連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】27話のネタバレです。
あらすじ
布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)の家に浦木(杉浦太陽)が、売れない漫画家の中森(中村靖日)を連れて来て、金の無い中森を安い家賃で住まわせてやってほしいという。収入が不安定な茂は、新婚家庭に見知らぬ同居人を置くという、むちゃな申し出を受け入れてしまう。
27話ネタバレ
田中家
布美枝「あ~!」
原田「ああっ!」
美智子「あらっ?」
<貸本屋に現れたのは 布美枝を助けてくれた恩人と 置き引きの男>
美智子「ここね うちの店なの。 こみち書房。 さあ 入って。」
布美枝「お邪魔します。」
美智子「はい どうぞ。 私ね 田中美智子。 ひっくり返して こ み ち。 ね 分かる?」
布美枝「ああ はい…。 あの この間は ありがとうございました。 戻ったら もう いらっしゃらなくて。」
美智子「あれから 大変だったのよ。 この人 私の風呂敷包み抱えて 逃げちゃったの。 それで 後 追いかけてったの。」
原田「どうも 面目ない事です。」
美智子「風呂敷の中が 本でしょう。 持ち逃げするには 重すぎたわね。」
原田「へへへ。」
布美枝「本ですか?」
美智子「問屋に行って 貸本 仕入れてきたとこだったのよ。」
原田「これ。 これなんですよ。 ほら これ 重くて しょうがない。 ヘヘヘッ。」
美智子「風呂敷 抱えたまま 走るもんだから とうとう 私に追いつかれちゃって。」
原田「奥さん 足 速いんだもんなあ。」
美智子「そうよ。 昔は リレーの選手だったからね。」
原田「あ~ それは かなわねえや。 ハハハハ。」
布美枝「でも なして この人が ここに おるんですか?」
美智子「それなんだけどね。(せきばらい) 今度だけ 見逃してあげて もらえないかな?」
原田「どうか 勘弁してやって下さい。」
美智子「私もね お巡りさんに 連れていこうと思ったのよ。 けど 話 聞いてみたら この人も 気の毒でね。 一文無しで 3日も食べてないって 泣くのよ。」
布美枝「はあ…。」
原田「あん時は あんまりにも腹が減って つい 出来心で…。」
(テーブルを叩く音)
美智子「『つい』じゃ すまないのよ!」
原田「すいません。」
美智子「『田舎に家族もいる』って言うし 前科が ついちゃ かわいそうじゃない?」
布美枝「はあ。」
美智子「で うちで しばらく働く事を 条件に 水に流す事にした訳。 今回だけ 見逃してくれないかなあ?」
キヨ「盗っ人に 飯まで 食わせてさ。 あきれるよねえ。」
美智子「おばあちゃん お茶 入れるんだったら お客さんの分も お願いね。」
キヨ「ああ… 嫌だ 嫌だ。 年 取ると 嫁にまで こき使われるよ。」
美智子「どうかな?」
布美枝「お陰さまで 何にも 盗られませんでしたけん 私は 別に…。」
美智子「そう。 ありがとう。」
原田「ありがとうございます。 一生 恩に着ます。」
布美枝「いや そんな。」
原田「奥さん それじゃ 俺 本 作りますんで。」
美智子「うん。」
原田「ありがとうございました。」
キヨ「あんた この近くの人かい?」
布美枝「あ はい。」
キヨ「それにしちゃ 見慣れない顔だね。」
布美枝「越してきたばかりですけん。」
美智子「そう。 いつ来たの? こっち。」
布美枝「実は おととい。 あの朝 こっちに…。」
美智子「あらっ! じゃ 着いたその日に 置き引きに遭った訳? 災難だったねえ。」
原田「ああ 通りで モタモタしてる訳だ。」
美智子「こらっ!」
布美枝「あれ? 買ってきたばかりの本を 穴開けてしまうんですか?」
美智子「貸本 借りた事ない?」
布美枝「近くに なかったもんですから。」
