ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第32話「アシスタント一年生」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】32話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)の調布の家に、売れない漫画家の戌井(梶原善)が訪ねてくる。戌井は偶然読んだ茂の漫画に感動したことや、作家を大事にしない貸本漫画業界がいかにだめかを切々と語る。そして、足にけがをした茂の代わりに、布美枝が原稿を届けに貸本漫画出版社を訪れると…。

32話ネタバレ

富田書房

布美枝「失礼します。」

富田「とっとと 出てってくれよ! あんたの漫画は もう うちからは出さないと 何度も

言ってるだろうが! 帰れ!」

漫画家「そこを なんとか これ一作だけでも 社長! お願いします! 社長!」

富田「危ない! あ~ イタタタ!」

漫画家「お願いします! 今回だけ なんとか お願いできませんか?」

富田「ダメ! ダメ ダメ ダメよ! もう二度と来るな! 何の用? 漫画の売り込み?」

布美枝「あ いえ。」

富田「セールスも 保険の勧誘も お断りだからね。」

布美枝「村井の家の者です。」

富田「ムライって 誰だっけ?」

布美枝「水木しげるの家内です。」

富田「は?! え? 水木さんって 奥さん いたの? へ~! ほう!」

富田「まあ 奥さん ちょっと そこに 掛けてよ。」

布美枝「いえ 結構です。」

富田「ちょっと 落ち着かないんだよね。 見下ろされてるみたいでさ。」

布美枝「ここで お待ちしちょります。」

富田「あ~ そう。 暗いんだよね 絵が。」

布美枝「え?」

富田「ご主人の漫画 暗いでしょ 絵が。」

布美枝「来た。」

回想

茂「敵は 必ず 原稿料を払い渋る。 あわよくば 値切ろうという 作戦だが 退いてはいかん。 もっと 受けるもんを描け!」

回想終了

富田「もっと 明るく うわ~っと 受けるようなものを 描いてもらわないと困るんだよな。」

回想

茂「近頃は 戦記物も売れんから…。」

回想終了

富田「近頃は 戦記物も ぱっとしないんだよねえ。」

布美枝「はい。」

回想

茂「うちも厳しいんだ。」

回想終了

富田「うちも やりくりが厳しくてさ。」

布美枝「はい うちも厳しいです。 原稿を お渡しして お金を頂いてくるように 水木から言いつかっております。」

富田「え~っ? へ~え! 水木さんも考えたもんだ。 ね 鈴木君。」

鈴木「はい。」

富田「奥さんを 使いによこすなんてね。 でも それ 反則なんじゃないの?」

布美枝「そげじゃなくて 足を痛めてます 歩けないものですけん。」

富田「そう。 そりゃ お大事にね。 そんなに にらまなくても ちゃんと 入れますよ。」

布美枝「すいません。」

富田「はい これ。」

布美枝「ありがとうございます。」

富田「ほんとはさ 今日 相談したい事があってさ。」

布美枝「はい。」

富田「実はね ご主人の本 ここんとこ 売り上げが 下降線でね。」

布美枝「下降線…。」

富田「ああ このままだと お互いに この先がないよね。 出版社と漫画家は 共存共栄。 分かる。 共に生き 共に栄える。 そこで ある方に お知恵を ちょうだいして 作戦を考えたのよ。 だから 今日は それを 相談しようと思ってたんだけど。 明日当たり ご主人 来られない?」

