ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第137話「妖怪はどこへ消えた?」

あらすじ

漫画家になる夢をあきらめて郷里の山梨に帰った河合はるこ(南明奈)が久しぶりに村井家を訪ねてきた。はるこは小学校の教師を目指して努力を重ね、この春ようやく本採用が決まったという。はるこの学校では、子ども同士のもめごとがあったり、受験のプレッシャーに苦しむ児童がいたり、いくつもの問題が存在していた。はるこは、茂(向井理)に「山梨に来て、伸び伸びした子ども時代の話を学校でしてもらえないか」と言う。

137ネタバレ

水木家

玄関

布美枝「さあ どうぞ! 仕事部屋 こっちです。 迷路みたいで おかしいでしょう?」

仕事部屋

布美枝「中に どうぞ!」

はるこ「ここが 仕事部屋ですか?」

布美枝「はい。」

はるこ「お邪魔します。 うわ! 昔と 全然 違いますね!」

布美枝「アシスタントの菅井さんと相沢さんです。」

はるこ「こんにちは!」

菅井 相沢「どうも。」

はるこ「あっ! この絵の具の瓶 昔と一緒ですね! 懐かしいなあ…。」

相沢「あの人 誰ですか?」

菅井「さあ 僕も知らない。」

はるこ「ふう~ 紙とインク。 漫画のにおいだ。」

(ドアの開く音)

はるこ「水木先生 ごぶさたしてます。」

茂「ああ 久しぶりだね。」

<昔 少女漫画家を目指していた はるこが 久しぶりに 村井家を訪ねてきました>

布美枝「すいません いただきます。」

休憩室

茂「ほう! こっちで 先生の研修を。」

はるこ「はい 漫画家をやめて 山梨に帰ってから 一念発起。 小学校の教員資格を 取ったのですが ずっと臨時採用のままで この春 やっと 本採用が決まりました。」

布美枝「おめでとうございます。 頑張っていらしたんですね。」

はるこ『何度も くじけそうになりましたが 漫画家魂で なんとか。』

布美枝「漫画家魂か…。」

はるこ「昔 先生に言われましたよね。 『3年 描き続けた漫画家魂が いつかは 何かに つながるかもしれない』って。 教師を目指しているうちに 気が付いたんです。 学校の先生と 漫画家 よ~く似てます。」

布美枝「似てますか? 先生と漫画家。」

はるこ「はい。 世界に どんな面白い事があるのか 子供達に 漫画で伝えるのが 漫画家。 授業で伝えるのが 学校の先生。」

布美枝「なるほど そうですね。」

茂「ふ~ん。」

修平「茂 ハサミ貸してくれんか?」

茂「ああ。」

修平「母さんが また どっかに 片づけてしまって…。 おや?」

はるこ「お父さんですね。」

修平「あんた どっかで見たような…。」

回想

はるこ「先生!」

回想終了

はるこ「その節は とんだところを お見せしまして。」

修平「あ~あ~! ハハハ! いや~ そうだったね! ハハハ!」

仕事部屋

相沢「お父さん 今日は元気ですね。」

光男「イトツは 美人が来ると 5歳 若返るんだ。」

菅井「ほんと 分かりやすい人だなあ。」

休憩室

修平「あの時の泣き顔の美しさ こりゃもう てっきり 茂と何かあったのかと。」

布美枝「まあ!」

修平「やっ! こりゃ 嫁の前で いかん事 言ってしまった。 ハハハ! しかし あなたのような先生がおったら 子供達は 学校 行くのが 楽しみでしょうな。」

はるこ「そうだといいんですけど。 子供同士 いろいろ もめ事があるみたいで。 生徒が1人 胃かいように なってしまいました。」

布美枝「小学生が胃かいように…。」

はるこ「どうしたら もっと のびのび させてあげられるんだろうって いつも考えてるんですけど。」

茂「そりゃ あんた 山でも川でも 連れてって 好きなように 遊ばせりゃ ええんですよ。 学校に閉じ込めて 点数レースさせるより その方が ずっと ためになる。」

はるこ「私も そう思います。 それで 実は 今日 お願いに上がったんです。」

茂「何ですか?」

はるこ「一度 学校に 来て頂けませんか?」

茂「え?」

はるこ「子供達に 先生の話を 聞かせてやりたいんです。 先生の子供時代の頃とか 話してやってもらえませんか? 『河童の三平』のように 愉快で 怖くて 不思議な事 いっぱいある 妖怪の世界の話も。 そういう世界を忘れると 子供達の息が 詰まってしまう気がするんです。」

修平「う~ん なるほど。 茂 お前 行ってやれ。」

茂「むちゃ言うな。 俺は 人に話すような事は どうも…。」

はるこ「なら 遠足なら どうですか? 学校のちょっと行った所に 川があります。 そこで 妖怪の話でもしながら 子供達と のんびり 過ごして頂いて。」

茂「う~ん。」

修平「美人の頼みだぞ。 え~ 引き受けろ!」

はるこ「先生。」

茂「う~ん。 う~ん!」

玄関前

(小鳥の鳴き声)

