ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第125話「戦争と楽園」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、茂(向井理)たちから戦争中のラバウルで起こったズンゲン支隊の「幻の総員玉砕」の話を聞く。藍子(菊池和澄)は、クラスメートの留美子との関係で悩んでいることを祖母の絹代(竹下景子)に打ち明け、力強い励ましの言葉をもらう。布美枝は、ようやく藍子が何に悩んでいたのかを知ることになって…。

125ネタバレ

水木家

客間

茂「全員 玉砕だ。」

布美枝「玉砕?!」

回想

昭和20年 ニューブリテン島・ズンゲン

支隊長「我々が とりうる作戦は もはや玉砕あるのみだ。」

中隊長「いや それよりは 山にこもって ゲリラ戦に転じましょう。 全滅を期して切り込むなど バカげた事です!」

支隊長「中隊長 貴官は 命を惜しむのか! ジャングルで飢えとマラリアの餌食となって 朽ち果てるよりは 切り込んで 全員 玉砕する方が 敵に与える打撃も大きい。」

中隊長「しかし!」

支隊長「我々は 死して ラバウル10万将兵の 亀鑑となる。 玉砕は 命令だ!」

回想終了

三井「翌未明を期して 全員 敵陣に切り込み 玉砕せよと 決定が下ってしまったんです。」

回想

兵隊達♬『私は廓(くるわ)に散る花よ』

回想終了

三井「自分達が 別れの酒を 酌み交わしている間に 師団司令部に向けて 電報が打たれました。 『支隊長以下 全員 敵陣に 最後の切り込みを敢行する。 ラバウルの 赫々たる戦勝を祈る』。」

茂「玉砕の知らせが 早く届きすぎたのが 間違いのもとでしたな。」

布美枝「間違い?」

三井「玉砕は師団司令部から 大本営に 報告されました。 士気を鼓舞する壮挙として…。 しかし…。」

茂「三井さん達は 切り込みには 加わっていなかったんだ。」

三井「玉砕を反対した 中隊長とともに 山に こもっていたんだよ。 四十数名が ゲリラ戦に転じていました。 突撃に加わって 生き延びた者も 合わせると 生存者は 100名以上いたんです。 しかし 自分達は 生きていては いけない兵隊でした。」

布美枝「え…。」

三井「総員玉砕と発表された以上 全員 死んでおらねば ならなかったんです。2人の将校が 敵前逃亡の責任を取る形で 自決させられました。」

(銃声)

三井「自分達は 別の守備隊の 指揮下に入りました。 しかし みんな分かっていました。 生きている事が 許された訳ではない。 次の戦闘の時に 真っ先に突撃して 死ぬ事を 求められていたんです。」

<生きている事が罪になる。 それは 茂から聞いた 『敗走記』の体験と よく似た出来事でした>

三井「大きな戦闘もないまま 終戦を迎えて 自分は 生きて戻りましたが…。」

茂「戦争で死んでった者達は かわいそうですな。 みんな 死にたくなかった。 生きたかったのに 命令のまま 文句も言わずに死んでった。」

三井「うん…。」

茂「自分は近頃 どうした訳か よく夢を見るんですよ。」

笹岡「死んだ仲間達のかね?」

茂「はい。」

三井「俺もだ。」

茂「映画で見るように はっきりと 夢に見るんです。 最後には 必ず死んでった仲間達の 顔が浮かんできて…。 みんなが言うんです。 『村井…』。 『俺達の事を描いてくれ』。」