布美枝「どうでしょうか? 足首が腫れてましたけん 歩けるかどうか?」

富田「そんな事 言ってると どんどん 売れなくなるよ 行き詰まりだよ。」

布美枝「そんな…。」

浦木「いいですよ 私が 調布の家まで伺いますから。」

布美枝「あ あなた?」

浦木「どうも 奥さん お久しぶりです。」

布美枝「なして ここに?」

浦木「漫画出版プロデューサーの浦木です。」

布美枝「漫画出版プロデューサー?」

富田「ああ この方が 売り上げ倍増の アイデアを 提案して下さった訳よ。 何だか 水木さんとは 古いお友達だっていうじゃない?」

布美枝「はあ。」

富田「こういう方が いるならいるで どうして もっと早く 教えてくれなかったのかな? ね 先生!」

浦木「はい。 明日 すばらしいアイデアを持って お宅へ伺いますよ。 村井君には 福の神が来ると伝えて下さい。」

<茂の旧友の浦木が どうして こんな所に 現れたのでしょう?>

回想

茂「奴にかかわると ろくな事がない。」

回想終了

<何だか よくない予感がします>

すずらん商店街

(商店街のにぎわい)

和枝「今から 夕飯のお買い物?」

布美枝「そうなんです。」

和枝「今日は 遅いじゃない?」

布美枝「ちょっこし お使いに出てて。」

和枝「煮干しの 安くていいの 入ったんだけど どう?」

<調布に来て 2か月近くが過ぎ 日々 買い物をする すずらん商店街にも かなり なじんできた布美枝でした>

和枝「そういえば 貸本屋のおばあちゃん また リューマチ痛むって 言ってたよ。」

布美枝「あら…。」

田中家

キヨ「あ~! 来た 来た! 来た!」

布美枝「もうちっと このままで。」

美智子「悪いわね わざわざ 寄ってもらって。」

布美枝「いいえ。」

美智子「おばあちゃん コロッケ 買ってあるから 晩ご飯 先に食べてて。」

キヨ「はいよ。」

美智子「ごめんね バタバタしてて。」

布美枝「今日は 込んどるんですね。」

美智子「うん。 いつもね 夕方からが込むのよ。 仕事帰りの人達が 借りに来るからね。」

客「おばさん お願いしま~す!」

美智子「は~い ちょっと 待ってて!」

布美枝「キャベツ 切りましょうか?」

美智子「あら じゃあ お願い!」

キヨ「銭湯帰りの客が また 多いんだ。 風呂屋が閉まるまでが 貸本屋の 書き入れ時さ。 お陰で こっちは 晩ご飯を ゆっくり 食べる暇もありゃしない。」

布美枝「大変なんですね。」

キヨ「朝10時から 夜10時まで 正月以外は 年中無休。 気軽そうに見えて 結構きつい商売なんだよ。」

女客1「新しい本 入ってる?」

女客2「『主婦の手帖』 戻ってきてるかしら?」

キヨ「あ~ ほら また どっと来た。 私も こうしちゃいられない。 よっこいしょ!」

布美枝「あ~… もう 無理したらいけんですよ。」

キヨ「あ~… 痛いよ。」

こみち書房

美智子「はい 5冊で50円。」

客「はい。」

美智子「ありがとうございます!」

布美枝「『さいとう・たかを』。」

美智子「まあ 便利だこと。 悪いわね 手伝わせて。」

布美枝「いいえ。」

美智子「お店 立て込んでくると 返ってきた本 棚に戻す暇がなくてね 積み上がっちゃうのよ。」

布美枝「お店 ひっきりなしですもんね。」

美智子「時間大丈夫? そろそろ ご主人 お勤めから 戻ってくる事じゃない?」

布美枝「あ… そしたら これ片づけたら。」

美智子「うん。」

<布美枝は 夫が 貸本漫画家である事を 美智子に言いそびれていました>

回想

富田「ご主人の本 ここんとこ 売り上げが下降線でね。」

布美枝「下降線…。」

回想終了

布美枝「やっぱり 人気ないのかなあ。」

小林太一「おばさん。 これの3巻… まだ出ない? 俺 この漫画の続きが 読みたいんだけど…。」

