ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第23話「さよなら故郷(ふるさと)」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】23話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)を乗せた汽車は東京駅に着き、つきまとう浦木(杉浦太陽)を振り切るようにして茂は布美枝を連れ、調布の家へと向かう。あこがれの大都会での暮らしを予想していた布美枝だったが、ふたりの乗った車はどんどん郊外へと向かっていく。都会の雰囲気などまったくないところに車は止まり、そこで布美枝が見たのは…。

23話ネタバレ

列車

浦木「あ~っ! あ! あ~っ! あ~っ!」

布美枝「何?!」

浦木「ゲゲ ゲゲでねえか? あい! 起きろよ ゲゲ! 起きろよ 俺だ! 浦木だ! おい 久しぶりだな! ゲゲ おい!」

茂「あれ? イタチ? イタチの克か?」

浦木「そげだ いや~ 久しぶりだな おい!」

茂「(せき込み)」

浦木「ううぇあ! あ!」

布美枝「そこは…。」

浦木「お前は 東京におると 聞いとったのに こげなとこで 何しちょ~だ?」

茂「用があって 実家に戻っとったんだわ。 お前… 米子から乗っとったのか?」

浦木「いや 大阪からだ。 境港で 何かあったか? 葬式か? イカルか イトツが ついに どうかなったか?」

茂「だらず言うな。 2人とも ピンピンしとるわ。」

浦木「そうか?」

茂「そげな事ではなくて。」

浦木「こちらさんは?」

茂「だからその… 婚礼だ。」

浦木「誰の?」

茂「俺んだわ。」

浦木「そげなら こちらのご婦人は ゲゲの新妻か?」

茂「ああ。」

布美枝「布美枝です。」

浦木「おう お~ お~! やったでねえか! おい 新婚か! そりゃ めでたい! とうとう ゲゲにも嫁が来たか! そうか! あ~ 奥さん お初に お目にかかります。 僕は ゲゲの幼なじみ いや 古くからの親友で 浦木克夫と申す者です。 奥さんは 境港のご出身ですかな?」

