連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】46話のネタバレです。
あらすじ
布美枝(松下奈緒)は、戌井(梶原善)が言いだした“茂(向井理)と読者との交流会”というイベントに、果たして源兵衛(大杉漣)が満足する人数の客が集まるかどうか、不安を抑えきれなかった。美智子(松坂慶子)は、「イベントの成功に全力をあげる」と言うが、布美枝には太一(鈴木裕樹)のことを人一倍心配する美智子の心情がわからなかった。
46話ネタバレ
水木家
居間
戌井「太一君も無理なく来られて 新刊の宣伝にもなって しかも お父さんの心証が 良くなる。 どうです? こりゃもう 一石二鳥どころか 一石三鳥ですよ。」
<戌井が提案した 一石三鳥の計画とは こみち書房で 水木しげると 読者との交流会を開く事でした>
美智子「人は 必ず集めます。 商店街に 声をかけて 宣伝してもらいます。 そうだ! チラシを作って 配りましょう。」
戌井「おお チラシは いいですねえ。 あ しかし あさってとなると 印刷 急がないと。」
美智子「大丈夫です。 200枚や 300枚 手書きでも なんとかなります。」
布美枝「チラシなら すぐ出来ますよ。」
美智子「ガリ版ね!」
戌井「おう これは いい。」
布美枝「『少年戦記の会』の会報 これで ずっと 作ってたんですけん 慣れたもんですよ。」
戌井「僕も 漫画関係の知り合いに 声かけときます。」
布美枝「おかみさん達に お願いして 床屋と銭湯にも チラシを置いたら どげでしょうか?」
戌井「それは 効果ありますよ! 床屋と 銭湯は 町の情報発信源ですから。」
茂「しかし チラシくらいで 人が集まるかねえ?」
戌井「じゃあ 派手に バ~ンと 宣伝文句を 入れて あおりましょう。 そうだなあ… 『漫画界の鬼才 調布の星 水木しげる先生 ご来店!』 これでいきましょうや。」
茂「そんな 大げさな…。」
戌井「宣伝は これくらい派手に いかないと!」
茂「調布の星ねえ…。」
美智子「ありがとうございます! 勝手なお願いなのに いろいろ考えて頂いて。」
茂「いや こっちは 本の宣伝ですけん。」
布美枝「父の事も ありますし 一石三鳥ですよ。」
戌井「うん!」
美智子「ああ ありがとう。」
玄関前
布美枝「チラシ 刷り上がったら届けますね。」
美智子 戌井「お願いします。」
美智子「あの 水木先生。」
茂「はい。」
美智子「ぶしつけな事を お尋ねしますけど…。 左の腕は 戦争で…?」
茂「そげです。」
美智子「漫画描くのに ご不自由は ないですか?」
茂「ええ ないです。 右利きですけん。 腕1本あれば 何でもできます。」
美智子「すいません 失礼な事を。 主人が 先生の漫画を読んで 『戦争で ご苦労された方じゃないか』って 言ってたものですから。」
茂「ご主人も 戦争に行かれとったですか?」
美智子「はい 満州に…。」
茂「ほう。」
美智子「じゃ よろしく お願いいたします。」
居間
茂「ほい 出来たぞ。」
布美枝「ウフフフッ…。」
茂「ん? どげした?」
布美枝「『調布の星』。」
茂「ああ。 やっぱり おかしいよなあ。 書き直すけん よこせ。」
布美枝「このままで ええです。」
茂「いや 直す。」
布美枝「ええですって。 早こと刷って 届けんといけんのですけん。」
茂「う~ん そげか…。」
布美枝「(笑い声)」
茂「だら もう 笑うなら 返せ!」
布美枝「宣伝ですけん。」
茂「いいから戻せ。 この!」
布美枝「いや ダメだ ダメだ!」
茂「笑っとるだろ! 返せよ ほらっ!」
<ゆうべの諍いの わだかまりも いつの間にか 解けていました>」
こみち書房
靖代 徳子 和枝「読者の集い?!」
美智子「うん。 土曜日の午後。」
靖代「あら えらい急だわね。」
