ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第118話「妖怪いそがし」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は畑野先生(堀内敬子)から、藍子(菊池和澄)が学校で居心地が悪そうにしていることを初めて聞く。畑野は「村井家の教育方針について聞かせてほしい」と言うが、アシスタントや出版社の社員など個性的な人間たちが、ごった返す村井家の騒がしい様子に、畑野はあっけに取られるばかりだった。布美枝は、藍子が書いた作文のことを畑野から聞き、その内容に困惑を覚えるが…。

118ネタバレ

水木家

客間

布美枝「藍子が 何か ご面倒 おかけしとるんでしょうか?」

畑野「いいえ とっても おとなしくて 素直な お子さんですよ。 でも 藍子さん 学校にいるのが つまらなそうに見えるんです。」

回想

畑野「はい じゃあ 学級委員を やってくれる人。」

男子1「はいはいはい!」

女子1「私 生き物係 やります!」

女子2「私も!」

男子2「え ずるい 俺も 生き物係 やりたかったのに…。」

回想終了

畑野「ちゃんと 席には 座っていますよ。 でも 積極的に授業に参加したり クラスに 溶け込もうとは していないようで。」

布美枝「あの子 私に似て 引っ込み思案なところ ありますから。」

畑野「子供の個性は それぞれですから 引っ込み思案は構わないんです。」

布美枝「ええ…。」

畑野「ただ 居心地悪そうに見えるのが 担任としては ちょっと 気になりまして…。」

布美枝「はい…。」

畑野「私も 4月から 受け持ったクラスですから この機会に ご家庭の教育方針なども お伺いしているんです。」

布美枝「はい…。」

小学校

教室

智美「大谷君 また本 返してない。 明日のホームルームで言わなきゃね。」

藍子「智美ちゃん 言ってくれる?」

智美「いいけど…。」

子供達♬『ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲー 朝は寝床で』

藍子「何だ よかった…。」

智美「藍子ちゃん 気にしすぎ。」

藍子「だって…。」

子供達「ゲゲゲの娘~! ゲゲゲの娘~! 妖怪の仲間~! 逃げろ 取りつかれるぞ~! わ~あ!」

智美「藍子ちゃん…。」

水木家

客間

布美枝「子供は 健康で優しい子に 育ってくれれば 十分だと思っています。」

畑野「勉強の方は どうされていますか?」

布美枝「本人次第だと思って 任せております。」

畑野「お父さんが漫画家という事で 他のご家庭と 違っているような事も おありなんでしょうか?」

布美枝「はあ… どうでしょう。 よそと 比べた事が ありませんので。」

菅井「おう 痛~!」

布美枝「ちょっと すんません。」

廊下

布美枝「あ 大丈夫ですか? あ~ ちょっと ちょっと! しっかりして下さい。」

菅井「あ 奥さん 僕 もうダメです! 3日間 ひたすら 点々を打ち続けて…。 奥さんの顔まで 点描画に見えてきた!」

畑野「この人 大丈夫ですか?! きゅ 救急車を…。」

布美枝「大丈夫です よくある事ですから。」

畑野「はあ。」

布美枝「こっちで休みますか?」

菅井「いや 仕事部屋に 戻らないと!」

布美枝「しっかりして下さい。 はい!」

畑野「わあ!」

布美枝「すいません。」

畑野「はい。」

布美枝「しばらく休みましょうね。」

菅井「いや!」

仕事部屋

布美枝「気をつけて下さい。 あ 足下も…。」

相沢「菅井さん それ 急がないと。」

菅井「はあ また点々か…。」

(目覚まし時計の音)

