ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第129話「おかあちゃんの家出」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)が、藍子(菊池和澄)と喜子(松本春姫)を連れて外出して帰ってくると、茂(向井理)が早とちりをして“布美枝が子どもたちを連れて、家出をしたのではないか”という騒ぎになっていた。浦木(杉浦太陽)が、しばらくぶりに村井家を訪ねてきて、貧乏だったころと比べて、がらりと様変わりした家の様子をあらためてしげしげと眺めながら、茂に“怪しげな商売”の話をもちかけるが…。

129ネタバレ

水木家

玄関

修平「茂の奴 慌てとったんだぞ。」

絹代「『子供やち連れて あんたが 家を出ていっただねかや』って。」

布美枝「え?」

台所

布美枝「お父ちゃん ちょっとは 心配しとってくれたんだ…。 あら そういえば… 手紙 どうしたんだっけ…?」

茂の仕事部屋

回想

藍子「これ ポケットに入ってた。」

布美枝✉『できることがあれば 私にも お手伝いさせて下さい。 家族なんですから 打ち明けて もらえないのは 淋しいです』。 『最近 働きすぎじゃないですか?』。 『どうか 無理はしないで下さい』。

<さて それから 数日が過ぎて…>

廊下

浦木「しばらく来ぬ間に またまた 家が変わったようですな。」

布美枝「そうなんです。 そこ 気をつけて下さい。」

浦木「おっ おおっ! 妙な所に 仕掛けのある家だな…。 また つまらんものを 集めとる。 ヘヘヘ…。 改築道楽も止まらんようだし さぞ 奥さんに 苦労かけとるんでしょうなあ。」

布美枝「ええ まあ…。」

客間

浦木「しかし 昔のボロ屋を知る者には…。 おっ… ほお~ カーペットか! まさに 隔世の感がありますなあ。 ん? ふ~ん 山小屋ねえ…。 ゲゲも 人並みに 家族で旅行するようになったか。」

布美枝「安い出物があったものですから…。」

浦木「安い出物? このボロ小屋 まさか 買ったんでは…?」

布美枝「そげですよ。」

浦木「いけませんなあ。 こんなボロ小屋 資産価値も何も ありゃしませんよ。 ひと言 言ってくれれば いい物件を ご紹介したものを。」

布美枝「そげな事まで やっとられるんですか?」

浦木「あらゆるものを仲介して 稼ぐんですよ。 もうかるタネは どこに転がっておるか 分からんですからな。」

茂「ここには お前を もうけさせるタネは ないぞ!」

浦木「おう ゲゲ! お前 よう働いとるなあ。 もうかっとるか?」

茂「お前には 関係ない。」

浦木「『鬼太郎』のカラー放送 えらい人気だな。 俺は 貸本時代から いつか きっと 爆発的に ヒットすると信じとったぞ。」

布美枝「よう言う…。」

茂「おい チョビひげ! お前 どうせ また 怪しげな商売に 手 出しとるんだろう。」

浦木「チョビひげ… 失敬だな! 今は これの広告戦略を任されとる。」

茂「おっ 最新式のミニ計算機か!」

浦木「おっと 商売もんだ 触るなよ。」

布美枝「売れてるんですよね。 テレビで コマーシャル見ました。 ほんなら あれも 浦木さんが…?」

浦木「まあ ちょっと違いますが。 あっ! おい!」

茂「何だ これ。 オモチャじゃないか! 」

浦木「おっ お前 壊すなよ。 大事な商売もんだ。 向こうは 1万2,600円 こっちは 980円。 同じ計算ができて たまるもんか。」

茂「そんな事だろうと思ったわ。」

浦木「子供のオモチャには ちょうど いいんだよ。」

茂「あ~ くだらん。 あ~ くだらん! もう 用がないなら 帰れ!」

浦木「待て。 これの宣伝戦略を 練っとる時にな いい考えが ひらめいたんだ。」

茂「ん?」

浦木「鬼太郎マッチに 鬼太郎たわし 鬼太郎湯たんぽに 鬼太郎腹巻き! 何でも 『鬼太郎』をつけて 売り出そう。」

茂「はあ~。 もう アニメ会社や 何かが入って いろんな物を売っとるわ。」

浦木「好き勝手に やらせとったら いけん。 俺に任せろ。 商品開発から広告宣伝まで 一手に引き受ける。 どうだ 俺と組んで 一稼ぎしてみんか?」

茂「誰が お前と…。」

浦木「聞いとるぞ~。 現代漫画社が倒産して かなりの 赤字を出しとるそうじゃないか。 心配すんな。 俺は 安く作れる所を なんぼでも知っとる。 制作コストを うんと低く抑えて 利ざやを稼いで…。」

