ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第49話「私、働きます」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】49話のネタバレです。

あらすじ

昭和37年、布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)が結婚して1年がたった。深沢(村上弘明)からの仕事の依頼のおかげで、家計は少し楽になりかけていた。茂は深沢の出版社で、少女漫画家を志す河合はるこ(南明奈)と出会う。はるこは父親から漫画を描くことを反対されていたが、何としてでも漫画家になろうとする意志をもっていた。茂は新作「河童の三平」にとりかかろうと意欲を高めていたが、深沢が突然かっ血し病に倒れる。

49話ネタバレ

水木家

玄関

布美枝「なるべく早く戻って下さいね。 1年になります。 結婚して。」

茂「ああ。」

布美枝「今夜は ちょっこし ごちそうです。」

玄関前

布美枝「行ってらっしゃい!」

三海社

茂「こんちは!」

深沢「早かったね。 まだ2~3日後かと思ってたよ。」

茂「はい! 『鬼太郎夜話』の第5作です。」

深沢「おっ ちょうだいします。」

茂「あっ 少女漫画ですなあ。 はあ 目の中で ようけ 星が光っとるなあ!」

深沢「この人が 作者。」

茂「ほう こちらの坊やが。」

深沢「あ?」

河合はるこ「え?」

茂「え?」

はるこ「私 女ですけど!」

茂「あれ…。」

はるこ「失礼な人…。」

茂「ああ これは かわいい犬ころ ですなあ。」

はるこ「それ 鹿です。 子鹿!」

茂「鹿ですな。」

深沢「ハッハ この人 河合はるこさん。 山梨から出てきた漫画家の卵。」

茂「どうも…。」

深沢「この人 漫画家の水木しげるさん。 『鬼太郎』の作者。」

はるこ「キタロー?」

深沢「何だ。 君 読んでないの? ちょっと待って 持ってくるから。」

河合峻三「三海社は ここか!」

はるこ「…あっ!」

峻三「娘が来とるか?」

茂「え?」

峻三「おい 娘 出せ! くだらん手紙で 娘 たぶらかしおって!」

茂「はあ…。」

深沢「ちょっ ちょっと 待ちなさい。」

峻三「あんた 誰だ。」

深沢「深沢です。 この会社を やってる者ですが。」

峻三「あんたが深沢?」

深沢「はあ。」

峻三「じゃあ この人は?」

茂「自分は 漫画家ですが。」

峻三「漫画家…?!」

深沢「事情は知らんが 逃げ隠れしても始まらんぞ。 ん?」

峻三「はるこ お前!」

はるこ「お父さん 何しに来たの!」

峻三「バカ! こっち来い 家に帰るんだ。 おい!」

はるこ「いや!」

峻三「来い! ちょっとどいて ちょっと ちょっと どいて下さい! はるこ お前!」

はるこ「お父さん。」

峻三「はるこ!」

峻三「いい年をした女が 漫画なんぞを読んでるだけでも みっともないのに それを 東京に 出るだの 漫画家になるだの まったく 恥の恥だ!」

はるこ「恥って何よ?!」

峻三「そんな事を描く暇に 嫁入り修業でもしてろ!」

はるこ「ナンセンス!」

峻三「生意気な事を言ってるんじゃあ…。」

深沢「まあまあ お父さん。」

峻三「あんたも あんただ!」

深沢「は?」

峻三「娘が下手くそな漫画を送ったのに つけ込んで 手紙で誘い出して。」

はるこ「失礼な事 言わないでよ! 深沢さんは 私が投稿した原稿を きちんと送り返してくれて 『自分らしい漫画を描きなさい』って アドバイスまでくれたのよ!」

峻三「そんな甘い言葉に騙されて 家出したのか この世間知らずが!」

はるこ「『2~3日で戻る』って 書いてきたでしょう!」

峻三「うるさい! 帰るぞ!」

はるこ「もう 離してよ!」

茂「それは 珍しいですなあ。」

峻三「え?」

茂「新人の投稿なんぞ 大体は ごみ箱にポイですぞ。 自分は 持ち込んだ原稿が 4つに切られて 鼻紙代わりに 使われた事もあります。 新人の投稿漫画に 手紙を付けて送り返すとは あ~ これは なかなか できる事では ありませんぞ。」

深沢「いや~ 私は いい漫画に 出会いたいだけでね…。 磨かれざるダイヤの原石は どこに 眠っているか分からないから。」

はるこ「ダイヤの原石…。」

峻三「いや とにかく その 堅気な娘を その 堕落の道に 誘い込まないでほしい!」

深沢「堕落の道?」

峻三「ああ。 漫画なんぞという 低級で 俗悪なものを 娘に使づけんでくれ!」

深沢「お父さん それは違うな。 私はね 漫画の出版を 男子一生の 仕事と思ってやってますよ!」」

峻三「くだらん!」

深沢「あんた そう 一刀両断できるほど 漫画を読んでおるのかね?」

峻三「え?」

深沢「これは この人の漫画だが 私は 文学にも 絵画にも 劣らない 深い世界観と詩情を感じますね。 この人の ここから あふれ出す 物語が 紙とペンで 描き出されて 人の心を動かすんです。 俗悪だの低級だのと 軽々に 断じられては困ります!」

