ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第25話「花と自転車」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】25話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)の調布での新婚生活が始まった。茂の暮らしは驚くほど貧しいものだった。商店街に出かけた布美枝は、買い物客のテンポの早さにめんくらい、いきなり引ったくりにあってしまう。犯人の原田(中本賢)を追いかけて、捕まえてくれた貸本屋の女主人・田中美智子(松坂慶子)との出会いが、布美枝の心に残る。

25話ネタバレ

水木家

仕事部屋

(カラスの鳴き声)

布美枝「あの~ お仕事中 すんません。」

(ペンを走らせる音)

布美枝「えっ?!」

茂「あれ? どげしました?」

(カラスの鳴き声)

布美枝「あ…。」

居間

茂「あんた 方向音痴ではないですな?」

布美枝「人並みだと思います。」

茂「うん じゃあ 一人で行けますな。」

布美枝「えっ… 一人でですか?」

茂「今 買い物に行く時間も 惜しいんです。 商店街に行けば 一とおりの物は 何でも そろいます。」

布美枝「はあ…。」

茂「迷ったら 『すずらん商店街は どこか』と聞けば 誰でも分かりますけん。 はい。」

布美枝「すずらん商店街…。」

茂「はい。」

布美枝「ここから どれくらい かかるんでしょうか? は…?」

布美枝「あっ 買い物籠…。 これ 借りますけん…。」

道中

布美枝「商店街なんて どこに あるん? はあ…。 畑ばっかり。 目印になるもん 何もないわ。 あの絵 何だったんだろう? ああ 遠いなあ…。」

<家の周りに 何でも そろっていた大塚と比べると 新居は 随分 不便な場所でした>

すずらん商店街

(自転車のベル)

男「ふらふらしてると危ないぞ!」

布美枝「すんません。」

(子供達の声)

スピーカー・女『何でも そろう 笑顔が集う お買い物なら すずらん 花咲く すずらん商店街』。

(ざわめき)

