連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】42話のネタバレです。
あらすじ
布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)は、姿を消した音松(上條恒彦)を探し回った。やっと見つけた音松は、長年使ってきた紙芝居道具を売って金に替えようとしながらも、なかなかそれができずにいた。茂は、音松にわずかばかりの汽車賃を渡し、音松はそれを受け取って九州へと旅立っていく。
42話ネタバレ
水木家
玄関前
布美枝「音松さんが 出かけたきり まだ 戻ってこないんです! 紙芝居の道具 持って。」
質屋
亀田「預かっても いいけど 幾らも 出せませんよ。 こういうもんはね 買い手がつくか どうか 分かんないから。」
音松「うん。」
茂「来ましたか? 紙芝居道具 持って。」
亀田「うん。 『二度と出すつもりは ないから』って 言ってたんだけど…。 お金払う段になったら『やっぱり渡せない』って言いだして…。」
布美枝「音松さん どこへ行ったんでしょうかね?」
茂「紙芝居の道具まで 手放そうとしたぐらいだ。 金 ないだろうしな…。」
布美枝「はい。」
回想
音松「ここは ほんとに いい所だ! こういう所で また 紙芝居 やりたいもんだなあ…。」
回想終了
布美枝「あっ! もしかしたら…。」
深大寺
茂「音松さん… こげな所で 何やっとるんですか?」
音松「私ね… もう これ売って 汽車賃作って どっかへ 逃げ出すしかないと 思ってね…。 けど… いざとなったら どうしても 売れないんだよ。 こんなもの いつまでも 後生大事に持って…。」
音松「紙芝居に しがみついてたって しょうがないのにね。 再起 図るなんて言ったけど そんな大層なこっちゃ ないんですよ。 あんたから 金借りて… それでもって 九州の炭坑町に行けば まだ もう少しは この商売 続けていけるかとね…。」
茂「はい…。」
音松「けど 返せるあて ないんだから 借りるったって。 …詐欺みたいなもんだよね。 どこへ 消えちまったんだろうなあ… 紙芝居に夢中になってた子供達。 見向きもされなくなる日が 來るなんて… あの頃は 思ってもみなかったなあ。 ヘヘッ…。 消えちまったなあ 全部!」
布美枝「帰りましょ。 お腹 すきましたよね?」
水木家
居間
布美枝「えいやっ!」
茂「お… 狐の小判が出たか。」
(笑い声)
2階
茂「汽車賃くらいしか 入っとらんのですが…。」
音松「あんたからは… 借りられん。」
茂「道具は売らんで下さい。 女房が言ってました。 『その道具は 音松さんと 何十年も連れ添ってる。 音松親方の事は 何でも知っとるんだ』って。 『音松の名調子』。 目を輝かせて 見とった 子供らの顔。 毎日毎日 途切れる事なく 描き続けた 紙芝居の物語… 世間が忘れてしまっても… その道具は 全部覚えてるんです! 手放せるはずが… ないですよ。」
<その夜 音松親方は 九州へと 旅立っていきました>
居間
布美枝「音松さん これからも ずっと 紙芝居を続けるんでしょうか?」
茂「うん。 …紙芝居一筋で 生きてきた人だけんな。」
布美枝「そこまで打ち込めるなんて すごいですね!」
茂「ああ そげだな。 立派な人生だ! しかし… 滅ぶというのは 恐ろしいもんだ。」
布美枝「え?」
茂「あ… いや。 仕事する。」
布美枝「私も… 家計の工夫せんといけんな。」
田中家
美智子「肉は なんと言っても ひき肉ね。 ロールキャベツ 野菜いため 丸めて 団子にしてもいいし。 はい! 太一君 おかわり。」
太一「頂きます。」
キヨ「どうしたんだよ。 急に 料理習いに来るなんてさ。」
