連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】28話のネタバレです。
あらすじ
布美枝(松下奈緒)は、茂(向井理)と中森(中村靖日)の近くにいることで、茂の暮らしが思った以上に厳しいものであることがわかってきた。布美枝は散らかり放題の茂の部屋を良かれと思って掃除するが、茂からそのことを強くしかられ、夫婦の間にはぎくしゃくした空気が漂う。
28話ネタバレ
水木家
布美枝「村井さん 一体 何 考えとるんかね?」
<浦木の紹介で 2階に住む事になった 貸本漫画家の中森は その日の撃ちに 引っ越してきました>
中森「あとは自分で運びますんで。」
布美枝「これ どげしましょう?」
茂「ああ 後で 奥の押し入れを 片づければ 少しは なんとか。」
布美枝「あの…。」
茂「はい。」
布美枝「新しく住む所が見つかったら 引っ越して頂けるんでしょうか?」
茂「いや 当分 いてもらいます。」
布美枝「家が見つからなくて お困りなのは よく分かります。 けど… いきなり知らん人と 一緒に住むのは ちょっと…。」
茂「う~ん しかし 『背に腹は かえられん』ので。」
布美枝「え?」
茂「前払いで家賃を入れてもらえば 助かります。 今 金がないのです。」
布美枝「今月は厳しくても 貯金を切り崩すとかして しのげんのでしょうか?」
茂「貯金? ハッハハハ! そげなもんは ありません。」
布美枝「ない?!」
茂「ありません。」
布美枝「全然 ないんですか…?」
茂「まったく!」
(カラスの鳴き声)
布美枝「そしたら 月々の やりくりは どげしたら…。」
茂「原稿 描いて持っていったら その場で金になります。 食っていけるかどうかは 毎月毎月の勝負です。 大丈夫です。 描けば ええのです。」
中森「あの…。」
布美枝「はい。」
中森「お世話になります。 ハハハ…。 お水 頂いても よろしいですか?」
布美枝「あ… はい。」
中森「電熱器が ありますから 煮炊きは 上で できますんで 水だけ汲ませて下さい。 そしたら 今月分 先払いという事で…。」
茂「はい 失礼して。 確かに。 え~ 水道代と電気代は 請求額の2割を持って頂く という事で どげでしょう?」
中森「ああ 結構です。」
茂「じゃあ 決まりですな。」
中森「ところで 村井さん 研草堂出版に ツテは ないですか? 明日にでも 売り込みに行こうと 思っているのですが。」
茂「研草… ああ 確か 先月 つぶれましたわ。」
中森「えっ?! そしたら むささび書房は?」
茂「むささびは まだ なんとか…。 あ~ しかし 近頃は払いを値切ります。」
中森「弱ったなあ。 東京に来たら まだまだ 貸本漫画も いけると思ってましたが 値切られますかあ…。」
茂「値切られるだけなら まだしも ヒット作を描かんと干されます。」
中森「干されますかあ…。」
茂「大手出版が続々と漫画雑誌を 出してきて 貸本漫画は 劣勢に 立たされとりますからなあ! ああ! こうしては おられん。 締め切りを守らん者(もん)も干されます。 描き続けなければ どうにもならんですよ。 ハハハハ!」
布美枝「あ あの…。」
中森「あ はい?」
布美枝「貸本漫画と 雑誌に載っとる漫画は 何が違うんでしょうか?」
中森「奥さん。 一流雑誌に載る漫画と 私らの貸本漫画とでは… 原稿料が まるで違うのです!」
布美枝「でも 一冊描いたら 3万円だと…。」
中森「いや~ まあまあ そういう時も ありましたが 近頃はいけません。 それに なかなか数は 描けないもんです。 漫画は 骨の折れる 仕事ですから。 ハハハハ…。 奥さん? お水を…。」
布美枝「あ…。」
<茂の暮らしが 思っていた以上に 厳しいものだという事が 布美枝にも はっきり分かってきました>
布美枝「家から持ってきた分と 頂いた家賃を足して…。 節約すれば 当分いけるわ。」
(ペンを走らせる音)
布美枝「毎日毎日 朝まで お仕事で 話も できん…。 あんなに働いとるのに 何で お金に ならんのだろう?」
玄関前
布美枝「あ… お出かけですか?」
茂「あ 水道橋の出版社まで 原稿 届けに行ってきます。」
布美枝「そしたら 漫画 出来上がったんですか?」
茂「はい。 今日は金が入りますよ!」
布美枝「お疲れさまでした!」
茂「行ってきます。」
布美枝「行ってらっしゃい! ああ… こんなとこに。」
居間
布美枝「♬『埴生の宿も わが宿 玉の装』 たまには空気 入れ替えんと。 うん! うわぁ…。」
仕事部屋
布美枝「これは ちょっと 片づけんといけんわ…!」
富田書房
茂「よし…! ああ どうも…。」
(電車の走行音)
