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連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第33話「アシスタント一年生」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】33話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)に「少年戦記の会」の発足を宣言する浦木(杉浦太陽)。茂の描く戦記漫画の読者を対象に、会報の発行や会員制の通信販売を始めようというのだ。「茂の描く暗い戦争漫画だけでは、十分な稼ぎにならない」というのがその理由だった。しかし茂は、美化されたものではなく、体験に根ざしたリアルな戦争を描こうとしていた。

33話ネタバレ

水木家

玄関前

浦木「今日から この家を 『少年戦記の会』本部に定める!」

茂「え?」

浦木「よ~し。」

茂「おい なして そげなもんを 玄関に?!」

浦木「家の中に飾っても 何もならんだろう。」

茂「だらっ! 勝手な事 すんな!」

浦木「おおっ。 お言葉だがな 俺は 富田社長の 命を受けて やってんだぜ。」

茂「ええ加減にせえ!」

浦木「痛っ! 乱暴は よせ。 よして… 下さい。」

居間

浦木「相変わらず ばか力だな おい!」

茂「お前が おかしな事 するけんだ。」

浦木「奥さん ゲゲは 子供の時から 口より先に 手が出る奴で。」

茂「ええから はよ 説明せい!」

浦木「ああ… 分かったよ。 お前 『少年戦記』と銘打った 戦争漫画を描いとるだろう?」

茂「ああ。」

浦木「お前の本にしちゃ~ そこそこ 売れとる。」

茂「うるさい!」

浦木「なぜ その読者のハートを がっちり つかむ努力をせんのだ?」

茂「ん?」

浦木「俺のアイデアは こうだ。 まずは その戦記漫画の読者を 会員にして ファンクラブを作る。 名付けて 『少年戦記の会』!」

布美枝「ファンクラブですか?」

浦木「裕次郎にだって ひばりちゃんにだって ファンクラブが あるでしょ?」

布美枝「はい。」

浦木「あれは スターと 固い絆で 結ばれてると思わせて 金を使わせる まことに よくできたシステムです。」

布美枝「はあ…。」

茂「ハートをつかむとういうなら 読者からの手紙に 返事を書けば ええじゃないか。」

浦木「か~っ 愚かな奴だ!」

茂「はあっ?」

浦木「そんな 普通の発想では 読者の囲い込みには ならんぞ! もっと 頭を使え 頭を! まずは 会員名簿を作る。 会員様には 定期的に 会報を送りつけ 新刊案内は もちろん さまざまな情報を流す。」

茂「読者通信みたいなもんは やっとるとこは 他に いくらもあるぞ。」

浦木「だからこそ 『少年戦記の会』という その筋の お墨付きでも 付いとるような名前にして 本部は 立派な看板を掲げる。」

茂「それで 本が売れんのか?」

浦木「むろん。 だが… ねらいは それだけではないぞ! 読者名簿を使って… 通信販売をする。 いいか! 読者は 戦艦や 戦闘機に 興味を持っとる。 そこで 会員様向けに 戦艦や 戦闘機の模型を 特別価格で 販売するという訳だ。 会報は模型販売の宣伝にも役立つ。 どうだ! 一石二鳥だろう?」

茂「う~ん…。」

浦木「格安で 模型を仕入れる手はずは もう ついた。 これで もうかる事 間違いなし!」

茂「やけに 手回しが いいな。」

浦木「ゲゲよ。 もはや 原稿料だけで 食っていける時代では ないぞ!」

玄関

中森「痛い! ああ~っ! ああ…。」

布美枝「あら 大変! 大丈夫ですか?」

中森「…大丈夫 大丈夫。 あれっ!」

浦木「どうも 一別以来ですな。」

2階

中森「あっ! いたたたた…。」

居間

茂「あの人を連れてきた時も お前… さも善意のような事 言っとったが しっかり 紹介料を せしめたそうじゃないか?」

布美枝「そげだったんですか?!」

茂「役得ずくでしか 動かん男だよ!」

浦木「ふん。 これは 異な事をおっしゃる。 下宿代は 家計の足しに なっとるでしょう?」

布美枝「そうですけど…。」

浦木「俺は みんなの利益を考えて 動いとるんだ。 富田社長も この話は 大乗り気だよ。 俺と社長とは すでに 信頼の絆で 結ばれとるから。」

茂「…欲の絆だろ?」

浦木「欲の絆? 大いに結構じゃないの!」

玄関前

浦木「もうちょい 上が ええね。 もうちょい上。」

茂「こげか?」

浦木「あ~ ちょい 下…。 あ~… そこで ええわ。」

布美枝「随分 仰々しいですねえ。」

浦木「目立たんと 意味がないんです。 評判が 金を生むんですよ。 よっしゃあ!」

茂「しかし 会報 作るにも 金が かかるだろう? よう あの ドケチ社長が納得したな。」

浦木「そりゃあ 向こうの懐は 痛まんからね。」

茂「えっ?」

浦木「解放は 本部で作る約束だ。」

茂「本部って…。 バカ言え! そげなもん作る金 うちには ない!」

浦木「待て! 外すな! 触るな! 手は打ってある!」

居間

浦木「格安で 譲ってもらった。」

布美枝「あ~… 年季 入っちょりますねえ。」

茂「町内の回覧板でも 作るようだな。」

浦木「おう すごいだろう。 この手作り感が ええのよ。 しかも 安上り。 小さな元手で 大きく稼ぐ。 これこそが 金もうけの極意だ!」

布美枝「あの… 切手代は どうなるんでしょうか?」

浦木「え?」

布美枝「会員様には 郵便で送るんですよね。 切手代も バカには なりませんよ!」

浦木「奥さん なかなか しっかりしてますね。」

布美枝「家計的には 大問題ですけん。」

浦木「分かりました。 切手代は 向こうに出してもらうよう 僕が 交渉しましょう。」

布美枝「お願いします。」

浦木「ゲゲ お前は 戦艦の解説図を描け。 さしあたって… 戦艦長門 伊勢 巡洋艦金剛。」

茂「おう。」

浦木「それから もう一つ 大事な話がある。」

茂「まだあるのか?」

浦木「一番 大事なことだ。 お前… もっと 勇ましく描け!」

茂「え?」

浦木「お前の戦記漫画は 暗い 話が 惨めだ。 そんな惨めな戦争漫画じゃ これからの読者は ついてこんぞ。 少年雑誌の人気戦争漫画を 見てみろ。 スリルあり 涙ありのスペクタクルだ! お前も ああいうふうに描け。」

