ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第11話「ご縁の糸」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】11話のネタバレです。

あらすじ

大勢の客を前にしてのラーメンの販売の仕事に、引っ込み思案の布美枝(松下奈緒)は、緊張のあまり手もとがおぼつかず、大失敗。良縁に恵まれず仕事もつとまらない自分に落ち込む。そんな折、飯田家が洗濯機と冷蔵庫を購入。家事手伝いの必要性も低くなり、布美枝はいっそう悲しい気持ちになる。ある日、源兵衛(大杉漣)が新しい見合いの話をもってくる。相手は村井茂(向井理)という名の東京在住の片腕の貸本漫画家だった。

11話ネタバレ

試食販売会

回想

客1「手 震えとるよ。 箸は?」

布美枝「あ!」

販売員「あんた ほら 子供が ほら!」

布美枝「あ! それ 勝手に持ってったら いけんよ! あ! キャッ!」

一同「あ~!」

布美枝「すんません!」

回想終了

布美枝「(ため息)」

チヨ子「フミちゃん お土産に ラーメン 持って帰ってごしない。 それと… はい これ。 今日のアルバイト代。」

布美枝「ええの? もらって いろいろ 失敗したのに。」

チヨ子「初めてだけん しかたないよ。 はい。」

布美枝「大勢 人が いるもんだけん すっかり あがってしまって。」

チヨ子「ちゃんと 説明しとけばよかったね。 でも あそこまで 緊張せんでも ええがね。」

布美枝「ごめん。」

チヨ子「フミちゃん 家に ばっかり おるもんだけん 引っ込み思案に 拍車が かかっちょ~わ。 酒屋 手伝っちょ~し これくらい 平気だと 思ったけどな。」

布美枝「うちの商売と 見知らん人に 物を売るのとは 違うけん。」

チヨ子「そげな事 言っとると この先 ず~っと 家におって 店の手伝いする以外 何も できん事になるよ。 あ! そうそう。 これ もらったけん。 新発売のインスタントコーヒー。 味見してみようか?」

