ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第131話「おかあちゃんの家出」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)の弟・貴司(星野源)の葬儀も終わり、布美枝は源兵衛(大杉漣)、ミヤコ(古手川祐子)、邦子(桂亜沙美)たち家族との別れを惜しみながら実家をあとにする。調布に帰った布美枝を茂(向井理)は優しく迎え、修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)も肉親を亡くした布美枝の悲しみを思い、気遣う言葉をかける。布美枝は、貴司が手入れしてくれたミシンを見ながら、この世を去った弟のことを思う。

131ネタバレ

飯田家

台所

邦子「ここは ええけん フミちゃんも 帰り支度してごしなって。」

布美枝「うん。 これ片づけたら。 邦子さん 店の方は どげなの?」

邦子「お父さんと私で なんとか やっとる。」

布美枝「お母さんのリューマチは どげかね?」

邦子「我慢強い人だけん 愚痴も 言われんけど 指が痛むようで じ~っと かがみ込んでどられる事もあるよ。 私達が一緒に お~だけん フミちゃんは 心配せんで ええけんね。」

布美枝「邦子さん…。」

ミヤコ「まだ こげな所に。 帰りの支度は できとるの?」

布美枝「うん。」

ミヤコ「貴司も喜んどるわ 仲がよかった あんたが 来てくれて。」

布美枝「お母さん…。」

居間

ミヤコ「ん?」

布美枝「私 もう ちょんぼし こっちに おろうかな? なかなか 帰ってこられんのだけん こげな時くらい 家の事 手伝わんとね。 うちの人も 『ゆっくりしてきたらええ』って 言ってくれとるし。」

ミヤコ「何 言っとる! 藍子や喜子がおるのに! こっちの事は 心配いらん。 あんたは 自分の家の事を ちゃんと や~なさい。 ね!」

布美枝「はい!」

仏間

布美枝「おばば お父さんも お母さんも 一回り 小さくなったような 気がす~わ。」

ミヤコ「布美枝。 これ 後で送ろうと 思ったけど 軽いけん お土産に 持って帰~かね。」

布美枝「え?」

ミヤコ「藍子と喜子に。」

布美枝「お母さん!」

ミヤコ「東京では こげなもん 着らんかね?」

布美枝「ううん 喜ぶよ だんだん!」

ミヤコ「あんたと 村井さんの分は また そのうち縫って送るけん。」

布美枝「ええけん。 リューマチ 悪くなったら どげするの?」

ミヤコ「何かしてやりたいわね あんたにも。 大変な時に 手伝いにも 行ってやれんだったしね。」

布美枝「お母さん…。」

ミヤコ「貴司が言っとったよ。 『フミ姉ちゃん 頑張っとるぞ』って。」

布美枝「え?」

回想

ミヤコ「東京の家 そげん立派に なっちょ~かね?」

貴司「仕事部屋も 大きくなったし 漫画の手伝いする人が ようけおったわ。」

邦子「売れっ子になられて よかったですね。」

貴司「もう 押しも押されん 人気漫画家だわ。 フフフ! あ! これ 子供やちに。」

邦子「だんだん!」

ミヤコ「大丈夫かいね。」

貴司「ん?」

ミヤコ「家の中に 四六時中 よその人がおったら 気が休まらんだろうに。」

貴司「う~ん!」

ミヤコ「境港のお父さん達も 一緒に おられ~し 布美枝 苦労しちょ~だないだらか?」

貴司「まあな…。 ハハハハ! けど 姉ちゃんは 頑張っとるぞ! 村井さんの事 しっかり 支えとる。 何も心配はいらんよ。」

ミヤコ「ほんなら ええけど。」

貴司「うん。 俺も 頑張らんとなあ! 姉ちゃんやち見てたら まだまだ これからだいう気してきたわ。 負けておられんな! ハハハハ!」

回想終了

ミヤコ「あ母さん 思い出しとった。 貴司のちいちゃい時から ず~っと。 何を思い出しても 笑ってる顔しか 思い浮かばんのだわ。 あの子は 子供の時から いっつも にこにこしとって。 (泣き声) 泣いとったら 貴司が 悲しがるね。」

ミヤコ「お母さん 貴司の笑ってる顔が 好きだけん。 貴司に 悲しい顔さしたくないけん。 もう 泣かん事にした。 ああ! あんたも 元気出しなさいね!」

布美枝「はい!」

飯田酒店

暁子「私達 そろそろ。」

源兵衛「おう! 遠いとこ ご苦労だったな。 お母さんの事は 心配するな わしが おるけん。」

2人「はい!」

源兵衛「お前やちも 体に気をつけて しっかりやれよ!」

2人「はい!」

水木家

(犬のほえる声)

