ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第153話「ありがとう」

あらすじ

調布の村井家を、久しぶりに雄玄社の編集者・北村(加治将樹)が訪ねてくる。数年間文芸誌の編集部に在籍していた北村は、久しぶりに漫画の現場へ復帰することになり「雑誌『週刊少年ランド』に、新しく“鬼太郎”の連載をお願いしたい」と茂(向井理)に言う。月刊誌への連載とあわせるとかなりの負担になるため“新しい有能なアシスタントを雇う必要性がある”と、考えた茂たちだったが…。

153ネタバレ

水木家

休憩室

北村「ちょっと… 大変な お願いなんですが…。」

茂「ん?」

北村「『週刊少年ランド』で また 『鬼太郎』を描いてほしいんです。」

一同「えっ!」

茂「週刊誌で連載?」

北村「ええ。 改めて 『ランド』の編集者が お願いと ご挨拶にあがりますが 早く ご報告したくて…。」

茂「月刊誌は?」

北村「そちらも 引き続き お願いしたいんです。」

一同「え~!」

茂「月刊と週刊 両方か…。」

北村「こちらも協力します。 アシスタント候補の有能な若手も 紹介しますから。」

茂「週刊誌連載となると 馬力のある 若いのが必要だな。」

菅井「馬力のある 若いの…。」

北村「この辺は デビューまで あと一歩という 描き手でして。」

茂「ほ~お。 おう これは ええじゃないか。」

光男「これも ええだろう。」

仕事部屋

菅井「有望な若手か…。 そんなの入ってきたら 僕の立場は どうなるんだろう。」

回想

北村「今度 『月刊マンガタンク』で 編集長をやる事になりました。」

回想終了

菅井「編集長か… こっちは 点々の菅井君のままだ。」

回想

茂「週刊誌連載となると 馬力のある 若いのが必要だな。」

回想終了

菅井「まさか 若手と入れ替えなんて事に…。」

布美枝「どうかしたんですか?」

菅井「いや。 別に。」

茂「え~っ?! 菅井が…!」

相沢「菅井さん 菅井さん!」

菅井「まさか 早速 入れ替え?」

休憩室

茂「やったなあ スガちゃん!」

菅井「僕 何か やらかしましたか?」

北村「新人漫画賞 審査員特別賞を 取りましたよ。」

菅井「え?」

茂「いつの間に描いとったんだ?」

菅井「家で コツコツ…。 どうせ ダメだと思って 内緒で応募したんですが…。」

北村「おめでとう… 菅井先生!」

菅井「入選…? 僕の漫画が?」

北村「はい!」

布美枝「あ しっかり!」

菅井「はい。」

北村「『夕顔畑に風が吹く』。 ノスタルジックな初恋の描写が 秀逸でした。 僕は 菅井さんのが 大賞でもいいと思いましたよ。」

菅井「大賞だなんて そんな…。」

北村「編集部でも 次回作への期待が高まってます。 準備しておいて下さい。 受賞後 第1作目が勝負ですよ。」

茂「やったな!」

菅井「はい…。」

布美枝「おめでとうございます。」

台所

喜子「スガちゃん 漫画賞か。」

布美枝「正式発表になったら 盛大に お祝いしましょうね。」

藍子「『夕顔畑に風が吹く』。 きれいなタイトルだね。」

絹代「夕顔ねえ… 削って干したら カンピョウが出来~わ。」

布美枝「菅井さんの実家 カンピョウ農家でしたね。」

茂「初恋の話は 自分の経験を 描いとるのかもしれんな。」

絹代「よかったがね。 ようやっと芽が出て。」

茂「うちに来て もう 20年か。」

布美枝「もう そんなになりますか?」

茂「今年 会社設立20周年だけんな。」

喜子「スガちゃん 独立するのかな…。 週刊誌の連載も始まるし お父ちゃんの仕事 大丈夫?」

茂「うむ…。 早めに手を打たんとな。」

仕事部屋

相沢「次回作の構想 出来ました?」

菅井「うん…。 まあ 一応。」

相沢「受賞後 第1作が肝心ですからね。 ここが 勝負どころですよ。」

菅井「分かってる。」

茂の仕事部屋

光男「北村さんには とりあえず 2人 選んでおいてくれと 頼んだから。」

茂「相沢君 入れて アシスタントは 3人体制か。 当面 それで やってみるか。」

光男「3人で手が足りんようなら 臨時で もう1人ぐらい 入れてもいいな。」

茂「うん。」

菅井「相沢君 入れて 3人…。 あっ 俺 もう 頭数に入ってないんだ…。」

中庭

藍子「倉田さんの時は 受賞のお祝いの会と送別会 一緒だったね。」

布美枝「連載が すぐに決まったけんね。 お父ちゃんに 仕事の都合 聞いて そろそろ 日にち 決めんとね。」

藍子「盛大に やろうね。 スガちゃんの送別会。」

菅井「もう 送別会の話か…。」

布美枝「送別会は 気が早いわね。 まずは 受賞のお祝い。 けど… 菅井さんが おらんようになったら 寂しくなるね…。」

藍子「うん。」

<その 数日後の事です…>

仕事部屋

光男「うん。 ちょちょちょ… ちょっと待って。 スガちゃんから 今日は 休みたいって 電話 入っとるぞ。」

茂「どげしたんだ?」

光男「風邪らしい。 もうちょっと早く 言ってくれりゃいいのにな。」

茂「今日は ええけん。 ゆっくり休めと 言っといてくれ。」

光男「ああ。」

相沢「珍しいですね 菅井さんが休むって 僕が来てから初めてかもしれない。」

