ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第38話「消えた紙芝居」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】38話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は、まだ出会う前の茂(向井理)の話を聞くことが楽しかった。茂の漫画は刊行されるが、富田(うじきつよし)は会社の資金繰りが苦しく原稿料を払おうとしない。家計の苦労が続くある日、茂がかつて神戸に住んでいたころの紙芝居の師匠・杉浦音松(上條恒彦)が、ふいに訪ねてくる。

38話ネタバレ

水木家

仕事部屋

布美枝「『【鬼太郎】は 怖いけど懐かしい』か…。」

茂「ん?」

布美枝「あ 太一君が… この前 話した貸本屋の…。」

茂「ああ 『鬼太郎』ファンの青年だな。」

布美枝「はい。 『怖いけど 懐かしい気がする』って そげな事 言っとったんです。 ほんとに そげだなあ。 怖いもんが懐かしいなんて 不思議ですね。」

茂「何も不思議な事はない。 怖いけん 懐かしいんだよ。」

布美枝「え…。」

茂「あ ちょっと待っとれよ。」

布美枝「はい。」

茂「あ これこれ。 よいしょ!」

布美枝「え? 何ですか これ?」

茂「俺が子供の頃に 描いとった絵だ。」

布美枝「あ~! ようけ ありますねえ。」

茂「絵ばっかり描いとったけん あとは 飯 食っとるか けんかしとるか。 お! これだ。 ほれ。」

布美枝「うわ! 何です これ?」

茂「近所の寺で 地獄の絵を見てな 自分でも描いてみたんだ。」

布美枝「地獄…。」

茂「うん。 のんのんばあに連れていかれて 初めて 地獄の絵を見た。」

回想

のんのんばあ「あっちが地獄 こっちが極楽。 どっちへ行くかは 閻魔様が決めなさる。」

茂「うわ~!」

回想終了

茂「地獄絵は恐ろしいが 幾ら見ても見飽きない。 面白くて 夢中になったわ。」

布美枝「のんのんばあ…。 ああ 狐の話をしてごされた お手伝いの おばあさんですね。」

茂「そげだ。 昔の事や 不思議な話を ようけ知っとったな。 怖い話の百科事典みたいな ばあさんだ。 ほれ!」

布美枝「え?」

茂「天井に しみが出来ちょ~だろ。」

布美枝「はい。」

茂「あれは 『天井なめ』という妖怪が 夜更けに ぺろ~んと なめてった跡だ。 のんのんばあは そげ言っとった。」

布美枝「『天井なめ』…。」

茂「海の上を のたりのたり歩く 『海坊主』。 『大入道』に化けて人を脅かす狸。 それから 古寺に住み着く『野寺坊』。 のんのんばあに いろんな化け物の話を聞いたな。 そげそげ 裏の下の川には 『河童』が住んどったぞ。」

布美枝「『河童』ですか?」

茂「ああ いたずらもんでな 酔っ払いから 土産物を奪ったり 相撲を挑んできたりする。」

布美枝「相撲を取ったら どっちが 勝つんですかね? 『河童』と人間。」

茂「仕切りの時にな 頭をうんと下げさせると 皿から 水が こぼれ落ちて 『河童』は ヘナヘナになる。」

布美枝「面白い。 おばばの話 聞いちょ~みたい。」

茂「ん?」

布美枝「子供の頃 寝る前に 祖母が 昔話を ようしてくれたんですよ。」

回想

登志「とんと昔があったげな。 『出雲富士の赤池に住む 大きな蛇が 村の器量よしの娘に惚れて 『嫁にくれねば 村を水に沈め~ぞ』 と言ったげな』。」

回想終了

布美枝「怖い話ほど 面白くて早こと 続きが気になるんですよ。」

茂「そげだな。 怖いもんは 面白い。」

布美枝「おばばは ご先祖様の話も ようしてくれました。 お盆の行事や何かを 大切にする人で。」

茂「のんのんばあも お盆の時には 張り切っとったな。 送り火をたきながらな 『来年も ござっしゃれや~』 言って 叫んどったわ。」

布美枝「一緒です!」

回想

登志「遠いとこを あ~がとうございました。」

回想終了

布美枝「精霊船(しょうろうぶね)は どこに流れていくのか 聞いたんですよ。 『ご先祖様のいる 十万億土だ』って 言っちょ~ました。」

茂「十万億土かあ…。 目には見えん もう一つの世界が どこぞにあるんだな。」

布美枝「ええ。」

茂「お化けも妖怪も 目には見えんが ちゃんとおる。」

回想

少年「『べとべとさん』も『ひだる神』も 目には見えんけど ちゃんとおる。」

布美枝「見えんけど おる。」

少年「こっちに 来い。」

回想終了

茂「ああ いけん。 話し込んで時間が過ぎた。 急がんと夜が明ける。 ほれ 仕事 仕事。」

布美枝「はい。 あの…。」

茂「何だ?」

布美枝「昔… うんと昔ですけど。」

茂「ああ。」

布美枝「『べとべとさん』に追われとった 女の子 助けた事ありませんか?」

茂「ん? 女の子…。 そういえば そげな事が…。」

布美枝「ありましたか?」

茂「あったような…。」

布美枝「はい。」

茂「なかったような…。」

布美枝「え?」

茂「覚えとらんな。」

<遠い昔に出会った少年が 茂だったかどうか それは謎のままでしたが 茂と のんのんばあの思い出が 私 祖母 登志との思い出と重なって 布美枝は また少し 茂という人に 近づけたような気がしていました>