玄関

布美枝「ただいま!」

藍子 喜子「おかえり!」

藍子「疲れた? これ 持ってあげるよ。」

喜子「大変だったね。」

布美枝「ありがとう! あんた達の顔 見たら 元気が出てきたわ。」

客間

布美枝「ご飯は どうしとった?」

藍子「おばあちゃんが作ってくれた。」

喜子「今日は おじいちゃんが作った。」

布美枝「そう!」

茂「おう 戻ったか。」

布美枝「ただいま 戻りました。」

茂「大丈夫か?」

布美枝「はい。」

茂「急な事で 向こうも大変だったろ。」

布美枝「ええ。」

茂「別れは言えたのか?」

布美枝「間に合わんだった。」

茂「残念だったな。」

布美枝「はい。」

茂「今 編集の人が来とるけん…。」

布美枝「私は 大丈夫ですけん 仕事しとって下さい。」

茂「ゆっくり 休めよ。」

布美枝「はい。」

藍子「お父ちゃん 心配してたんだよ。」

布美枝「え?」

藍子「『お母ちゃん  大丈夫かなあ』って。 『一緒に行ってやれんだったな』って言ってた。 「それからね 『お母ちゃんがおらんと 家の中が暗いな』って言ってたよ。」

布美枝「そう。 お父ちゃん そんな事 言っとったんだ。」

喜子「言ってた。」

両親の部屋

布美枝「留守中は お世話をおかけしまして。」

修平「お父さんやち どげしとった? 気落ちしとられただないかや?」

布美枝「急な事でしたから。」

絹代「今 ミヤコさんに 手紙 書いちょったとこだわ。 余計な事かもしれんけど 何かせんではおられんけん。」

布美枝「お母さん…。」

絹代「戦時中 雄一も しげさんも 戦争にとられて 光男は動員で 広島に 行ったっきりで。 3人とも生き死にさえ 分からんだったでしょう。 息子やちがもどらんだったら…。 私も 生きておられんと思った。」

修一「子を送るほど つらい事はないな。 布美枝さん あんた 晩飯どげした? もう 食ったか?」

布美枝「いえ まだです。」

修平「これから作るのは 大儀だろう。 ほんなら 天ぷら揚げてやらか。」

布美枝「え?」

修平「あんたの分 タネは残してあるけん。」

絹代「今夜の ご飯は お父さんが 当番。 天ぷら作ったんだわ。」

修平「子供やちにも 好評だったぞ!」

布美枝「ほんなら 自分でやります。」

修平「おっと それから ごろうじろ! 秘伝の衣を使っとるけん まだ 作り方は教えられん。 ハハハ!」

絹代「あんたも疲れたでしょう。 今日は 任せときなさい。」

布美枝「はい。」

客間

布美枝「お母さん 指が痛いのに こげに 丁寧に縫って。 お母さんの言っとったとおりだわ。 笑顔しか思い出せん。 メソメソしとったら 貴司が悲しむわ。 うん!」

子供部屋

喜子「ねえねえ お姉ちゃん!」

藍子「何?」

喜子「死んでしまったって どういう事かな?」

藍子「う~ん…。 え~っと それはね…。 もう 会えないって事だよ。」

喜子「会えないのか…。」

布美枝「おばあちゃんから プレゼント 預かってきたよ!」

喜子「もしも~し! もしもし! 貴司叔父ちゃんですか? 鬼太郎のおうち ありがとう! みんな待ってるから 遊びにきてね! もしも~し! 叔父ちゃん?」

貴司✉『あれから もう半年近くが 過ぎようとしていますが その後 いかが お過ごしでしょうか? 喜子に頼まれた 鬼太郎の家を 作りました。 喜子が気に入ってくれたら うれしいです。 こちらは 仕事も やっと 軌道に乗り 先週は 満智子や 子供やちと一緒に 皆生温泉に一泊しました。 いつか 家族全員で そちらに 遊びに行きたいと 思います。』

<それから 数日が過ぎて…>

玄関前

布美枝「ああ もう。メソメソしとったら いけん!」

(小鳥の鳴き声)

布美枝「あ! こっちに出てくるんだ!」

<久しぶりに 心が明るくなる うれしい便りが届いたのです>

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