美智子「1冊の本を 何十人もの人が 読むでしょう。 だから 本が ボロボロにならないよう 補強しなきゃならないの。 穴開けて 厚紙あてて 糸で かがり直すのよ。 それから カバーかけたり 貸出票 付けたりね。」
キヨ「手間ばっかりかかってさあ。 こんな事なら 昔のまま 食堂をやってた方が ましだったねえ。」
美智子「また そんな事 言って。」
布美枝「貸本漫画と 雑誌の漫画は 別のものなんですか?」
美智子「そうねえ。 貸本漫画は 貸本屋だけに 置いてある本だからね。 あなた 漫画 読むの?」
布美枝「あ… いえ…。」
三浦徳子「美智子さ~ん いる? 『主婦の手帖』 新しいの入った~?」
美智子「は~い。」
キヨ「やれやれ また お仲間が来た。」
こみち書房
美智子「今朝 入ったんだけど さっき 借りられちゃった。」
徳子「あら~ 残念。 ねえねえ まだ いるの? 例の置き引きの人。」
美智子「今ね 手伝ってもらってるとこ。」
山田和枝「こんにちは~。」
美智子「いらっしゃい。」
和枝「あ~ら 徳子さん 来てたの? あ 美智子さん 切り干し大根の いいのが 入ったから ちょっと おすそ分け。」
美智子「悪いわね。」
徳子「まだいるんだってよ。 置き引きの男。」
2人「え~っ!」
美智子「声が大きい。」
松井靖代「あんた 大丈夫なの? また 用心しないと やられるよ。」
美智子「そんな人じゃないんだって。」
キヨ「床屋と 乾物屋と 銭湯のおかみさん。 毎日 うちに来ちゃ 油 売っていくんだよ。 ああ… 店番すると 冷えて リューマチが出る。」
布美枝「リューマチ?」
キヨ「ああ もう これだから 貸本屋は 嫌なんだ。」
徳子「高橋さんとこ テレビ買ったんだって。 さっき 店に来て 自慢してった。」
靖代「よろめきドラマでも見るのよ。 いいご身分だね。」
和枝「徳子さんの店も テレビ置きゃ もっと客が増えるんじゃないの。」
徳子「暇な床屋で 悪うござんした。」
布美枝「あの 今日は これで。 ありがとうございました。」
(一同 会話に夢中になる)
布美枝「(大きな声で)あの~!」
靖代「ねえ どなた? こちら。」
美智子「あっ この人よ。 おととい 置き引きに遭った人。」
3人「あ~あ。」
美智子「こっちに出てきたばっかり なんだって。 あっ 田舎どこ?」
布美枝「安来です。 島根の…。」
和枝「安来ったら あれでしょう? ドジョウすくい?」
徳子「うんうん。」
靖代「去年の町内忘年会で うちの亭主が躍ったヤツ。」
美智子「あれ 笑ったわ。」
徳子「あれっ どうかした? ぼ~っとしちゃって。」
和枝「あら 随分 背が高いのね。」
靖代「ほんとだ…。」
美智子「ちょっと ちょっと もう…。 今度 本借りに いらっしゃいよ。 えっと 名前は…?」
布美枝「飯田… あ 違った。 村井… 村井布美枝です。」
美智子「村井さんね。 うちね 会員制だから 米殻通帳か何か 住所が分かるもん持ってきて。」
布美枝「はい。」
八百屋
布美枝「何 しよっかな…。」
八百屋「何にする?」
こみち書房
徳子「なんだか ぼんやりした子ね~。」
靖代「島根から出てきたって 旦那の転勤か何か?」
美智子「さあ どうだろ。 今度 来たら 聞いてみる。」
子供の客「おばちゃん こんにちは。」
美智子「いらっしゃい。」
靖代「やだ もう こんな時間だ。 銭湯 開けなきゃ。」
和枝「店に戻って 商売商売。」
徳子「美智子さん 『主婦の手帖』 戻ってきたら よけといて。 次 借りるから。」
美智子「うん 分かった。」
和枝「ごちそうさま。」
靖代「僕達 漫画ばっかり読んでないで 勉強もしなさいよ。」
徳子「そうよ。」
子供の客「これ お願いします。」
美智子「は~い。」
<昭和30年代半ば 本を買うのは まだ ぜいたくな事でした。 一日10円で 新刊が借りられる 貸本屋は 人気があって 全国で 3万軒もの店が あったそうです。 貸本屋は 大人も子供も やってくる 町の社交場でも ありました>