徳子「『調布の星 水木しげる先生 ご来店』?」
和枝「吉田 茂ならともかく 水木しげるで人が集まんの?」
美智子「そんな事 言わないでよ。 布美枝ちゃんの お父さんも 見にいらっしゃるんだから。」
靖代「田舎から出てくるんだ。」
美智子「そうなのよ。 だから 人が集まらないと困るの。 いいとこ見せないと 布美枝ちゃん 立場がないじゃない。」
キヨ「あんた達さ ご町内の拡声器なんだから こんな時こそ役に立っとくれよ。」
和枝「拡声器って…。」
3人「ねえ~!」
布美枝「チラシ 出来ました!」
美智子「あら もう出来たの?」
布美枝「皆さん お世話になります。 宣伝 よろしく お願いします!」
3人「うん 任せなさい!」
キヨ「よいしょ!」
床屋
徳子「あっ 奥さん 奥さん! 『水木しげる先生と読者の集い』!」
乾物屋
和枝「『水木しげる先生と読者の集い』ですよ!」
八百屋
徳子「奥さん 奥さん 奥さん! はい 調布の星 水木しげる先生!」
<読者の集いの準備は 着々と進んでいきました>
すずらん商店街
布美枝「うちの人の 初めてのサイン会なんです。」
町の人「奥さんの?」
布美枝「はい!」
水木家
居間
茂「うわ~ やめ~だ!」
布美枝「握手するかもしれんのに 爪 伸びとったらいけんでしょう。 あっ 動いたら危ない!」
茂「怖っ もう ええ…。」
布美枝「すぐですけん。 はい 終わりました!」
茂「はあ! 肉まで切られるかと思ったわ。」
布美枝「大の大人が 爪切るくらいの事 なして怖いんですか?」
茂「理屈なんぞあるか。 怖いもんは怖いんだ!」
布美枝「はい はい。」
茂「こればっかりは 一人だけでは難しいしなあ…。 はあ…! しかし やけに親切だなあ。」
布美枝「え?」
茂「貸本屋の おかみさんだよ。 客一人に えらい大仕掛けな事を するもんだ。」
布美枝「町のお母さんですからね。 それに 太一君の事は 特に気にかけとるんですよ。 『田舎から出てきて 友達もおらんだろうし』って。」
茂「しかし そげな人間は 大勢おるぞ。」
布美枝「はい。 実は 私も ちょっこし 不思議だなと思っとったんです。」
茂「う~ん 何か 訳でもあるのかね?」
布美枝「そげですねえ…。」
<そして いよいよ土曜日の午後…>
こみち書房
戌井「何で 僕まで…。」
キヨ「1人より2人の方が 心強いだろう! フフフフフ!」
戌井「参ったなあ…。」
茂「もう 観念するんですな。」
美智子「甘酒 どうぞ!」
戌井「あ いただきます。」
美智子「お客さんにも振る舞おうと思って。」
茂「ああ そりゃ ええ 客寄せになります。」
戌井「あ~…。」
徳子「角の荒物屋さん 親子で来てくれるって!」
美智子「あら うれしい!」
徳子「これ どこ置く?」
美智子「そっち。」
和枝「湯飲み 足りそう?」
美智子「うん お願い。 ありがとねえ…。」
戌井「お父さんは どうしました?」
茂「ああ 女房が連れてくる事に なっとるんですが…。」
戌井「ああ…。」
茂「客 集まるかなあ?」
戌井「ですねえ…。」
政志「随分 ベタベタ 貼ったなあ。 これで花輪がありゃ パチンコ屋の新装開店だな。 あんたが 水木さん?」
茂「…ええ。」
政志「気の毒なこった。 こんなとこまで 引っ張りだされて。」
茂「はあ…。」
政志「私 美智子の亭主です。」
茂「ああ あ~ こりゃ どうも。」
戌井「お世話になってます。」
政志「ふ~ん。 私は 漫画なんかに興味ないけどね あんたが 前に描いた 戦争の やつ 読んだよ。」
茂「はあ。」
政志「あんたも 戦争で むごい目に遭った口かい?」
美智子「色紙 足りるかしら?」
徳子「じゃ 向こうの文房具屋 行ってくるわ。」
和枝「じゃ 質屋さん 声かけといて。」
美智子「あら お帰りなさい。」
政志「やかましいなあ。」
キヨ「皆さん 手伝ってくれてんだよ! あんたも 手を貸したら どうなのさ。」
