ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第50話「私、働きます」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】50話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)も茂(向井理)も深沢(村上弘明)の早い復帰を信じていたが、退院の知らせはなかなか届かなかった。茂は深沢の出版社を訪ねてみるが、次々に荷物が運び出される光景に出くわす。深沢の長引く療養のために会社が閉じられたのだった。それは、茂の収入がとだえてしまうことを意味した。茂は仕事を得るために、出版社への自作の売り込みに歩く日々をおくるが、経営者は一般受けしない茂の漫画に難色を示す。

50話ネタバレ

水木家

居間

布美枝「よし 出来た! あ! そろそろ 戻ってくるかなあ。」

道中

深沢「(せきこみ)」

(救急車のサイレン)

茂「深沢さん!」

<布美枝は 何も知らずに 結婚記念日の用意を整えて 茂の帰りを待っていました>

水木家

居間

布美枝「遅いなあ。」

(戸の開く音)

茂「お~い 戻ったぞ!

布美枝「あ! 帰ってきた! お帰んなさい! 深沢さん 胸が お悪いんですか?」

茂「うん しばらく 入院するようだ。 けど 意識も しっかりしとったし もともとが 元気な人だけん すぐ よくなるだろう。」

布美枝「そげですか。 まあ 今は ええ薬もありますしね。」

茂「うん。 働きすぎて悪くしたと 医者が言っとった。 この機会に 休んだらええかもしれん。 こげな事でもなけりゃ 人の倍 働いて 人の倍 酒も飲む人だけんな。」

布美枝「ええ。」

茂「待たせたな。」

布美枝「え?」

茂「少し早く帰ってくる つもりだったんだが…。」

布美枝「ああ…。 あの…。」

茂「何だ? ん?」

布美枝「つまらんもんですけど。」

茂「お! これ あんたが作ったのか?」

布美枝「ペン立てに どげかな~と。」

茂「はあ~ よう出来ちょ~な! 売っとるのより ずっとええ。 お返しに ええ事 教えよう。」

布美枝「え?」

茂「『河童』の漫画 描く事になったぞ。」

布美枝「『河童の三平』ですか?」

茂「ああ。 長編連作でやると 深沢さんと約束した。」

布美枝「ああ よかったですねえ! ずっと 大事にしとった話ですもんね! 深沢さん 早く 治ってくれんかなあ。」

茂「早速 取りかかって 退院祝に 原稿 渡して 喜ばせてやるか。」

布美枝「はい! あ…。」

茂「うん なかなかええ。」

<この夜 布美枝も茂も 深沢は すぐに復帰するものと 信じていたのでした。 ところが…>

布美枝「あ~ 寒い!」

<深沢の退院の知らせは なかなか届きません。 それから 1か月ほどが過ぎ…>

こみち書房

布美枝「靖代さん どうしたんですか?」

靖代「始めたのよ これ。」

布美枝「ロザンヌクリーム?」

靖代「そう。」

徳子「『こんにちは! ロザンヌレディでございます』って 売りにくる あれ?」

和枝「靖代さんが ロザンヌレディ?」

靖代「ロザンヌレディでございま~す!」

3人「え~っ!」

靖代「お客さんに 進められたのよ。 おかみさんだったら トップセールス狙えるって 言うもんだからさ つい。」

キヨ「あんた 銭湯の方 どうするんだよ?」

靖代「嫁が手伝うって。 『お母さんも 番台に ずっと座ってるよりも 化粧品 売って あちこち 歩き回った方が お体に よろしいんじゃ ございませんか』だって。 いいとこあんのよ うちの嫁も。」

キヨ「体よく 追い出されたんじゃない?」

和枝「プッ!」

靖代「違うわよ!」

徳子「それで 売れたの?」

靖代「今から 売るとこ。」

徳子「え?」

靖代「買って お願い! まだ 全然 売れてないの。」

2人「え~っ?!」

キヨ「幾らだい?」

靖代「2,000円。」

布美枝「高い!」

靖代「ねえ 徳子さん!」

徳子「あああ~!」

靖代「和枝ちゃんも」

和枝「あ 私 店に戻んなきゃ。」

徳子「店 予約入ってたんだ! じゃあね!」

靖代「あんた達 待ってよ! 長いつきあいじゃないの!」

キヨ「まあ あんなんで 高級クリームが 売れんのかねえ?」

布美枝「うん。」

美智子「あら? 靖代さん達 帰っちゃったの? ねえ 布美枝ちゃん ちょっと 上がってって。 蒸しパン 作ったから。」

布美枝「いただきます。」

田中家

美智子「三海社の社長さん 入院なさってるの?」

布美枝「はい。 もう1か月になるんです。」

美智子「まあ 結核か? 大丈夫かなあ。」

太一「それで 漫画の続き 出なかったんですね。 俺 そろそろかなあと思って 待ってたんですよ。」

布美枝「ちょうど うちの人が 原稿を持ってった日に 深沢さんが 倒れて。 本の出版も それっきり中断したままなんです。」

太一「また 新しい漫画 出るんですか?」

布美枝「ええ。 今度は 『河童』の漫画。 『河童の三平』って いうんですよ。」

太一「『河童』かあ。 楽しみだな。」

布美枝「うちの人も いいもんにするって 張り切っとるんですよ。」

美智子「それじゃ ますます 社長さんに 早く戻ってきてもらわないとね。」

布美枝「はい。」

<ところが…>

三海社

茂「どげなっとるんだ?」

茂「あの。」

引っ越し業者「はい 何?」

茂「引っ越しですか?」

引っ越し業者「いや 会社 閉めてんだよ。 その本の山 下取り業者が 取りにくるから よけといて。」

作業員「はい。」

茂「会社を閉める? 深沢さんは どうしたんです?」

引っ越し業者「深沢さん? ああ ここの社長? 病院にいるよ。」

茂「まだ病院か。 悪いんですか?」

引っ越し業者「手術したって 聞いたけど。 会社 閉めるぐらいだから 相当 悪いんじゃない? こっちも 頼まれて 事務所の整理してるだけだから 詳しい事 聞かれても 分からんよ。」