茂「だらっ! お前 『少年戦記の会』の時も 粗悪品の模型で さんざん 人に迷惑かけといて 10年 経って また 同じ事する気か?」

浦木「いや 待て。 10年前はな 早すぎたんだ。 ようやく 時代が 俺に追いついた。 まさに 好機の到来だ!」

茂「俺は 今 まさに 粗悪品の『鬼太郎』商品で 迷惑しとるとこだ! ああ~っ!」

浦木「何だ?」

茂「さっさと帰れ! あれ? お前 いつの間に そんな術を…?」

浦木「術?」

布美枝「お父ちゃん?」

茂「あ? お母ちゃんまで…。」

浦木「おおっ! ゲゲ どうした?」

布美枝「お父ちゃん!」

浦木「ゲゲ!」

仕事部屋

光男「過労か…。」

布美枝「はい。」

菅井「先生 働きすぎだもんなあ。」

相沢「漫画以外にも 取材とか 記事の原稿とか 随分 受けてましたからねえ。」

布美枝「お医者さんには 『3~4日 休むように』と言われました。」

光男「調子 悪かったんだろうに。 兄貴 そういう事は 全然 言わんからなあ。」

布美枝「すいません 私が気づかんもんで…。」

光男「いや 『休め』と言ったところで どうせ 聞く耳 持たんから…。 後の事は こっちで なんとか しますわ。 しばらく ゆっくりするように 言って下さい。」

布美枝「よろしくお願いします。」

光男「申し訳ありません。 3日 延ばして頂ければ なんとか… はい。」

中野「なんとかって無理だよなあ。 先生 倒れちゃったのに。」

品川「もともと 綱渡りみたいな スケジュールだったから…。」

中野「病気休載って事に してもらわないと…。」

菅井「しゃべってる間に 手を動かす! 先生は 今まで一度も 仕事に 穴を開けた事がないんだ!」

品川「でも 今回は いくら何でも…。」

菅井「やる前から 諦めちゃ ダメだよ。 先生がいない間 僕らが 頑張らないで どうするんだ!」

相沢「そうですね。 背景の指定は もらってるし やるだけ やりましょう。」

菅井「みんなで 締め切りに立ち向かおう!」

夫婦の寝室

茂「今 何時だ?」

布美枝「そろそろ 5時ですよ。」

茂「5時? こげしちゃおられん。」

布美枝「まだ 寝てないと ダメですよ。」

茂「そうはいかん。 あさってには 締め切りが 2つもある。」

布美枝「光男さんが 少し延ばしてもらうように 頼んでくれたそうです。」

茂「しかし…。」

布美枝「菅井さん達も 頑張ってくれとりますけん。 『過労の特効薬は ゆっくり休む事だ』って お医者さんが言ってましたよ。」

茂「ほんなら 晩飯まで寝るか。」

布美枝「はい。 よっぽど疲れとったんだな…。」

台所

藍子「お父ちゃん どうしたの?」

喜子「病気なの?」

布美枝「心配いらんよ。 ちょっと疲れただけだけん。 少し寝たら すぐ よくなるって。」

喜子「喜子 お歌 聞かせてあげようか?」

布美枝「もうちょっと よくなったらね。 そうだ! リンゴ すろうかな。 やっぱり お父ちゃんは バナナの方が ええかな…?」

藍子「お母ちゃん なんか 張り切ってるね。」

喜子「うん。」

夫婦の寝室

茂「ルームサービスか。 気が利くな。」

布美枝「今日は 特別ですよ。」

茂「浦木のせいだなあ。」

布美枝「え?」

茂「イタチの毒気に当てられて 目が回ったんだ。」

布美枝「また そげな事 言って 働きすぎです! だけん 無理しないで下さいって 何度も頼んどるのに お父ちゃん ちっとも聞いてくれんのだもん。」

布美枝「私が どれだけ びっくりしたと 思っとるんですか。 お父ちゃんが 我慢強いのは よう知っとりますよ。 けど つらかったら 『つらい』って 言って下さい。 そうじゃなかったら 私…。」

茂「おい 人を重病みたいに言うな。」

布美枝「けど…。」

茂「ここんところ ちょっこし 無理しすぎたかもしれんな。 現代漫画社の赤字の分を 他の仕事で埋めようとして 詰め込みすぎたわ。」

茂「漫画の世界は どこまで行っても 厳しいぞ。 いつ 貧乏に逆戻りするか 分からん。 もう 俺一人で 好きなように 描いていた頃とは訳が違うけんな。 立ち止まったら 1個分隊が全滅だ。」

布美枝「だんだん…。」

茂「ん?」

布美枝「お父ちゃんは みんなのために 頑張ってお~なさったんですね。 私も 貧乏は 嫌ですよ。 けど… あの頃のお父ちゃんには いつも 心が楽しくなるような事 教えてもらっとったわ。」

布美枝「だけん 私 貧乏してても つらくはなかったです。 お父ちゃんと一緒に 笑っていられたから つらい事なんて 一つも なかった。 近頃のお父ちゃん… あんまり笑っとらん。 私… 貧乏しとる事よりも お父ちゃんが 笑ってくれん事の方が つらいです。」

茂「う~む… 作戦は 失敗か。」

布美枝「え?」

茂「俺はな 貧乏よけ大作戦を 決行しとったんだ。 先陣切って 戦っとるつもりが いつの間にか 部下達を 置き去りにしとったんだな。 1人で突撃しても 戦いには 勝てんな。」

布美枝「そげですよ! 後方部隊の事も 少しは信用して下さい! 私だけ 何も知らされんのは…。 淋しいです。」

茂「手紙 読んだぞ。 家の中まで 仕事のゴタゴタを 引きずったら いけんと思ってな。 だけん 仕事部屋に行く時も 一遍 外に出てから 入り直しとった。」

布美枝「お父ちゃん…。」

茂「そげな事は 口で言わんでも 分かると思っとったんだ。 おい 俺が 今 何を考えとるか 分かるか?」

布美枝「え?」

茂「いつになったら その飯を食わせてもらえるのか。」

布美枝「あ すみません! あら 冷めとる。 温め直してきます。」

茂「あ~ そのままで ええ。 もう これ以上は 待てん。」

茂「早ことせえ! ほい ほい。」

布美枝「はい。 あ 梅干し…。」

茂「ええ。 このままで ええ。 持っとれ 持っとれよ。」

布美枝「はい。」

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