ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第37話「消えた紙芝居」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】37話のネタバレです。

あらすじ

茂(向井理)は、富田(うじきつよし)の依頼で「墓場鬼太郎」の執筆に全力を注いでいた。布美枝(松下奈緒)は、出来上がったその本を宣伝するうち、自分が“水木しげるの妻”であることを美智子(松坂慶子)に知られることに…。「少年戦記の会」の失敗以来、姿をくらましていた浦木(杉浦太陽)がまた現れ、茂は激怒する。

37話ネタバレ

水木家

居間

布美枝「『ある平凡な会社員が… ふとしたことから… 墓場で生まれた子供を そだてることになった…』。 『その 子供の名前は… 墓場鬼太郎…』。」

(風雨の音と落雷の音)

布美枝「ああ~ 何べん読んでも 怖いなあ!」

(風鈴の音)

回想

茂「これは あんたと 一緒に作った本だけん 最初の一冊は あんたに プレゼントだ。」

回想終了

<一度は打ち切られた 茂の怪奇漫画『墓場鬼太郎』は 再開を待ち望む読者の声に 押されて 復活。 第1巻が刊行され…>

仕事部屋

茂「連続長編となると もっと大きな構想を練らんとな。」

<茂は 引き続き 100ページの長編を 取り組む事になりました>

居間

茂「恐ろしいだけでは ダメだ。」

布美枝「あ 危ない!」

茂「ワクワクする展開でないとなあ…。 ああ…。」

布美枝「どちらに?」

茂「墓場だ。」

布美枝「墓場…?」

茂「いや 墓場だけでは ダメだ。 もっと意外な設定を考えんとな。 舞台は そうだな。 妖怪が集まる うらぶれたアパート… いや 下宿か?」

布美枝「気をつけて…。」

<漫画の世界に入り込むと 周りの事は 目にも耳にも入らなくなる 茂でした>

布美枝「あげに夢中になって…。 私も 何か力にならんと いけんなあ…。 そげだ!」

こみち書房

(商店街のにぎわい)

戌井「見て下さいよ。 この絵の迫力! 『鬼太郎』は 新しい怪奇漫画なんです。 ほら 強烈な絵 斬新な筋立て。 これはもうね 大人も楽しめる 一級品の漫画です。 奥さん おばあちゃん これをね お店の一番目立つ所に置いて お客さんにアピールして下さい。」

和枝「わ~ これ見て 怖いね~!」

徳子「何 これ!」

靖代「子供は嫌がるんじゃないのかい?」

戌井「大丈夫ですよ。 本物の面白さは 子供にも伝わります。 僕が保証します。」

キヨ「『保証する』って言うけど あんた どちらさん?」

戌井「あ はい ええと あの…。」

布美枝「戌井さん!」

戌井「あ 奥さん…。」

美智子「あら 知り合い?」

布美枝「はい。 どうして ここに?」

戌井「お宅に行くところだったんですよ。 その前に こちらに寄ったら あの これが あったんで つい…。 ああ あの僕は 戌井という者で 実は ええと… ええと あ~ あったあったあった。 これを 描いてます。」

