ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第2話「ふるさとは安来」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】2話のネタバレです。

あらすじ

安来まで行ったその帰路、布美枝(菊池和澄)は妖怪に追いかけられ、見知らぬひとりの少年に助けられる。生まれ育った町を初めて飛び出して体験したその不思議な出来事は、布美枝に新鮮な驚きをもたらした。一方そのころ、大塚の飯田家では、源兵衛(大杉漣)、ミヤコ(古手川祐子)、登志(野際陽子)、そして布美枝の姉妹たちが、布美枝の姿が見えなくなったことで大騒ぎをしていた。

2話ネタバレ

道中の森

(草履の足音)

布美枝「何か おる。」

(足音と笑い声)

布美枝「いや~! いや!」

少年「うわ! 何だ?」

(セミの鳴き声)

少年「どげした?」

布美枝「何か おる。」

少年「え?」

布美枝「後ろから 追ってくるよ。」

少年「誰も おらんがな。」

布美枝「ピタピタって 足音がする。」

少年「ははん。 お前 『べとべとさん』に つけられちょ~な?」

布美枝「『べとべとさん』?」

少年「こっちに来いや。 いいか 振り向いたら いけんぞ。」

(足音)

少年「『べとべとさん』 先へ 起こし」

(足音)

少年「行ったようだが。」

布美枝「今の何? お化け?」

少年「幽霊か 妖怪か分からん。 けど 何もおらんのに 草履の音だけがついてくる時は『べとべとさん』 先へお越し って 道を譲れば 先に行ってくれるわ。」

布美枝「あ…。」

少年「お前 迷子か?」

布美枝「うちに帰るとこ。」

少年「帰り道 分かるのか?」

布美枝「うん。 行く時は 右に富士が見えたけん 左に富士が見えるように行ったら 帰れる。」

少年「賢いなあ。 そんなら気ぃつけてな。」

(お腹が鳴る音)

濱乃屋

輝子「女の子? 幾つくらい?」

店員「そげですな 7つか8つの ひょろ~っとした子でしたわ。」

輝子「布美枝だろうか 名前 聞かなかったかね?」

店員「何だい ハキハキせん子でしたわ。」

輝子「布美枝?」

道中の森

少年「ほれ! 遠慮せんで 食え。」

布美枝「けど 早(はや)こと 帰らんと。」

少年「腹ペコで歩いちょ~と 『ひだる神(がみ)』に 取りつかれ~ぞ。」

布美枝「『ひだる神』って 何?」

少年「腹を減らした者に取りつく 妖怪だが。」

布美枝「取りつかれたら どげんなるかね?」

少年「動けなくなる。 行き倒れだな。」

布美枝「怖いが。」

少年「大丈夫。 芋を食うとれば 怖い事ないけん。」

布美枝「そげなもん ほんとに おるかね?」

少年「おるよ。 『べとべとさん』も『ひだる神』も 目には見えんけど ちゃんとおる。」

布美枝「見えんけど おる。 あの音も そうかな? どすんどすん バラバラと 天井から 音がしたがね。」

少年「お前の家には『あずきはかり』が 住んどるのかもしれんな。」

布美枝「『あずきはかり』? それ 怖いもんかね?」

少年「ちっと騒がしいが 悪さは せんよ。 こげな恰好 しよる。」

布美枝「あんまり 怖くないがね。」

少年「うん。」

友人1「お~い! はよ来んかね。」

少年「友達が呼んどるわ。 ほんなら 俺は行くけん。 気をつけて帰れよ。」

友人2『しげ 何しちょっただ?」

少年「そこで『べとべとさん』に会ったぞ。」

友人3「しげが また 妙な事 言っちょ~だ!」

少年「ほんとの事だが。」

友人達「しげの事だけんな そげだ そげだ はよ行こ!」

(足音と笑い声)

