ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第13話「たった五日で花嫁に」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】13話のネタバレです。

あらすじ

昭和35年の秋。布美枝(松下奈緒)と、東京に住む貸本漫画家の村井茂(向井理)との見合い話が持ち上がった。茂にはまだヒット作がなく、貧しい暮らしを強いられていた。漫画で成功するべく仕事に全力投球したい茂は結婚に関心をもっていなかったが、郷里の境港より上京してきた父・修平(風間杜夫)と母・絹代(竹下景子)から布美枝との見合いを強引にねじ込まれてしまう。

13話ネタバレ

村井家

昭和三十五年 秋

絹代「さあ!」

近所の人「ああ 村井さん。 お出かけかね?」

修平「東京の息子のとこへ 行ってきますわ。」

近所の人「しげさん 今 どげしちょ~なさ~の?」

絹代「東京で 漫画描いちょります。」

近所の人「ほう 漫画をねえ!」

修平「本を 何十冊も 出しとりましてな。 あの世界では もう大家ですわ。 ハハハハ!」

近所の人「はあ~ えらいもんですなあ!」

修平「うちの一族は 芸術を解する者を 多く出しとりまして 茂なんざあ まだまだ!」

絹代「ハハハハ! 留守中 よろしくお願いします!」

修平「あ どうも。」

近所の人「おお~!」

村井(水木)家

(ペンを走らせる音)

(お腹の鳴る音)

茂「腹 減ったなあ…。」

道中

絹代「ええ加減な事ばっかし言って! 茂のどこが大家ですか?! 何年も漫画描いとるのに 売れっ子になったいう話は さっぱり聞かんですよ!」

修平「人には あれぐらい 言った方がええ。 いつか本当の 大家に なるかもしれんぞ。」

絹代「だらず息子が 東京で 成功するもんだろうか。」

修平「まあ なんとかなるやろ。」

絹代「早こと嫁を持たせて 気合い入れな いかなんわ。 ふんっ!」

(汽笛)

水木家

(小銭の音)

茂「500 4… 58円か。 はあ… 原稿料が入るまで これで なんとかせんと。 ああ… あ~あ。 おっ 食料発見! え~っ! 1枚だけかぁ…。」

茂「これで少し かさが増えるぞ。」

<この人が 村井 茂です。 ペンネームは 水木しげる。 貸本漫画家としてデビューして 3年近くが過ぎていました>

すずらん商店街

東京都 調布市

(商店街のにぎわい)

八百屋「奥さん 芋 安いよ。」

絹代「高いっ!」

八百屋「えっ!」

絹代「境港なら10円で買えますが。 ふん!」

水木家

茂「どどどどん!」

(爆撃音)

茂「どどどどん! ドカ~ン! どどどどどん!」

絹代「しげさん!」

修平「茂!」

茂「父母の呼ぶ声がする…。 だが もはや 艦隊は最後…。」

絹代「しげさん! しっかりするだが!」

茂「しげさん… え? あれ? いつの間に…。」

修平「何べんも 玄関を叩いたがな。」

絹代「頭が どうか なったんだろうか?」

茂「集中しとって気づかんかったわ。」

修平「はあ…。」

絹代「へ…。」

茂「2人そろって 何かあったのか?」

2人「うん ああ。」

絹代「お前の好物だが!」

茂「ああっ 境港の芋か!」

絹代「うん!」

修平「ああ はっはっはっ。」

茂「う~ん! わざわざ 持ってきてくれんでも 送ってくれたら よかったのに。」

修平「何を言っちょる。 芋を届けに わざわざ 上京したりせん。 うん…。」

絹代「うん! これを ご覧。 いい子を 見つけてきたけん 今度こそ 嫁にしぇ!」

茂「え~っ!」

茂「あら~! あいにく 茶の葉が切れちょ~わ。 けど 俺 見合いどころで ねえわ。 仕事に追われちょ~けん あれ 明日までに描き上げて 届けにゃいかん。 それに 嫁をもらうのは まだ早いわ。」

