ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第156話(最終回)「ありがとう」

あらすじ

昭和61年9月末。秋風が吹き始めたころ、安来から“源兵衛(大杉漣)に関する知らせ”が届く。布美枝(松下奈緒)、茂(向井理)、藍子(青谷優衣)、喜子(荒井萌)の4人は、一家そろって安来へと向かう。飯田家の親族たちが勢ぞろいして、昔のことを懐かしみながら、穏やかな時間を過ごすのだった。そして、故郷の山道で布美枝と茂の2人は…。

156ネタバレ

水木家

玄関

布美枝「昼には お姉さんが来ますけん。」

絹代「こっちの事は ええけん。 悔いのないよう お別れしてきなさい。」

布美枝「はい。」

茂「行くぞ。」

絹代「布美枝さん。 ミヤコさんの事… くれぐれも…。」

布美枝「はい。」

両親の部屋

絹代「お父さん 源兵衛さんと 仲よくやってごしなさいよ。 あなたの得意な 芝居や映画の話は 通じらんかもしれんけど…。」

回想

修平「ご当家は 毛利方ですか?」

源兵衛「いやいや 尼子の系統で。」

修平「そげなら うちとは 敵同士です。」

回想終了

絹代「何もかも 正反対。 けど 案外 楽しく やれるかもしれませんねえ。 いずれ… 私も お邪魔しますけん。」

<源兵衛の葬儀は 大塚の家で執り行われました。 飯田家の墓所に続く道には 真っ赤な彼岸花が 風に揺れていました>」

飯田家

客間

哲也「村井さん 忙しいとこ よう来てごしなって。」

横山「連載 何本も 抱えとるそうですな?」

茂「いや 前ほどでは ないですけん。」

塚本「たいしたもんですよ。 この間のパーティーも盛況だったし。 なあ。」

暁子「ええ。」

塚本「まあ 1杯。」

茂「ああ 酒は…。」

横山「村井さんに 酒は 禁物ですけん。」

塚本「はい?」

輝子「大変な事になりますけんね。」

茂「はあ…。」

台所

邦子「絵里子 これ 座敷に運んで。」

絵里子「はい。」

邦子「だんだん!」

いずみ「すいません。 お母さんが そろそろ一緒にって。」

布美枝「おかんつけたら行くわ。」

いずみ「懐かしいなあ。 うちの台所のにおい。」

布美枝「年季 入っとるもんなあ。 昔は ここに かまどがあったね。」

回想

ユキエ「お母さん おひつ。」

ミヤコ「ああ。 よっ お願いね。」

暁子「はい!」

回想終了

布美枝「落ち着くなあ うちの台所は…。」

いずみ「うん。」

客間

ユキエ「お父さん 寝ついてからも ちっとも変わらんで 威張っとったね。」

ミヤコ「うん。」

邦子「寝ている間にも いろんな事を 思いつかれるんですよ。」

塚本「どんな事です?」

ミヤコ「私達に用事がある時は ラッパを吹くんです。」

回想

(ラッパの音)

回想終了

邦子「用事によって 吹き方が変わるんです。」

ミヤコ「あれは 貴司が子供の時に 吹いとった おもちゃのラッパだわ。」

満智子「そげですか。 貴司さんの…。」

哲也「貴司の奴 今頃 お父さんに叱られとるぞ。 なして 先に来とるんだって…。」

ミヤコ「調子のええ時は よう詰め碁を打っとりました。」

布美枝「昔 うちに よう碁打ちの人が 来とったね。」

ユキエ「料理 出したり お酒出したり お母さんと おばば 大変だったんだよね。」

ミヤコ「うん そげだね。」

哲也「『お前は ヘボでいけん』と言って 俺は 相手にされんだったわ。」

ミヤコ「村井さんの腕は まあまあ買ってとりました。」

茂「自分も 『ヘボ』と 言われとりましたが。」

ミヤコ「けど 『次の対戦に備えて』と 詰め碁を打っとりましたけんね。」

邦子「テレビも 楽しみにしておられましたよ。 『悪魔くん』の初めての放送の時 お父さんも喜んで…。」

輝子「村井さん すみませんでした。」

茂「え?」

輝子「今だから言いますけど 私は 結婚に反対しとったんです。 漫画家いう仕事が どげな仕事か よう分からんだったし 見合いして たった5日で 婚礼というのがねえ。」

