ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第30話「花と自転車」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】30話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)が茂(向井理)に連れて行かれたのは、調布の深大寺だった。お互いのことを何も知らずに結婚したふたりにとって、それは初めてのデートだった。お見合いのときのお互いの印象を語り合うふたり。ようやく夫婦らしい雰囲気になりかける布美枝と茂だった。

30話ネタバレ

サイクリング

布美枝「どこまで行くんですか?」

茂「ええとこが あるんですよ。」

<茂が案内してくれたのは 豊かな木々に囲まれた 深大寺という 古いお寺でした>

調布市・深大寺

茂「ここは 天平時代からある 寺だぞうです。」

布美枝「天平時代? どらぐらい前なんですか?」

茂「え~ ざっと 1,200年前かな。」

布美枝「まあ そげに 昔!」

布美枝「静かなとこですね。」

茂「元は 武蔵野の雑木林です。」

布美枝「東京にも まだ こげな所が あるんですね。 布美枝「どこ歩いても 水の音がしますね。」

茂「ええ。」

布美枝「水 どこから 流れてくるんでしょう?」

茂「わき水ですけん 土の底から あふれてくるんでしょう。」

布美枝「土の底から?」

茂「土の底から わいて せせらぎになって 多摩川まで流れていくんですよ。」

布美枝「ええもんですね。 水の流れる音って…。」

茂「そげですな。」

<見合いから たった5日で 交際期間もなく結婚した 布美枝と茂です。 2人にとっては これが 初めてのデートでした>

布美枝「お兄さんが言ってた 深大寺のそばって これですね? 出雲と深大寺 そばつながりで ご縁があるみたい。 あっ! かわいらしい!」

店員「いらっしゃい。 それ 赤駒っていうんですよ。」

布美枝「赤駒?」

店員「素朴なもんなんですけどね。 この辺だけの土産物です。」

布美枝「へえ~ よう出来とりますねえ。」

茂「買いましょうか?」

布美枝「え?」

茂「気に入ったようだから。」

布美枝「はい!」

茂「これ ください。」

店員「ありがとうございます。 お二人は ご夫婦?」

茂「ええ まあ。」

店員「だったら 深大寺にお参りするのは とっても いいんですよ。 ここは 縁結びのお寺ですから。」

茂「ああ そうでしたね。」

布美枝「縁結びのお寺か…。」

<故郷を思わせる豊かな木々 優しい水の音 名物のそば…。 布美枝は 自分と この場所 そして 一緒にいる茂が ご縁の糸で結ばれているような 気がしました>

茂「ここは 自転車で来るのに ちょうど ええんですよ。」

布美枝「そういえば… お見合いの時 聞かれましたよね。 『自転車には 乗れますか?』って。」

茂「ああ あの時は それだけ分かれば ええと思ったんですわ。」

布美枝「それだけ? …自転車に乗れる人 探しておられたんですか?」

茂「いや~ ハハハ。 襖の透き間から 大きな目玉が のぞいていたんです。」

布美枝「え…。」

茂「こげに細い透き間から 目玉が じっと こっちを見てた。」

回想

布美枝「あ…。 あの人か…・」

回想終了

茂「あの目玉で こっちは 即決です。」

布美枝「目玉で即決…?」

茂「はい。 目玉には 人の魂が こもりますけん。」

布美枝「はあ…。」

茂「それから 『一反木綿』に似とると思って…。」

布美枝「『一反木綿』? それ 何ですか?」

茂「いや ハハハ。」

布美枝「あの 大塚の家は 昔 呉服屋でしたけど…。」

茂「後で 描いてみせましょう。」

布美枝「はあ…。」

茂「しかし 話が まとまるとは 思わなかったなあ。」

布美枝「え?」

茂「そっちは 断るとばっかり 思ってました… 俺 何か ええとこ見せたかなあ…。」

布美枝「…食べっぷり。」

茂「え?」

布美枝「フフッ。 お見合いの席で… 料理 おいしそうに 食べておられたでしょ。」

茂「ああ。」

布美枝「父は『そこが ええ』と 言ったんです。 『食べる力は 生きる力と同じだ』 って。」

茂「ははあ。 そげなら 俺のズイタ 食いしん坊が 功を奏したという訳か。」

布美枝「はい。」

茂「ハハハハ…。 目玉と ズイタか こりゃ ええ。 何が 縁になるか 分からんもんだな。」

(2人の笑い声)

茂「おっ いっぱい ナズナが咲いとる。」

布美枝「あ… 摘んで帰りましょうか?」

茂「いや うちには もう 飾ってありますけん。 家に 花があるのは ええもんです。」

布美枝「はい…。」

茂「ああ きれいだなあ。 ぺんぺん草も バカにしたもんでは ありませんな。」

布美枝「はい…。」

茂「ちょっこし 失礼して。 ヨイショ。 この形が 三味線のばちに 似とるから ぺんぺん草だと言いますが よく見ると これは ハート形ですな。」

布美枝「あ ほんと… ハート形だ。」

(2人の笑い声)

茂「あ そうだ。 取って置きの場所を 教えましょう。」

布美枝「もっと ええ場所があるんですか?」

茂「はい。 一番の場所です。」

布美枝「ここですか?」

茂「ええでしょう。 調布辺りには 風情のある古い墓が あちこちに残っとるんです。」

布美枝「ええ…。」

茂「墓巡りは ええもんですよ。 自転車 1台あれば 金は 一銭もかからん。 サイクリングは 健康にも ええ。 今 一番 凝っている趣味は 墓巡りです。 あ これこれ この墓は 元禄時代のなんです。 えらく古いでしょう。 墓は 面白いですよ。」

