ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第115話「妖怪いそがし」

あらすじ

昭和47年4月。絹代(竹下景子)と修平(風間杜夫)との同居を機に、茂(向井理)は家を改築。あちこちにドアや奇妙な階段が取り付けられた村井家は、さながら迷路のようになっていた。茂の仕事は、ますます忙しくなる一方で、締め切りに追い立てられる日々が続く。布美枝(松下奈緒)の長女・藍子(菊池和澄)は小学4年生になり、父親が漫画家であるために、学校でクラスメートたちの好奇の目にさらされてしまう。

115ネタバレ

水木家

昭和四十七年四月

(小鳥の鳴き声)

台所

編集者1「あの…。」

布美枝「はっ!」

編集者1「ああ あっ。 失礼します。」

布美枝「何でしょうか?」

編集者1「仕事部屋は どこですか? あの 私 迷ってしまって。」

布美枝「ご案内します。 こちらに どうぞ。」

廊下

編集者1「あ すいません。 不思議なもので トイレを借りに出たら どういう訳か 元の部屋に戻れなくなって。」

布美枝「初めての方は みんな 迷われるんです。」

編集者1「ああ…。」

布美枝「あ ここは足元 気をつけて下さい。」

編集者1「え? あ 痛~! あったた~!」

布美枝「大丈夫ですか?」

編集者1「奥さん どうして ここに 段差が あるんでしょう?」

布美枝「さあ…。」

仕事部屋

茂「ほい! あんた。」

編集者1「ああ。 いや こちらのお宅は カオスです。 まさか 家の中で迷子になるとは。」

茂「ああ 狭い敷地に増築しとるうちに こうなったんですが 寝ぼけとる時は 自分でも迷う事が あります。」

2人「ハハハハ!」

(せきばらい)

編集者1「あ それじゃ 失礼させて頂きます。 ありがとうございました。」

布美枝「あ そこは!」

編集者1「あれ あれ? え?」

茂「お帰りは こちら。」

編集者1「ああ…。」

<両親との同居を機に 茂の改築熱に火がつき… 謎の扉や不思議な階段が出来て 村井家は 迷路のように なっていました>

(電話の呼び鈴)

光男「はい 水木プロです。」

菅井「いらついてるね。」

相沢幹夫「原稿 遅れてますからね。」

光男「新雑誌で… 16ページの連載ですか。 え~ 水木と相談してみますが 今 週刊と月刊 合わせて 連載10本ありますからねえ。 でも まあ なんとか調整して…。 ええ…。」

相沢「ええ…。」

菅井「また 仕事 増えるのかな?」

相沢「いや きついですよね。」

<菅井を残して アシスタントも何代か入れ代わり…>

品川「相沢さん これで どうでしょう?」

相沢「ああ ここ もっと細かい方がいいですね。」

<2年前に入社した相沢が 何かと頼りにされています>

茂の仕事部屋

光男「レンゲ出版が 新雑誌で 連載 頼んできたけど どうする?」

茂「連載? これ以上は無理だ。」

光男「そうだよな。 断るか。」

茂「あ~ 待て…。 むげに断ったら いけん。 ああ… 3か月先でもええか 聞いてみろ。」

光男「3か月先でも状況 今と変わらんぞ。」

茂「ひとまず 3か月先と言っとけ。 気分転換してくる。」

光男「1人 待っとるぞ。 遠くには行くなよ。」

茂「すぐ そこだ!」

茂「(あくび) ああ もう2日も ろくに寝とらんなあ…。」

(猫の鳴き声)

茂「はあ…。 あ… 猫は のんきで ええなあ。 お~い 猫。 お前 働かんで ええのか? アハハハハハ! いいご身分だねえ。」

猫「のんびりやりゃ いいのさ。」

茂「ん?」

猫「毎日 締め切りに追われて ご苦労さんだねえ!」

茂「毎日どころか 今日は 朝昼晩と 締め切りが3回もある。」

猫「『無為に過ごす』って 壁に貼ってあるじゃないか。」

茂「だら。 ほんとに ダラダラしとったら 飯が食えんわ。 家族に アシスタント 1個分隊を養わねばならんのだ。」

猫「はは~ん。」

茂「何だ?」

猫「先生 『妖怪いそがし』に 取りつかれたね。」

茂「妖怪 いそがし?」

(戸を叩く音)

編集者2「先生 そろそろ お願いします。」

茂「ああ。」

(猫の鳴き声)

茂「はあ 猫なんぞの相手を しとる場合じゃなかった。 よっし!」

(ペンを走らせる音)

仕事部屋

喜子「スガちゃん 遊ぼう。」

菅井「わっ びっくりした…。 今 仕事中!」

喜子「ねえねえ 漫画 見せてよ。」

菅井「後でね。」

中野「相沢さん。」

相沢「はい。」

中野「ここの指定は…。」

相沢「ここは ナワカケって事ですね。 お願いします。」

菅井「何で 相沢君に聞くのかな。 一番の古株 僕なのに。」

編集者2「あ 相沢さん ちょっと いいですか?」

相沢「はい。」

編集者2「このネームなんですが これですね。」

菅井「それ 僕 見ますよ! お~っ!」

一同「あ~!」

茂「何しとるんだ この忙しい時に…。」

夫婦の寝室

布美枝「出来た! 上出来 上出来。」

(喜子の泣き声)