布美枝「家計のためには 食費を抑える事が肝心ですけん。」
キヨ「そりゃそうだ。」
布美枝「食堂をやっとられたと 聞きました 料理の事なら ここで伺うのが 一番だと思って。」
美智子「漫画家も大変ね。 勤め人と違って 浮き沈みがあるもんね。」
キヨ「うちだって 小商いで カツカツじゃないか。 よそ様の事 心配できる身分かね?」
美智子「もうっ!」
(3人の笑い声)
美智子「太一君 何だか 緊張してんじゃない?」
太一「あ いや。」
美智子「旦那さんが 水木しげるだって 分かって 興奮してたのよ。」
キヨ「今度 会ったらさ いろいろ聞いてみるって 言ってたじゃないか。」
太一「ちょっ…。」
キヨ「フフフ…。」
美智子「あら! お帰りなさい。」
布美枝「お邪魔してます。」
政志「どうも…。」
美智子「こちら 布美枝さん。 ほら! あの 漫画家の 水木しげるさんの奥さん。」
政志「ああ… 戦争漫画の?」
布美枝「はい。」
政志「ふ~ん。」
キヨ「土曜だってのにさ 馬の顔見ないで 戻ってくるなんて まあ 珍しい事もあるもんだよ。」
政志「人の顔見りゃ 嫌み言うの やめてくんねえかな。 ちょっと寝るわ。 俺 熱あるんだ。」
美智子「あら 大丈夫? 熱 測った? ねえ。」
キヨ「(ため息) この季節じゃ 仕方ないかねえ…。」
布美枝「え?」
キヨ「うちの息子ね… 戦争で 外地行っててさ で… ここ やられてね。 朝晩 冷え込んでくると 毎年 決まって 調子 悪くなるんだよ。」
布美枝「そうですか…。」
キヨ「昔ね… 3人で やってたんだよ。 あ 食堂 ハハハ…。 けどね 息子は 体が 本調子じゃないし 私は ほれ リューマチだろ…。」
布美枝「ええ…。」
キヨ「美智子1人じゃ 食堂 続けられないからね。」
美智子「何 昔話してんの?」
キヨ「え? へへへ。」
美智子「貸本屋ね 2年前から始めたのよ。 貯金 はたいて 店 大改造して。 店番だけしてれば 楽できると思ったんだけどねえ。 これが… 大間違い!」
キヨ「仕入れには 行かなきゃならないし 本は 作らなきゃならないし… おかげで 私は 幾つになっても こき使われる!」
美智子「読みが甘くて 悪うござんした!」
キヨ「は~い。」
(一同の笑い声)
真弓「こんにちは~。」
美智子「あ お客さんだ! 小商いで 稼がなきゃ! ウフフ。 は~い… あら! 真弓ちゃん いらっしゃい。」
キヨ「どうかしたのかい? ん?」
太一「いや… 別に。」
こみち書房
真弓「おばさんに 相談したい事があって…。 私… 手紙 もらったんです。」
美智子「手紙? ああ ラブレター?」
真弓「多分…。 何か 詩みたいのが 書いてあるんですけど 私 そういうの よく分からないから…。 でも 困ってるんです! どう言って 断ったらいいか 分からなくて…。 これ… おばさんから やんわり 伝えてもらえないでしょうか? よく店に来ますよね。 …小林太一さん。」
美智子「え?! ちょっと 真弓ちゃん ちょ ちょっと。」
真弓「おばさん?」
美智子「うんうん。」
田中家
<布美枝は とんでもないところに 居合わせてしまったようです>
<その頃 売り込みに回っていた茂は…>
三海社
茂「『三海社』か… よし!」
(ノック)
茂「こんにちは! あれ… 留守かな? 誰も おらんのですか?」
深沢洋一「はい… 何か用?」
茂「原稿 見てもらいに 来たんですが。」
深沢「持ち込み? 誰? 何 描いてる人?」
茂「水木といいます。 『墓場鬼太郎』という漫画を 描いちょって…。」
深沢「水木さん?!」
茂「はい。」
深沢「いや~ よく来てくれたね! いや~ あんたが来ないかと 待ってたんですよ!」
<茂は 布美枝の人生にも 大きく かかわる 運命の出会いを 果たしていたのです>