茂「そういえば 欠勤した事なかったな。」

相沢「次回作 考えて 徹夜でもしてたんですかねえ。」

茂「あ~あ 近頃 ポカが多かったの そのせいか。」

回想

茂「ここ 墨じゃなくて 縦線と 言ったじゃないか! えっ? ここだ。 比べてみろ!」

菅井「ああ すいません。 そうか。 すいません。」

菅井「あっ! やばい…。」

回想終了

茂「指定 間違えたり ぼんやりしとったり…。」

相沢「分かりますよ。 受賞って 聞いたら 僕も そうなります。」

茂「いつまでも スガちゃんを 当てにしてはおられんな。」

<ところが また その翌日も…>

台所

布美枝「無断欠勤ですか?」

茂「家に電話しても おらんのだ。 賞が決まって ちょっこし 浮かれとるのかな。」

布美枝「菅井さんらしくないですね。」

茂「このままでは 仕事にならんな。 早こと次のアシスタントに来てもらうか。」

(電話の呼び鈴)

客間

布美枝「はい。 村井でございます。 ああ… はい。 えっ 菅井さんが?!」

純喫茶・再会

(ドアベル)

マスター「お呼び立てして すいません。」

布美枝「菅井さん…。」

マスター「酔っぱらって入ってきて そのまま 動かなくなっちゃって。」

布美枝「ご迷惑おかけして…。」

相沢「菅井さん 菅井さん。」

布美枝「しっかりして下さい。 菅井さん。」

菅井「あ 奥さんだ…。」

布美枝「帰りましょう。」

菅井「帰るって どこにですか?」

布美枝「え?」

菅井「僕の家は あっちですよ。 さよなら!」

布美枝「あの~ ひとまず うちに戻って 酔いをさましてからにしましょう。 ね?」

菅井「ほっといて下さいよ!」

相沢「菅井さん!」

菅井「僕が いなくたって 先生 困らないでしょ。 代わりに 馬力のある若い奴 何人か雇えば 済むんだから…。」

布美枝「え?」

菅井「僕って 何なんでしょうね…。 この20年 何だったんだろうなあ。」

水木家

仕事部屋

茂「あんた 一体 何やっとるんだ。 次回作の準備もせずに 酔っばらっとる場合か!」

菅井「…。」

茂「おい!」

菅井「次回作なんて… ないんです。」

2人「え?」

菅井「『夕顔畑に風が吹く』… あの一作に 描きたいものは 全部 叩き込みました。」

茂「そげな事では 独立できんぞ。」

菅井「独立なんて したくないんです。」

茂「え?」

菅井「ここで 働いていたいです。」

茂「しかし せっかく 賞を取って…。」

菅井「あれは こん身の一作です! あれ以上のものは描けないと 自分が 一番よく分かってます。」

菅井「僕は… 水木プロの一員として ずっと やっていきたかった。 それなのに…。 もう 若くもない僕なんか… お荷物なんでしょうか?」

茂「だらっ! あんたが抜けた後 どうしようかと こっちは 頭を悩ませとったんだぞ。」

菅井「え…。」

茂「アシスタントは 数が いれば いいってもんじゃない! あんたの力 点々を打ち続ける その しつこさ。 それが 水木プロの柱に なっとるじゃないか。」

菅井「柱…?」

茂「けど 20年かかって やっと つかんだ 独り立ちの機会を こっちの都合で つぶしたらいけん。 そう思って 諦めとったんだ。 そうでなければ 大事な戦力を手放すか!」

菅井「先生…。」

茂「あんたの代わりは… おらんのだ。」

菅井「それじゃ これからも ここで働いていて いいんですか?」

茂「あんたが それでええならな。」

菅井「はい。 はい もちろんです!」

茂「じゃあ… また頼むぞ。」

菅井「はい。 お世話になります!」

台所

布美枝「お世話になっとるのは 私達の方ですよね。」

茂「ん?」

布美枝「菅井さん。 いい時も 悪い時も お父ちゃんの 仕事 手伝ってくれて。 アシスタントさんや 編集さん… お父ちゃんの漫画には 大勢の人達が 力を貸してくれとるんですね。」

茂「うん…。 なあ。」

布美枝「はい。」

茂「パーティー 開くか…。」

布美枝「え?」

茂「プロダクション設立 20周年の記念に。」

布美枝「パーティーですか…?」

茂「うん。 今 お前が言ったろう。」

布美枝「私が 何か…?」

茂「『大勢の人達が 力 貸してくれとる』と。」

布美枝「ええ…。」

茂「俺は 一個分隊を率いとる。 俺の代わりは おらん。 分隊の命運は 俺に かかっとるんだ。」

布美枝「はい。 そげですね。」

茂「けどな… スガちゃんの代わりも やっぱり おらんのだ。 アシスタントや 編集の人達 誰が欠けても ここまで やってこられんだったかもしれん。 だけん これまで世話になった人達 呼んで 謝恩会 開くのが 20周年の記念に ふさわしいと思うんだがな。」

布美枝「20周年謝恩パーティーか。 ええですね! けど 何人 呼べるでしょうかね。 ここを片づけたとしても 30人くらい… 40人は いけますかね。」

茂「こげな狭いとこに 人を詰め込んで どげする。」

布美枝「どこで やるんですか?」

茂「ホテルの宴会場だ。 大勢 招待するぞ! よし 早速 光男と相談だ。 光男光男!」

布美枝「張り切っとるなあ お父ちゃん…。」

<20周年謝恩パーティーの計画は こうして 実現に向けて 動きだしました>

モバイルバージョンを終了