茂「だら言うな。 あれは 冒険活劇でねえか。 都合よく 弾が飛んできて 派手な空中戦をやって 食いもんに困る事もない! あげな都合のいい戦争があるか!」

浦木「そげな事は 分かっとるよ。 …だが 売れるのは あっちだ。 現に お前の惨めな戦争漫画は さっぱり 人気が 上がらんじゃないか。 もっと勇ましいのを描け。 そうでなきゃ どん詰まりだぞ。」

仕事部屋

茂「『惨めな戦争漫画は売れん』か…。(ため息)」

<戦争が終わって 16年。 この頃 少年雑誌では 戦記漫画が人気でした。 その多くは 戦闘機のパイロットや 海の戦士達の姿を 凛々しく描き 子供達を ワクワクさせるものでした>

<その一方 茂の描くものは 違っていました。 リアルな絵 険しい顔の登場人物達 悲惨な結末>

居間

(襖の開く音)

茂「金 出してくれ。」

布美枝「お金ですか? はい…。 幾らでしょう?」

茂「ちょっこし 使うぞ。」

布美枝「え?」

こみち書房

客「おばちゃん じゃあね~。」

田中家

美智子「寝てなきゃ ダメじゃない。」

政志「もう 大分 いい。」

美智子「会社には 『明日は 出ますから』って 言っときましたから。」

政志「ああ。」

美智子「何 読んでんの?」

政志「この漫画の戦争は 本物なんだよなあ。」

美智子「え?」

政志「惨めで どうしようもなくて…。 水木しげる か…。 こいつも 戦争で むごい目に遭ったクチかな…。 今どき そんな 暗い漫画 読む奴は いないわな。 は~っ。」

こみち書房

美智子「あ これだ! 水木しげる。 やっぱり 同じ漫画家だ…。」

キヨ「政志の奴 また 会社 休んでんだって?」

美智子「うん。 『風邪ひいた』って。」

キヨ「どうだかねえ。」

美智子「おばあちゃん…。」

キヨ「どこ 勤めたって 長続きしないんだよ。 今度も また 辞めなきゃいいけどね…。」

美智子「うん。」

キヨ「向こうから戻って… 13年だよ! いい加減 しゃっきり しないもんかねえ!」

美智子「うん。」

水木家

居間

茂「古本屋を回って 買ってきた。 『少年戦記の会』が うまくいけば 金も入ってくる。 そのための 先行投資だと思ってくれ。」

布美枝「随分 買ったんですねえ…。」

茂「浦木は ああ言っとったがな… 俺には かっこうのええ戦争漫画は 描けんよ。 あんた マラリアを知っとるか?」

布美枝「はい…。」

茂「これは マラリアで寝込んどった時に やられた。 ラバウルのズンケン守備隊という所に おった時だよ。 40度の熱が 何日も続いて…。」

回想

兵士「空襲だ…!」

(爆発音と兵士達の叫び声)

兵士「逃げろ! 早く!」

(爆発音と兵士達の叫び声)

茂「ああ~っ! ああ~っ!」

衛生兵「大丈夫か?! 軍医殿」

軍医「どうした?」

茂「(うめき声)」

軍医「これは 切るしかないぞ。」

衛生兵「しかし 軍医殿! 麻酔も消毒液も ここには…。」

茂「(うめき声)」

軍医「やむをえん。 このまま ほうっておいても 死ぬだけだ。 切れ~!」

茂「あ~っ!」

回想終了

茂「麻酔も 何も ないけん あんまり痛くて 気が遠くなった。 まあ 冒険活劇のように 勇ましくは いかんのだ。 それでも 俺は 生きて戻ってきたが 戻ってこられんだった者も ようけ おる…。

茂「誰にも 見られずに 誰にも 語る事も できずに 何も 華々しい事もなく散ってった…。 漫画が 売れなければ 食べては いけん。 だが… スカッとするような かっこのええ 戦争漫画は …やっぱり 俺には 描けん!」

布美枝「はい。」

茂「そこで 打開策を考えた。」

布美枝「え?」

茂「本物の迫力だよ。 他の人には まねのできん 迫真の戦記漫画を描く。 そのためには 調べ尽くして 嘘のないように 描かねばならん。」

布美枝「それで 本が必要なんですね?」

茂「うん。 家計を 圧迫するかもしれんが …どうにか頼む。」

布美枝「分かりました。 お金… 出し惜しんだら いけませんね。」

茂「ああ。」

布美枝「なんとか やってみます。」

茂「うん。 ほい 頼んだぞ!」

布美枝「はい。」

<初めて聞いた 茂の戦争の話。 茂の漫画に込めた思いが 布美枝の胸にも 重く響きました。 けれど…>

布美枝「あ~っ… ない! 全部 使っとる! これから どげしよう…。」

<はあ~あ… 家計の悩みは 一段と 深まるばかりでした>

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