ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第135話「妖怪はどこへ消えた?」

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、茂(向井理)がこれまでになく気落ちしている様子が心配だった。あれほど夢中になっていた南方の仮面や装飾品に向ける目に光がなく、それらを「ガラクタ」と呼ぶ始末。かつて茂を魅了していた物が、今の茂にとっては価値のない物になってしまったようだった。一方、次女・喜子(荒井萌)は、修学旅行のしおりに妖怪の絵を描き入れようとして、茂に質問をしようとするが…。

135ネタバレ

水木家

楽園の間

茂「ガラクタじゃないか…。」

布美枝「お父ちゃん?」

茂「もう ええぞ。」

喜子「でも まだ…。」

茂「ええけん!」

台所

藍子「お父ちゃん なんか 変だったね。」

喜子「ガラクタだなんて 言ってた…。」

布美枝「うん…。」

喜子「あ… 絵の事 聞くの 忘れた。」

藍子「後にしたら? お父ちゃん 疲れてるみたいだから。」

布美枝「虫退治で 力 使い果たしたのかもしれんよ。」

喜子「でも やっぱり 変だよ。 あれ 全部 宝物のはずなのに…。」

布美枝「宝物…。」

光男「今月 1本も漫画の注文が来てないんだ。 こりゃあ ほんとに 非常事態かもしれんな。 今 入っとるのは… 対談と 短い文章の注文だけ。 これじゃ アシスタント置く意味ないよ。」

布美枝「そうですか…。」

仕事部屋

菅井「今日も 暇だね。」

相沢「ええ…。」

菅井「相沢君 あんまり きれいに 片づけすぎないでよ。」

相沢「どうしてですか?」

菅井「店じまいしてるみたいで さみしい気持ちになるからさ。」

台所

光男「実は 前から頼まれとる 仕事が あるにはあるんだが…。」

布美枝「書き下ろしですか?」

光男「いや。 漫画じゃないんだ。 自伝エッセー。 編集者は 『昔の貧乏話なんかが 結構 受けるんじゃないか』と 言っとるんだわ。」

布美枝「珍しいですかね? 貧乏話なんか。」

光男「今はね…。 この機会に 書いたら どうだって 勧めてみたんだが…。」

布美枝「ええ…。」

回想

茂「そげなもの 書いても 誰も読まんだろう。」

光男「でも せっかく 編集の人が 声かけてくれとるんだし…。」

茂「催促も してこんのだけん もう忘れとるんだ。 ほうっとけ。」

回想終了

光男「どうも 兄貴らしくないなあ。」

布美枝「楽園の間にも入らんし。 なんだか 元気ないですよね。」

光男「布美枝さん。」

布美枝「はい。」

光男「兄貴 スランプかもしれんな…。」

布美枝「スランプですか…?」

純喫茶・再会

菅井「先生 スランプだと思う。 先生のアシスタントになって 15年。 こんなに パッタリと 注文が止まったのは 初めてだよ。」

相沢「まあ 野球選手だって 打てなくなる事 あるじゃないですか。 そのうち 脱出しますよ。」

菅井「漫画家の場合は 注文がないと 打席に立てないから スランプに陥ると抜け出すの難しいよ。」

相沢「なるほど…。」

菅井「先生の事だから このまま終わるはずないけど ただ長引くと 僕らが失職の危機だからさ…。」

相沢「資料整理に アシスタント2人は 必要ないですもんね。」

菅井「あれ… 相沢君 もしかして 1人 残るんなら 自分だと思ってる?」

相沢「え?」

菅井「勘弁してよ! 僕 仕事なくしたら 大変なんだから。」

相沢「いや 僕もですよ!」

菅井「君は いいじゃない 独り者でしょ。」

相沢「菅井さんだって…。」

菅井「いや それがさあ…。 いつまでも 独りじゃ さみしいと思ってね。」

相沢「犬でも飼うんですか?」

菅井「違うよ。 結婚だよ!」

相沢「え?」

菅井「昔の同級生なんだけどさ 同窓会で再会してね…。 彼女 子供いるもんだからさ…。」

相沢「いきなり 子持ち。 そりゃあ 大変だ。」

亀田「なになに スガちゃん とうとう 結婚? あれ! おめでたい話なのに なんで 2人とも暗い顔してんの?」

水木家

客間

布美枝「お疲れさま。 コーヒー 入れましょうか?」

茂「ああ。 なあ。」

布美枝「はい。」

茂「のんびり 旅行にでも行くか?」

布美枝「え?」

茂「いや そうも しとられんか…。 この先 金が入ってくるかどうか 分からんのだけん。」

布美枝「お父ちゃん…?」

茂「二度と 貧乏神に捕まらんようにと 逃げ続けてきたが… とうとう 追いつかれてしまいそうだ。」

布美枝「そげに 気弱な事 言わんでよ。 『仕事には 波があるものだ』って 言っとったじゃないですか。」

茂「いや…。 もう 鬼太郎達の出る幕は ないのかもしれん。」

布美枝「え?」

茂「子供達は ロボットアニメに夢中だし 大人は 金もうけに忙しい。 古くさい妖怪なんかの相手は 誰も しとられんのだろう。 なあ…。 妖怪なんてもの… ほんとに おると思うか?」