美智子「『紅い銃弾』 戌井慎二…。 じゃ あなたも 漫画家さん?」

戌井「ええ。」

キヨ「何で他の人の本 宣伝してんだい?」

戌井「水木漫画のファンでして。」

美智子「へ~え!」

布美枝「戌井さん ありがとうございます! 私も お願いに来ました。 『墓場鬼太郎』 どうぞ よろしくお願いします!」

美智子「ちょっと 待って。 ねえ よく分からないんだけど 何で あなたが? これ… 夫が精魂込めて描いた 漫画なんです!」

2人「夫?!」

布美枝「私… 水木しげるの 家内です!」

一同「え~っ!」

布美枝「これでええですか?」

美智子「うん。 よし! 追加で あと何冊か 仕入れとくわね。」

布美枝「お願いします!」

キヨ「はい はい! これも ついでに貼っときな。」

戌井「あれ… すいません。」

美智子「けど 水くさいじゃない。 早く 言ってくれれば よかったのに。」

キヨ「ほんとだよ!」

布美枝「すいません。 つい 言いそびれて。 私 漫画の事も よう分からんですけん。」

美智子「そう 太一君が聞いたら びっくりするわよ~! 『鬼太郎』の大ファンだもの。」

キヨ「昨日ね 早速 借りてったよ。 『やっと出た』って そりゃ 喜んでた!」

布美枝「そげですか。」

靖代「あんたが この人のねえ…。 ふ~ん。 あ そうだ。 うちのさ 風呂屋の客に 宣伝しとくよ。」

布美枝「お願いします!」

徳子「じゃ バーバーでも 話してみるか。」

布美枝「はいっ。」

美智子「お風呂屋さんと床屋さん 味方につけたら 宣伝はバッチリだ。」

和枝「及ばずながら 乾物屋も協力するよ。」

キヨ「こりゃ あっという間に広まるね。 ご町内の拡声器だからね あんた達。」

(一同の笑い声)

靖代「褒めないでよ そんなに!」

布美枝「どうぞ よろしくお願いします!」

3人「任せなさい!」

(一同の笑い声)

水木家

居間

布美枝「はい どうぞ。」

茂「お~っ 今日は豪華だなあ。 いつもは おかずは目刺し 1匹。」

戌井「アハハハ…。」

布美枝「それは 言い過ぎです! 今日は 戌井さんが お祝いに来て下さるんで ちょっこし豪華にしましたけん。」

戌井「では 改めて 『鬼太郎』刊行 おめでとうございます! 100ページの長期連載も 決まったそうですね~。」

茂「今 構想を練っとるとこですわ。」

戌井「どういう話に なるんですか?」

茂「妖怪対決を考えております。」

戌井「妖怪対決?」

茂「ええ。 鬼太郎を巡って 西洋と東洋の 吸血鬼が 吸うか吸われるかの 死闘を繰り広げるんです。」

戌井「へえ スケールが大きいなあ!」

茂「ん? あ 吸血鬼に血を 吸われたような人が 戻ってきましたぞ。」

(2人の笑い声)

中森「あ~ どうも。」

戌井「こんにちは!」

浦木「この懐かしい においは? 田舎風味の煮しめのにおい。」

茂「あっ!」

布美枝「あ~っ!」

浦木「おおっ 鰯の煮つけもあるが。」

茂「イタチ~! 今まで お前 どこにおった?! お前のせいで大損害だぞ!」

浦木「ま ま ま 落ち着け。」

茂「この だらずが! さんざん 迷惑かけちょいて どの面下げて… お前 臭いな!」

浦木「え そうか? まあ しばらく いろいろあって 風呂 入っとらんからなぁ。」

茂「汚い…!お前 風呂屋 行けよ!」

浦木「残念ながら 手持ちの金がない。」

茂「何?!」

浦木「すまん 風呂だけ貸してくれ。 このとおり な!」

茂「はあ… しかたねえなあ。 風呂 頼む。」

浦木「すまんですね 奥さん ね。」

茂「お前は 部屋に上がるな。」

浦木「お~ チョッチョッ!」

茂「風呂が沸くまで 外で立っちょれ~!」

玄関前

浦木「お~い ゲゲ おい 何しよんだ!」

<『少年戦記の会』の通販計画が 大失敗して以来 姿をくらましていた浦木が また のこのこと やって来ました>

居間

中森「すいません。 そこで ばったり会って 振り切れなかったもので…。」

布美枝「浦木さんの服 洗って外に 干しちょきました。」

茂「まったく はた迷惑な奴だよ!」

浦木「あ~ いいお湯でした~ うお すげえ ごちそうだな おい!」

茂「お前 今まで どこに隠れとった?」

浦木「ん? 人聞き悪い事 言うなよ。 ちょっと仕事で 旅に出てただけだ。」

茂「嘘つけ。」

浦木「奥さん このごちそう もしや 私の歓迎のために?」

布美枝「え?」

茂「だらずが…!」

戌井「お祝いですよ。 『墓場鬼太郎』 出版祝の お祝いです。」

浦木「お~ そうか ついに出たか。 俺も 心待ちに しとったんだぞ~! やはり 怪奇物は ええなあ。 これからの時代は何と言っても 怪奇物だ。 ゲゲ お前の時代だな おい! おめでとう! フフフ! めでたいなあ ハハハハ!」