<秋には 『墓場鬼太郎』の 2作目 3作目が 貸本屋の店頭に並びました>

こみち書房

キヨ「(小声で)借りてけ 借りてけ 借りてけ 借りてけ。」

客「これ お願いします。」

美智子「はい 3冊で30円。」

徳子「ちょっと ちょっと! あ!」

和枝「美智子さん 今の人さ!」

靖代「布美枝さんの旦那の本 借りてったね。」

徳子「張り紙の効果あったじゃない!」

キヨ「本が面白いんだよ。」

和枝「おばあちゃん 読んだの?」

キヨ「当たり前だろ!」

美智子「私も! 一気に読んじゃった!」

靖代「あら珍しいわね いつもは 貸すのが忙しくて 読んでる暇なんかないって 言ってるのにねえ~!」

美智子「この本は 特別。」

徳子「でも 悪いけど名前がねえ。 お客さんに話したら 『墓石屋の話か』だって! ハハハ!」

女達「『墓場鬼太郎』だもんね!」

美智子「そうなのよ!」

杉浦音松「『墓場鬼太郎』?」

(笑い声)

靖代「(小声で)ちょっと! 見かけない人だね。」

徳子「ほんと。」

美智子「いらっしゃい! お客さん うち初めてですか?」

和枝「ねえ あの荷物 押し売りじゃない? ゴムひもや何かの。」

徳子「近頃多いから 押し売り。」

靖代「確かに多いわよね。」

キヨ「立ち読みは お断りだよ。」

富田書房

茂「富田さん! どういう事ですか?! 『墓場鬼太郎』 もう3冊も出しとるのに 原稿料は まだ 1銭ももらっとらんのですよ!」

富田「だから もうちょっと 待ってよ。」

茂「『もうちょっと もうちょっと』って いつになったら 払ってくれるんですか!」

富田「ちょっと落ち着いて。 ね? 悪いけど こっちにも 事情ってものがあるんだよね。」

茂「…まさか 払わんつもりですか?!」

富田「いや 払わないなんて 言ってないでしょう? もうちょっと 待ってって お願いしてるんじゃないの!」

茂「お願いしたいのは こっちです! このままでは 女房と2人 人間の干物になるんですぞ!」

富田「お! それ いいね。 次の『鬼太郎』でどう? 妖怪『干物人間』! ハハハ!」

茂「冗談を言っとる場合じゃない!」

富田「払える金があるんだったら 私だって払いたいよ! ない袖は 振れん!」

茂「振れないって あんたねえ…。」

富田「こんなに 資金繰りが 難しくなったのは あれの影響が大きいんだけどな!」

茂「ん?」

富田「『少年戦記の会』の赤字。」

茂「しかし あれは あんたと浦木で 決めた事ですけん 責任は そっちに。」

富田「水木さん。 あんたと私は 長い事 共存共栄で やってきてるじゃない!」

茂「金も払わんで なにが共存共栄ですか?!」

富田「ええ? 忘れちゃったのかな? あんたの漫画 処女作出したのは うちだよ! あれは 3年前だ。 まだ紙芝居しか 描いた事のなかった あんたに 漫画本 丸々1冊頼んだの私だよ。」

富田「経営者としては 英断だったね。 恩を着せるつもりは ないけどさ… こんな時ぐらい もうちょっと 待ってくれたって いいんじゃないの?」

水木家

玄関前

(小鳥の鳴き声)

布美枝「はあ~!」

(足音)

布美枝「あ! お帰りなさい。 どげでした? はあ…。」

茂「富田のケチおやじは デビュー作を 出してもらった恩がある。 それを持ち出されると 強くも言えん。」

布美枝「そげですか…。」

茂「うん。 金が入るのは ちょっこし 先かもしれんな。」

布美枝「はあ…。」

茂「厳しいかね?」

布美枝「ええ。 まあ なんとか。」

茂「あ… 下宿代は もらったのか?」

布美枝「まだです。 中森さんも 近頃 苦しいらしくて。」

茂「あの人も 漫画の注文が 来んようだけんな。 いや 同情しとる場合じゃない。 催促してくる。」

2階

茂「失礼しますよ。」

中森「(せきこみ) あ どうも。」

茂「何しとるんです?」

中森「ハハハ! お茶っ葉を いってるんですよ。 ちょっと おしょうゆを垂らして 飯のおかずに。(せきこみ) 風邪をひきましてね これで ビタミンCが とれるんじゃないかと。(くしゃみ) ちょっと 失礼!」

居間

茂「上も無理だ。」

布美枝「やっぱり。」

茂「また 富田書房を つついてくるかな。」

布美枝「お願いします。 う~ん。」

音松「ごめんください!」

布美枝「はい!」

玄関

布美枝「結構です!」

音松「え?」

布美枝「うちは 今 それどころじゃありません。 ゴムひもなら 間に合っとります。」

音松「あの… 私 押し売りじゃありませんよ。 こちら 水木さんのお宅じゃないですか?」

布美枝「そうですけど…。」

音松「私 古い知り合いで 杉浦音松といいます。」

茂「音松さん! やけに いい声がすると思ったら やっぱり 音松親方だ!」

音松「水木さん 元気そうですな!」

茂「いや どうしたんですか?」

<押し売りのように見えた この人物 どうやら 茂の 古い知り合いのようです>

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