布美枝「いや 安来の大塚です。」

浦木「ほう! 道理で美しい訳だ。 境港は あきまへん。 芋ばっかり食うとるせいか 美人がおらん。 のう ゲゲ。」

茂「だらず言うな。」

布美枝「あの… ゲゲって何ですか?」

浦木「こいつの あだ名ですよ。」

布美枝「変わった あだ名ですね?」

浦木「変わった奴ですから ちょうど ええんです。」

茂「子供の頃 茂というのが うまく言えんで ゲゲルと言うとったんですわ。」

浦木「それで ゲゲです。」

茂「そういうお前は イタチでねえか。」

布美枝「イタチ?」

浦木「このファニーフェイスを 人は イタチと呼ぶんですよ。」

<この ちょっと イタチに似た男に 新婚生活を かき回される事になるとは まだ 思っていない 布美枝でした>」

村井家

修平「熱心に 何を書いとるんだ?」

絹代「手紙です。」

修平「誰にだ?」

絹代「茂と 布美枝さんにです。」

修平「今朝 送り出したばかりで もう手紙か?!」

絹代「お願いした事 布美枝さんが 忘れたらいかんけん。 書いて 送っとくんです。 『野菜は よくよく洗って下さい。 出かける時は 義手を』。」

列車

浦木「う~ん うまい! あ お茶まで。 すまんですね 奥さん。」

布美枝「あ… どうぞ。」

浦木「調布に 家を買ったとは ち~とも 知らんだった。」

茂「建て売りの小さいやつだけどな。」

浦木「2人なら 小さくても ええでねえか。」

茂「まあ 一応 2階もある。」

浦木「2階建て? 結構じゃないの! いずれ 子供が生まれたら 建て増しでもして。 ねえ 奥さん。」

布美枝「はあ…。」

浦木「それにしても ええとこで 会ったわ。 お前に ええ話があるぞ。」

茂「お前のええ話は 当てにならん。」

浦木「まあ 聞け。 俺 大阪で 貸本専門の出版社を やっとったんだけどな。」

茂「うん そげか。」

浦木「もう 大阪はな あかん。 つきあいがあった漫画家連中 みんな 東京に出てしもうて 大阪では 商売にならんのよ。」

茂「ああ 聞いとる。 大阪の人気漫画家グループが そろって 東京に出てきて 自分らで出版も始めたんだってな。」

浦木「そげだわ。」

茂「けど お前 あげな売れっ子達と 仕事しとったんか?」

浦木「あの連中は 俺が 売り出したようなもんだけんな!」

茂「ふ~ん。」

浦木「出版は本丸は なんと言っても 東京だけん。 これから 東京で ば~んと 派手にやるわ。」

茂「東京に出てきても 何も ええ事ないそ。」

浦木「ネガティブな事 言うな。 大丈夫 俺には目算があるけんな。」

茂「目算ねえ。」

乗客「あんた 何ですか? 人の席に座って。」

浦木「ちょいと お席を拝借しておりました。」

乗客「は? しかも 人の帽子を。」

浦木「尻に敷くのも どうかと思いまして。 それじゃ 奥さん ごちそうさまでした。」

布美枝「あ~っ!」

茂「イタチの奴 最後の1個を!」

乗客「何だ あの男 失礼な奴だな! あんた方の 知り合いですか?」

2人「すんません。」

(電車の走行音)

子供「(泣き声)」

母親「どうしたの こら 何?」

庫床「(泣き声)」

茂「顔もイタチ風だが あいつは やる事が イタチに似とるんですわ。 こそこそ 強いもんに すり寄る。 その上…。」

布美枝「その上?」

茂「最後っ屁です。」

布美枝「は?」

茂「自分の身が危うくなると 最後っ屁のごとく 汚い手段をかますのです。 それで 『イタチの克』と 呼ばれとるんですが あいつに 調布の住所を教えたのは まずかったかなあ。」

布美枝「昔からの大親友だと 言っとられましたけど。」

茂「ただの腐れ縁ですよ。 奴に かかわると ろくな事がない!」

布美枝「何か悪い事が…?」

茂「いや 心配は いらんでしょう。 根は さほど 悪い人間ではないですけん。」

布美枝「はあ。」

(汽笛)