政志「うるさくて昼寝もできねえや。 はい ごめんよ ごめんよ! はいよ!」
水木家
玄関前
布美枝「はあ…。」
源兵衛「布美枝!」
布美枝「あ お父さん。」
源兵衛「おう どげした 出かけるのか? 村井さんは?」
布美枝「実は 今日 これが…!」
源兵衛「読者の集い…?」
こみち書房
茂「はい。」
母親「ほら ありがとうは?」
子供「この絵 かわいくな~い。」
(母親と戌井の笑い声)
戌井「いずれ分かるからねえ。」
靖代「ああ 来ないねえ!」
徳子「20分経つのに まだ5人?」
和枝「ご町内 回って 人 集めてこようか?」
靖代「腕ずくでも 連れてくるか!」
キヨ「そうしとくれよ。 サクラでも何でも いいんだよ。 誰かが並んでりゃ 人が集まってくるんだからさ。」
靖代「どうする 美智子さん?」
美智子「そうねえ…。」
床屋
源兵衛「ほう。 がいに宣伝しちょるなあ。」
布美枝「お世話になっとる 貸本屋さんが 力を入れてくれとるんだわ。」
源兵衛「そげか。」
布美枝「うん!」
源兵衛「ああ…。」
布美枝「お客さん 来とりますように…!」
こみち書房
源兵衛「おう! あれか…。」
布美枝「良かった! ようけ 人がおる…。」
茂「ああ どうも…。」
源兵衛「あ こっちは ええけん。 続けて…。」
布美枝「お父さん。」
源兵衛「ああ。」
美智子「お陰さまで盛況なんですよ。 ねえ おばあちゃん。」
源兵衛「いや~ 娘夫婦が お世話になってるそうで。 こげな催しがあると知っておれば 早々に ご挨拶に伺ったのですが。 早い事 言わんか!」
布美枝「すんません。」
美智子「すいません。 私が 急にお願いしたんです。」
源兵衛「いや いや。」
布美枝「お父さん これが 今度 出た本だわ。」
源兵衛「お~ どれどれ! おう…。 う~ん ほほう…。」
深沢「いや~ にぎわってますなあ。 え~と このお店の方は?」
美智子「私 ですが。」
深沢「どうも お世話になってます。 私…。 あれ? 『鬼太郎夜話』を出版している…。三海社の深沢です。」
美智子「出版社の社長さん?! わざわざ!」
美智子「この人が深沢さん…?」
源兵衛「あの~ 失礼ですが 出版元の方ですか?」
深沢「はい。」
源兵衛「そげなら ひとつ 掛値のないところを お聞かせ願いたのですが。」
深沢「はあ。」
布美枝「お父さん…。」
源兵衛「ああ ええけん。 この本は どげなもんでしょうか?」
深沢「え?」
源兵衛「売れますかな?」
深沢「う~ん どうでしょうか…。 分かりませんな。」
源兵衛「あっ…。」
深沢「まあ 子供に受けのいい 楽しい漫画とは違いますから。 なかなか ど~んと売れる という訳には いかんでしょう。」
源兵衛「ああ そげですか…。」
深沢「しかし これは すごい漫画ですよ。」
源兵衛「え?」
深沢「まあ 見て下さい。 この独特のユーモアと哀感。 そして しっかりした物語性。 こういうものは 他の人には ちょっと描けない。 まさに 余人をもって代え難い才能 と言うべきでしょうな。」
深沢「まあ 時間は かかるでしょうが 『鬼太郎夜話』は いずれ 必ず 高く評価されると 私は 革新してますよ。」
源兵衛「ああ…。」
深沢「ところで あなたは どなたですか?」
源兵衛「あ~ ご無礼しました。 あの 私 村井 茂… いや あの 水木してるの舅です。」
深沢「ほお! これは これは。」
源兵衛「これが 嫁に出した娘ですわ。」
布美枝「水木の家内です。」
深沢「深沢です。」
源兵衛「お話を伺って 得心しました。 婿の漫画 どうぞ よろしくお願いします!」
布美枝「お父さん…。」
深沢「こちらこそ よろしくお願いします。」
茂「あ 深沢さん どうも。」
深沢「よう。」
茂「あれ? 何か あったのか?」
<深沢の言葉に ほっと胸を なで下ろす布美枝でした>