ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第3話「ふるさとは安来」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】3話のネタバレです。

あらすじ

昭和17年、戦争が大塚の町にも影を落とし始めるころ、布美枝(佐藤未来)は10歳になった。女の子にしてはかなり身長が高い布美枝は、他人の目をいつも気にし、消極的な性格だった。姉ユキエ(足立梨花)は、布美枝とは対照的に奔放な性格で、父・源兵衛(大杉漣)の目を盗んで男友達とのあいびきを楽しんでいた。盆踊りの夜が近づくが、悪童たちに身長をからかわれることが嫌な布美枝は、踊りたくない気持ちを募らせていた。

3話ネタバレ

飯田家

布美枝「あのね さっき…。」

<おとなしい布美枝は 大家族の中で ちょっと 影の薄い存在でしたが…>

登志「怖かったろう?」

布美枝「けど ちょっこし面白かった。」

登志「面白かった?!」

布美枝「おばばの話と一緒だね。 大蛇や狐や お化けの話は 怖かったけど 面白いもん。」

登志「怖いもんは面白いか…。 布美枝は よう分かっちょ~わ。」

布美枝「見えんけど おる。」

登志「見えんけど おる。 …ふ~ん。」

昭和十七年八月

(子供達の声)

島根県 大塚村

<昭和17年 布美枝は 10歳になりました>

(セミの鳴き声)

源兵衛「う~ん。 さすがに 安来の鋼だが。 見事なもんだ。」

足立「そげでしょう。」

<安来は『鉄の町』とも呼ばれ 古くから 製鉄の盛んな所です>

源兵衛「う~む!」

布美枝「きゃっ!」

源兵衛「だらず! 急に出てきたら 危ねえがな!」

(セミの鳴き声)

源兵衛「足立さん。 呉服屋は もう いけんですわ。 開戦からこっち 衣料統制で 商売にならんですけん。」

足立「そげなら うちの刀剣会社 手伝ってもらえんかねえ。 お国のためになる仕事ですけん。」

源兵衛「そげですか?」

(戦闘機の爆音)

<前年の12月に 太平洋戦争が勃発。 物不足が深刻になり みそや しょうゆまでが 配給制になりました。 着物も 衣料切符がなければ 売り買いできなくなったのです>

源兵衛「どげした。 へっぴり腰で。」

布美枝「だって 刀が…。」

足立「お嬢ちゃんは 女学校?」

源兵衛「小学生ですわ まだ 10歳で。」

足立「それにしちゃ大きいねえ!」

源兵衛「背ばかり ひょろひょろ伸びて。 こげに のっぽでは 嫁入り先が ね~のではと 今から 心配しちょ~ますわ。」

(2人の笑い声)

ユキエ「いらっしゃいませ。」

足立「ああ。」

ユキエ「お父さん 裁縫に行ってきます。」

源兵衛「ああ。 早こと戻れよ。 2番目の娘のユキエです。」

足立「えらい別嬪さんで。 先が楽しみだがねえ。」

源兵衛「おてんばで 困っちょ~ます。 ええ話があれば 早こと 嫁にやりたいですわ。」

(2人の笑い声)

神社

チヨ子「お賽銭入れんと 願いは かなわんぞよ。」

布美枝「うわっ! な~んだ チヨちゃんか。」

チヨ子「何を拝んどったの?」

布美枝「背が高くならんようにって。」

チヨ子「何で?」

布美枝「お嫁に行けんと困るけん。」

チヨ子「心配症だなあ。」

(太鼓の音)」

布美枝「あ 盆踊りの稽古 始まっちょ!」

チヨ子「先の心配より 盆踊りの作戦 立てないといけん。 子供踊りの1等 賞品は ラムネだけん!」

布美枝「ラムネ?」

チヨ子「絶対に 1等 取ろうな!」

布美枝「うん!」

(太鼓の音)

