ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第55話「こんにちは赤ちゃん」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】55話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)は病院で検査を受け、初めての子供を妊娠していることがわかる。茂(向井理)にどう伝えようかとあれこれ考える布美枝だったが、下宿人として家賃収入をもたらしてくれていた中森(中村靖日)が漫画家として身を立てることをあきらめて郷里へと帰ることになる。家計が厳しくなることを茂が心配している様子を見て、布美枝は新しい命のことを茂に切り出すことができなくなってしまう。

55話ネタバレ

病院

待合所

「ありがとうございました。」

回想

靖代「もしかしてさ おめでたじゃないの? できたんじゃない? 赤ちゃん。」

回想終了

看護師「村井さん 村井布美枝さん。」

布美枝「はい。」

看護師「お入り下さい。」

布美枝「すいません。」

診察室

医者「おめでたですね。 赤ちゃん 今 2か月の終わりくらいですよ。」

布美枝「あの… 先生。」

医者「はい?」

布美枝「赤ちゃんですか?」

医者「ええ。 おめでとうございます。」

布美枝「ありがとうございます!」

待合所

布美枝「できたんだ…。 母親になるんだ… 私。」

(泣き声)

布美枝「大丈夫? よし 立てるかな? ほら 痛くないのよ~。」

母親「何やってんの! こっち おいで! 月末まで 支払い 待ってもらえませんか?」

受付「困りますよ~。」

妊婦A「大変よね お産の費用って 意外に かかるから。」

妊婦B「生まれたら 生まれたで 子供は 金食い虫だし。」

水木家

玄関前

布美枝「何て言おう? 『ビッグニュースです。 おめでとう あなたが パパよ』。 やっぱり 『赤ちゃんができました』でええか。 びっくりするだろうな~。」

回想

妊婦A「大変よね お産の費用って 意外に かかるから。」

妊婦B「生まれたら 生まれたで 子供は 金食い虫だし。」

回想終了

(風の音)

布美枝「嫌な顔されたら どげしよう…。 フフッ… まさか! 何 考えてるんだろう 私。」

居間

布美枝「ただいま戻りました~! 外 ええお天気ですよ。 あれ… どげしました?」

中森「奥さん。 お世話になりました。」

茂「中森さんなあ 大阪に帰るそうだ。」

布美枝「大阪?」

中森「私… 漫画を断念しました。 実は もう3か月以上 女房に 金を送ってないんです。」

布美枝「奥さん 子供さんと一緒に 実家にいらっしゃるんですよね?」

中森「ええ。 子供3人 連れて 親もとに 身を寄せているのですが 親が 病気になりまして。 上の子 高校に行きたいと 言っているのですが 学費はおろか 給食費すら払えない有様で。」

中森「手紙に書いてよこすんです。 『一家6人 一日の食費 200円でやっている』と。 『子供に 上履きの一つも 買ってやれない』と。」

茂「仕事は どうするんです?」

中森「女房が 働き口を見つけてくれました。」

布美枝「それなら よかったですね。」

中森「アハハ…。 襖はりですよ。 小さな工務店の下請けの下請け。 ハハッ いくらにもならん 稼ぎでしょうけど。 40を過ぎて 漫画 描くしか 能のない男に ぜいたくは 言えません。 漫画だって 結局 ものにならなかったんですから。」

茂「家財道具 売り払って 大阪までの汽車賃を作ると 言っとった。 力になろうにも… こっちも すっからかんでは どうにもならん。」

布美枝「はい…。」

茂「せめて 壮行会でもして 送り出すか。」

布美枝「ああ そげですね。 お煮しめでもこしらえましょうか。」

茂「うん。 子供がおる人は 大変だな…。」

布美枝「え?」

茂「食べさせて 着させて 学校 行かせて…。 病気もすれば けがもする。 貸本漫画 描いとっては とても 子供は養えんな…。 うちも 大いに痛手だ。」

布美枝「え… 痛手?」

茂「下宿代 ちっとは 家計の足しになっとったろ?」

布美枝「ああ… はい。」

茂「たまっとる分は諦めんといかんな。」

布美枝「そげですね…。」

茂「しんみりしとったら いかん。 仕事 仕事!」

布美枝「あ… あの!」

茂「何だ?」

布美枝「えっと…。」

茂「あ! 戌井さんにも 声かけんとな。」

布美枝「どげしよう…。 これじゃ 子供ができた事 話せんわ。 (ため息) やっぱり蓄えを作らんといけんな。」

ロザンヌ化粧品営業所

所長「そう。 おめでたなの?」

布美枝「仕事を始めたやさきに 申し訳ありません。」

所長「じゃあ 残念だけど セールスは無理ね。」

布美枝「いえ あの… お医者さんに話したら 重い物 持ったりせずに 気をつければ大丈夫だと…。」

所長「うちが 困るのよ。 万が一の事があったら 責任 取れないから。 働きたいのは分かるわよ。 これから お金がかかるものね。 でも… お客様の家で 何かあったら 一大事でしょ?」

