連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】15話のネタバレです。
あらすじ
いよいよやってきた見合い当日、昭和36年1月25日。飯田家は朝から準備で大騒ぎ。源兵衛(大杉漣)はミヤコ(古手川祐子)にあれこれと指示を出し、布美枝(松下奈緒)は緊張でいてもたってもいられない気持ちだった。茂(向井理)が修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)に伴われて飯田家に到着し、仲人の谷岡(小林隆)の進行のもと、見合いの幕が静かにひらく。
15話ネタバレ
飯田酒店
留蔵「おはようさん。」
貴司「おはようさん。」
留蔵「今日 見合いだげなね? 布美枝ちゃん。」
貴司「そげですわ。」
克江「まとまるとええね。」
留蔵「姉ちゃんが片づいたら やっと あんたが 嫁さんもらう番だが…。」
貴司「ハハハハハ…。」
<布美枝の見合いの日が やってきました>
飯田家
廊下
俊文「おばちゃん!」
布美枝「きゃっ!」
昭和四十六年一月二十五日
源兵衛「ミヤコ ええか。」
ミヤコ「はい。」
源兵衛「布美枝の横には わしが おるようにするけん。 お前は ちょっと離れて座れ 布美枝が大きく見えるけんな。」
ミヤコ「はい 分かりました。」
源兵衛「うん。 あっ 厠は 磨いたかや?」
ミヤコ「はい。 今朝早くに ちゃんと。」
源兵衛「もう一度 よく見ちょけよ。 家の格は そげなとこに 出えけんな。」
ミヤコ「はい。 あら しつけ糸…。」
源兵衛「何しちょ~! 早こと しぇ。」
ミヤコ「はい。」
(俊文の泣き声)
布美枝「何でもないけんね。 泣かんでええからね。」
源兵衛「お~ どげした?」
ミヤコ「あらら。」
源兵衛「こら なんだら!」
邦子「俊文! おばちゃんの 邪魔しちゃいけんがね!」
源兵衛「お前 まだ そげな恰好で。 早こと 着替えいだ!」
布美枝「これ片づけたら すぐ。」
源兵衛「ええけん! 早こと す~だ!」
布美枝「はい。」
源兵衛「はあ~ 背も高いが 足も大きいなあ!」
ミヤコ「11文ありますけんねえ。」
源兵衛「分かっちょ~わ。 どげんしたら 目立たんか。 ミヤコ。」
ミヤコ「はい。」
源兵衛「お前は ほんに離れちょれよ。」
ミヤコ「はい。」
<源兵衛の指揮の下 飯田家では 朝から 見合いの準備で おおわらわでした>
仏間
回想
登志「『紅のサンゴ玉は 良縁のお守りだ』言ってな… よい ご縁が ありますように。」
回想終了
布美枝「ええ ご縁でありますように。」
源兵衛「布美枝! 布美枝! 何をもたもたしちょ~だ。 じき 見合い相手が来るんだぞ! 布美枝!」
布美枝「はい!」
源兵衛「何をもたもたしちょ~だ! もういっぺん 言っとくぞ。 先方の一行が到着しなったら わしらが 座敷に案内するけん。」
布美枝「はい。」
源兵衛「お前は 台所で抹茶をたてて 襖の前で控えちょれ。」
布美枝「はい。」
源兵衛「よきところで わしが 『ゴホン』と せきばらいをする。 それを合図に 座敷に入って わしの 横に座れ。」
布美枝「はい。」
源兵衛「ええな。」
ミヤコ「来られたようです。」
源兵衛「来たか?! お見えにならっしゃったぞ~! 用意は ええか!」
ミヤコ「お父さん。」
源兵衛「うん。」
布美枝「どげしよう。 ドキドキしてきた。」
玄関前
絹代「しげさん 昨日決めた合図 忘れとらんでしょうね?」
茂「ああ。」
絹代「進めて よければ 吸い物を飲む。 どうにも いけん時は 手をつけない。 ええね?」
茂「暗号まで こしらえて ますます 芝居がかっちょう!」
修平「『母さんの ここには シナリオが 出来上がっとる』と言っただろう。」
絹代「こうしとると なかなか 男前なんだけどねぇ。 しげさん 気張っていかっしゃいよ!」
修平「まあまあ そう力まんで 自然体でいったら よかろう。」
絹代「えんや 今日は しくじれません。 39にもなって 嫁がおらんでは 茂さんの人生 お先 真っ暗ですが!」
茂「酒屋かあ。 ふ~ん。 えらい クラシックな家だなあ。『座敷童』か『あずきはかり』でも 住み着いとりそうだ。」
谷岡「ああ 村井さん 村井さん!」
絹代「あっ。」
谷岡「これは どうも。」
絹代「今日は お世話になります。」
台所
源兵衛「遠いとこ わざわざ。 どうぞ…。」
谷岡「今日は 冷えますな。」
邦子「皆さん おいでましたよ! フミちゃん 落ち着くだが!」
布美枝「ど ど どげしよう。 私 口から 心臓 飛び出しそうだわ。 私…。」
客間
