ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第140話「人生は活動写真のように」

あらすじ

「絹代(竹下景子)が、交番に保護されている」という知らせが村井家に入り、布美枝(松下奈緒)は慌てて引き取りに行く。街なかでマナーがなっていない若者の集団に対し、絹代がつえを振り回して注意し、相手に軽いケガを負わせてしまったというのだ。その騒ぎをきっかけに、修平(風間杜夫)と絹代は、昔のことを蒸し返して口げんかを始めてしまう。それから数日が過ぎたある日、修平に1通の手紙が届く。

140ネタバレ

水木家

玄関

布美枝「ただいま~!」

茂「お~ イカル 無事だったか?」

光男「警察に保護されたって どげしたんだ?」

修平「とうとう わが家から 縄付きが出たかと思ったぞ。」

絹代「何を言っとるんですか! 無礼な若者に ちょっこし喝を 入れてやっただけですわ!」

布美枝「はい! そげです。」

台所

茂「ほんなら 店の前に しゃがみ込んどる若者を どやしつけたのか?」

絹代「うん。 店の前で 平気で陣取って お客も 店の人も迷惑しとったけんね。」

修平「しかし… つえを振り回す事は なかろう?」

絹代「人が注意しちょ~のに 知らんぷりしちょ~けんだわ。」

光男「けど なにも 殴らんでもなあ。」

修平「うん。」

布美枝「たまたま つえが当たっただけです。 向こうも ちょっこし こぶができたぐらいで。」

修平「こぶ? 立派な傷害罪だわ。」

絹代「また 大げさな。」

布美枝「お巡りさんも 『向こうにも 非がありますし お年寄りの事だけん』と。」

茂「若いの相手に むちゃするなよ。 けがでもしたら どげす~だ!」

光男「そげだわ。」

絹代「悪い事を 悪いと言わんけん 近頃の世の中は おかしくなって しまっとるんです!」

布美枝 喜子「確かに。」

修平「お前も 年を考えて ちっとは 自重せい。」

絹代「あなたは もう!」

修平「ん?」

絹代「そげに 意気地がない事だけん ダメですわね。」

修平「ダメとは 何だ?」

絹代「銀行だって 意気地がないけん クビになっただないですか!」

修平「お前… いつの話をしとるんだ?」

茂「また 古い事 持ち出したなあ。」

光男「半世紀も前の話だぞ。」

絹代「宿直の夜… 銀行強盗が出るかもしれんと 知らせが入ったら 臨戦態勢で 備えるのが 男のする事だわ! それに 臆病風に吹かれて 宿直 ほうり出して 逃げ帰ってきて それが上司に知られたもんだけん 銀行 クビになっただないですか!」

茂「あ~ 持ち場を離れたのは まずかったなあ。」

光男「確かに。」

修平「むむっ…。」

絹代「映画館だって! 訳の分からん 外国映画なんか かけるけん 不入り続きで!」

修平「う~ん。」

絹代「結局 職を求めて 大阪に単身赴任。 茂! 光男! それに雄一! 育ち盛りの男の子 3人抱えて こっちは 毎日が戦場でしたわ!」

修平「昔の話… 蒸し返さんでも ええだらが。」

喜子「ちょっと おじいちゃんが かわいそうだよね。」

修平「あ~! あの電報が 失敗のもとだった。」

絹代「何の話ですか?」

修平「東京で うまくやっとったのに 田舎のおやじが 『嫁を取れ』と 電報をよこすけん!」

茂「ますます 話が古くなった。」

光男「60年 さかのぼっとる。」

絹代「『ヨロシクタノム』と打ち返したんじゃないんですか?」

修平「あれは 『適当に断ってくれ』という つもりだったんだわ。」

絹代「まっ!」

布美枝「おじいちゃんが反撃に出とるよ。」

喜子「珍しいよね。」

修平「あの時 下宿のおばさんに 娘をもらってくれと頼まれとった。 あ~あ! あっちにしておけばなあ~。」

絹代「ほんなら 今からでも その娘 嫁にもらったら どげですか!」

修平「もう あの世に行っとるわ!」

絹代「ふん!」

菅井「あの~… 先生。 成田出版から電話が入ってます。」

茂「よし 分かった!」

光男「仕事の注文なら 俺が。」

絹代「ふん!」

仕事部屋

(犬の鳴き声)