布美枝「あら?」

喜子「お父ちゃんに どなられたあ…!」

布美枝「『今日は 仕事部屋に行ったら いけん』って 言ったでしょう。」

喜子「だって…。」

布美枝「ほら。」

喜子「わあ…!」

布美枝「ほら 新しいチャンチャンコ!」

喜子「鬼太郎 かっこいいね。

布美枝「うん はい。」

<次女の喜子は5歳 幼稚園の年長さんになりました>

小学校

藍子「嫌になっちゃうな…。」

砂田智美「藍子ちゃ~ん! 『げた箱の前で待ってて』って 言ったじゃん。」

藍子「ごめん… ぼんやりしてた。」

砂田「まだ気にしてるの? さっきの事。」

藍子「うん…。」

回想

畑野「みんなの連絡先を 書いた名簿です。 自分のところが間違ってないか よく確認してくださいね。」

藍子「あ…。」

男子1「あれ~ 村井の 父ちゃんって 漫画家なのか?」

子供達「え~?! 嘘でしょう。」

女子1「何 描いてる人?」

男子2「野球漫画? ギャグ漫画?」

藍子「ええと…。」

女子2「村井 茂?」

女子3「聞いた事 ないね。」

藍子「そんなに有名じゃないから…。」

畑野「はい みんな静かに!」

回想終了

藍子「水木しげるって バレたら困るな。」

砂田「何で? 私なら自慢しちゃうけど。 『うちのお父さん 『鬼太郎』描いてるんだよ』って。」

藍子「いい事ないよ。 小さい時 『ゲゲゲの娘』って からかわれて すごく嫌だった。」

砂田「藍子ちゃん 友達 絶対 家に呼ばないものね。」

藍子「うちに 来られたら バレちゃうから…。 今からでも 会社員に 変えてもらえないかなあ。」

砂田「どうせ みんな すぐに忘れるよ。」

藍子「うん…。 村井 茂なら 誰だか 分かんないよね…。」

水木家

玄関

藍子「ただいま~。」

男子1「あ 入ってったぞ…。」

男子2「あれが漫画家の家かあ。」

男子3「あそこ 看板かかってるぞ。」

男子1「水木プロダクション?」

(ドアの開く音)

子供達「うわ~!」

編集者2「うわ~ ビックリした~。 あれ? 君達 『ゲゲゲの鬼太郎』のファン? あ そう。 あのね 水木先生 今日 忙しいから あの サインもらうなら また 今度にしなね ね! よし!」

男子1「『ゲゲゲの鬼太郎』?」

男子3「水木先生?」

子供達「あ~ 水木しげるだ!」

台所

藍子「ただいま。」

布美枝「あ お帰り。 戸棚の中に ドーナツ入っとるよ。」

藍子「うん… あのさ。」

布美枝「ん?」

藍子「今日 学級名簿 もらったんだけど…。」

布美枝「うん。」

藍子「仕事 漫画家って 書いたんだね…。」

布美枝「ん?」

絹代「布美枝さん お~かね?」

布美枝「はい?」

絹代「しげさん また 寝とらんのだって?」

布美枝「締め切りが立て込んどるようで。」

絹代「なんぼなんでも働きすぎだわ!」

修平「そげな事 光男に言え。 あれが マネージャーだ。」

絹代「せめて滋養のつくもんを とらんと。 これ しげさんに 食べさせなさい!」

布美枝「また うなぎですか…。」

絹代「はい 700円! ほっ!」

布美枝「毎日 うなぎばっかり食べとったら お父ちゃん 太ってしまうわね。」

藍子「うん…。」

布美枝「700円の出費も こう続くと 厳しいなあ…。」

藍子「うち お金ないの?」

布美枝「出ていくお金が多いけんね。 アシスタントさんは増えるし 増築は するし…。」

藍子「うん。 ふ~ん…。」

布美枝「けど 一生懸命 お仕事しとるんだから 栄養つけてもらわんとね。」

藍子「うん…。」

布美枝「あんた さっき 何か 言いかけなかった?」

藍子「ううん もういい。」

(犬のほえる声)

喜子「お父ちゃん。」

茂「ん…。」

喜子「鬼太郎の新しいチャンチャンコ 見る?」

茂「ああ…。」

藍子「よっちゃん 新聞読んでる時 お父ちゃん お仕事中だよ。」

喜子「は~い。」

茂「うなぎも 毎日だと飽きるなあ。 おい お前 イカルに 『もう買うな』と 言っといてくれ。」

布美枝「私が言っても聞いて もらえませんよ。」

茂「そげか…。」

布美枝「今日 電話があったんですけど 連休明けに 弟の貴司が 出てくるんです。 2晩ほど うちに 泊めても ええですか?」

(テーブルを叩く音)

茂「うん 最後のシーンは こうしよう。」

布美枝「まだ お仕事ですか?」

茂「ああ。」

喜子「バイバーイ!」

藍子「お父ちゃん 話 全然聞いてなかったね。」

布美枝「うん…。」

小学校

校門

先生「おはようございます。」

藍子「おはようございます。」

教室

子供達「え~ 村井さんが?!」

「そう すごいよね!」

「全然知らなかった。 何で 隠してたんだろうね?」

「え!」

男子1「あっ 来たぞ。 村井 お前の父ちゃん 水木しげるなんだな。」

藍子「えっ…。」

女子1「有名人の娘だったんだね。」

<クラスメート達の好奇心いっぱいの 視線を浴びて 藍子は 足がすくんでしまいました>

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