茂「時間だ。 来るぞ~!」

編集者1「先生 出来てますか?! あ~っ まだ 出来てない!」

茂「あんた もう少し待ちなさい。」

編集者1「大変だあ これは落ちる。 これは落ちますよ~!」

茂「うるさい!」

布美枝「もう 戻りましょう…。」

畑野「は はい。」

修平「おや? 松川さん おらんぞ。」

光男「来週ですか。」

修平「光男 松川さん どげした?」

光男「もう帰ったぞ。 来週は 締め切りが 4本あってですね…。」

修平「う~ん もう! せっかく一張羅に 着替えてきたのに。」

絹代「あなた 掃除の途中で 何をしとるんですか?! また いらんおしゃれして! はっ 美人が来ると もう すぐ これだけん!」

修平「誰か 来とったかいなあ?」

編集者1「先生 お願いしますよ。」

茂「あんた 背後霊じゃあるまいし 後ろに立たんでください。」

菅井「あ~ 点々で 目が回る…!」

相沢「品川君 これ 消しゴム。」

品川「はい。 ここの効果線も よろしく。」

布美枝「もう行きましょう。」

畑野「あ はい。」

絹代「あらっ 布美枝さん この人 どなたかね?」

畑野「ああ…。」

客間

畑野「なかなか個性的な ご家庭ですね。」

布美枝「締め切り前は 特に慌ただしくて。」

畑野「ああ。」

布美枝「あっ!」

畑野「まあ!」

布美枝「喜子ったら…。」

布美枝「主人の漫画が載っとる雑誌 毎日 送られてくるもんですから。」

畑野「教育上 よろしくないものは なるべく 子供さんの手の届かない所に。」

布美枝「はい。 すいません。」

畑野「でも あんなに お忙しくては たまの家族サービスも大変ですね。 お仕事の合間を縫って 連休は ご家族で 高尾山に登られたんでしょう?」

布美枝「高尾山…?」

畑野「藍子さん 上手に書いていましたよ。 『私の家族』というタイトルで みんなに 作文を書いてもらったんですが…。」

畑野「妹さんと展望台で望遠鏡を 取りあったところとか 売店で アイスクリームを食べた話とか よく書けてます。 学校でも これぐらい 元気があると いいんですがね。」

布美枝「あの…。」

畑野「はい。」

布美枝「その作文 見せてもらえますか?」

畑野「え?」

すずらん商店街

智美「お父さんに頼んで しばらく お化けの漫画 描くの やめてもらったら?」

藍子「え…。」

智美「学園漫画とか スポーツ物なら きっと あんまり からかわれないよ。」

藍子「そんな事 頼めないよ。 お父ちゃんに悪いもん。」

智美「お母さんから 言ってもらったら どうかなあ?」

藍子「無理だよ。 仕事のことには お母ちゃんだって 口出しできないから。」

智美「そうか…。」

藍子「心配かけるのも 嫌だし。」

智美「藍子ちゃんも 苦労するね。」

藍子「うん…。」

水木家

台所

布美枝「今日 畑野先生に お父ちゃんの 仕事部屋まで見られてしまった。 修羅場の大変なところ。」

藍子「え~っ 嫌だなあ…。 先生 何か言ってた?」

布美枝「『大変な お仕事ですね』って。」

藍子「ふ~ん。」

布美枝「ねえ 藍子。」

藍子「何?」

布美枝「あんた 作文に 高尾山に 行った話 書いたでしょう? 先生 褒めとったよ。 『よう書けとります』って。 けど… お母ちゃん びっくりしたなあ。 高尾山 行った事ないもん。 なして そんな話 書いたの?」

藍子「だって 買い物もしない デパート巡りの話なんて 書いても面白くないでしょ。 前に 智美ちゃんから聞いたんだ。 家族みんなで 高尾山に登った話。 そっちの方が 面白く書けそうだったから。」

布美枝「けど 作文は 本当の事 書くもんでしょ。 嘘 書いたらいけん。」

藍子「何で? お父ちゃんだって 本当は いない 妖怪や お化けの話 漫画に描くじゃない。」

布美枝「それは…。」

藍子「私 宿題あるから 行くね。」

布美枝「あ ちょっと…。」

藍子「何?」

布美枝「学校で 何かあったの?」

藍子「何かって?」

布美枝「楽しくやっとる?」

藍子「先生 何か言ってた?」

布美枝「ううん。 あんたが 学校の話あんまりせんから どうかなあと思って。」

藍子「学校であった事 いちいち 話しても しかたないよ。」

回想

畑野「学校にいるのが つまらなそうに 見えるんです。 居心地悪そうに見えるのが ちょっと 気になりまして。」

回想終了

布美枝「どげしたんだろう…。」

仕事部屋

布美枝「あの…。」

茂「私の家族が 食えるか 食えないかが問題なのです。」

布美枝「えっ!」

茂「ここは もう一捻り してみるか。 う~ん。」

布美枝「びっくりした。 漫画のせいりふか…。 とても 言えんな。 また 後にするか…。」

客間

(犬のほえる声)