美智子「どれ? まあ 怖い絵ね。 『墓場鬼太郎』 水木しげる と…。 うん 分かった。 今度ね 問屋に行ったら 聞いとく。」

太一「お願いします。 そしたら これ借ります。」

美智子「あら 太一君 また借りるの? 3回目じゃない?」

太一「何べん 読んでも 面白えから。」

布美枝「それ… 面白いですか?」

太一「は?」

布美枝「この漫画!」

太一「あ… はい。 面白いです。」

布美枝「ありがとうございます!」

<この ちょっと内気そうな青年 小林太一が 布美枝が初めて出会った 茂の漫画の読者でした>

美智子「まあ! どうしたの?」

布美枝「あ… いえ。」

土井真弓「こんばんは!」

順子 政子「こんばんは!」

美智子「いらっしゃい。」

土井「小林さん 何の本 借りてるの?」

太一「ああ いや…。」

(小銭の落ちる音)

布美枝「はい どうぞ。」

太一「どうも。」

政子「何だろう? 慌てちゃって。」

順子「小林さんって 変わってんのよね いっつも 気持ち悪い本 読んで。」

布美枝「『気持ち悪い本』か…。」

順子「美智子さん。」

美智子「ん?」

順子「この間 借りた本 すごい面白かった。」

真弓「また もう1回 読みたくて。 ないかな?」

(少女達の談笑)

太一「は~! ダメだな 俺。」

(豆腐売りのラッパの音)

真弓「おばさん 今度ね 同僚の子が 結婚するんだけど お祝い 何がいいかな?」

美智子「予算は どのくらい?」

政子「あんまりないんだけど それなりに見えるものが いいんだよね。」

順子「やっぱり 食器かなあ。」

美智子「そうねえ。 スリッパなんか どう? おそろいの。」

3人「いいかもね。」

キヨ「あの子達 里山製菓の工員さん。 近くに寮があるから 毎日 うちに 顔出すんだよ。」

布美枝「常連さんなんですね?」

キヨ「本は 借りたり 借りなかったりだけどね。 みんな 早くから 親もと離れて 働きに来てるだろ。 ほんとならね 親に聞くような事を うちの美智子に相談しに来るのさ。 あ! あんた 旦那 うちで お腹すかせてんじゃないの?」

布美枝「あっ! そうだった。」

キヨ「フフフ!」

客「こんばんは! 俺が好きなのある?」

美智子「そっち 見て!」

客「は~い!」

真弓「おばさん 着てくものは 何がいいと思う?」

美智子「そうね おめかしして行かなきゃね!」

布美枝「町のお母さんみたいだ。」

<夕暮れの町に浮かび上がる こみち書房の明かりは 何だか とても温かく 懐かしく見えました>

水木家

居間

茂「ほう! 『鬼太郎』の読者が おったか?」

布美枝「はい 若い工員さんでした。」

茂「なかなか趣味がええな その男。 ま 少数派かもしれんけどな ハハハ。」

布美枝「子供だけのものじゃないんですね。」

茂「え?」

布美枝「私 漫画って 子供だけが 読むものだと 思っとったんです。 けど 工員さんも 学生さんも 漫画を借りに来るんですよ。」

茂「うん。 漫画を 子供のおもちゃ みたいに言う人も おるけどな。 俺は そうは思っとらん。 面白いもんに 子供も大人もないけん。」

布美枝「はい。」

茂「しかし 問題は イタチだぞ!」

布美枝「『福の神が来ると伝えてくれ』って 言われとりましたが。」

茂「何が福の神だ 貧乏神に決まっとるわ。」

布美枝「貧乏神?」

茂「何か たくらんでおるな。 つけ込まれんように 気を引き締めていかんと。」

布美枝「はい。」

茂「飯くれ!」

<そして その翌日>

玄関前

浦木「どうだ! 立派なもんだろう?」

茂「何じゃ そりゃ?」

浦木「今日から この家を『少年戦記の会』本部に定める!」

茂「え?」

浦木「これで がっぽり もうかるぞ!」

<予告どおりに現れた浦木は とても 福の神には見えない 怪しい笑いを浮かべたのです>

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