ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第130話「おかあちゃんの家出」

あらすじ

ついに過労で倒れてしまった茂(向井理)だったが、ようやく布美枝(松下奈緒)との間のわだかまりは、なくなった。茂の体調もなんとか回復して、仕事に復帰した夜のこと。布美枝に安来の実家から電話がかかってくる。それは「弟の貴司(星野源)が、海に落ちて亡くなった」という、思いがけない知らせだった。布美枝は、姉の暁子(飯沼千恵子)と共に安来へと向かう。

130ネタバレ

水木家

台所

浦木「これ… 見舞いです。」

布美枝「ありがとうございます。」

浦木「うんうん うなって 寝込んどるかと思ったが 元気そうだなあ ゲゲ。」

茂「3日ばかり寝たら すっかり回復した。 やっぱり睡眠が一番だな。」

浦木「ふ~ん そうか。 だったら これは 要らんかったな。」

布美枝 茂「え?」

浦木「これは 別の見舞いに 使い回すとして。」

茂「ケチだなあ チョビひげ!」

浦木「実は 見舞いの品が もうひとつ あるんだわ。 ほらよ。 お前 ぶっ倒れる前 『粗悪品の鬼太郎人形で 迷惑しとる』とか言っとったろ。」

茂「ああ。」

浦木「弟君に 事情を聞いてみたら 問題の業者な まあ 俺も面識のある相手でな。」

茂「また お前 絡んどるのか!」

浦木「俺は 今回ばかりは 正義の味方よ~! ちょっと懲らしめて 二度と粗悪品は作らないと 念書を書かせてきた。 ほい!」

茂「本当か? お前の怪しげな情報網が 役に立つとはなあ。」

浦木「まあ 『蛇の道は蛇』さ ハハッ! ん? どうした?」

茂「お前でも いい行いを する事が あるんだなあ。」

布美枝「こげな事 初めてですね。」

茂「うん。」

浦木「もう いつも 言っとるだろう。 俺は 善意で行動する男よ。 それに せっかくの金もうけのチャンス 横取りされたら かなわんからな。」

2人「え?」

浦木「どうだ ゲゲ 俺と組め! なあ 俺のここには 金もうけのアイデアが詰まっとる。」

茂「やっぱり目的は それか…。」

浦木「もう俺達 親友だろう。 悪い事は言わん。 な!」

茂「あ~ もう ええわ!」

浦木「俺の知恵を借りろ ゲゲ!」

茂「要らんわ!」

布美枝「変わらんなあ 浦木さんは…。」

仕事部屋

<茂の体調も なんとか回復して 仕事に復帰した夜の事でした>

客間

藍子「もしもし はい います。 お母ちゃん 安来の哲也伯父ちゃんだよ。」

布美枝「お兄さんから? 珍しいなあ! はい ありがとう。 もしもし 電話 代わりました。 どげしたの? みんな 元気?」

藍子「よっちゃん テレビ 見ようよ。」

(テレビの音)

布美枝「嘘でしょう? そげな事 信じられん…。」

藍子「お母ちゃん?」

茂「おい 事務所のハサミ 知らんか? どげした?」

布美枝「貴司が… 死んでしまった…。」

茂「え?」

<それは あまりにも突然の弟の訃報でした>

夫婦の寝室

茂「大丈夫か? 仕事の遅れを 取り戻さんといけんから 俺は 一緒には行ってやれんが…。」

布美枝「赤羽の姉と 一緒に行きますけん。 海に落ちたそうです。 3日前に…。 なかなか見つからなくて 今日になって やっと…。」

茂「こっちは ええけん しばらく向こうに おってやれ。」

布美枝「はい…。」

布美枝「おばば… なして 貴司を 連れていってしまうの?」

<翌日の午後 布美枝と暁子は 大塚に着きました>

飯田酒店

玄関

克江「フミちゃん。」

布美枝「あ おばさん…。」

克江「とんだ事だったね!」

留蔵「皆さん 焼き場に 行ってちょられ~よ。 もう戻る頃だわ。」

布美枝「焼き場…?」

ミヤコ「暁子 布美枝…。」

源兵衛「戻ったか。」

輝子「あんたやち ひと足 遅かったわ。 」

源兵衛「貴司… 骨になってしまったわ!」

(ミヤコの泣き声)

輝子「姉さん しっかり!」

ユキエ「アキ姉ちゃん フミちゃん…。」

布美枝「どげなっとるの…?」

ユキエ「姉ちゃんにも フミちゃんにも 会わせたかったけど しかたなかったんだよ。」

<海に落ちてから 発見が遅れたために 貴司の遺体は 通夜を前に だびに付されていたのです>

飯田家

客間

布美枝「なして こげな事に…。」

哲也「のりを 取ろうとしとったそうだ。」

布美枝「のり?」

哲也「…ああ。」

ユキエ「ミシンの仕事 ここのところ ようやっと上向いてきて 休みの日に 好きな釣りに行く 余裕が出来たところだったんだわ。 ようけ釣って もう帰るところだったのに。」