はるこ「先生 来て下さるでしょうか?」

布美枝「迷っとるみたいですね。」

はるこ「やっぱり ちょっと ずうずうしい お願いでしたかね。 昔 ここで 写真 撮りましたよね。 先生と 布美枝さんと 藍子ちゃんと一緒に。」

布美枝「ええ。」

はるこ「私 もう一つ 子供達に 伝えてほしい事があるんです。」

布美枝「え?」

はるこ「好きな事を一生懸命やり続ける 先生の漫画家魂。 きっと 子供達の勇気になると思うから。 私が そうでした。」

布美枝「はい。 言っておきます。」

はるこ「お願いします。」

茂の仕事部屋

布美枝「行かないんですか? はるこさんの学校。」

茂「そげだなあ。」

布美枝「遠足なんですけん 気楽に行ってきたら ええじゃないですか。」

茂「今の子供に こげな話をしても 伝わらんだろう。 昔は どこにでも 『河童』が 住んでいそうな川があったんだ。 だけん 『河童』の話が 怖くもあり 面白くもあった。 今はもう そげな川もないけん。」

布美枝「けど まだ 『河童』は 川の底に おるもかもしれませんよ。 誰かが呼びかけてくれるの 待っとるのかもしれん。 私 『河童』が住めないような 世界だったら 人間だって 住みづらいような 気がするんです。」

茂「え?」

布美枝「『川の底には 河童の国がある。 目には見えんけど どこかに 十万億土がある。 そげん思っとった方が ずっと 気持ちが楽しくなる』って 私 お父ちゃんに 教えてもらったんですけん。」

茂「うん。」

布美枝「はるこさんが言っとられました。 もう一つ 子供達に 伝えてほしいものがあるそうです。」

茂「うん 何だ?」

布美枝「お父ちゃんの漫画家魂。」

茂「漫画家魂か…。 忘れていたのは それかもしれんな。」

布美枝「え…。」

茂「漫画が受けるか 受けらんか 俺も点数レースに追われとったわ。 拍手の多い方に 顔を向けとるうちに 妖怪を見失ったのかもしれん。 この前 喜子も 同じ事 言っとったんだ。」

布美枝「え?」

茂「『妖怪の住めない世界は 人間も住みづらい』。」

布美枝「そげですか…。」

茂「喜子も苦労しとるようだ。 子供の住みづらい世の中では いけんな。」

布美枝「はい。」

子供部屋

藍子「よっちゃん 起きないと 集合時間に遅れるよ!」

喜子「あ~ もう 行きたくないな修学旅行。 休んじゃ ダメかな?」

藍子「そんな事 言ったら お母ちゃん達 心配するよ。」

喜子「うん。」

藍子「ねえ 頑張って行っておいでよ。」

喜子「うん…。」

布美枝「喜子 起きた? お父ちゃんが そこまで 一緒に行くかって 言っとるけど。」

藍子「え? 何で こんな早く起きてるの?」

布美枝「はるこさんの学校に行くんだって。 子供達と一緒に 川を探検するらしいよ。」

喜子「そうなんた。」

茂「お~い 俺は 先 行くぞ!」

布美枝「は~い! お父ちゃん 張り切っとるな。 ほら 喜子 あんたも ちょっとだけ 頑張ってみたら?」

喜子「あ~!」

布美枝「ほら さっさと起きる!」

喜子「お母ちゃん あ~!」

布美枝「ね!」

藍子「お父ちゃんも 頑張ってるってさ。」

喜子「うん。」

中庭

布美枝「お父ちゃんも 喜子も 何か見つかるとええね。」

一同「お~う!」

子供1「先生 うまいなあ!」

茂「ああ 子供の頃 田舎の川で よう 仲間と競争したもんだ。」

子供1「へえ~。」

茂「石を投げる時の 角度がコツだぞ。 見とれよ。 おっ!」

一同「(歓声)」

茂「やってみろ。」

子供1「ほれ!」

茂「田舎の川には 『河童』も住んどってな。」

子供2「『河童』? 嘘でしょう?」

子供3「そんなの迷信だよ。」

茂「いや 分からんぞ。 同級生には 『河童』に取りつかれたもんも おったからな。」

一同「本当?」

茂「ああ 本当だ。」

子供1「俺 ばあちゃんから 聞いた事あるよ。 いたずらした『河童』を 許してやったら すごくよく効くお薬 もらった話。」

茂「う~ん そら感心な『河童』だな。」

子供4「『河童』じゃないけど 角が生えた蛇の話なら おじいちゃんから聞いた事ある。」

茂「そうか? 怖かったか。」

(小鳥の鳴き声)

(川の音)

(鳥の鳴き声)

茂「ん? あれは 何だ?」

小豆洗い♬『小豆とごうか 人とって食おうか ショキショキ 小豆とごうか』

茂「ああ。」

小豆洗い「♬『人とって食おうか ショキショキ 小豆とごうか 人とって食おうか』 誰だ? お前。」

水木家

台所

茂「お~い! 戻ったぞ!」

布美枝「あれ? お父ちゃん? お帰りなさい。 今日は 泊まってくるのかと。」

茂「いや~! おったぞ。」

布美枝「え?」

茂「やっぱり おるんだなあ!」

布美枝「何がですか?」

茂「『小豆洗い』だ。」

布美枝「え?」

茂「山の谷川で 『小豆洗い』に会ったぞ。」

布美枝「え?!」

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