ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第21話「さよなら故郷(ふるさと)」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】21話のネタバレです。

あらすじ

結婚式のあと、夜になってようやく酔いがさめた茂(向井理)は、布美枝(松下奈緒)に幼いころの“のんのんばあ”との不思議な思い出を話して聞かせる。翌朝、茂はなかなか起きてこない。布美枝は修平(風間杜夫)と絹代(竹下景子)と朝食をともにしながら、ふたりの個性に強い印象を受ける。

21話ネタバレ

村井家

2階

布美枝「失礼します。 入っても ええですか? ああ… もう寝とる。」

居間

修平「明日にしたら どげだ? お前も 今日は疲れたろう。」

絹代「大丈夫だかいね?」

修平「何がだ?」

絹代「布美枝さん…。 義手を外したとこ見たら ショックかもしれませんねえ。」

修平「今更 何を言っとる。 初めから 包み隠さず 話しとるでねえか。」

絹代「聞いて知っとるのと 目で見るのとは 違いますけん。」

修平「まさか… 逃げて帰りもせんよ。」

2階

布美枝「はっ。」

回想

(扇子が義手に当たる音)

回想終了

<それは 少し ひんやりとしていました>

布美枝「これが この人の左腕か…。 いろいろ ご苦労なさったんだろうな…。」

(水の流れる音)

布美枝「川の音。 向こうは 山かなあ? 真っ暗だ…。」

茂「向こうは 島根半島ですわ。」

布美枝「あっ。」

茂「ふあ~っ。」

布美枝「すいません。 寒かったですか?」

茂「いや ええですよ。 水の音は 境水道です。 中海から 日本海に流れちょります。」

布美枝「あの これから 末永く…。」

茂「あ~ もう…。 あの 堅苦しい挨拶は ええです。」

布美枝「はい。」

茂「あんた 狐が鳴くのを 聞いた事 ありますか?」

布美枝「狐?」

茂「うん。 ほら あの… あっちの半島の山に 住んどるようです。 昔の のんのんばあから 教わりました。」

布美枝「のんのんばあ?」

茂「子供の頃 あの山の奥の方まで 一緒に行った事があったですよ。」

回想

茂「のんのんばあ 雨だぞ! 晴れとるのに…。」

のんのんばあ「ああ 狐の嫁入りがあ~だな。 人間に見られんように 狐が 雨を降らしちょ~ぞ。」

茂「山に 狐がおるのか?」

のんのんばあ「おるとも。 夜にな~と コーンコンと 鳴いちょ~がな。」

(狐の鳴き声)

回想終了

茂「その晩 夜更けまで起きとったら あの山の方から 『コーン』と 鳴く声が聞こえてきたんですわ。」

布美枝「はあ…。」

茂「今夜は 鳴かんなあ…。 ん?」

布美枝「あ… すんません。」

茂「ああ そうか。 今まで あれを見ちょったですよね。 あ? アハハハ えらい きちんと片づけたなあ。」

布美枝「勝手に触ったら いけんでしたか?」

茂「いやいや かまいません。 どうせ つけんのですけん。」

布美枝「え?」

茂「今日は 親が『どうげしても』と言うので つけちょったですが もともと 義手は 好かんのです。 ないもんを 形だけあるように見せても しかたないですけん。 ハハハッ。」