哲也「そこで 帰っとったらなあ…。」

ユキエ「『岩のりを取ってくる』って 一人で岩場に戻ったとね。 『子供やちの好物だけん』って そげ言って。 大きな波の音がして… 友達が振り返った時には もう 貴司の姿は 見えなくなっとって…。」

哲也「なかなか発見されんでな。 こらもう 沖の方に 流されてしまったんだろうと 捜索打ち切りが 決まった時に…。 お父さんが 『もう一遍だけ 捜してごせ』と言ったんだ。 『貴司が帰ってこんはずない。 もう一遍 捜してごせ』と。」

ユキエ「その日… 岩の陰で見つかったんだよ。 不思議でしょう…? 捜しても捜しても 見つからんだったのに…。」

哲也「遺体が あがった事 お父さんに伝えたら 『そげか』と言ったきり 黙っちょった。」

ユキエ「涙も見せんで… ずっと こらえとるんだわ。」

仏間

源兵衛「おばば…。 貴司が そっちへ行ったぞ。 よろしく頼むけんな。」

寝室

布美枝「ユキ姉ちゃんも いずみも 家の方は ええの?」

ユキエ「うちは平気。 あんたのとこは 大丈夫かね? 子供 小さいのに。」

いずみ「おばあちゃんに 頼んであるけん。 たまには アキ姉ちゃんや フミ姉ちゃんと ゆっくり話したいもの。」

布美枝「そげだね。」

ユキエ「みんなで集まるの いずみの結婚式以来だね…。」

暁子「あの時は 驚いたわ。」

布美枝「ほんと。」

ユキエ「お見合いしたかと思ったら あっという間に 結婚 決めてしま~だもん。」

いずみ「即断即決。 一遍 決めたら 迷わん事にしとる。」

布美枝「いずみらしいわ。」

いずみ「東京では お世話になりました。」

布美枝「こちらこそ。」

いずみ「倉田さん すっかり売れっ子になって… よかったね。」

布美枝「うん。」

ユキエ「倉田さんって 誰?」

暁子「私も 知らんよ。」

いずみ「秘密!」

(一同の笑い声)

いずみ「ねえ 4人そろって 布団 並べるなんて 初めてじゃない?」

布美枝「ああ そげだねえ。 アキ姉ちゃんも ユキ姉ちゃんも あんたが 赤ん坊の頃に お嫁に行って 家には おらんだったけんね。」

ユキエ「いずみも おばばから 昔話 聞かせてもらった?」

いずみ「うん。 よう聞いたよ。 長い話 覚えとる?」

ユキエ「もちろん! 『空から 長い長い長~い フンドシが降りてきたげな』。」

一同『こっぽし』。

(笑い声)

暁子「おばばの作る。 おはぎ おいしかったねえ。」

ユキエ「いつだったか 最後の1つ 取りあって 哲也と貴司が 大げんかした事あったよね。」

布美枝「ああ あった あった。 貴司が泣きだしたら お父さんが 『男が おはぎ1つで 何 泣いちょ~だ』って がいに どなって。」

ユキエ「貴司 びっくりして ぴた~っと 泣きやんだは ええけど その晩 熱 出して。」

暁子「怖かったけんね お父さん。」

(一同の笑い声)

布美枝「子供の頃は いけずで カエル 捕まえてきては 私の事 追い回して。」

ユキエ「キャーキャー怖がるけん 面白がっとったんだわ。」

布美枝「うん!」

ユキエ「フミちゃんが 一番 仲よかったね。 2人で お父さん手伝って 酒屋やっとったし…。」

いずみ「釣りなんか 行かんだったら よかったのに…。」

布美枝「いずみ…。」

いずみ「突然 おらんようになるなんて 私 納得いかんよ こげな事!」

ユキエ「きっと 貴司本人が 一番 悔しい思いしとるよ。」

回想

貴司「はい!」

布美枝「はい!」

貴司「苦労して続けてきた 酒屋だけん ほうり出す訳にも いかんよなあ。」

回想終了

布美枝「貴司…。」

飯田酒店

布美枝「お父さん…。」

源兵衛「まだ起きとったのか。」

布美枝「何か… 眠れんで。 お父さん…。」

源兵衛「あいつは 親不孝もんだ…! 親より先に死んでしまうのは…。 親不孝だわい…! ウウッ ウウッ・・・貴司…! (号泣)」

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