布美枝「ご迷惑かけんように 十分 気をつけますけん。」

所長「あなた 年 幾つだっけ?」

布美枝「30です。」

所長「それで 初産だもの 大事にしなきゃ。 ね?」

ロザンヌレディ「所長。」

所長「はい。」

ロザンヌレディ「西地区の お得意様の件なんですけど。」

所長「あれね。 じゃあ そういう事でね。 おめでとう。」

ロザンヌレディ「これで お願いします。」

<働きに出る計画は 始める前に 立ち消えに なってしまったのでした>

水木家

居間

浦木「う~ん 煮しめは やっぱり田舎風味が一番! 奥さ~ん うまいですよ。」

布美枝「ああ だんだん。」

浦木「おつ 懐かしい田舎言葉の響き。」

茂「お前は こげな時だけ どこからともなく現れるな。」

浦木「俺が 中森さんを紹介したんだ。 最後まで見届ける 責任があるけんな。」

茂「途中が 全部 抜けとるぞ。」

浦木「あれ? 前より 料理が減りましたね。 おい お前 奥さんに 所帯の苦労させとるんだろう。」

茂「うるさいなあ。」

浦木「性懲りもなく 富田のおやじと 仕事しとるそうだが 用心せんと また 痛い目みるぞ。」

茂「分かっちょ~わ!」

戌井「いや~ 富田書房だけじゃないですよ。 貸本漫画業界全体が ますます 冷えきってます。」

中森「昔は よかったな~。 私だって 3年前くらいは 貸本漫画の原稿料で ステレオ 買ったんですから。」

一同「ステレオ?!」

中森「それが 今じゃあ 汽車賃さえ ございません。」

浦木「家財道具 売り払って 都落ちか…。 人間 落ち目には なりたくないもんだ。」

茂「おいっ!」

戌井「分かりますよ。 僕も子供がいますから。 貸本漫画の稼ぎで 妻子を養うのは そりゃもう 至難の業です。」

布美枝「あっ!」

一同「あ~あ!」

戌井「大丈夫ですか?」

布美枝「あ ごめんなさい 私…。」

浦木「戌井さんよ~ 貸本漫画なんてもんは とっくに 時代遅れなんだよ。 漫画雑誌に 拾ってもらうか それが 無理なら 商売替えでも するんだな。」

戌井「でも 貸本漫画には 雑誌にはない自由な表現世界があります。 水木さんのような独創性が 大手 雑誌にはない 新しい漫画を 生み出すんですよ。」

浦木「青いねぇ あんた。」

戌井「何がですか?」

浦木「理想を並べても 版元が 全部つぶれたら 描き手も共倒れじゃないの~? つぶしのきかん 漫画家の末路は 哀れなもんだぜ。」

茂「おい イタチ!」

戌井「僕は 自分で出版社を興してでも 貸本漫画を守ります。」

浦木「そう 力むなよ 無駄に腹が減るぞ。」

戌井「あんた さっきから失礼だな。」

茂「そういう お前は何しとるんだ。 また 怪しげな もうけ話で 人を だましとるのか?」

浦木「失敬な。 この浦木克夫 今や 出版プロデューサーとして 一目置かれる存在よ~。」

茂「プロ…?」

浦木「これ 見てみろ。」

中森「おっ 『手相術』?! これ 大ベストセラーじゃないですか?!」

浦木「古いブームに乗って 大売れよ。」

中森「あ 『易入門』。 これも 売れてますよ。 浦木さんが 作ったんですか?」

浦木「ん~ いかにも。」

茂「うん? これ『易入門』の後に 小さく『のススメ』とあるぞ。」

戌井「あ こっち 『手相術』じゃなくて『手相の術』! 何だ ベストセラーに似せた まがいもんか。」

浦木「たまたま 売れとう本と 似たようだね。」

茂「よう 言うわ。」

浦木「ベストセラーの そっくり本を 出すぐらい 常識 常識。 中森さん これ せん別に差し上げよう。 運が開けるせ~。」

中森「はあ…。」

はるこ「ごめんくださ~い。」

茂「ん?」

布美枝「あら 今頃 誰かしら?」

浦木「回覧板でも 届けに来たんだろう。 この家に 奥さん以外の女が 來るはずないけん。 お前は 女に もてんけん。」

茂「お前に言われる覚えは ないわ。 二度も女房に 逃げられとるくせにな。」

中森「逃げられたんですか~?」

戌井「二度も?!」

浦木「あ あれは 発展的解消と言ってだな~。」

はるこ「先生!」

茂「お~ あんた。」

はるこ「先生 決まりました! 本を出すんです。 私 デビューするんです!」

(犬の鳴き声)

布美枝「何もないですけど どうぞ。」

はるこ「いただきます。」

茂「本は どこから 出るのかね。」

はるこ「若村書房です。 少女漫画専門の貸本出版社の。」

戌井「あ~あ あそこは まだまだ 元気があるねえ。」

はるこ「10回目でやっと 合格しました。」

布美枝「10回目?」

はるこ「はい。 若村書房への売り込みです。 あんまり しつこいもんだから 根負けしたみたいで。 でも 私 1冊で終わりにはしません。 がぜん ファイトがわいてきました。」

茂「食え食え。」

はるこ「いただきます! おいし~い。 私 最近 パンの耳ばっかり かじってたんです。 ご飯作る時間も もったいなくて。」

中森「同じ物 食べてても 違うもんですなあ。 私も パンの耳 かじってましたが ファイトも な~んも わきません。」

布美枝「中森さん。」

戌井「中森さん。」

はるこ「今日は 何の集まりなんですか?」

浦木「あなたのお祝いですよ。 これ あなたに差し上げましょう。 運が開ける本です。」

はるこ「はあ…。」

中森「そうですね。 その方に 差し上げた方がいい。 私には もう 占うほどの 未来は ありませんから。 『老兵は ただ 去りゆくのみ』です。」

<漫画を諦めて去っていく中森と 道を 切り開き始めた はるこ。 対照的な人生が交錯する ほろ苦い夜。 布美枝は 新しい命の事を 茂に切り出しかねていました>

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