布美枝「私 今からでも お勤め出た方が ええのかな?」

チヨ子「急に どげしたの?」

布美枝「うちも もう 手が足りてきたし。 だんだん。」

布美枝「縁談は 相変わらず さっぱり 来んし。」

チヨ子「う~ん。」

布美枝「いつまでも このまま うちに おったら いけんよな。」

チヨ子「でも 28から雇ってくれるとこは なかなか ないけんね。」

布美枝「うん。 うわ! 苦い!」

チヨ子「ほんとだわ。」

布美枝「苦いなあ…。」

道中

布美枝「こんにちは。 (ため息)」

飯田家

玄関前

留蔵「フミちゃん お帰り。 とうとう 買いなさったね。」

布美枝「ただいま。」

克江「両方いっぺんに そろえるなんて 景気ええ事だわ!」

留蔵「池田内閣『所得倍増計画』だが。 市議会議員を 2期勤めなさあ 源兵衛さんの家なら これくらいは できるだ。」

克江「あんた うちも なんとかしてごしない。」

留蔵「おう! 任せとくだ!」

克江「てやんでえ。 へへへ!」

布美枝「ん? 何の話?」

台所

いずみ「うわ~ ひんやりするわ。」

布美枝「どげしたの?」

いずみ「来たんだよ。 ほ~ら!」

布美枝「あ 冷蔵庫。」

いずみ「フミ姉ちゃん 洗濯機も 一緒に届いたんだよ。」

布美枝「洗濯機も?」

いずみ「電気屋さんが 使い方 説明してったよ。 『今まで 2時間かかった洗濯が 30分で片づきます』 言ってた!」

源兵衛「邦子に 2人目が生まれたら 洗濯もんが増えるけんな。」

哲也「よかったな 邦子。」

邦子「はい あ~ うれしいわ!」

いずみ「テレビも買おうよ。 冷蔵庫と洗濯機とテレビ 3つそろって 三種の神器だが!」

源兵衛「いらん いらん。 ラジオと新聞が そろってれば それで 十分だ。」

いずみ「カラー放送 始まったんだよ。」

哲也「何もかも いっぺんには そろえられんが。」

いずみ「買おうよ! 佐知子ちゃんところも 今度 買うって 言っちょったけん。」

邦子「フミちゃんに 話してなかったんですかね?」

哲也「何を?」

邦子「冷蔵庫と洗濯機の事。」

哲也「どげだったかな。 おやじが 『冷蔵庫買うぞ』と言いだして すぐに頼んだけん。」

邦子「まあ~!」

哲也「いけんのか? 冷蔵庫や洗濯機があったら 布美枝だって 助かるだろ?」

邦子「そうですけど…。 今まで 家の中心になって 頑張ってきたのに 何も知らんうちに 台所の物 買われたら フミちゃん ええ気持ちは せんですわね。」

哲也「お前の考えすぎだわ。」

邦子「男の人には 分からんけんね。」

飯田酒店

貴司「明日の注文 ちょっこし 増やすか。」

布美枝「貴司。」

貴司「ああ…。」

布美枝「これ もらってきた。 おいしいいよ。 後で 食べよう。」

貴司「どげだった? ラーメン うまく いったか?」

布美枝「…失敗。 やりつけん事 やっても うまい事 いかんわ。」

貴司「そげか…。 特級酒は 少し減らしてもええな。」

飯田家

仏間

布美枝「おばば。 うちに 冷蔵庫と洗濯機が来たよ。 店も うちも もう私がおらんでも 困らんね。 いつまでも うちにおったら いけんな。 どげしたら ええのかなあ。 ええ ご縁が ありますように。」

居間

源兵衛「これで 一目半勝ちになるな。」

ミヤコ「布美枝が ひがまんと ええですけど。」

源兵衛「ん?」

ミヤコ「あの子に 何の相談もせんで 冷蔵庫やら 洗濯機やら 買って。」

源兵衛「うちの跡取りは 哲也だけん 家の事は 何でも 邦子と 相談して決める。 それが筋だわ。」

ミヤコ「はあ。」

源兵衛「いずれは 布美枝は 家を出て 嫁にいく娘だけん。」

ミヤコ「いつになりますかね。 早(はや)こと 嫁にやらんと いけませんね。」

源兵衛「分かっとるわ。 でも やる先がなては どうにもならん。」

ミヤコ「背が釣り合わんとか 時期が悪いとか 話が進まんうちに とうとう 出しそびれてしまって。 ええ子なのに なして ご縁に 恵まれんのですかねぇ。 (ため息)」

(小鳥の鳴き声)

玄関前

ユキエ「フミちゃん!」

布美枝「ユキ姉ちゃん! どげしたの?」

ユキエ「近くまで来たけん これ持ってきた。」

布美枝「わあ~ おいしそう! 上がって。」

居間

(戸が開く音)