喜子 藍子「5日で?」

茂「あの時は 締め切りが迫っとったんで…。」

輝子「人を見る目… お兄さんには かなわんだったわ。」

ユキエ「私ら みんな お父さんに 婿さん 決められたような もんだったけど… だけん こげして 幸せにやっとるんだけん やっぱり 見る目があったのかな?」

子供1「あの おじちゃん 『鬼太郎』の漫画 描いてる人?」

横山「ああ そげだぞ。」

子供1「ねえ 『鬼太郎』描いて~。」

子供2「『目玉親父』描いて。」

ユキエ「これこれ せがまないの。」

茂「いや~ ええですよ。 俺のスケッチブック 持ってきてくれ。」

布美枝「はい。」

茂「はい 出来た。」

子供1「うわ~ 『ねずみ男』だ!」

布美枝「こげな時に 絵を描いて 笑っとったらいけんかな。」

ミヤコ「ううん。 ほら うれしそうに見ちょ~わ。 お父さん 満足しとるよ。 何でもない 普通の人生だったけど 俺は これだけのものを 残したんだぞって。」

ミヤコ「あんた 知っちょ~?」

布美枝「ん?」

ミヤコ「彼岸花の咲く頃に 亡くなった人は ご先祖様に守られて あの世に行けるっていうんだよ。 お父さんも おばばや 貴司や ご先祖様と一緒に 彼岸に渡っていけるわ。 よかったわねえ… お父さん。」

子供1「わあ~ 『一反木綿』だ!」

茂「これはな… 似とるだろ。」

(一同の笑い声)

布美枝「もう… また言っとる!」

布美枝「お父さん… みんな 笑って暮らしとるよ。」

藍子「おばあちゃん お父ちゃん達 知らない?」

ミヤコ「ああ… 『2人で散歩してくる』って 出かけていったよ。」

喜子「2人で散歩? へえ 珍しい。」

邦子「スケッチブック持って 出られたよ。」

ミヤコ「遠いとこまで来てくれて だんだん。」

喜子「ううん。 ねえ。」

ミヤコ「ん?」

喜子「お母ちゃん達 お見合いして 5日で結婚したって 本当?」

ミヤコ「うん。 あんまり早手回しで おばあちゃんの方が びっくりしたわ。 アハハハ! ほんとに びっくりしたんだよ。」

道中

布美枝「お父ちゃんは やっぱり 絵が うまいね。」

茂「当たり前の事 言うな。」

布美枝「お父ちゃん…。」

茂「ん?」

布美枝「私で よかったのかな?」

茂「何だ?」

布美枝「別の人と一緒になっとったら お父ちゃん どげしてただろう?」

茂「そげだなあ…。 横を見たら いつもお前が 立っとったなあ。 ぼんやりした顔して。」

布美枝「あら。 『ぼんやり』ですか?」

茂「よかったんじゃないか… お前で。」

布美枝「お父ちゃん…。」

茂「おい そろそろ 行くぞ。」

布美枝「はい!」

(鳥の鳴き声と羽ばたく音)

(草履の足音)

布美枝「何か… おるよ。」

茂「ええか 振り向いたらいけんぞ。」

2人「『べとべとさん』 先へお越し」。

(草履の足音)

茂「行ったようだが…。」

布美枝「あれは やっぱり…。」

茂「お前 よう知っとったな。 『べとべとさん』の呪文。」

布美枝「昔 教わったんです。 『見えんけど おる』って。」

茂「ふ~ん。 『見えんけど おる』か。」

妖怪達「お~い。」

茂「あれ? ああ…。 なんだ…。 みんな おったのか。」

布美枝「ず~っと 一緒だったんですね…。」

茂「さて 行くか?」

布美枝「はい。」

茂「まだまだ これからだ。」

布美枝「はい!」

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