布美枝「ユキ姉ちゃん? ユキ姉ちゃん!」

ユキエ「あっ! 布美枝。」

布美枝「どげしたの? 裁縫の先生のうち あっちだが?」

ユキエ「え~っと…。 あんたに構ってる暇ないわ。 バスの時間だけん。」

布美枝「バス? バスで どこ行くの?」

ユキエ「なあ お父さんには 内緒にしといて。 頼んだけんね。 約束だよ!」

チヨ子「あれは あいびきだが。」

布美枝「えっ?」

チヨ子「きっと 町で 映画見るんだよ。」

布美枝「映画なら そこの芝居小屋でも かかっちょ~のに?」

チヨ子「あいびきだもん もっと しゃれたとこ行くわ。 映画の後は コーヒーだね。」

布美枝「コーヒー? そげなもん 飲んだ事ねわ。」

チヨ子「お姉ちゃん 別嬪だけん コーヒー ごちそうしてもらえるんだわ。 うちのお母ちゃん 言っちょった。 ユキエちゃんは ええとこに お嫁に行くだろうねって。」

布美枝「私 もう一遍 拝んでくるけんね。 大きくなったら ユキ姉ちゃん みたいな 美人になりますように。」

飯田呉服店

登志「ほな ちょっこし 買い物に 行ってくるけん。」

源兵衛「ああ。」

登志「ああ。 そげだ。 お前 また別の商売 始める気か?」

源兵衛「昔の仲間が 軍に納める刀の会社に 誘ってくれちょうけん 考えちょ~とこだわ。」

登志「やめ~だ。 今までも 炭焼きやら荒物屋やら あれこれやって 痛い目にあっとるでねか。」

源兵衛「売る反物が入ってこんだけん もう 呉服屋では どうにもならんわ。」

登志「つまらん事に手ぇ出して この店 つぶしたら ご先祖様の罰が当たるわ。 横暴 言って!」

源兵衛「分かっちょらんな。 こげなご時世 何でもやらんと食っていけんわ。(ため息)」

神社

布美枝 チヨ子「♬『そろたそろだよ 踊り子が そろた こらせ』」

布美枝「うん。 息ぴったり!」

チヨ子「でも 1等狙うには 何か目立つ工夫せんとな。」

布美枝「工夫かあ…。」

ヒロシ「電信柱が 踊り踊っちょ!」

(子供達の笑い声)

チヨ子「ヒロシだ。 嫌な奴が来た。」

<ヒロシは この辺りのガキ大将です>

ヒロシ「お前やちゃ のけ! ここは 俺らの場所だけん。」

一同「そげだ! 女は邪魔じゃ。」

チヨ子「何だね。 今 来たくせに。」

「うるせえ! 生意気じゃ。」

ヒロシ「だらず 場所取りしてあるわ。 俺らの刀だ。」

一同「そげだ そげだ!」

ヒロシ「電信柱は その辺に突っ立っとれ。」

(子供達の笑い声)