布美枝「ただいま ユキ姉ちゃんが来たよ!」

ユキエ「お邪魔します。 あれ? どげしたの? 難しい顔して。 何? その写真?」

源兵衛「布美枝 ちょっと 来てみぃ。」

布美枝「はい。」

源兵衛「この人に 会ってみるか?」

布美枝「え?」

源兵衛「米子(よなご)の知り合いが送ってきた。 その気があるなら 話を進めると 言っとるが どげだ?」

ユキエ「ひょっとして お見合い?」

布美枝「えっ?」

源兵衛「会ってみるか?」

布美枝「感じのええ人だね。」

源兵衛「うん。」

ユキエ「幾つかね?」

源兵衛「38だ。」

ユキエ「10歳も上か。 老けちょ~ね 初婚?」

源兵衛「うん。」

ユキエ「どこの人かね? 安来? 米子?」

源兵衛「実家は 鳥取の境港(さかいみなと)だが 今は 東京に住んどられるそうだ。」

布美枝「東京?」

ユキエ「フミちゃんを 東京に出すだかね?」

源兵衛「お前は 横から ごちゃごちゃ やかましいわ ちょっと黙っとれ。」

ミヤコ「お父さん あの事。」

源兵衛「ああ 分かっちょ~。 今 話すわ。 この写真では 分からんがな この人 戦争中 南方 行ってとって けがをしたげな。」

布美枝「はあ…。」

源兵衛「それで 左腕がなくなっとる。」

布美枝「え…。」

ユキエ「そげなら 10も上の片腕の人の所に 嫁に出すだかね?!」

源兵衛「お前は 黙っとれって。」

ユキエ「だども!」

ミヤコ「ユキエ!」

布美枝「お仕事は 何をしとられるの?」

源兵衛「漫画家だそうだ。 東京で 貸本漫画いうのを 描いちょ~げな。」

布美枝「貸本… 漫画?」

源兵衛「うん。 本名は 村井 茂だが 漫画は 別の名前で描いとる。 水木しげる いうげな。」

布美枝「水木… しげる。 ええよ。 私 この人に 会ってみてもええ。」

ユキエ「フミちゃん?」

<再びやって来た 縁談の相手は 思いも寄らない人物でした>

2階

(ミシンの音)

布美枝「片腕か…。 服の左袖 どげんなってるんだろう?」

縁側

ミヤコ「お父さん さっきの話ですけど…。」

源兵衛「ん?」

ミヤコ「何だか 布美枝が かわいそうな気がして。 あの子も ええ年だし 高望みする訳ではないですけど もうちっと 他にええ方が おるように 思いますけんね。 わざわざ 東京にやらんでも せめて この近くで。」

源兵衛「ミヤコ。」

ミヤコ「はい。」

源兵衛「布美枝に 写真撮るように 言っちょくだ。」

ミヤコ「えっ?」

源兵衛「決めたぞ。 この話 進めてもらうけんな。」

ミヤコ「お父さん…。」

<突然の この縁談に 源兵衛は 進めの号令をかけたのです>

安来東高校

(校内放送)『本日は 安来東高校 文化祭に 起こし頂き…』。

布美枝「学校も変わったね。 私達の時は 女学校だったのに。」

チヨ子「戦争中は 男女共学なんて 考えられんだったけんね。」

布美枝「うん。」

チヨ子「で どげするの? お見合い。」

布美枝「会ってみる事にした。 写真の笑顔が 感じよかったけん。」

チヨ子「男前なんだ?」

布美枝「ううん そうでもない。」

チヨ子「よう考えた方がええよ。 やり直しのきく年じゃねだけん。」

布美枝「うん。」

チヨ子「40間近で 片腕で 仕事は 何だか よう分からん。 条件で見たら ちっともええとこ ないけどな。 ほんとに ええの?」

布美枝「こっちだって 30間近で のっぽで 仕事は 家の事しかできん。 ええとこないのは 一緒だわ。」

チヨ子「う~ん。」

布美枝「条件だけじゃ 分からんけん。 本人に 会ってみんと。」

チヨ子「フミちゃんにも 背が高い いうだけで 断られた つらい過去があるだけんね。」

布美枝「もう それを言わんでごしない。」

チヨ子「なして フミちゃんのお父さん この話に 乗り気なんだろう?『気に入らん 断ってしまえ』って 言いそうなのに。」

布美枝「なしてかな?」

チヨ子「でも 東京いうのは ええね。 夢があるわ。 私なんて この先 ずっと ここで暮らすんだもんな。」

布美枝「私ね 一歩 踏み出せるって 思ったけん。 このお見合いで。 ええ ご縁かどうかは 分からんけど 会ってみたら 何か変わるかもしれん。 今のまま うちにおっても どうにもならんのだし。」

チヨ子「いよいよ 外に出る時が来たか。」

布美枝「うん。 あ そろそろ講堂 行こうか。 合唱 始まるけん。」

チヨ子「うん。」

(校内放送)『大塚の飯田さん 飯田布美枝さん お宅から 連絡が入りました。 至急 ご自宅へお戻り下さい。 大塚の飯田さん 至急 お戻り下さい』。

チヨ子「呼ばれとるが。」

布美枝「何かあったんかな? ごめん 先に帰る!」

チヨ子「うん。」

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