布美枝「まだ お仕事ですか?」

茂「ああ。 今度 このサイズで『河童の三平』が 出る事になったわ。」

布美枝「ああ… 随分 厚みがあるんですね。」

茂「編集の人が 子供の頃 『河童の三平』を好きで 読んどったそうだ。 これから 『悪魔くん』や『鬼太郎』も 続けて出すと言っとったぞ。」

布美枝「ええ お話ですね。」

茂「不思議なもんだなあ。 『鬼太郎』も『三平』も みんなが忘れた頃になって 本にしようという話が持ち上がる。」

布美枝「紙芝居の頃から数えると 『鬼太郎』も『河童の三平』も 30年は 続いとりますよ。」

茂「また少し 仕事の波が戻ってきたようだな。」

布美枝「はい。」

茂「子供達の手も 借りる事になるかもしれんなあ。」

布美枝「え?」

茂「藍子 そろそろ大学卒業だろう?」

布美枝「4年ですけん 来年には。」

茂「うん。」

茂「仕事が増えたら 光男1人で 会社を見るのは 大変だけん。 いずれは 藍子に 手伝ってもらうのが 一番ええわ。」

布美枝「そげですね。」

茂「上 どげなっとる?」

布美枝「ん?」

茂「イトツとイカルだ。」

布美枝「あ~… し~んとしとります。」

茂「は~ 冷戦状態か…。」

布美枝「いつもなら お父さんが折れて けんかにならんのに 今日は 珍しいですね。」

茂「うん。 まあ イカルの言い分も一理あるんだ。 男の子 3人育てるのは 大事だぞ。 けんかとなると 壮絶な取っ組み合いだけん。 襖は 吹っ飛ぶ 机は ひっくり返る。 しまいには イカルが 台所から包丁 持ち出して。」

布美枝「包丁ですか?!」

茂「ああ 畳にぐさっと 突き立て…。」

回想

絹代「ええ加減にしなさ~い!」

回想終了

布美枝「うわ~ 怖い!」

茂「それで けんかが収まる。」

布美枝「うちは 女の子でよかったですね。 ほんなら お茶いれてきます。」

茂「おう。」

子供部屋

喜子「それでさ お母ちゃんと 交番まで 引き取りに行った訳よ。 けんか騒ぎ起こした祖母を 孫が 引き取りに行くって 変だよね? お姉ちゃん 聞いてんの?」

藍子「よかったじゃない。 大した騒ぎにならなくて。」

喜子「ねえ 進路の希望 出せって 学校で 紙もらったんだけどさ。」

藍子「うん。」

喜子「急に将来の事 決めろって 言われても 何したいか 分からないし 勉強もできないから いい大学にも入れないし ねえ 何て書いたらいいかと思う? 人の話 聞いてんの?」

藍子「うるさいなあ。 自分の進路でしょ。 自分で考えなよ。」

喜子「冷たいな。 何してんの?」

藍子「勉強に決まってるでしょ!」

<さて それから 数日過ぎた ある日の事です>

玄関

布美枝「あ お父さん。」

修平「ん?」

布美枝「お手紙 来とりますよ。」

修平「私に?」

布美枝「はい。」

両親の部屋

レコード♬~『街の灯』

絹代「大きな音で レコードかけて 居眠りしとるんだけん。」

修平「わしは 眠っとらんぞ。」

絹代「あ! 起きとった!」

修平「考え事をしとったんだ。」

絹代「そげですか。 今日の買い物 どげしようかね? このお肉 大丈夫だらか? お父さん このお肉 どげですかね?」

修平「あ~! お前とおると 深遠なる考え事ができん。」

絹代「あ!」

修平「ハハハハ!  あ~あ。 よいしょ!」

絹代「どこ行くんですか?」

修平「お前の声の聞こえんとこだ。」

絹代「もう!」

客間

(小鳥の鳴き声)