回想

兵隊達♬『私は廓に散る花よ』

回想終了

純喫茶・再会

マスター「どうぞ ごゆっくり!」

亀田「マスター こちらが村井さんの?」

マスター「ええ。」

亀田「ああ これじゃ おじいちゃん 手も足も出ない。」

絹代「ばかばかしい! 漫画に 描いてもらえんぐらいで 何を怒っとるのかね!」

藍子「すごく 楽しみにしてたみたいで。」

回想

留美子「え? ダメなの?」

藍子「うん。」

留美子「私 ママにも 話しちゃったよ。」

藍子「ごめん…。」

留美子「だって 約束したじゃない! 頼んでくれるって。」

藍子「え? 聞いてみるとは 言ったけど 約束はしてないよ。」

留美子「信じられない!」

藍子「え?」

留美子「ダメなら最初から そう言えばいいでしょう。 期待させといて何よ!」

藍子「…ごめん。」

女子1「留美ちゃん かわいそう!」

女子2「ひどいよね!」

藍子「でも…。」

留美子「もういいよ。 村井さんの嘘つき。 嘘つき!」

回想終了

絹代「それで 誕生会にも 行けなくなって これ持って うろうろしとったかね。」

藍子「うん。」

絹代「早こと 食べなさい! 溶けてしまうよ。」

藍子「うん。」

絹代「初めっから きっぱり断ればええのに ええ顔しようとするけん そげな事にな~わね。」

藍子「うん。」

絹代「あんた 漫画に出してやるって 約束した訳だないんだね?」

藍子「うん。」

絹代「嘘ついた訳だないね?」

藍子「うん。」

絹代「ほんなら ほっときなさい!」

藍子「けど 他の子も 赤木さんの方に ついちゃって…。」

絹代「『千万人といえども我往かん』だわ!」

藍子「何? それ。」

絹代「人が 何と言おうと 自分が間違っとらんなら それでええいう事だわね。 言いたいもんには 言わせとけばええ。」

藍子「でも…。」

絹代「はあ~ ハハハ! これは 随分 前の話だけど 戦争の時には ばかばかしい事が ようけ あったもんだわ! 食べてくだけでも大変だのに 竹ヤリの訓練だ バケツリレーだって やたらと集められて。」

絹代「おばあちゃん そげな事 バカらしいと思っとったけんね 知らん顔して 参加せんだったわ。 そげしたら 隣組の組長さんが どなり込んできて。」

藍子「おばあちゃん どうしたの?」

絹代「『竹ヤリで戦争には 勝てせん!』って言って 追い返した! ハハハハ!」

藍子「わあ!」

絹代「悪口言う人もおったけど そんなもん 相手にしてもしかたない。 竹ヤリでは 戦争に勝てん事ぐらい 誰が考えても 分かる事だけんね。 あんたも もう ほっときなさい!」

藍子「うん。」

絹代「けど これを捨てようとしたのは いけん。 誕生会に言ったふりしたり これ捨てたりしたら 本当の嘘つきになるよ。」

藍子「はい。」

絹代「お母ちゃんに話して ちゃんと返しなさい。 ええね!」

藍子「うん!」

絹代「よ~し! フフフフ! あ! 何か言われたら こげ言い返したらええわ。 『名字帯刀御免の家柄ですけん!』。 分かった?」

藍子「うん!」

絹代「フフフフ!」

水木家

中庭

(風鈴の音)

布美枝「そう。 それで お父ちゃんに 頼んでみてって言ったのか。」

藍子「うん。」

布美枝「お母ちゃん 藍子の話 もっと よう聞いてやったら よかったね。」

藍子「私 分かってたから。」

布美枝「ん?」

藍子「お父ちゃんに そんな事 頼んじゃいけない。 ほんとは 分かってた。 頼まれた時に 断ればよかったんだけど。 ちゃんと言えなくて いい加減な 返事したのがいけなかったの。」

藍子「学校で からかわれるんだ。 『ゲゲゲの娘』って。 私 嫌なんだけど 言い返したいんだけど いつも なかなか言えないの。」

布美枝「藍子…。」

藍子「智美ちゃんにも もっと はっきり 言いなよって言われる。 もう 智美ちゃんにも 嫌われちゃったのかな。 ごめんなさい。 誕生会の事 言わなくて。 プレゼント捨てようとして。」

布美枝「お母ちゃんと一緒だなあ。」

藍子「え?」

布美枝「のっぽだけん 子供の頃 電信柱って よう からかわれとった。 けど 藍子と一緒で なかなか 言い返せんだった。 お母ちゃんも 藍子も ちょっこし内気だけんね。」

藍子「うん!」

布美枝「けど 今日 お父ちゃんが ええ事 言っとったよ。」

回想

布美枝「お父ちゃんは 昔から くよくよ しなかったんですね。」

茂「何がだ?」

布美枝「笹岡さんが言っておられました。 お父ちゃんは明るかった。 戦地で けがして 悲観する人も 大勢いたのに…。」

茂「ああ。 がっくりしとっても 生きていけんからなあ。 ないものを嘆いても始まらん。 工夫して 人に負けんだけの 仕事ができれば 両腕だろうが 片腕だろうが 関係ないけん。」

布美枝「ええ。」

茂「弱いとこは 誰にでもある。 くよくよ考えるより 前に進む 強い意志が大事なんだ。 俺はな お母ちゃん… 幸運だったと思っとるよ。」

布美枝「え?」

茂「腕一本 なくしただけで 生きて帰れたんだけんな。」

布美枝「はい… そげですね。」

回想終了

布美枝「お母ちゃんも藍子も お父ちゃんのまねして くよくよせずに 自分のできる事 頑張ればええんだわ。」

藍子「うん!」

布美枝「お父ちゃんの たくましいところは おばあちゃん似だね。

藍子「うん。」

修平「♬『コラソン デメロン デメロメロメロン』 布美枝さん 小腹がすいたんだが まんじゅうでもないか?」

藍子「食いしん坊なとこは おじいちゃんに似たんだね。」

修平「どげした? 何が おかしいかや?」

(3人の笑い声)

(風鈴の音)

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