのとおり なかなか手ごわい2人だぞ。」

布美枝「はい。」

茂「『冬の間だけ』と言っとるが… ひょっとしたら そのまま 住み着いてしますかもしれんなあ。」

布美枝「そげですねえ。」

茂「お前 それでも ええか?」

布美枝「はい。」

茂「やっていけそうか?」

布美枝「なんとか なりますよ。 どげな事があっても 私は お父ちゃんと一緒に やっていくだけですけん。」

茂「うん。 よし! 早速 棟りょうに連絡するかなあ。」

布美枝「はい。」

茂「おい。 頼んだぞ。」

布美枝「はい。」

昭和四十三年 秋

<そして その年の秋…>

玄関前

布美枝「さあ~ どうぞ。」

絹代「やれやれ 着いた。 布美枝さんが 車で迎えに 来てくれて 助かったわ。」

修平「ここが 我々の冬の別荘か。」

布美枝「さあ 上がって下さい。」

玄関

布美枝「お父さん達 着かれましたよ!」

茂「おう。」

(修平と絹代の歓声)

茂「よう来たな!」

修平「しばらく やっかいになる。」

絹代「よろしく頼むね。」

茂「おじいちゃん おばあちゃんだよ。」

絹代「喜子! アハハハ。」

修平「こら!」

布美枝「さあさあ 上がって下さい。」

<こうして 調布の家に 村井一族が終結したのです>

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