布美枝「どげしたの? 妖怪とは 子供の頃からの つきあいじゃないですか。 『塗り壁』や 『天狗倒し』にも 会っとるでしょう? お父ちゃん…。」

茂「俺にも よう分からんのだ! おかしいなあ…。 近頃 ちっとも 感じないんだ。 妖怪達の気配。 俺が 妖怪だと思ってきたものは 何だったんだろうなあ…。」

<それは 今まで 布美枝が 一度も見た事のない 自信をなくした 茂の姿でした>

台所

布美枝「あげな 弱音 初めて聞くなあ…。」

藍子「お父ちゃんは?」

布美枝「もう 寝とるよ。」

藍子「よっちゃんが 『高校 行かなくても いい』って 言いだした。」

布美枝「え?! なして?」

藍子「『もともと 学校が好きな訳じゃないし これからは うちも 経済的に 大変になるだろうから』って。」

布美枝「喜子が そんな事を…。」

藍子「もしかして 学費が払えないくらい 厳しい事になりそうなの?」

布美枝「ううん。 そげな事には ならんと思うけど…。」

藍子「うちは お父ちゃんの腕一本が 頼りだもんね。 おじいちゃん達も アシスタントさん達もいるし…。 漫画で食べていくって ほんとに大変だね。」

布美枝「うん…。」

藍子「よっちゃん 『新聞配達のアルバイトでもするか』って 言うの。」

布美枝「朝 起きられないのに?」

藍子「だから 私が 朝刊担当で 自分は 夕刊 配るんだって。」

布美枝「気持ちは うれしいけど 心配せんでも大丈夫よ。 もしもの時は お母ちゃんが働きに出るけんね。」

藍子「お母ちゃんは 無理だよ。」

布美枝「そう? ほんなら もうちょっと頑張ったら これで なんとかなるかもしれんね。」

藍子「お金の事は ともかく… お父ちゃん ほんとに大丈夫? 喜子 かなり ショック受けてたよ。 『妖怪はいない』って 言われたって。」

回想

藍子「どうしたの?」

喜子「どうしよう…。 お父ちゃんが 変になっちゃった。」

喜子「お父ちゃん!」

茂「ん? 何だ?」

喜子「教えてほしいんだけど 京都には どんな妖怪がいるの?」

茂「え?」

喜子「いっぱい いるよね。 古い都だもん。」

茂「おらんだろう。」

喜子「え?」

茂「何も おらんよ…。」

喜子「机に向かってるのに 何も描いてないの。 あんなお父ちゃん 初めて見た。」

藍子「今は ちょっと 注文が途切れてるだけだよ。」

喜子「でも 変だよ。 『妖怪はいない』 なんて 言うんだよ。 お父ちゃんが そんな事 言ったら 今まで描いてきた漫画は どうなるの?」

藍子「よっちゃん…。」

喜子「鬼太郎達 がっかりしちゃうよ。」

回想終了

布美枝「お母ちゃんにも 分からん…。 ず~っと そばにおるけど 漫画を描く つらさを 分かってあげる事も 代わってあげる事も できんけんね。 そばにいて 見ている事しか できんだもん。」

藍子「うん…。」

布美枝「けど… お母ちゃん お父ちゃんの事 信じとるよ。 今までだって いっぱい 苦しい事はあったけど 必ず 自分の力で 道を見つけてきたもの。」

藍子「うん…。」

布美枝「少し 時間は かかるかもしれんけど お父ちゃんの事だけん きっと なんとかするよ! 大丈夫! お父ちゃんの生き抜く力は 人の何倍も強いんだけん。」

藍子「そうだね。」

茂の作業部屋

回想

源兵衛「40年 50年と 連れ添ううちには ええ時も 悪い時もある。 悪い時にこそ 人間の値打ちが 出~だけんな。」

茂「何も おらんよ…。 俺が 妖怪だと思ってきたものは 何だったんだろうなあ…。」

回想終了

布美枝「お父ちゃん…。 頑張ってね。」

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