ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第14話「たった五日で花嫁に」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】14話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は茂(向井理)との見合いを控えて、期待と不安の入り混じる思いで日々を過ごしていた。貸本漫画家という相手の職業も、東京住まいであることも、生まれ育った大塚の町を出たことのない布美枝には想像しづらいことだったのだ。いっぽう、漫画が当たらずに東京で貧乏暮らしをしている茂は、見合いのための洋服の調達にも苦心するありさまだった。

14話ネタバレ

邦子 布美枝「♬『夕やけ小やけの 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か』」

邦子「私ら ほんに上手く ハモるよね。」

布美枝「ね! こげなとこ お父さんに 見つかったら えらい事だよ。 『女が外で 大声 張り上げて みっともね』って!」

邦子「家の中で歌っても やっぱり叱られるんだけんね。 はあ~ フミちゃんと こげな事しちょられるのも あと しばらくかもしれんね。」

布美枝「うん。」

邦子「お見合い うまくいくと ええね。 どげな人かな? 漫画家さんなんて 今まで会った事ないし。 楽しみだね フミちゃん。 あれ どげしたの? もしかして お見合いするの 嫌になった?」

布美枝「そげじゃないけど だんだん 心配になってきちょ~とこ。」

邦子「心配?」

布美枝「私なんかに 知らん人と 知らん場所で 一緒に暮らしていく事 ほんとに できんのかなあ。 それも 見合いで ちょっとだけ 会った人と 好きかどうかも 分からんうちに 私…。 生まれてから ず~っと この町におるでしょう。 この川で遊んで 町の人は みんな知り合いで。 他の町に 住んだ事ないけんね。」

邦子「女が お嫁に行くって そげな事だわ。」

布美枝「えっ?」

邦子「私も よその町から 嫁に来ちょ~でしょ。 最初は 大塚の事も 飯田の家の しきたりも さっぱり 分からんで ほんと 不安だったわ。」

布美枝「邦子さんは どこにでも なじめる性格で ええなって思っちょった。」

邦子「そげん心臓 強くないよ。 でも しばらくして 気づいたんだわ。 実家も大塚も 毎日の暮らしは 変わらんのだなあって。 実家でしちょったのと同じように お煮しめ煮たり お漬物 漬けたり 暮らしたらええ。 そげ思ったら す~っと 気持ちが楽になった。 女が家でする事は 大塚も東京も 一緒だわね。 フミちゃんは 今までどおりで やっちょったらええんじゃない?」

布美枝「うん そげだね。」

邦子「うわ! 寒んなってきた。」

布美枝「戻ろう。 冷えたら お腹の子に悪いけん。」

邦子「うん。 あれ?」

布美枝「えっ?!」

邦子「(うめき声)」

布美枝「どげしたの?!」

邦子「お腹 痛い!」

布美枝「産まれそう?」

邦子「うん。 まだ 1か月も 早いんやけど…。」

布美枝「待っちょって! 人 呼んでくる! あ! それ ちょっと 貸てごしない! 急いじょるけん お願い! これ どかすよ! 早ことして!」

布美枝「しっかりして! 頑張って! すぐだけんね こらえちょってね! おじさん そ~っと そ~っと でも 急いで! 急いで 急いで!」

<予定日より 1か月早く 邦子に 2人目の子供が 産まれました。 元気な女の子でした>

飯田家

邦子「フミちゃん。」

布美枝「具合はどげかね? 寒くないかね? 布団 もう1枚 掛けようか?」

邦子「ううん。 大丈夫だわ。 それ 靴下? 生まれた子の 編んでくれとるの?」

布美枝「女の子だけん ピンクにしたよ。」

邦子「フフフ!」

布美枝「何?」

邦子「フミちゃんは 大人物かもしれんね。」

布美枝「えっ?」

邦子「リヤカーのおじさん 驚いとったでしょう? 思い出したら おかしてね。」

布美枝「もう! 邦子さん 苦しんどったけん 私 必死で。」

邦子「フフフッ!」

布美枝「おじさん 汗だくに なっちょ~なったね。」

邦子「フミちゃんは 大丈夫だわ。 前に お父さんが言っとられたよ 布美枝は いざとなったら 肝が据わって 思い切った事ができる子だって。 ほんとに それだわ! フミちゃんは いざとなったら 強い。 どこ 行っても やってけるよ! 私の太鼓判 押しとくけん。」

布美枝「邦子さん。」

邦子「自信 持つだわね。」

布美枝「ほんなら この靴下は 自分の子供用にするかな?」

邦子「それは まだ 気が早いわね。」

2人「フフフッ!」

布美枝「そげだわ。」

邦子「うん。」

布美枝「はい。」

(ミヤコと源兵衛の あやす声)