水木家
玄関
<さて その翌日…>
(猫の鳴き声)
布美枝「あらっ この間の猫。」
(猫の鳴き声)
布美枝「すっかり 怖がっとる。 おいで おいで おいで…。 あ~ 行ってしまった。」
浦木「うわ~っ 痛い! 痛い! うわ~っ。」
(悲鳴と猫の鳴き声)
布美枝「あっ イタチさん。 じゃなくて えっと…。」
浦木「浦木です。 …俺 猫嫌い。 あ~。」
<現れたのは イタチ。 いえ 上京する列車の中で出会った 茂の幼なじみの 浦木克夫でした>
居間
浦木「なかなか結構な お住まいだね。」
茂「そうでもない。」
浦木「2階は どうなっとる? ちょっと拝見。」
布美枝「あっ あの…。 上は 散らかっとりますけん…。」
浦木「いやいや お構いなく。」
茂「2階は 4畳半と3畳。 何も珍しいもんはない。」
浦木「ふ~ん。」
茂「おい イタチ。 俺は 締め切りで忙しいんだ。 急ぐ 用じゃないなら 出直してくれ。」
中森恒夫「あの~…。」
茂「この人 どちらさん?」
浦木「おお。 貸本漫画家の中森恒夫さんだ。 実は この御仁の事で 頼みたい事があるんだが。 中森さんは 大阪の漫画界で 活躍しておられたんだが 汽車の中でも話したとおり 大阪の業界は 壊滅的だ。 そこで 新規まき直しを図ろうと 妻子を 実家に戻し 単身 東京に出てきたという訳だ。」
中森「家族がおっては とても やっていけません。 日々 貧乏との闘いです …実に厳しいもんです。」
茂「分かります…。」
浦木「分かるだろ。 そこでだ。 中森さんを この家に 置いてもらえないか?」
茂「はあ~?」
布美枝「ええ?!」
茂「バカな事 言うな! うちは アパートでも 下宿屋でもないぞ!」
浦木「まあ 聞け。 『手頃な賃間はないか』と 中森さんから 相談を受けたんだが どこも 敷金だの 礼金だの ようけ取るだろう?」
茂「ああ。 あんなものは 不動産屋を もうけさせるためのムダ金だ。 知り合い同士 家賃のやり取りだけすれば ムダな金は 使わんで済む。」
茂「こんな小さい家の どこを貸すって言うんだよ。」
布美枝「小さな家ですけん。」
浦木「夫婦二人なら この1階で 十分 間に合うだろう。 2階 貸てやってくれ。」
茂「えっ? うちは 玄関も流しも 便所も1つで 人に貸すような作りじゃない。」
布美枝「何でも 1つですけん。」
浦木「ああ 構わんよ。 ねえ 中森さん。」
中森「はい? ああ… もちろん。」
茂「幾らなんでも… こげな事に なったばかりで…。」
浦木「まあ 新婚家庭には 不粋な お願いだろうが…。 同業者が困っとるんだぞ 見捨てるのか? 『明日は我が身』という 言葉もあるぞ。 タダでと言う訳じゃなし。 中森さんには 住む所ができる。 お前には 毎月 決まった家賃が入る。 両方 得する話じゃないか。」
布美枝「でも ろくに お世話もできませんし…。」
浦木「賄いは いりませんよ。 奥さんの手を 煩わせる事は ありません。 ねえ 中森さん。」
中森「はい。 部屋さえ貸して頂ければ それで…。」
茂「お前 何か たくらんでおるだろう。」
浦木「まさか。 俺は 純粋な 親切心でやってるんだ。 原稿料は いつ入るか分からんが 家賃は 決まって入る 固定収入だぞ。 どうだ。 お前にとっても いい話だろ? ん?」
茂「う~ん…。」
(ちゃぶだいを叩く音)
茂「よし。 貸そう!」
布美枝「ええっ!」
中森「ありがとうございます。 ありがとうございます。」
<スタートしたばかりの新婚家庭に えたいの知れない間借り人を 置くなんて…。 茂は何を考えているのか 布美枝には さっぱり分かりませんでした>
布美枝「これ どげしよう。 おばばの居場所も なくなってしまった…。 村井さん 一体 どういうつもりなんかね?」