飯田呉服店

客1「あれもええだども やっぱり こっちがええがなあ!」

客2「これ 幾らですかいね?」

源兵衛「4円50銭です。」

客1「高えなあ。 うち帰って おとうちゃんに相談してみんと 決められんわ。」

源兵衛「あは…。 ぐずぐず 見るだけ見て 何も買ってござん。 女相手の商売は これだけん 好かんわ。」

輝子「兄さん 布美枝 家におる?」

暁子「部屋には おらんよ。」

輝子「そうなら うちに来たの やっぱり 布美枝だろうか…。」

ミヤコ「まさか あの子 大塚から 一歩も出た事ないけんね。 一人で 港まで行ける訳ないわ。」

源兵衛「どっか その辺で遊んどるわ。」

ミヤコ「うん。」

登志「あれ? そげいえば 昼前から 布美枝を見ちょらん気がするね。」

ミヤコ「そげでしたかいね?」

登志「うん。」

源兵衛「お前やち 見ちょらんか?」

暁子「見ちょらん。」

源兵衛「何だ。 姉なら姉らしく 妹の面倒 見ちょれ!」

ユキエ「むちゃ言わんで。 私ら 裁縫に行っちょっただけ。」

源兵衛「ユキエ 口答えするな!」

ミヤコ「布美枝 あんたのとこに何しに…?」

輝子「それが分からんが。 店の者に これ渡して帰ったげな。」

源兵衛「キャラメル?」

登志「ああ そげいえば 今朝 朝げの支度しちょう時に 布美枝が これ持ってきて…。」

回想

布美枝「おばば ほら 皆勤賞だよ。」

登志「ああ よかったな。」

布美枝「ちっとも 聞いちょらん!」

回想終了

ミヤコ「あ~! 持っちょいましたね。 ラジオ体操でもらったと言って。」

輝子「それを 何で うちまで 持ってきたんかね?」

ユキエ「あ 分かった。 叔母さんに 褒めてもらいに 行ったんだが。」

暁子「そげだわ。 皆勤賞もらっても うちでは 誰も褒めてやらんけん。」

源兵衛「なして ちゃんと 話 聞いてやらん?」

ミヤコ「あの子 忙しい時に限って モショモショ言うもんですけん。」

源兵衛「この だらす! 母親のくせに 気ぃつけ~だぞ!」

ミヤコ「すいません。」

輝子「けど なして戻ってこんかいね?」

源兵衛「道に 迷ったかいな?」

ユキエ「もしかして 家出したと違うかね?」

一同「え?」

源兵衛「だらず言うな! 大体 お前やちゃ 何で布美枝が おらん事に 今まで気が付かん?」

ユキエ「自分だって。」

2人「ねえ。」

源兵衛「わし ちょっと 駐在へ行ってくる。」

ミヤコ「消防団に 捜索 頼んだ方がええですかね?」

源兵衛「ああ そげだな。 よし お前は 消防に走れ!」

ミヤコ「はい。」

登志「まあ 待つだわ! そげに騒がんでも もう戻るわね。 行きは 1人で行ったんだけん。」

源兵衛「いや あれは ぼや~っとした子 だけん 安心は できんが。」

登志「輝子さん あんた ここまで どげして来たの?」

輝子「バスに 乗って。」

登志「ああ そげなら 途中で 追い越してしまったんだわね。」

ミヤコ「ああ そげですね 子供の足ですけんね。」

源兵衛「何を ぐちゃぐちゃ言っちょ~! わし あの 駐在 行って…。 お前やちも ぼやっとしとらんで 早(はや)う 外を捜せ!」

源兵衛「布美枝!」

哲也「布美枝!」

源兵衛「布美枝」

暁子「フミちゃ~ん。」

哲也「あれ? 布美枝でねか。」

源兵衛「布美枝 お前 何しちょ~だ?」

布美枝「お父さん。」

輝子「布美枝!」

布美枝「叔母ちゃん 何で うちにおるの?」

輝子「よかった~!」

ミヤコ「あんた どこに おったの?」

布美枝「港に 行っちょっ…。」

源兵衛「だら! 1人で 何しちょっただ!」

登志「港に 何しに行ったかね?」

布美枝「叔母ちゃん 風邪 ひいちょったでしょ?」

輝子「ああ この間 うち ひいちょったよ。」

布美枝「魚屋のおっちゃんから そげ聞いたけん。」

登志「そな お見舞いに行ったかね?」

布美枝「うん。 キャラメル 食べたら 叔母ちゃん 元気になるかなと思って。」

輝子「布美枝…。」

源兵衛「そげでも 1人で行く奴 おるか!」

