ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第47話「父の上京」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】47話のネタバレです。

あらすじ

茂(向井理)と読者の交流会イベントの盛況ぶりに、源兵衛(大杉漣)は胸をなでおろした。布美枝(松下奈緒)は、太一(鈴木裕樹)の姿を見つけ、交流会に立ち寄ってくれるように声をかける。時を同じくして、源兵衛は偶然入った喫茶店で、「こみち書房」前の茂のサインを求める行列の人々が、景品につられて並んでいただけであることを知ってしまう。

47話ネタバレ

こみち書房

茂「はい。」

客「ありがとうございます。」

戌井 茂「ありがとうございます!」

キヨ「お待たせしましたね。」

布美枝「ちょっと 待って下さい。」

美智子「どうぞ 中で待ってて下さい。」

源兵衛「あ~ どうにか やっていけとるようですなあ。」

美智子「え?」

源兵衛「長い事 手もとに置いた娘ですけん 東京で どげなふうに暮らしとるか 案じておりました。 いや 嫁に出した娘の事を 親が あれこれ言うのは みっともな~ですな。」

美智子「ご心配で当たり前ですよ。 親ですもの。」

源兵衛「おかみさん お子さんは?」

美智子「ええ。 息子が1人。 でも…。」

布美枝「お父さん! まだかかりそうだけん ちょっこし 商店街 歩いてみる?」

源兵衛「おう そげだな うん。」

布美枝「太一君 来ました?」

美智子「まだなの。」

布美枝「そげですか。」

美智子「はあ~ あの子 もう ここには 来ないつもりかしらねえ。」

すずらん商店街

源兵衛「東京も大した事ないな。 こげなら 大塚の方が ずっと ええわ。」

布美枝「ここも 慣れたら ええとこよ。 そうだ。 今度 来た時 深大寺に案内するわ。」

源兵衛「ジンダイジって 寺か?」

布美枝「うん。 あれ? 太一君! あ ちょっと待って!」

源兵衛「おい どげした?」

布美枝「お父さん この先に喫茶店が あるけん そこで待っとって! すぐ戻るけん! 待って!」

源兵衛「おい 布美枝! 何だ あれは?」

布美枝「太一君! こみち書房に 行くとこだったんでしょう? ちょっこし のぞいてみれば ええのに。 うちの人にも 会ってほしいけん。」

太一「同情ですか?」

布美枝「え?」

太一「参るよな そういうの。 そっちは 親切のつもりかもしれねえけど 変に気ぃ遣われると こっちは 余計みじめになる。 じゃあ。」

布美枝「あ…!」

太一「何ですか?」

布美枝「あ… あの…。 私 のっぽでしょう?」

太一「え?」

布美枝「あ… 子供の頃 電信柱って からかわれとった。 嫌だったけど 気が弱くて口下手で ろくに言い返せんだった。 お見合い断られたり 仕事で失敗したり 恥ずかしい思いも いっぱいした。 だけん うまく言えんけど… 同情とは 違うのよ。 太一君の事 ひと事とは 思えんのよ。 ほうっておけんのよ! なあ 一緒に行こう? 美智子さんも 待っとるけん。」

純喫茶・再会

源兵衛「布美枝の奴 どこへ行ったんだ?」

(ドアの開く音)

マスター「いらっしゃい!」

亀田「おいしいコーヒーお願い。」

マスター「は~い!」

亀田「よう! 今 あんたの店 行ってきたよ。」

政志「ご苦労さん。」

亀田「ほら サイン色紙。 妙なもんだね。 漫画家先生 うちの質屋の常連なんだからさ。 サインなんて 質ぐさ 返す時に 何度も もらってるっつ~の。 マスター これ店に飾る?」

マスター「いや~。」

亀田「あっそ!」

政志「商店街のつきあいだからって 行列なんかする事ないんだよ。」

亀田「別に つきあいばかりじゃないよ 俺の目当ては これ。」

政志「貸本無料券?」

亀田「あれ 政志さん 知らなかった? サイン 書いてもらった人ひは もれなく 貸本のタダ券が ついてくるっていうんだから 行列が出来る訳よ。 奥さん うまい事 考えたね。」