茂「う~ん まあ食え。」

浦木「お ええか?」

茂「うん。」

浦木「おお それを待っとったんだ!」

(浦木の笑い声)

茂「遠慮せえよ お前。」

浦木「こうやって 一緒に飯を食ってると 神戸の頃を思い出す。 のう ゲゲ。 あの頃も お前 人の家に 上がり込んでは 勝手に飯を食っとったなあ。」

浦木「ん そうだっけ?」

布美枝「神戸に住んどった事 あるんですか?」

茂「ああ。」

浦木「あれ 奥さん ご存じない? チョッチョッ…。 まあ まあ まあ ゲゲはですね 奥さん 昔 神戸で アパートを経営しとったんですよ。」

布美枝「ああ 知らんかったです。 いつ頃の話でしょうか?」

茂「復員してから3年ぐらい 経ってからだな。」

戌井「アパートなんて すごいなあ ひと財産じゃないですか。」

浦木「いやいやいや つぶれかかった安宿を買って 下宿人を置いてただけですよ。 さっぱり もうからんかったなあ。」

布美枝「あらまあ。」

浦木「こいつは 金もうけのセンスに 欠けとるんですよ。」

茂「お前に言われたないわ!」

浦木「だけん 協力してやっとるじゃないの。 神戸の時だって 下宿人を 大勢 斡旋してやったろ?」

茂「恩着せがましく言うな。 次々と おかしな奴を 連れてきては 裏で こっそり 紹介料 せしめとったくせに。」

布美枝「中森さんの時と同じですね。」

中森「そうですねえ。」

茂「懲りない 反省しない 努力しない 昔から そういう奴だ。」

浦木「ええだないの。 それが通れば人生は楽園よ。(笑い声)」

布美枝「お煮しめ まだ ありますよ。」

一同「お願いします。」

浦木「ほら ゲゲ 箸 とってくれ。 箸!」

茂「しょうがないなあ ほれ。」

布美枝「(小声で)神戸で アパートか…。 ちっとも知らんだった。」

浦木「うまい! やっぱり 故郷の味は ええなあ ゲゲ!」

茂「おう。 そげだな。」

浦木「う~ん。」

<何かと はた迷惑な浦木でしたが 布美枝の知らない 昔の茂の話を聞ける事が 何だか うれしくもあるのでした>

茂「こら お前 独り占めすんな!」

浦木「あっ!」

仕事部屋

茂「お~い ちょっこし来てくれ。」

布美枝「は~い。 はい?」

茂「それ 頼む。」

布美枝「はい!」

<布美枝は 時折 茂の漫画の手伝いをするように なっていました>

(ペンを走らせる音)

茂「きっ… きっ。 くわっ! き~ ううん! うう! あ~っ! は~ は~ ううっ。」

布美枝「ウフッ… フフフッ。 ハハハハッ!」

茂「ん? そのページ 笑うとこあったか?」

布美枝「いいえ。」

茂「ん?」

布美枝「フフフフッ フフッ。」

茂「は?」

布美枝「あ 百面相みたいですね。」

茂「え?」

布美枝「うなったり 怒ったり 笑ったり… いろんな顔して描いとる。」

茂「俺がか?」

布美枝「はい。 絵と おんなじ顔して 一緒に動いちょりますよ。」

茂「は? いや そげな事はしとらんぞ。」

布美枝「やっとりますよ。」

茂「…何 言っちょる。 くっ くくっ! あ… やっとるな。」

布美枝「はい。」

茂「(笑い声) おい その椅子の絵。」

布美枝「はい。」

茂「ここな 好きなように 柄を描いて ええぞ。 模様 入れてくれ。」

布美枝「私が やって ええんですか?」

茂「任せる。」

布美枝「…はい!」

<2本のペンの走る音が 重なって響くのを聞きながら 布美枝は ふっと思いました。 自分が出会う前 茂は どんな 人生を生きてきたんだろう…>

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