布美枝「おい お母ちゃん。 ちょっこし来てくれ。」

玄関

布美枝「どうしました?」

茂「俺は 誰だ? 村井茂だな。」

布美枝「ええ…。」

茂「ここの家に住んどる 漫画家の 水木しげるに間違いないよな。」

布美枝「はい!」

茂「それ見ろ。 俺のどこが怪しいと言うんだ。」

警官「はっ 大変 失礼いたしました。 本官の勘違いでありました。」

茂「分かれば帰ってよし!」

警官「はっ。 では こちらに お名前を お願いします。」

茂「名前? 疑い 晴れたのに なぜ 名前 書かされるんだ!」

警察「サインを お願いします。 子供が ファンなもので。」

茂「ああ…。」

警官「タケシ君へと…。」

台所

茂「自転車で走っとったら 捕まって 職務質問された。」

布美枝「まあ。」

茂「俺は漫画家だ。 ネームを考えとるんだと 幾ら話しても信用せんのだ。」

布美枝「まあ ひどいですね。」

茂「あげくに 下着泥棒の疑いまで かけられた。」

布美枝「下着泥棒?!」

茂「俺は やっとらんぞ!」

布美枝「ちゃんと分かっちょりますよ。」

茂「あんまり腹が立つけん 『家まで ついてこい』と言ってやったんだ。」

布美枝「大変でしたねえ。」

茂「まとまりかけたネームも ぐちゃぐちゃになったし… やり直しだな。」

布美枝「こんな時に 何ですけど… ちょっこし相談したい事があって。」

茂「何だ?」

布美枝「藍子が おかしな作文 書いたんです。」

茂「作文か。 まあ 下手なものは しかたない。」

布美枝「そげじゃなくて。 『この間の連休に 家族で高尾山に登った』って 書いてあったんです。」

茂「高尾山なんか登ったか?」

布美枝「行ってませんよ。」

茂「そげだよなあ。」

布美枝「おかしいでしょう?」

茂「う~ん…。」

布美枝「藍子は 『デパートに行った事よりも 登山の方が 面白いから』って 言うんだけど… 本当に そうなんでしょうかねえ?」

茂「子供は 話を作るもんだけんなあ。 俺も小学校の時 港で起きた 漁船の爆発事故をもとに 『第三丸の爆発』という 大長編の 作文を書いた事が あったぞ…。 あれは かなり脚色が 入っとったなあ アハハ!」

布美枝「お父ちゃんは 漫画家ですけん それで ええですけど。 先生も 『教育方針について 話し合って下さい』って 言っておられましたし…。」

茂「食べて寝て 健康第一。 それで 十分だ。」

布美枝「けど 藍子も難しい年頃ですけん。」

茂「ああ 分かった分かった。 とにかく 今夜は時間がないけん 話は後だ。」

布美枝「けど…。」

茂「そげに心配せんでも そのうち ちゃんとなるだろう。」

布美枝「はい…。 あれ? えっ! はあ 今 何かおったようだけど…。 (ため息) また今度 ゆっくり話そう…。」

<締め切り前の 仕事で頭がいっぱいの茂には 何の相談しても 無駄なようでした>

<そして 5月の末>

玄関

布美枝「はあ そろそろ来る頃かなあ。」

(クラクション)

布美枝「あっ!」

貴司「よう 姉ちゃん!」

布美枝「貴司! あんた よう来たね!」

<安来で ミシンの販売店を営む 弟の貴司が やってきました>

貴司「何もかも久しぶり!」

布美枝「ねえ フフッ!」

モバイルバージョンを終了