ミヤコ「着物 汚れちょ~ね! 転んだがや? 中入って 着替えよ。 黙って 遠くに行ったら いけんよ。 みんな がいに 心配しちょったんだけん。」

布美枝「ごめんなさい。」

ミヤコ「うん。」

ユキエ「ほんとは 輝子叔母ちゃんが 來るまで フミちゃんがおらん事に 誰も 気づいちょらんだったんだよ!」

源兵衛「つまらん事 言うだね!」

寝室

<おとなしい布美枝は 大家族の中で ちょっと 影の薄い存在なのでした>

登志「『とんと昔が あったげな。 出雲富士の赤池に住む 大きな蛇が 村の器量よしの 娘に ほれて 『嫁にくれねば 村を水に 沈め~ぞ』と言ったげな。 娘は 嫁入り道具に ひょうたん 100個 持って お山に登ったんだと』。」

貴司「馬で行ったかや?」

哲也「し~っ 黙って聞け。」

登志「『娘は 100個のひょうたんを 池に浮かべて【これ 全部 沈めたら お前の嫁になる】て言ったげな。 大蛇は こっちの ひょうたんを 沈めると あっちの ひょうたんが ぷか~。 あっちを沈めると こっちの ひょうたんが ぷか~。 沈めても 沈めても 浮かんでく~けん 大蛇は くたびれ果てて とうとう 死んでしまったげな』。 こっぽし。」

布美枝「おばば。」

登志「ん?」

布美枝「長い話して。」

登志「長い話か。 よ~し 今日のは 長いぞ 天からな 長い長い長~い 長~い フンドシが…。」

居間

源兵衛「布美枝の奴 おっとり者(もん)だと 思ってたが 意外と 肝の太いとこが あるな。」

ミヤコ「何ですかね?」

源兵衛「7つの子が 1人で 港まで どげして 行ったもんだろうか?」

ミヤコ「輝子が心配で 夢中で 駆けていったんですわ。 優しい気持ちからした事ですけん もう 叱らんでごしない。」

源兵衛「いや…。」

ミヤコ「ひょっとして ほんとは 家出だったのかも。 手のかからん子ですけん つい ほっといて そ~で 寂しなって。」

源兵衛「つまらん事 言うな!」

ミヤコ「すんません。」

源兵衛「おお そげだ! わし 今度 米子で 金物の店を始めるけんな。」

ミヤコ「またですか?」

源兵衛「またとは 何だ?」

ミヤコ「この間 炭焼き始めたばっかりで その前は 小間物店…。 呉服屋は どげんなるんですか?」

源兵衛「ごちゃごちゃ言わんで 黙っちょれ! この ご時世だ。 いろいろ 手を広げにゃ 食っていけんわ。」

ミヤコ「(ため息)」

源兵衛「お茶!」

寝室

(虫の鳴き声)

登志「あ…。」

布美枝「おばば!」

登志「うん! 何だ まだ起きとったのか。」

布美枝「あのね 今日『べとべとさん』に 会ったよ。」

登志「『べとべとさん』?」

布美枝「草履の音が 後ろからついてきた。 でも 振り向いても誰もおらん。」

登志「ほう~! それで お前は どげんした?」

布美枝「『べとべとさん』先へお越しって 言ったら 何だいせんで 先に行ってくれた。」

登志「へえ~ そげな まじない よう知っとったな。 怖かったろ?」

布美枝「うん けど ちょっこし面白かった。」

登志「面白かった?」

布美枝「おばばの話と一緒だね。 大蛇や 狐や お化けの話は 怖いけど 面白いもん。 早く続きが 聞きたくなる。」

登志「フフフ! 怖いもんは 面白いか。 布美枝は よう分かっちょ~わ。」

布美枝「うちにも おるかもしれんよ。」

登志「ん?」

布美枝「『あずきはかり』。」

登志「『あずきはかり』?」

布美枝「見えんけど おる。」

登志「見えんけどおる。 う~ん そうか。 さあ もう おやすみ。 いつまでも起きとると 幽霊が 足の裏 ぺろ~っと なめぇぞ。」

布美枝「嫌だ。」

登志「おやすみ。」

布美枝「おやすみ。」

登志「よっこいしょっと…。」

<この日の小さな冒険は 7歳の布美枝に 2つの新しい世界を 見せてくれました。 1つは 初めて行った よその町 もう一つは 目に見えないものの住む 不二義な世界でした>

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