布美枝「お父さん?」

修平「布美枝さん 今月の歌舞伎座は 何が かかっとるかね?」

布美枝「え?」

修平「来週あたり 出かけてみるか。」

布美枝「はい。」

修平「う! う~! う! うっ!」

すずらん商店街

修平「おっ イチゴか!」

果物屋「新鮮ですよ 朝摘みイチゴ。」

修平「人も果物も新鮮が一番だわ。 ハハハハ!」

靖代「おじいちゃん!」

修平「これは これは!」

徳子「どうしたの? おめかしして!」

修平「銀座で芝居を見てきた帰りですわ。」

和枝「あら! 何だか いいにおいがする。」

靖代「ほんとだ! ほんとだ おじいちゃん いい香りする。」

修平「紳士のたしなみですわ。 では!」

徳子「今日は しゃきっとしてたね。」

和枝「この前とは 別人みたい。」

水木家

両親の部屋

絹代「あら! いつの間にか 減っちょ~わ。」

純喫茶・再会

修平「『不義になって 貸して下され』。」

亀田「おっと 不義ときたか。 それって 色っぽい芝居ですか?」

修平「近松門左衛門 『女殺油地獄』ですわ。」

亀田「『女殺油…』。 きゃ~!」

修平「ハハハ!」

マスター「はい お待たせ ホットコーラです。」

修平「いや~ せっかく ええ芝居見ても うちに帰って あのガミガミ声 聞かされては 気分が 台なしですけんな。 ちょっこし 寄り道。」

亀田「ハハハハ。 おじいちゃん 何かいい事でもあったんですか?」

修平「え?」

亀田「若返ったように見えますよ。」

修平「そうですかな?」

マスター「いい滋養強壮剤でも 手に入れたんですか?」

修平「いやいや 天然自然に 生きとるだけですよ。 ただ…。 何だか 死なないような気がしてきましたわ。」

亀田 マスター「えっ?」

修平「ハハハハハ! いや ハハハ!」

水木家

客間

布美枝「銀座に移転したんですか?」

浦木「やはり 広告業といえば 銀座でしょう。」

茂「銀座といっても 広いからなあ。」

浦木「ええ場所だぞ。 歌舞伎座のすぐ裏だ。」

布美枝「あら すごい!」

茂「どうせ 雑居ビルの地下倉庫の隅っこでも 借りとるんだろ?」

浦木「あれ? お前 何で知っとるんだ?」

茂「やっぱりなあ。」

浦木「おい! そんな事よりな 俺 とんだところを 見ちまったぞ!」

茂「何だ?」

浦木「イトツの奴 年がいもなく 浮気しとるんじゃなかろうな。」

2人「え?!」

浦木「妙齢の女性と寄り添って いや そういえば 腕を組んでた気もするな!」

茂「おい おい! ええ加減な事 言うなよ!」

浦木「俺を信用せんのか?」

茂「せん。」

浦木「はあ~ じゃあ 聞くがな イトツ 今日は 家におったか?」

茂「ん?」

布美枝「久々に お芝居 見に行くと言って 出かけられました。」

浦木「ほら見ろ 若い女 連れて 銀ブラと しゃれこんどったのは やっぱり イトツだ。」

布美枝「銀ブラって 道を聞かれてただけですよ。」

茂「ああ そげだな。」

浦木「いや 2人並んで歩きながら 角を曲がっていったぞ。」

布美枝「道案内してただけですよ。」

浦木「やれやれ 奥さんは その道には 疎いですからなあ。」

布美枝「まあ。」

浦木「おい ゲゲ! あれは 老いらくの恋という やつかもしれないぞ。」

茂「だら言うな!」

浦木「ん?」

茂「イトツは 幾つだと思っとるんだ?」

浦木「年寄りだからって 油断できんぞ。 愛人バンクなんてものが はやるご時世だ。 ハハハ!」

布美枝「愛人バンク?」

茂「おい くだらん邪推をするなよ!」

浦木「何だよ 俺は いつもの親切心から 知らせに…。」

茂「そげな話 まさか イカルの耳には 入っとらんだろうな?」

浦木「それは もう…。」

布美枝「どげに恐ろしい事になるか 分かりませんよ。」

茂「言うなよ!」

浦木「ああ。」

茂「絶対に言うなよ!」

浦木「わ 分かりました。」

茂「分かったら もう帰れ!」

浦木「いや いや!」

<久々に現れた浦木は また とんでもない情報を 持ってきました>

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