源兵衛「笑っとる。」

ミヤコ「フフフッ。」

源兵衛「じじだぞ~。 かわいいのう! おう 笑た 笑た!」

<家族が1人増えた飯田家は 喜びと慌ただしさの中で 年の瀬を迎え…>

<布美枝の見合いの日取りは 明けて 昭和36年の 1月25日に決まりました>

東京都 調布市

<一方 その頃 東京の調布では…>

質屋

亀田達吉「はいっ!」

茂「なんとか 背広の方も ひとつ。」

達吉「これじゃ 靴が精一杯だよ。 他にも 流れそうな質草が たくさん あんだから。 そこを 私の計らいで止めてんだよ。」

茂「はあ…。 あ ちょっと。 実家までの汽車賃と 当座の生活費を引くと やっぱり これ以上は 出せんなあ。」

達吉「ほんとは 靴 出すんだったら これじゃ 足りないの。」

茂「打ち明けて言えばですね 僕は この後 実家に戻って 見合いをせねばならんのです。」

達吉「見合い? 村井さんは?!」

茂「だから 背広ぐらい着ていかなんと 恰好がつかんでしょう。 両親にも 見合いの相手にも 恥をかかす事になりますけん。」

達吉「まあ そりゃそうだなあ。」

茂「ここは ご主人に 一肌 脱いで頂いて。」

達吉「いや こっちも 商売だから。」

茂「そこを なんとか 餞別のつもりで。」

達吉「餞別?! 何で 私が?」

茂「このとおり!」

水木家

雄一「結局 請け出せたのは 靴だけか?」

茂「餞別に あれ つけてくれたけど。 肝心の背広がなくては どうにもならん。」

雄一「しかたねえなあ!」

茂「おっ! なかなか しゃれてるな。 生地は 舶来でねえか!」

雄一「一張羅だけん 粗末にせんでくれ!」

茂「悪いな 兄貴。」

雄一「しかし お前 こんな事で 結婚して やっていけんのか?」

茂「俺もな もうちっと成功してからと 言っとるんだが イカルが承知せんのだわ。」

回想

絹代「お前が 見合いをすると言うまで 1週間でも 2週間でも ここにおるけん!」

<村井家の兄弟は 母の絹代を『イカル』と あだ名で 呼んでいました。 よく怒る イカルという意味です。 父のあだ名は 『イトツ』。 胃が突出して丈夫の略です>

回想終了

雄一「それは たまらんなあ。」

茂「そげだろ? イカルの事だ 俺が嫁を取るまでは 何度でも 何度でも 突撃を仕掛けてくるだろう。」

雄一「その度に うちに泊まるのか! あ~ かなわん!」

茂「イカルの突撃を阻止する方法は もはや 一つしかない!」

雄一「何だ?」

茂「嫁を取る事だ。」

雄一「え?」

茂「結婚してしまえば もう 嫁を取れとは言われんけん。」

雄一「どっか ねじれとるぞ その理屈は。」

茂「まあ そんな事だけん ひとまず 見合いに行ってくるわ。」

雄一「おう。 餞別でも 包んでやりたいんだが 俺も このところ やりくりが苦しくてな。」

茂「いやいや 兄貴のとこは 子供もおるんだし これ 貸してくれたら 十分だわ。 あっ!」

雄一「どげした?」

茂「すまんけど ワイシャツも 貸してくれんか?」

雄一「(ため息)」

茂「うわ! 見合いから戻ってきたら 1日10ページのペースで描かねば 間に合わん。」

<こうして 出発のギリギリまで 徹夜で 漫画を描いていた茂でしたが…>

汽車

車掌「お客さん お客さん 切符を拝…。 うわっ!」

<どうにか こうにか 『急行出雲』に飛び乗り 故郷の境港へと向かったのです>

鳥取県 境港市

村井家

絹代「ええ背広 持っとったんだねぇ!」

茂「ああ 生地は 舶来だが。」

絹代「へえ~ 舶来? ハハハ! Y murai…。 Y? 何だ 雄一のでねえか!」

茂「(煎餅をかじる音)」

修平「お前 いかに煎餅とはいえ もうちっと 静かに食べられんもんか?」

茂「音も煎餅の味のうちだわ。」

修平「なるほどな うまい事 言うな。(煎餅をかじる音) いけん! わしも年だ。 お前のように いい音が出ん。」

(2人の笑い声)

絹代「あんたら ええ加減にして! だらず親子だわ! しげさん 明日の見合いでは 行儀ようしとりなさいよ! ズルズル ゾロゾロ バリバリと 音を立てて 物を食べたらいけん。」

茂「分かっちょ~よ。」

絹代「ええか 1週間後には 必ず嫁を連れて 東京へ 帰ってもらうんだけんね。」

茂「連れて帰れって むちゃ言うなよ。」

絹代「あんたが『どげしても 1週間しかおられん 度々は戻れん』と言うけん 急ぎの段取りをつけたんだがね。」

茂「こっちは 締め切りがあるけん。」

修平「茂 ひとまず 黙って聞け! 母さんの頭の中には お前の婚礼までのシナリオが すっかり 出来上がっとるぞ。」

茂「うわっ!」

絹代「明日は 友引 見合いには ええ日だわ。 まず ここで うまくやらんといけんよ。」

茂「ああ。」

絹代「あんたは おかしな事をしゃべる 癖があるけん おとなしに しとりなさい あんまり口をきいたら いけん。」

修平「話は わしが担当する。 しっかり アピールしてやるけん 任せちょけ!」

茂「ああ。」

絹代「あんたが 相手の娘を気に入ったら 仲人さんには その場で 結婚の話を進めてもらうけんね!」

茂「ええっ! その場で?」

絹代「そげだ。 躊躇してる暇はね! 28日は 大安。 結納は どげしても ここで済ませんとね! 30日は 先勝。 『先んずれば すなわち勝つ』で 急ぐには 吉日だけん 結婚式は この日に挙げる。」

茂「はあ~ がいに早いなあ!」

修平「コマ落としの映画を 見るがごとしだ。」

茂「けど そげに急に 式が挙げられるもんだろうか?」

修平「式場は 既に 母さんが予約しておる。」

茂「ええっ!」

絹代「最後のチャンスかもしれん。 しげさん 気張りなさいよ! うん!」

<境港で こんな作戦会議が 開かれているとは知らずに 布美枝は 見合いを明日に控え 期待と不安の夜を 過ごしていたのでした>

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