ヒロシ「1等は 俺らが もらう!」

一同「わ~い。」

一同「♬『そろたそろたよ 踊り子が そろた』」

チヨ子「何だね あれ。 下手くそな踊り。 フミちゃんが 踊り上手だけん 邪魔するんだわ。 相手にせんで 大神宮さんで 稽古しよう。」

布美枝「なあ 電信柱って 私の事?」

チヨ子「のっぽだけんね。 うんと目立つ工夫 考えて 1等 取って あいつら見返してやろうや。」

布美枝「目立つ事 したくないわ。」

チヨ子「何で? 1等 取れんよ。」

布美枝「取れんでもええ。 目立ったら また からかわれるけん。」

チヨ子「賞品 ラムネだよ。」

布美枝「ラムネ いらん…。」

チヨ子「ヒロシ達に負けるの 悔しくねかね? フミちゃん 一緒に頑張ろうよ!」

布美枝「私 今年は踊らん事にする…。」

チヨ子「え~っ?!」

<背の高さを気にする布美枝は 持ち前の内気さに 拍車が かかっていました>

飯田呉服店

源兵衛「ああ お師匠さん。 お針の稽古は 終わりましたかね?」

「え?」

飯田家

居間

源兵衛「ユキエは どこへ行った?」

ミヤコ「裁縫でな~ですか?」

源兵衛「そこで お針のお師匠さんに 会ったわ。 今日は休みでねか。」

ミヤコ「あらら~。」

回想

ユキエ「お父さんには 内緒にしといて。 約束だよ!」

回想終了

源兵衛「あの おてんばが! 親に しら~っと嘘ついて。」

ユキエ「ただいま! ただいま戻りました。」

玄関

源兵衛「どこへ行っちょった? 裁縫は休みでねか。 どこ ほっつき歩いちょった?」

ユキエ「あの… え~っと。 ごめんなさい! 裁縫 お休みなの 忘れてました でも せっかく家を出たけん ちょっと出かけようと思って町まで。」

源兵衛「町に何しに行った?」

ユキエ「買い物とか… ほら。 フミちゃんのリボン。 前から 頼まれちょったけん。」

布美枝「え…?」

源兵衛「だらず! 裁縫がないなら 戻って 家の手伝いせい! 町 行くなら行くで ちゃんと親に言ってから行け!」

ユキエ「すみません。」

源兵衛「もうええ! 飯にしぇ。」

ミヤコ「あんたは もう…。」

ユキエ「失敗。」

縁側

ミヤコ「後で よく言って聞かせますけん。」

源兵衛「誰かと 一緒だったかいな。」

ミヤコ「え…?」

源兵衛「早こと 嫁に出した方が ええかもしれんな。」

2階

布美枝「私 ほんとに言ってないけん。」

ユキエ「分かっちょ。 はい リボン。 黙っててくれたお礼。」

布美枝「映画に行ってきたかね?」

ユキエ「そげだよ。」

布美枝「お父さんに叱られても 映画 見たかったかね?」

ユキエ「顔色うかがっちょったら 何もできん。 でも 今日の映画は 戦争もので つまらんかったな。 私の一番は 去年見た これ。」

布美枝「うわ~。 きれ~な人。」

ユキエ「デートリッヒだが。 キャバレーの歌姫で 兵隊さんと恋をするんだよ。 この兵隊さんは ゲートー・クーパー。 ええ男でしょう。」

布美枝「『モ ロ ツ コ』って何?」

ユキエ「モロッコ。 外国。 ず~っと砂漠が続いとるとこ。 デートリッヒは クーパーを追って 町を飛び出していくんだわ。 裸足で 砂漠を どこまでも歩いて。 あ~ 情熱的だなあ。」

♬~(太鼓)

暁子「情熱もええけど 人目に立つ事は せんでね。」

布美枝「アキ姉ちゃん お帰り。」

暁子「ただいま。 あんたの素行が悪いと 姉の私が 学校で立場が なくな~だけん。」

<長女の暁子は 女学校を出た後 教員をしていました。 教員なら 工場に動員されずに 済むと源兵衛が考えたからです。 工場で働く娘達の中には 厳しい労働のために 体を壊す者も 少なくありませんでした>

暁子「派手は事して 噂になると 結局 自分が嫌な思いするんだよ。」

ユキエ「分かっちょ。」

暁子「それだって 敵性映画でないかね。 得意げに見せたら いけん。」

ユキエ「あれもダメ これもダメで 息が詰ま~わ…。 あ~あ どっか 遠くに行きたいなあ。」

布美枝「遠くって?」

ユキエ「モロッコ。」

布美枝「え~っ?」

暁子「バカな事 言っちょ~わ。」

ユキエ「行ってみたいなあ…。」

<父に叱られても 少しも めげず 遠い世界への憧れを語る ユキエが 布美枝には まぶしく見えました>

リビング

布美枝「何しちょ~の? きゃっ!」

哲也「お面 作っとるんだ。」

貴司「盆踊りで かぶるんだぞ。」

布美枝「すごい顔 怖い。」

哲也「モデルがおるけんな。」

哲也 貴司「お父さんの顔!」

回想

源兵衛「この だらず! だらず!」

回想終了

布美枝「似ちょ!」

哲也「これで 子供踊りの1等賞だ。 なあ 貴司。」

貴司「うん!」

回想

チヨ子「絶対 1等 取ろうな!」

回想終了

布美枝「1等か…。」

回想

ヒロシ「電信柱は その辺に 突っ立っとれ。」

(男の子達の笑い声)

回想終了

布美枝「やっぱり やめとこう。」

<笑われるくらいなら 大好きな 盆踊りを 諦める方がいい。 布美枝は そう思っていました>

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