八百屋

八百屋「はい! おねえさん お待ち~!」

主婦1「リンゴも おいしそうね!」

八百屋「見てってくださいよ~! みんあ おいしいですよ!」

布美枝「うわ! ほんとに高いわ。」

八百屋「さあ~ 特売 特売~! 出てるだけ 値引き~!」

布美枝「よし 今夜は 大根煮て…。」

主婦2「あ~ら 特売だわ!」

主婦1「おじさん 2本 ちょうだい!」

八百屋「はい 分かりましたよ。」

主婦たち「私も! は~い! 私も! 早く 早く!」

八百屋「はい すいませんね。 順番 あ~ 順番に 順番です!」

主婦3「おじさん おじさん!」

八百屋「はい はい これね!」

魚屋

布美枝「何にしようかな?」

魚屋「らっしゃい。 奥さん 何にする?」

布美枝「う~ん うわ! 小さいシジミ!」

魚屋「普通だよ。」

布美枝「はあ…。」

主婦4「これ ちょうだい!」

魚屋「毎度っ!」

主婦5「あら 安いわ! これ ちょうだい!」

布美枝「これ 買いますけん!」

魚屋「はい シジミ~ 安いよ~!」

布美枝「お財布 お財布… あ…。」

主婦6「安いわ これ ちょうだい。」

布美枝「あった あった!」

魚屋「はい~!」

布美枝「また買えんだった…。」

<大塚の暮らししか知らない 布美枝は なかな買い物の 流れに乗れませんでした>

雑貨屋

布美枝「う~ん ちょっと 大きいかな…。」

雑貨屋「アッハ どうぞ どれも 手に取って見て下さい。」

布美枝「これも いいですねえ。」

雑貨屋「ええ。 これも ちっちゃくて かわいいですよねえ。」

布美枝「ねえ。」

スピーカー『スリや置き引きに 十分・・・』。

雑貨屋「ちょっと 大根とか 入りづらいかもしれないですね。」

布美枝「これが ええかも。」

雑貨屋「お目が高い。 これ 一番 安いんですよ。」

布美枝「ちょっと…。」

スピーカー『買い物中の 皆さまは スリや置き引きに 十分注意して下さい』。

主婦7「あら! ねえ あなたの バッグじゃないの?」

布美枝「え? あ ない! あっ あ! ちょっと 待って!」

道中

原田「うわ! やけに でっけえのが 追っかけてくる!」

布美枝「私のバッグ 返して!」

原田「この野郎! この野郎!」

布美枝「待ちなさ~い! 誰か その人 止めてえ~! 誰か~! その人 捕まえて~!」

田中美智子「あ! 泥棒だ!」

原田「ど ど どいて下さい…。 どいて下さい! あ ちょっと すいません! どいて下さい! ああ~! あっ てえ~!」

布美枝「私のバッグ!」

美智子「はい これ。」

布美枝「ありがとうございます!」

美智子「大丈夫? 他に 盗られたもんない?」

布美枝「はい 大丈夫です。 いけん 買った物 置きっぱなしだ…。」

美智子「あら? あなた これ!」

布美枝「黙って持ってきてしまった!」

美智子「あら まあ! 返さないと あなたが泥棒に なっちゃうわよ。」

布美枝「はい! あの お礼を。」

美智子「ううん いいから いいから 早く 行きなさい。」

布美枝「そしたら お金 払ったら すぐ戻ってきますけん。」

美智子「そんなに急がなくても 大丈夫よ~!」

原田「だっ だっ だ~!」

美智子「あ~っ! うちの商売もん こらっ 待て~!」

雑貨屋

布美枝「すんませんでした。」

雑貨屋「気にしないで下さい。 よかったですね。」

布美枝「ああ…。」

布美枝「あれ… もう おられん。 はあ… どげしよう。 名前も聞かんだった…。」

<東京第1日目にして いきなり 強烈な洗礼を浴びてしまった 布美枝でした>

水木家

居間

茂「置き引きですか。 まあ 何も盗られんで よかった。」

布美枝「東京は 怖いとこですね。 油断したら いけませんね。」

茂「お上りさんなのが 見透かされたんでしょうな。」

布美枝「(小声で)『だけん 一人で 行くのは 嫌だったのに…。』 私 すっかり慌ててしまって 助けて頂いた方に ちゃんと お礼も せんかったんです。 リュック背負って 風呂敷持って…。」

回想

美智子「大丈夫よ~!」

回想終了

布美枝「あの人 誰だろう…。 あの… どげですか?」

茂「え?」

布美枝「何が お好きか 分からんもんで。」

茂「ああ うまいですよ。」

布美枝「そげですか。 お店も 向こうと 売っとるもん ちょっこし 違っとりますし 何が ええのか迷ってしまって。」

茂「何でも ええです。 嫌いなもんは ないですけん。」

布美枝「あ そうだ…。 ご近所への挨拶は どげしましょう? 引っ越しの挨拶せんと いけんですよね。」

茂「気にせんでええですわ。」

布美枝「でも…。」

茂「みんな それぞれで やっとりますけん。 あっ! あ~あ~あ~! もう!」

布美枝「えっ?」

茂「あんた これにネギなんぞ 入れては いかん!」

布美枝「あ 買い物籠が 見当たらんかったもんですけん。 これが ちょうど ええかと…。」

茂「あんた これは 漫画を入れる 袋ですぞ。 においのつくものを 入れられては困ります! ああ ちょっこし におうなあ!」

布美枝「あ すみません。 よう洗って 干しときます!」

茂「そうして下さい。」

(置き時計の時報)

茂「あ いけん もう こんな時間だ! そしたら 俺は仕事があるんで。」

布美枝「え? まだ仕事ですか?」

茂「ええ。」

布美枝「何時頃に終わりますか? 家財道具や何かの事も ちょっこし相談…。」

茂「任せます。」

布美枝「え…。」

茂「今は 締め切りに向かって ばく進しとる時ですけん 他の事は考えられん。」

布美枝「はあ…。」

茂「1週間も帰省したのが 致命的でした。」

布美枝「致命的…?!」

茂「遅れを取り戻すには 猛ダッシュあるのみです!」

布美枝「お茶… 今 お茶入れますけん。 いけん。 お茶の葉 買い忘れた。 あ~あ…。 締め切りの事しか 言わん人だわ…。」

(置き時計の時報)

(ペンを走らせる音)

布美枝「まだ お仕事しとられる…。」

仕事部屋

茂「タッ はあ…。 はあ よし。 5ページ出来た。 はあ 朝までに 3ページやらんと どうにもならん。 ハックション! ゴホゴホ! ああ 火鉢はあれど 炭はなしか…。 はあ 明日は 猫でも捕まえて あんかの代わりにするか…。 フウ~。」

2階

布美枝「おばば。 しばらく ここで 我慢しちょってごしなさい。 旦那様が お仕事しとられるのに 先に寝る訳には いかんよね…。」

回想

茂「1週間も帰省したのが 致命的でした。」

回想終了

布美枝「何だか… 結婚した事 後悔されとるみたい…。 ♬『埴生の宿も わが宿 玉の装い うらやまじ 大塚のみんな… もう 寝たかなあ…。」

<不意に 寂しさが 込み上げてきました>

布美枝「しっかりしなきゃ。 ここで やっていくって 決めたんだけん。」

<もう 後戻りはできません。 でも 独りぼっちの寂しい夜が 東京暮らしの始まりかと思うと 布美枝は 少し 情けなく なってくるのでした>

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