茂「幽霊賊の死体から生まれた赤ん坊 墓場で生まれたので 『墓場の鬼太郎』。」
富田盛夫「ふ~ん。 鬼太郎ねえ。」
茂「鬼太郎の おやじは せがれの事が 心配で 目玉だけになっても 生きようとするんです。 目玉の おやじ そう 『目玉親父』です! 子供の 行く末を案じた親の執念が 目玉に籠もった訳です。」
富田「どうして目玉が しゃべんの? 口もないのに。」
茂「はあ…。」
富田「鬼太郎は ひねた子供だねえ。 水木さんさ こうして次号予告 描いてくれてるけども。」
茂「ええ 次号の話は もう ここに出来上がっております。 鬼太郎の正体を知るために 地獄に行った男が その…。」
富田「この話は もう打ち切り。」
茂「え?」
富田「分かんないの? おしまい。 ジ エンド。」
茂「いや 富田さん 『墓場鬼太郎』シリーズは 怪奇漫画短編集 『妖奇伝』の目玉ですよ! これがなかったら 『妖奇伝』は どうなるんですか?」
富田「水木さん あんたに だまされたよ。」
茂「は?」
富田「あんたが 『怪奇漫画短編集を 売り出せば 絶対に受ける』って 言うから 表紙の絵も 巻頭の64ページの漫画も あんたに頼んで 編集まで任したよね。」
茂「はい。 引き受けました。」
富田「ちょっと こっち。 その結果が これ! 分かる? 返品の山だよ! 『こんな気色の悪いもの 子供に受けない』って 取り次ぎから 苦情が殺到したんだよ!」
富田「だから この『妖奇伝』は もう おしまい! 怪奇物は もう真っ平。 この次も 戦争物で お願いします! 戦記物だったら まだ そこそこ売れてるんだから。」
茂「しかし 第1号だけで判断するのは もう少し 長い目で見て…。」
富田「長い目で見てたらね うちみたいな零細はねえ つぶれちゃうの。」
茂「しかし 読者は次を待っとる訳で。」
富田「鈴木君 ちょっと あれ 見せてあげて。」
鈴木「は~い。」
富田「こっちもね 『気色が悪くて 飯は のどを通らない』。 『子供が 夜泣きした 熱 出した うなされた』。 苦情ばっかりだよ!」
茂「うわっ…。」
富田「貸本漫画の出版なんて 利の薄い商売。 一発失敗作 出しただけで 経営は大打撃だ。 それだったって ここんとこ 大手から 漫画雑誌が 次々と出版されてて 貸本業界は アップアップなんだ! 次は戦記物。 うちは あんたの 漫画は 戦記物しか出さない!」
茂「それじゃ この分の原稿料を。」
富田「ふん… ほんとだったらね 返品の分 負担してもらいたい ぐらいなんだよね!」
<貸本漫画専門の出版社は ほとんどが 吹けば飛ぶような 零細企業でした>
茂「まあ しかたねえか…。」
(ノック)
戌井慎二「失礼します。」
富田「スリラー漫画も ひところほどは 売れんからねえ。」
戌井「はあ…。 あっ。」
富田「そんな売れない漫画 読んでも 参考には ならんよ。」
戌井「これ…。」
富田「どうしたの?」
戌井「何なんだ これは~?!」
質屋
茂「こんちは!」
亀田「はい ラジオ。」
茂「おおっ 久方ぶりのご対面!」
亀田「原稿料 入ったんだ?」
茂「ええ まあ。」
亀田「背広は どうする? ボヤボヤしてたら じき流れちまうよ。」
茂「背広かあ… もうちょっと 止めておいて下さい。」
亀田「しかたないな。 あ そういや あれ どうした?」
茂「え?」
亀田「見合い。 『田舎 帰って 見合いする』って 言ってたじゃない。 決まったの?」
茂「ああ 決まりました。」
亀田「へえ! そりゃ よかった …で いつ?」
茂「は?」
亀田「結婚式だよ。」
茂「もう 済ませました。」
亀田「え~?!」
茂「ろくに 相手もしてやれんので せめて ラジオでもと。」
亀田「ふ~ん。 じゃ もう 嫁さん 家にいるんだ。」
茂「そうだ! ここは ひとつ 結婚祝として 預けてある レコードとプレーヤーも 出して頂く訳には。」
亀田「何で 私が そこまで?」
茂「そうですよね ハハハハ!」
亀田「ハハハハハ! ハハハーン…。」
茂「おっ これは ええなあ。」
亀田「あ それは出物だよ。 中古だけど まだ そんなに乗ってない。」
茂「うちのは もう ボロだし… そろそろ 買い替え時かな。 また 次にするか…。」
水木家
布美枝「うわっ ラジオ! あ~ これ 欲しかったんです。 一人は寂しくて。 あっ…。」
茂「ほったらかして すまんかったですね。」
布美枝「いえ お仕事が大事ですけん。」
(ラジオのノイズ)
♬~(ラジオ『ダイアナ』)
茂「あっ!」
(カラスの鳴き声)
茂「これ… どげした?」
布美枝「お留守の間に 空気を入れ替え ついでに ちょっこし 片づけときました。」
茂「何で 余計な事 するんだ…。」
布美枝「え?」
茂「仕事のものに 勝手に触っては いけん!」