回想

深沢「確かに。」

回想終了

茂「預けてあった原稿は どこに 行ったんでしょうか?」

引っ越し業者「え?」

茂「漫画の原稿です。 これぐらいの大きさで 厚みは これぐらいあって。」

引っ越し業者「知らんねえ。 ごみと一緒に捨てたんじゃない?」

茂「捨てた?!」

回想

深沢「この人の ここから あふれ出す物語が 紙とペンで描き出されて 人の心を動かすんです。」

深沢「今は 売れる売れないを言う時じゃないよ。 いいものを作る事に 全力を尽くす時だ。」

回想終了

<三海社の消滅。 それは そのまま 収入の道が 途絶える事を意味していました>

春田図書出版

(隣の印刷工場の音)

春田「(むせる声)」

茂「あっ!」

春田「うちでは 出せないね。」

茂「でも まだ描き始めたばかりですから これから どんどん 面白くなるんです。」

春田「あのね。 質問。 田舎の少年が 『河童』と仲良くなるような そんな話の漫画 一体 誰が読むの?」

茂「しかし これは 昔 紙芝居でやって 当たりを取った事があってですね。」

春田「ダメよ! ダメ 先生。 今どき ドンパチもなければ ギャグでも スポーツ物でもないような そんな漫画 どやったら 人気 出んの? 教えて下さい。 てんで ズレてんだよなあ。」

茂「分かりました。」

春田「長編を描こうなんて考えが どだい 無理があんの。 うちだってさ 商売になってるって いったら 短編の漫画集くらいな もんなんだよ。 ね! そういうんだったら 1本ぐらい 頼んでもいいけど。」

茂「やります! 短編でも何でも 描かせてもらいます。」

春田「でもなあ。」

茂「はい?」

春田「あの… 水木しげるって名前だと 取り次ぎが嫌がるんだよね。 ほら 先生の漫画 売れないでしょ? 名前 見ただけで 売れないって 思われちゃうじゃない? あと 何だっけ? 深沢さんとこで出した 怪奇物… キタ キタ…。」

茂「『鬼太郎』です。」

春田「『鬼太郎』 あれも 売れなかったでしょう? 気の毒だなあ 深沢さん。 会社も つぶれちゃうし。」

(隣の印刷工場の音)

春田「うるさいな 隣の印刷屋。 売れてる本でも刷ってのか? 本が売れたら 版元も 取り次ぎも 印刷屋も みんな もうかって 万々歳。 売れなきゃ みんなが損をする。 悲劇だね。」

茂「分かりました。」

春田「頼んでもいいよ 1本くらいなら。 短編ならね。」

水木家

玄関前

茂「お~い!」

布美枝「あ お帰りなさい。 ほれ まんじゅう買ってきたぞ。」

居間

布美枝「深沢さん そんなに悪いんですか?」

茂「うん。 他の版元を回って 様子を聞いてみたんだが 長野の療養所に入っとって 当分は 出てこられんらしい。

布美枝「三海社は どうなるんでしょうか?」

茂「会社の道具や 本の在庫を処分して たまった支払いに 充てると言っとった。 退院してきても 当分 会社は再建できんだろうな。 長野では 見舞いにも行かれんし。」

布美枝「あの… ほんなら。」

茂「ん?」

布美枝「この前の『鬼太郎』の原稿は どうなったんでしょう?」

茂「…うん。」

布美枝「こみち書房で 太一君に会って そろそろ 続きが出るかと 楽しみにしとるって 言っとったんですけど。」

茂「あれは… なくたった。」

布美枝「え?」

茂「消えた!」

布美枝「消えたって… 原稿がですか?」

茂「会社が つぶれる どさくさで どこに行ったか 誰にも分からん。」

布美枝「そんな…。」

茂「ごみと一緒に 捨てられたのかもしれん。」

布美枝「ごみだなんて…。 ほんなら 原稿料は?」

茂「うん… それも パアだ! もう諦めろ。 原稿がないものを 金の取りようがない。 あんたも食え。 うまいぞ。」

布美枝「ええ…。」

茂「まんじゅうぐらい 景気よく ばくっと食え。」

布美枝「すんません。」

茂「くよくよしとっても始まらん。」

布美枝「はい。」

茂「お…。 もう 他の版元と 仕事の話をつけてきたけん。」

布美枝「ほんなら 『河童の三平』を?」

茂「あれは… 深沢さんとこで出す 約束だけんな。」

布美枝「そげですね。 『鬼太郎』の続きですか?」

茂「いや しばらく『鬼太郎』は描かん。」

布美枝「それじゃ… 戦記物? あ 怖い漫画の短編ですか?」

茂「もう! 何でもええだろう! 仕事する。」

布美枝「え? あっ あの…! 私 いけん事 言っただろうか…。」

<深沢の入院 三海社の消滅。 捨てられた原稿。 不運が 一気に 押し寄せてくるようでした>

<いつになく 突き放すような茂の態度が 布美枝を 一層 不安な気持ちにしたのです>

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