政志「は~ あいつ こんな事してたのか。」

亀田「なかなか 人が集まんないもんだから サクラ 総動員したんじゃないの? サクラ 満開! ん? あれ?!」

亀田「お宅 どちらさん? あ~! いやいや! ちょっと!」

こみち書房

茂「はい ありがとう!」

2人「ありがとうございました。」

キヨ「そろそろ 片づけようか。」

美智子「でも…。」

キヨ「もう 来ないよ。」

美智子「そうね…。 ありがとうございました。 お陰さまで 盛り上がりました。」

茂「盛り上がったのは ええですが お店は 大丈夫ですか?」

美智子「え?」

戌井「これ 落ちてましたよ。」

美智子「あら!」

茂「道理で 途中から客が増えた訳だ。」

美智子「申し訳ありません! すみません 勝手な事して。」

戌井「いやいや。 景品をつけるのも 戦略のうちですから!」

茂「お陰で どうにか 恰好もつきましたけん。」

源兵衛「恰好がついたとは どげな意味だ!」

美智子「あ!」

源兵衛「布美枝は おらんのか!」

布美枝「太一君は 来てくれんし お父さんまで おらんようになるし。 あれ? もう戻っとる。 お父さん 喫茶店で待っとってって 言ったのに。 ん? どげしたの?」

源兵衛「お前… わしを だましとったんだな。」

布美枝「え?」

源兵衛「さっきの客の行列 あれは 景品で釣った サクラでな~か! だらずが! つまらん事で 客を集めて 親の目をごまかすとは どげな了見だ!」

布美枝「お父さん 違うの これには 訳があって。」

源兵衛「ええ事ばかり 手紙に書いてよこしても そげに うまくいっとらん事ぐらい 分かっとったわ。 親の目は 節穴ではな~ぞ!」

布美枝「はい。」

源兵衛「一生懸命 働いて それでも 貧乏なら 堂々と 貧乏しとったら ええんだ! それを 周りの人まで巻き込んで ええふうに見せようとする お前やちの考えが わしは 気に入らん!」

布美枝「すんません。」

美智子「お父さん 待って下さい。 違うんですよ。 このサービス券は 私が勝手に つけたものなんです。」

源兵衛「何ですと?」

美智子「本当に申し訳ありません。 無理を言って 先生に来て頂いたんで 一人でも多く お客さんを集めたくて。」

キヨ「そうなんですよ 悪いのは うちですから。」

戌井「それを言ったら そもそも この会をやろうと言いだしたのは 僕な訳で…。」

源兵衛「あんたは 何だ?」

戌井「戌井と言います 漫画家仲間の。」

源兵衛「漫画家仲間?」

戌井「はい。」

源兵衛「あ! さっきの出版社の社長 あの男 漫画の事を 大いに褒めとったが ほんなら あれも芝居か?」

布美枝「お父さん 何 言うの!」

戌井「深沢さんは この会を知って わざわざ 駆けつけてくれたんですよ!」

源兵衛「あ~っ! わしは もう 何を信用していいか 分からんわ! 茂さん。」

茂「は…。」

源兵衛「あんたは もっと 堂々とした男だと思っとった。 娘が 何を頼んだか知らんが こげな小細工に 手を貸すとは。」

茂「どうも すまん事しまして。」

源兵衛「ええ男に 嫁がせたと思うとったが わしの間違いだったかのう。」

布美枝「そげな事 言わんで。」

源兵衛「ん?」

布美枝「お父さんは 何も知らんけん そげなふうに思うんだわ。」

源兵衛「何?」

布美枝「うちの人は 小細工なんかせんですよ。 何 言われても いつも堂々と 自分の好きな漫画に打ち込んどる。 私は よう知っとります。 夫婦ですけん。 うちの人が 精魂込めて描いとるとこ 一番近くで見とるんですけん! 間違いだなんて 言わんでごしない。 うちの人は 本物の漫画家ですけん!」

茂「もう ええ。」

布美枝「けど…。」

茂「ちょっこし ええとこ見せようとしたのが いけんだったな。」

キヨ「あ 太一君 来た。」

美智子「え? あ~! あ! ちょっと すいません!」

源兵衛「あ…。」

美智子「あ 来てくれたんだ! よかった! もう来ないんじゃないかって おばさん 心配しちゃった。 みんな心配してるのよ。 さあ 入って。」

太一「『心配 心配』って 何なんだよ。 これだから 來るの嫌だったんだ。」

美智子「え?」

太一「いちいち そういう事 言われるの うっとうしいんだよな。」

美智子「太一君。」

太一「おせっかい焼くの いい加減にしてもらえねえかな。 迷惑なんだ 親でもねえくせに。 心配されたって どうにもならねえんだよ。 東京来ても 何もいい事ねえ。 人とは うまくやれねえし 仕事は つまんねえし この先だって どうせ ろくな事なんかねえんだ。」

美智子「そんな… そんな事 言っちゃダメよ。」

太一「口先だけで言うなよ! 分かってんだよ 自分でも。 どうせダメだって。 もう ほっといてくれよ! すいません 俺 帰ります。」

美智子「心配させてよ! 心配したいのよ! だって 太一君は 生きてるでしょう。 つらい事があっても 嫌な事あっても 生きてるから。 生きててくれれば 心配できるから。」

太一「え…。」

キヨ「美智子。」

太一「おばさん 何 言ってんだ?」

美智子「(泣き声)」

キヨ「疎開先で 腸チフスにかかってね。 生きていたら ちょうど 太一君ぐらいの年だ。 戦争が終わってすぐで どうしようもなかったんだよ。」

美智子「おいしいもん 食べさせたかった 『仕事 頑張ってるか 悩みはないか』って 心配したかった。(泣き声) でも 無理なの。」

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