谷岡「こちらが お話しちょ~ました 村井 茂君ですわ。 ご両親の村井修平さん 絹代さん。 修平さんは 境港で 英語の塾を開いちょられます。 こちらは 布美枝さんのご両親で 飯田源兵衛さんと ミヤコさんです。 酒屋のかたわら 2期目の安来市 市会議員を務めちょられますけん。」
台所
邦子「フミちゃん! もっと 力抜いて。」
布美枝「あっ はあ… はい。」
客間
源兵衛「我が家は 代々 源兵衛を 名乗っちょ~まして わしで 4代目になります。」
修平「それは 古風ですな。 ご襲名は お幾つの時で?」
源兵衛「はい。 父が 早こと亡くなりまして 10歳の時に 源兵衛を名乗りました。」
修平「ほうほう。」
源兵衛「年寄りくさい名前ですけん 友達に からかわれて よう けんかしたもんですわ。」
修平「ハハハ 茂も 小さい頃は けんかばっかしとって 『将来 ろくな大人に ならんだろう」と 随分 案じましたわ。」
(絹代のせきばらい)
回想
源兵衛「お前は 襖の前で控えちょれ。」
布美枝「はい。」
源兵衛「よきところで わしが『ゴホン』と せきばらいをする。 ええな!」
回想終了
布美枝「そろそろかな? は~っ。」
修平「この辺りは 街並みも いたって古風ですなあ。」
源兵衛「ああ~ 古い土地ですけんねぇ。 戦国時代は 尼子と毛利の 合戦場にもなった所で。」
修平「ほうほう。 ご当家は 毛利方ですか?」
源兵衛「いやいや。 尼子の系統で 毛利に攻め落とされました。」
修平「それなら うちとは 敵同士です。 うちは 毛利を手引きして 尼子を だまし討ちにさせた 豪族ですけん。」
源兵衛「あ はあ~。」
修平「昔ならば せがれと こちらの ご令嬢は 敵同士の家に生まれた 悲恋の主人公という訳ですな。 歌舞伎で言えば『妹背山』。 シェークスピアならば『ロミオとジュリエット』。」
絹代「(せきばらい)」
修平「この際 ご先祖様の事は 水に流しましょう。 ハハハ ハハハ…。」
源兵衛「講和条約ですな。 ハハハ。」
(源兵衛と修平の笑い声)
布美枝「ああ まだかな?」
(源兵衛と修平の笑い声)
源兵衛「村井さん その あの… セイフクピアですか?」
修平「いや セイフクではない。 シェークスピア。」
源兵衛「シェークスピア?」
修平「あの英国の 劇作家です まだ 青二才です。」
源兵衛「青二才?! あ~ 若造ですな。」
(源兵衛と修平の笑い声)
布美枝「あの人か。」
(源兵衛と修平の笑い声)
源兵衛「しかし 今日は 冷えますなあ。」
修平「そげですなあ。」
源兵衛「(せきばらい)」
源兵衛「(せきばらい)」
修平「風邪ですか? いけませんな。」
源兵衛「いやいや。 (せきばらい) ちょっこし失礼。 布美枝は どげした。」
布美枝「俊文 俊文! 放しなさい。 これは お客様のだけんな!」
源兵衛「布美枝! 『ゴホン』。」
布美枝「あっ!」
谷岡「こちらが 飯田家の三女の 布美枝さんです。」
茂「あ さっきの目玉だ。」
谷岡「布美枝さんは 安来の女学校を卒業された後 家の手伝いをしておりなさって 家事全般 中でも 洋裁が お得意と 伺っておりますけん。」
修平「片手で 行儀が悪いようですが せがれは 戦争で 左腕をやられまして。」
源兵衛「いや 伺っております。 どうぞ お気遣いなく。」
茂「では。 ああ~ うまいですなあ。」
源兵衛「まっ 足を崩して下さい。 何も あ~ませんが つまんで下さい。 さあ まずは 熱いところを1杯。」
修平「いやいや 私は…。」
源兵衛「まあまあ 遠慮のう。 酒だけは 売るほどありますけんの。」
修平「酒はいけません。」
源兵衛「日は まだ高いですが こげな席ですから…。」
修平「酒は さっぱり飲めません。」
源兵衛「は?!」
修平「下戸なんですわ。 奈良漬 食べても 顔が赤くなって 『金時さんの火事見舞い』ですわ。 ハハハ ハハハ…。」
源兵衛「そげですか。 ほんなら…。」
修平「茂も下戸で おかまいなく…。 そちらは やって下さい。 どうぞ どうぞ。」
源兵衛「茶を お持ちす~だ。」
ミヤコ「はい。」
絹代「家族そろって 不調法で…。」
ミヤコ「いいえ 気づきませんで…。」
茂「いや~ うまそうですな。 遠慮なく いただきます。」
源兵衛「さあ 皆さんも やって下さい。」
茂「一つ お尋ねしますが…。」
布美枝「はい…。」
茂「自転車は 乗れますか?」
布美枝「え?」
茂「自転車です。 ペダルをこぐ。」
布美枝「ああ… 乗れます。 お酒の配達で 使ってますけん。」
茂「そげですか。 それは ええですな。」
<不意に見せた笑顔が 思いがけず 優しそうで 布美枝は 少しだけ ほっとしていました>