茂「こうやって じっと眺めてると 墓の主と 話ができるような 気がしてきます。 古い墓ほど 死者の気持ちが 和やかなんですよ。 …やはり 人間も 長い間 死んでおると 心が寛容になるのかもしれません。 ああ… ここら辺の墓も 和やかで ええ。」

布美枝「墓が和やか… 私に 分からん。」

茂「ほら あんたも見てごらんなさい。」

布美枝「…はい。」

茂「どうです? 和やかでしょう。」

布美枝「あ この辺が…。」

茂「そうでしょう。 そうそう…。」

水木家

居間

茂「家の月賦を払って 自転車を買ったら 残りは これだけです。 少ないですが…。 あんたに預けます。 これで やりくり お願いします。」

布美枝「…はい。」

茂「この間も話しましたが 貯金は ありません。 貸本漫画が 昔ほど 稼げなく なっているのも 本当です。 でも 描き続けているかぎり 金は 入ります。 心配は いりません。 これで… やっていけますか?」

布美枝「はい… なんとか。 あの… 1つ 聞いても いいでしょうか?」

茂「何でしょう。」

布美枝「さっきの 何とか木綿 あれ 何でしょう?」

茂「(笑い声)」

仕事部屋

茂「こう ひょろ~っと白くて 細長いもんですわ。」

布美枝「…これですか?」

茂「恐らく 古い布に 魂が 宿ったものでしょう。 古くから 話に伝わっておる 妖怪です。」

布美枝「妖怪ですか?!」

茂「ええ。」

布美枝「そげな事 言われたのは 初めてです。 『電信柱』とは 言われとりましたけど…。」

茂「『電信柱』か。 それも ぴったりですな。 ハハッ。」

布美枝「もうっ…。 この絵 もらっても ええですか?」

茂「どうぞ。 …ああ そうだ。 この部屋 時々 掃除して下さい。」

布美枝「え?」

茂「本や 資料の場所は なるべく 動かさんように頼みます。」

布美枝「はいっ…!」

<部屋を仕切っていた襖が 開け放たれて 2人の間を隔てていたものが 1つ 消えたような気がする 布美枝でした>

玄関前

中森「はあ~っ… 今日も収穫なしだ。」

男「水木さん 水木さんですね?」

中森「うわっ!」

戌井「捜しましたよ。 とうとう 見つけた。 水木さん 水木さんですよね?」

中森「水木?」

戌井「水木さんでしょう?」

中森「いえ…。」

戌井「水木さんでしょう!」

居間

布美枝「置き引きの人 『今夜の汽車で田舎に帰る』って 言うとられました。」

茂「ふ~ん。 貸本のおかみさんがねえ。 なかなか ええ人のようですね。」

布美枝「お知り合いではないんですか?」

茂「俺が あの店を のぞく時は いつも 怖い ばあさんが 店番しとるんですよ。 なぜか ジロリと にらむので どうも 入りづらい。」

布美枝「ふふっ。」

茂「俺も 今度 のぞいてみるかな…。」

(玄関が開く音)

中森「村井さん 外に怪しい男がいます!」

茂「えっ?」

中森「あなたの事 捜しているようです。」

茂「俺?」

中森「あなた 名前を変えて 借金でも してるんじゃないですか?」

布美枝「えっ?!」

茂「いや そげな事はしとりません。」

中森「しかし あの うらぶれた 様子からすると 何か後ろ暗いところのある 者ですよ。」

茂「…誰だろう。」

中森「私の事を あなたと 勘違いしているようで 『聞いた住所は 確かにここだ』と しつこく 迫ってきました。 振り払いましたが また 戻ってくるかもしれません。」

布美枝「…どげしましょう。」

中森「のんきに 鍋などを つついている 場合では ないのでは…。」

茂「2階に隠れた方が ええかな。」

布美枝「そげですね。」

中森「おかしな男ですよ。 しきりに 『水木さん 水木さん!』と 私を呼ぶのです。」

茂「水木は 俺のペンネームだけど…。」

中森「えっ。 そうなんですか?」

布美枝「あっ もしかしたら お仕事を 頼みにきた人じゃないですか?」

茂「まさか。 こんな時間に こんな田舎まで 出版社の者が来るはずがない。」

中森「少し頭のいかれた 読者かもしれません。」

茂「それだ。 たまに おりますからな そういうのが。」

(ノック)

戌井「ごめんください。 こちら 水木さんのお宅ですよね?」

茂「来たっ!」

玄関

戌井「失礼します。 夜遅くに お邪魔します。 あれ 水木さんは…。」

茂「水木は 私ですが 何なんですか?! あんた いきなり。」

戌井「あ~ あなたが 水木さんですか! そうかあ そうかあ…。 あなただったんですか! よ~し。」

居間

戌井「全部 読みました! 感動しました。 あなたは すばらしい!」

茂「誰なんですか? あんたは。」

戌井「戌井です。 僕も 漫画家なんです。」

茂「え…。」

<やっとの事で 夫婦2人の静かな夜を 迎えるはずでしたが またも そこに… 漫画界の怪しい住人が 現れたのでした>

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