峻三「漫画の事なんぞ 知るか! おい 帰るぞ!」

はるこ「勝手に決めないでしょ! 私の人生なの。」

峻三「何?!」

はるこ「深沢さん。 私 東京で 漫画の勉強をしたいんです。 力を貸して下さい。 お願いします。」

深沢「それはダメだね。」

はるこ「え?」

深沢「お父さんと帰りなさい。」

はるこ「そんな…。」

深沢「漫画の勉強したいんなら 力になってもいい。 ただし 家族を説得してからだ。」

はるこ「でも…。」

深沢「漫画家になったら 君が相手にするのは 何千人 何万人という 顔も知らない読者だ。 君は その人達に 漫画に込めた 思いを伝えねばならん。 家族さえ説得できないようで どうする。 ん? よく話し合いなさい。 その上で 改めて出てくるなら その時は 力になろう。」

水木家

居間

布美枝「♬『埴生の宿も わが宿』」

中森「あ~ 寒いのに お元気ですなあ。」

布美枝「はい!」

中森「あ! あの~ これ…。 家賃です。 分割払いで 申し訳ないんですが。」

布美枝「助かります。」

中森「…村井さん お出かけですか?」

布美枝「三海社まで原稿届けに行ってます。」

中森「ああ うらやましいですなあ。 私なんか もう さっぱりですよ。 また 持ち込みに回らなきゃですなあ。」

布美枝「え~と 家賃 1,500円。 はあ…。 おばば 最近 ちょっこし 楽になってきたよ。」

<三海社からは 『鬼太郎夜話』の原稿料が 順調に入り わずかながら あの下宿代も助けになって やりくりは ほっと一息>

布美枝「あ! そうだ。 境港のお父さんに お芝居の記事 送ってあげよう。」

<新聞を取る余裕も 出てきました>

三海社

深沢「可能性は1割ってとこかな。 よく いるんだ。 田舎から出てくる子。 説得して帰らせて 出直してくる子は まあ2割。 その中で ものになるのは半分。」

回想

はるこ「必ず戻ってきますから。 父を説得して きっと東京に来ますから!」

回想終了

茂「今の子 漫画の力は どんなもんなんでしょう?」

深沢「てんで下手だがね。 何か気になるものが あるんだ。」

茂「ほう。」

深沢「人まねをやめて 自分の個性を 描きだしたら 案外 化けるかもしれないね。 確かに。 あ~ いかん。 悪いねえ。 今日は 原稿料を払う用意がない。」

茂「あ~ ええです ええです。 また 日を改めて ちょうだいしに 来ます。」

深沢「すまんねえ。」

茂「それより 今日は 次回作の ご相談をと思っとるんですが。」

深沢「ほう 伺いましょう。 そうだ。 せっかくだから 外で一杯やりますか。」

屋台

深沢「うん うまい! しかし… 水木さんが飲めないとは意外だな。 少々で2升の口かと思ったよ。」

茂「そちらは ようけ飲みますなあ。」

深沢「これ 私のガソリンですよ。 ところで 次回作というのは?」

茂「『河童』の話は どげでしょう?」

深沢「『河童』?」

茂「ちっと描いてきたんですがね。」

深沢「うん。」

茂「山の中に『河童』によく似た少年が 住んでおって 『河童の三平』と呼ばれとるんです。 川の底に『河童』の国があって 人間界に留学生を送り込むんです。 それが 三平そっくりな『河童』で。」

茂「三平と『河童』は 交代で学校に行ったり それから 子狸といたずら合戦をやったり そういう のんきな話です。」

深沢「うん…。 やりましょう。 うちで出させてもらいます。 ど~んと 長編連作で ぶちかましますか!」

茂「ああっ!」

深沢「ハッハ! 『河童』と人間が 混じり合う世界か… いいねえ。 これ 編集者の感だけど 傑作が生まれる予感がするよ。 タイトルは ズバリ 『河童の三平』でどう?」

茂「自分も それがええ 思っとりました。」

深沢「よ~し 決まった! ハハハハ!」

茂「しかし ええんですか? 連作長編で。」

深沢「何で? 難しい?」

茂「いや~。 売れるか どうか…。」

深沢「水木さん 今は 売れる売れないを 言う時じゃ ないよ! いいものを作る事に 全力を尽くす時だ。 評価は 必ず後から ついてくる。 はあ… 『河童の三平』か。 傑作の予感が するな。 食べない?」

茂「はい。」

水木家

居間

布美枝「よし 出来た。 そろそろ 戻ってくるかな? あ… 雪。」

道中

深沢「もう一軒行こう あっちに ツケの利くバーがあるから。」

茂「いや ちょっと今日は…。」

深沢「いいじゃないか。 まだまだ 話す事あり 聞く事ありだ。」

茂「はあ…。」

深沢「行こう。 ねえ 水木さん。」

茂「はい。」

深沢「ちっぽけな会社のくせにと 笑われるかもしれんが… 私はね… 漫画に 新しい風を起こすつもりだよ。」

深沢「今は 子供のおやつと バカにされ 低俗だの何だのと 言われてるけど 漫画には 大きな可能性がある。 いずれ 漫画が 世の中を動かす時代が必ず来る! 2人で風を起こしましょうや ねえ 水木さん!」

茂「ええ!」

深沢「行きましょう。」

茂「大丈夫ですか?!」

深沢「あれ おかしいな…。(激しい せきこみ) う~ん!」

茂「深沢さん! しっかりして下さい。 深沢さん 深沢さん! 深沢さん!」

水木家

台所

布美枝「う~ん 上出来。」

<布美枝は 何も知らずに 結婚記念日の用意を 整えて 茂の帰りを待っていました>

(救急車のサイレン)

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