布美枝「はい…。」

茂「あっ! 今 聞こえたようですな コーンと。」

布美枝「えっ そげですか?」

茂「し~っ。」

布美枝「何も… 聞こえませんねえ。」

茂「(いびき)」

布美枝「寝とる…。 狐 鳴かんですよ。」

<結婚したとはいうものの 茂に会うのは 今日で まだ2度目>

布美枝「あ 雪…。」

<これから この人と どんなふうに 暮らしていくのだろう。 布美枝は まだ とまどいの中に いました>

布美枝「朝ですよ…。」

居間

布美枝「おはようございます。」

絹代「あ~ 布美枝さん。 朝ご飯は 干物で ええ?」

修平「コーヒー いれようか?」

布美枝「あの… 私が やります。」

修平 絹代「今日は ええ!」

修平「濃いめのコーヒーに 温めた牛乳を注ぐのが コツでな。」

布美枝「はい。」

絹代「朝ご飯は ご飯に 漬物 それに 干物が一番。 ねえ 布美枝さん。」

布美枝「はあ… あの 起こさんで ええんでしょうか?」

絹代「茂?」

布美枝「声は かけたんですが…。」

絹代「ちっとや そっとでは 目ぇ覚まさんよ。 子供の頃から ひどい寝坊で。 その上 朝 ご飯を ゆっくり食べるもんだけん 小学校は 毎日 遅刻しとった。」

布美枝「ほんなら 夏休みのラジオ体操なんか どげしてたんですか?」

修平「ラジオ体操?! そげなもん この世の中に ある事も 知らんかったろうな。 ハハハハハ…。」

<布美枝の育った 大塚の飯田家では 子供の朝寝坊など もってのほかでした。 家族そろって 朝食をとる 飯田家とは 何もかもが対照的な 村井家の朝でした>

布美枝「この辺りには 狐が 住んどるんですね?」

絹代「狐?!」

布美枝「ゆうべ そげな事 言うとられました。 向こうの山で鳴いとるって。」

絹代「ええ年して だらばっかり 言っちょる…。」

修平「狐なら すぐそこに おるわ。」

布美枝「ほんとですか?」

修平「お稲荷さんの境内で 赤い前垂れ掛けて 座っとるわ。 ハハハ…。」

絹代「だらばっかし…。」

布美枝「『のんのんばあに 教わった』と 言うとられました。」

絹代「ああ 昔 手伝いに来とった おばあさんの事だわ。 ご亭主が 拝み屋さん やっとって。」

布美枝「拝み屋さん?」

絹代「うん。 病気なんかの時に ご祈とう あげる人を この辺では 『のんのんさん』言うがね。 そういえば あの人 狐やら お化けやらの話 茂に聞かせとったな。」

修平「歌舞伎座に 『勧進帳』が かかるな。 こりゃええわ! 茂を送りがてら わしらも 東京に行こうか?」

絹代「どこに そげな お金がありますか。」

修平「なんとかなる。」

絹代「なりません! 今月の米屋の払いも まだですがね!」

修平「来月という月もある。」

絹代「米屋は 来月まで 待ってくれませんけん!」

修平「芸術は 人生の糧だぞ。」

絹代「ばからしい! 人生の糧の前に 暮らしの金を なんとかしてごしなさい!」

修平「うまい! うまい事 言うな。 うまい。」

絹代「あ~っ。 この だらず親にして あの だらず息子ありだわ!」

修平「ん? どげした?」

布美枝「え いいえ。」

修平♬『旅の衣は 鈴掛の』

<布美枝の母 ミヤコは 万事に控えめでした。 母とは正反対の 絹代の猛烈ぶりに 布美枝は ただ 驚くばかりでした>

絹代「茂の事で 頼みたい事が あるんだけど。」

布美枝「はい。」

絹代「漫画の仕事は 勤め人と違って 毎月 決まったもんが 入ってくる訳ではないけん 締めるところは ビシッと締めて やりくりして。」

布美枝「はい。」

絹代「東京は 野菜が高いけど 健康のためだけん 必ず たべさせて。」

布美枝「はい。」

絹代「野菜には 寄生虫の卵が ついとるかもしれん。 洗剤つけて よ~く洗ってね!」

布美枝「はい。」

絹代「東京には 兄の雄一がおる。 何かの時には 助け合って 仲よく やってちょうだい。」

布美枝「はい。」

絹代「え~っと それから…。」

修平「そげに いっぺんには 覚えきらんだろう。」

絹代「めったに会えんのですけん 今のうちに 伝えておかんと! それから 茂は 嫌がるかも しれんけど 外に出る時には 義手をつけるよう 布美枝さん からも 言ってちょうだい。 あとは え~っと…。」

修平「おい!」

絹代「もう 何ですか?!」

修平「ええ加減 茂を起こさんと 汽車に乗り遅れ~ぞ。」

絹代「あっ! こげな時間!」

布美枝「そしたら 私が 起こしてきます。」

絹代「あんたには まだ無理だけん。 ふんっ!」

修平「いろいろ 細かい事を言って 面倒だと思うかもしれんけど…。」

布美枝「いいえ。」

修平「お互い まだ 知り合ったばかりだけん ちょっとずつ 分かり合ったら ええわ。」

布美枝「はい。」

修平「うん。」

2階

絹代「茂! いつまで寝ちょ~だ! さっさと起きれ! 早こと起きれ! こら この だらず息子が!」

玄関前

茂「ほんなら 行くけん。」

修平「ああ。」

絹代「しげさん 手 つけていきなさい。」

茂「ええよ。 煩わしい。」

絹代「誰に見られるか 分からんよ。 布美枝さん…。」

修平「まあ ええ。 元気でな…。」

茂「ああ。」

絹代「仕事 気張りなさいよ!」

茂「ああ。」

絹代「くれぐれも さっき話した事 忘れんで。」

布美枝「はい。」

<布美枝は 茂の故郷 境港を後に 東京の生活へと 踏み出していったのです>

モバイルバージョンを終了