<布美枝達を乗せた列車が 東京駅に着いたのは 翌朝の事でした>

東京駅

布美枝「いっぱい 人がおりますね!」

茂「この程度は 少ない方ですよ まだ 朝が早いですけん。」

布美枝「大塚で こげに人がいるのは 祭りの時くらいです。」

茂「東京は 毎日が祭りですわ。 あ もう 小一時間すれば ラッシュですけん。」

布美枝「ラッシュ?」

茂「そう。 電車に 荷物のごとく 人を詰め込むんです。 詰め込みすぎて 時には けが人も出ます。」

布美枝「えっ?」

茂「骨が折れたり 息が詰まったり。」

布美枝「怖い…。」

茂「ま 朝っぱらから 人々が 一斉に 行動を開始するというのが そもそも 間違っておるんですな。」

浦木「お~い! ゲゲ。」

茂「あ いけん イタチが来た。」

布美枝「えっ! あ あの!」

浦木「あ 奥さん! 奥さん! おや 奥さん 随分 すらりとされてますね! おい 薄情な奴だな 置いてくなよ。」

茂「お前 これから どこに行くんだ?」

浦木「ん? ひとまず 日暮里の知り合いに 訪ねようと思っとる。」

茂「ああ なら 調布とは 方向が違う。 じゃあ。」

浦木「おい おい! 親友同士が 久しぶりに 再会したんだ コーヒーの1杯ぐらい。」

茂「俺は急いどる。 早く行きましょう。」

布美枝「あ はい!」

浦木「コーヒーの1杯ぐらい おごって くれてもいいじゃないか! おい! ちょっと 待てって!(叫ぶ声)」

布美枝「ええんですか?」

茂「振り向いては いけません。 目が合うと 追ってきます。」

運転手「村井さん! 村井さんでしょう? ちょっと お待ち下さい! なぜ逃げるんです? 村井さん! 村井布美枝さんでしょう? 村井布美枝さんですよね?」

布美枝「布美枝ですが?」

運転手「あ~ やっぱりそうか! 私 お迎えに参りました。」

<東京に住んでいる姉の暁子が 夫の会社の車を 回してくれていました>

茂「ええ車ですな~。」

布美枝「姉から 何も聞いとらんで すいませんでした。」

運転手「いやいや お姉さん お向かいに いらっしゃる おつもりが 急な ご都合で 来られなくなったそうですよ。」

布美枝「そげですか…。 でも よう 分かりましたね? 私達の事。」

運転手「はい。 『背が高いから すぐ分かる』と伺って… おっと! ハハハ! あ…。 どうぞ こちらに。」

布美枝「あ…。」

運転手「お姉様からの ご結婚の祝いです。」

布美枝「うわ~っ! きれい! これ 出窓に置いたら どげでしょう?」

茂「出窓?」

布美枝「写真で見ましたけん これ 置いたら すてきだが。」

茂「出窓? 出窓ねえ…。」

浦木「ゲゲ!」

布美枝「キャッ!」

浦木「あ~ すげえ車だなあ! 俺も乗せてくれ! な!」

運転手「お知り合いでした ご一緒に。」

茂「いえ まったく 知らん人です。 さ 行きましょう! 行きましょう!」

運転手「はい。」

茂「急いで 早く!」

浦木「お~い! なんて薄情な! ふ~ん それにしてもゲゲの奴 案外いい暮らし してやがんな。」

道中

運転手「奥さん ここが 丸の内です。」

布美枝「うわ~! ビルが いっぱいある。」

運転手「先に見えるのが 皇居です。」

布美枝「は~! ほんに東京なんだわあ! あの 東京タワーは どの辺りにあるんでしょうか?」

茂「ちっと 方角が違いますなあ。」

運転手「あ 回りましょうか?」

茂「いや 今日は 急いどるんで。 また 今度で ええですね。」

布美枝「あ はい。 私 こげな町に暮らすんだわ! は~!」

茂「うちは もっと ず~っと 奥の方ですけどねえ。」

運転手「私 調布の方は 余り走らないもので 近くになったら 道を教えて下さい。」

茂「はいはい。 しかし 車は ええもんですなあ。 道を歩いとる人より ちっと 偉くなった気がしますわ。」

運転手「これから どんどん増えますよ。 3年後の東京オリンピックに向けて 道路の整備も 進んでますからね。 調布の方も 随分 便利になったでしょう?」

茂「いやいや うちの方は まだまだ のどかなもので。」

運転手「ああ 武蔵野の面影を残す ですか? 風流ですなあ。」

茂「風流というのとは ちょっと違うかなあ。」

布美枝♬『楽し都 恋の都 夢のパラダイスよ 花の東京 楽し都 恋の都』

<ピカピカの車に乗って 東京の 真ん中を走り抜けていく。 夢のような出来事に 布美枝は 晴れがましい気持ちで いっぱいでした>

<ところが…>

運転手「まだ 先ですか?」

茂「もうすぐです。」

<華やかな都心を走り抜けると 車は どんどん 郊外に向かっていきました>

布美枝「東京にも こげに畑があるんですね?」

運転手「あ~っ!」

(急ブレーキ)

運転手「すいません!」

(牛の鳴き声)

茂「もう この先です。」

村井(水木)家

布美枝「あの~ ここですか?」

茂「ええ ここです。」

(カラスの鳴き声)

<それは 大変なボロ家でした>

布美枝「ここ? 嘘でしょ…。」

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