絹代「茂さん! あんた 自分を幾つと思っとるの。 じき40でねか! 今 嫁取らんで いつ取るの!」

茂「だけん もうちっと 成功してから。」

絹代「去年も 一昨年も そう 言っちょったじゃねか! 芋ばっかり 食べてないで まじめに考えるだが!」

修平「まあ そう ガミガミ 言わんでえ。」

茂「嫁をもらったら 養っていかにゃ いけんだろうが。」

修平「何だ そげな事を! 昔から言うでねか。『一人口は食えないが 二人口は食える』。 1人ではできんやりくりも 結婚すれば なんとかなるという事だ。」

茂「どげな計算したら そういう理屈になるんかなあ…。」

絹代「計算は ええの!」

修平「ともかく 見合いはしぇ! 先方には『年明けには会わせる』と 言ってあるけんな。」

茂「ええっ!」

絹代「器量は そこそこだけど 昔風な おとなしげな娘だろうが。」

茂「写真だけでは 分からんなあ。」

絹代「年は ちっと くっとるけど その方が 少しぐらい苦労があっても 辛抱するけん。」

茂「あ! あ~ こげしてはおられん。 どげしても 漫画 仕上げにゃ ならんけん すまんけど この話は また。」

絹代「いや! 今回だけは 『うん』と言うまで 動かん!」

茂「ええ~っ!」

絹代「『見合いする』と言うまで 1週間でも 2週間でも 私は ここに おるけんね。」

茂「そげな事されたら 仕事ができん!」

絹代「2階に部屋が あるだけん。 2階に泊まるわ。」

茂「いや 部屋は あっても 布団が ないけん。」

修平「お前 この寒いのに 布団が ね~では 風邪ひくぞ。」

絹代「かまわんが。 茂が承諾するまで たとえ 風邪ひいても 寝込もうと この家は 出ん覚悟だけん!」

修平「茂! お前 なんとかしぇ!」

茂「う~ん…。 分かった。 する。 見合いは するけん 今日のところは 引き揚げてくれんか。」

絹代「決まった!」

茂「追い返すようで すまんな。」

修平「ああ 今夜は 雄一の所に泊まるわ。」

茂「兄貴のとこか。 ほんなら 近くまで送るわ。」

修平「道は分かるけん。 お前は 仕事しぇ。」

茂「そげか。」

絹代「しげさん。 見合いの時には 腕を つけてくるだよ。」

茂「相手には まだ 言っとらんのか?」

修平「伝えてはあるが 第一印象は大切だけん。 かの シェークスピアも言っとる。 『誠の恋をするものは 皆 一目惚れである』とな。」

絹代「いきなり 袖が プ~ラプラしとっては 向こうの気持ちが 引くかもしれんけんね。」

茂「分かった。」

絹代「仕事 気張らっしゃい!」

茂「うん。」

道中

絹代「雄一の家 この商店街を 抜けた先でしたねえ。」

修平「せっかく 東京に来たんだけん 歌舞伎座でも のぞいてみんか?」

絹代「はあ?」

修平「新聞で見たが 中村屋の『紅葉狩』 大層ええらしいぞ!」

絹代「何が 歌舞伎座ですか! 息子が あげな有様なのに。 玄関は下駄一足しか ありませんでしたよ。 靴も 買えんのですわ。」

修平「だども 好きな絵を描いて 暮らしちょ~だけん 少し 貧乏しちょっても ええんじゃないか。」

絹代「あのまま一人にしとったら この先 どげなる事だか!」

修平「嫁を取ったら なんとかなるやろ。」

絹代「だらず親だ…。」

修平「お~い 歌舞伎座は どげする? 立ち見なら 金もかからんぞ!」

水木家

(ペンを走らせる音)

(鐘の音)

修平「ああ あと4ページか。」

(鐘の音と汽車の汽笛)

回想

ホーム

昭和二一年 春

(駅のざわめき)

絹代「しげさん おらんですねえ。」

修平「次の汽車かもしれんなあ。 あっ!」

絹代「来た! 茂!」

茂「ただいま 戻りました。」

修平「ご苦労だったなあ。」

絹代「よう戻った。 よう戻った!」

村井家

絹代「雄一! 光男! 茂 帰ってきたよ!」

雄一「ああ。 元気そうでねか。」

光男「兄ちゃん お帰り。」

茂「兄貴も光男も 元気でおったか? いきなりで 驚かすと悪いけん これの事は 葉書に 絵 描いて 知らせちょったんだが。」

雄一「ああ 見た。」

絹代「さあ さあ!」

茂「おう 境港の芋か!」

絹代「お前の好物だが。」

茂「う~ん! うめえ!」

(一同の笑い声)

(笑い声)

茂「まあ もともと利き腕は 右だけん うん 風呂たきでも 畑仕事でも 今までと同じようにできるわ。」

雄一「ああ お前は横着もんで 子供の頃から 両手使うとこも 片手で やっとったんだけん 大丈夫だ!」

茂「そげだ。 慣れとるけん。」

(笑い声)

光男「こっちで 仕事 探すのか?」

茂「う~ん まだ 骨が出とるけん 手術し直してからな。 仕事 言っても この辺りには 何もねえだろうが?」

修平「灯台守なんか どげだ?」

茂「灯台?」

修平「暇な時は 絵も描けるぞ。」

茂「う~ん 灯台守は 朝 早に起きて 船を見張らにゃいけんよなあ。」

光男「兄ちゃんは 寝坊だけん 無理だな!」

(一同の笑い声)

絹代「何を言って! ハハハ!」

雄一「ハハハ! 無理や!」

(一同の笑い声)

絹代「鰯の煮つけ もっと食べるか?」

茂「ああ。 うん。」

雄一「この葉書 届いた時な 母さん 左腕を三角巾で吊って 暮らしとったんだぞ。」

修平「7日ばかりも そげに しとったな。 『片腕が どげに不自由か 試してみい』言ってな。」

回想終了

水木家

茂「あ~ あったあった。 はあ…。 見合い するだけしてみるかあ。 しかし 物好きな女も いるもんだ。 ほんとに俺で ええのかねえ? ん? ちょっこし 顔が長いかなあ…。」

飯田酒店

哲也「布美枝 新しいのを持ってきたぞ。」

布美枝「うわ~! こげに たくさん?」

哲也「学校の生徒らに『家にある漫画 貸してくれ』言うたら がいに集まってな。」

布美枝「だんだん。 きれいだねえ。」

哲也「『のらくろ』や『冒険ダン吉』では なんぼなんでも古いけん 見合いの前に 少しは最近の漫画も読んじょかな。」

布美枝「うん。」

哲也「でもなあ。 どれにも 『水木しげる』いう名前は 載っちょらん。」

布美枝「漫画って ええね。」

哲也「ん?」

布美枝「楽しくて あったかい気持ちになる。 あっ かわいらしい! 『水木しげる』いう人も こういう 漫画 描いちょるのかなあ。」

<漫画とは 縁のなかった布美枝が… 華やかな雑誌とは ほど遠い 水木しげるの漫画に出会うのは まだ少し先の事です>

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