ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第63話「貧乏神をやっつけろ」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】63話のネタバレです。

あらすじ

茂(向井理)は、戌井(梶原善)が刊行した新しい貸本漫画のために、次々と漫画を描き続けていた。富田書房の不渡り手形のせいで背負ってしまった二十万円の負債が、村井家の家計を今も追い詰めていた。しかし、漫画は思うように売れず、戌井の立ち上げた出版社は早くも暗礁に乗り上げてしまった。不動産屋に家賃を払うのもやっとで、藍子の初めてのひな祭りのお祝いも満足にできないことを、布美枝(松下奈緒)は悲しむ。

63話ネタバレ

水木家

居間

浦木「これ お前が作ったのか?」

茂「ああ。 模型屋で部品を買ってな。」

浦木「嘘 言うな。 腕一本で こんなもの 作れるはず…。」

茂「だら! 俺には できるんだ。 まだ 大和も武蔵もあるけど 見るか?」

浦木「分かった 分かった もうええ。」

布美枝「ああ すごい! よう 出来とりますねえ。 私も 初めて見ました。」

茂「そういえば しばらく 作っとらんだったなあ。」

はるこ「すご~い!」

<それは 腕一本で どうやって作ったのかと 思うほど 精密な模型でした>

茂「1,000分の1だと 細かい所が どうも うまくない…。 いけん。 こげな事しとる 場合じゃない。 仕事だ 仕事!」

布美枝「戌井さんとこの締め切り 近いんですよね。」

茂「ああ。 時代劇の長編も 仕上げんといけんしな。」

はるこ「あの! よかったら お手伝いさせて下さい。」

茂「え?」

はるこ「私 今日 空いてますから。」

浦木「空いてるなら 食事でも ご一緒に。 ステーキなど ごちそうしましょう。」

はるこ「そのために ペンも持ってきたんです。」

茂「いや~ ええです。 手伝って もらっても お礼が払えん。」

浦木「そうだろうねえ。 さっ すしでも つまみながら 次の仕事の打ち合わせを。」

はるこ「お礼なんて。 私に勉強ですから 是非 お手伝いさせて下さい。」

茂「そりゃまあ 手伝ってもらったら 助かるが… なあ。」

布美枝「藍子も おりますし 私も 手伝えませんしね。」

はるこ「じゃあ やらせて下さい!」

茂「ほんなら 準備してくるか。」

浦木「あなたも 酔狂な お人だ。 何をすき好んで タダ働きなんか。」

はるこ「漫画の修業ですもの。」

浦木「ゲゲなんか 師匠にしても ろくな事にはなりませんよ。」

布美枝「あら…。」

浦木「大体 あいつは 要領が悪い。 そこいくと 僕なぞは 的確な判断力で 次々と 華麗に 転身を 続けてますからねえ。」

はるこ「浦木さんって…。」

浦木「はい。」

はるこ「C調なんですね。」

浦木「…あのね 『金のないのは 首がないのと同じ』 と言うでしょうが。 奥さんだって ゲゲに稼ぎがないばかりに どれほど苦労しているか。」

布美枝「いえ そんな事…。」

浦木「はるこさん ゲゲに近づくと 貧乏が うつりますよ。」

茂「だら! いつまでも ゴチャゴチャと うるさい! とっとと帰れ!」

浦木「待て! おおっ 乱暴はよせ! カメラ カメラ ああ~。」

はるこ 布美枝「フフッ。」

玄関前

浦木「あ いてて…。 まったく この野蛮人めが! はあ~ せっかく はるこさんを デートに誘いにきたのになあ。」

仕事部屋

はるこ「これ 戌井さんの出版社で出す 漫画ですか?」

茂「ああ。 『劇画ブック』という スリラー漫画の短編集を シリーズで出す事になっとってね。」

はるこ「フフッ! おもしろい…。 先生 すごいです! これ すっごく おもしろいです!」

玄関前

浦木「しかし まずいぞ。 はるこさん どうも ゲゲの奴に まいっとるようだ。 おかしいなあ。 あいつが 女に もてるはずないんだが…。」

<2月も 半ばを過ぎ…>

玄関

茂「戌井さんとこ行ってくる。」

布美枝「行ってらっしゃい。」

茂「これで 3作目だけん そろそろ 原稿料の値上げ 頼んでみるか。」

布美枝「お願いします。」

<茂は 戌井が刊行する 『劇画ブック』のために 次々と漫画を描いていました>

居間

布美枝「原稿料 上がったら…。 はあ~… これ あんたのために 使えるんだけどねえ。 大塚の おじいちゃんと おばあちゃんが 送ってくれたんだよ。 督促状か…。 不動産屋さんへの払いも 遅れとるんだった。」

<富田書房の不渡り手形のせいで 背負ってしまった 20万円の負債が 村井家の家計を 今も追い詰めていました>

北西出版

運送業者「それじゃ どうも。」

戌井「あ… 水木さん!」

茂「原稿 届けに来ました。」

戌井「それは どうも ご苦労さまです。」

茂「返品か…。」

戌井「早速 出戻ってきました。 まあ 最初は こんなもんでしょう。 自分で言うのもなんですが 内容は いいんですから 人気の火がつくのはこれからです。」

茂「うん。」

戌井「あ どうも。 どうぞ 掛けて下さい。 今 お茶 いれますから。」

戌井「そんなの 気にする事ないですよ。 どの漫画にも 漏れなく ケチをつけてきます。 『貸本漫画が俗悪だ』って つぶしたがっている人達が いるんですよ。 いわゆる 良識派の知識人です。 そういう やからに限って 漫画の善しあしは わからないんですから。」

茂「自分も 意気込んで描いた分 タッチが 強烈すぎたかもしれませんな。 少し方向を変えましょうか?」

戌井「いやいや! 作風を変える必要はありませんよ。」

茂「しかし 返品が続くと 資金繰りに詰まりますぞ。」

戌井「いや… 実は もう ちょっと困った事がありまして。 出版での赤字は 覚悟のうえです。 その分 自分の漫画の原稿料で 穴埋めできると 踏んでたんですが…。 バッサリ切られました。」

茂「え?」

戌井「つきあいのある出版社から すべて 『出入り禁止』と言われました。 『本を出すのなら 自分の所から出せ』と。」

茂「もはや 版元同士 敵と味方という訳ですか。」

戌井「取り次ぎに 『北西出版の本は 仕入れるな』と 申し入れた者までいます。」

茂「それは ひどいな!」

戌井「せちがらいもんです。 こんな時だからこそ 零細出版社同士 連帯する事が必要なのに。」

茂「目先の損得でしか 人は 動かんのですな。」

戌井「ここのところ 人間の嫌な面ばかり見せられます。 ああ 原稿料1万円 忘れてました。」

<船出したばかりの 小さな出版社は 早くも 暗礁に乗り上げていました>

内崎不動産

内崎「ふん! 1万円ねえ…。 うさぎのフンじゃあるまいし とぎれとぎれに払ってもらっても 困るんだよねえ。」

茂「今 手持ちが それしかなくて。」

内崎「不渡りの20万円分 本来だったら 耳をそろえて 払ってもらうんですよ! 金がないって言うから しかたなく 分割にしてあげたけど。 毎月 毎月 督促状を出さないと 金 持ってこないなんて ふてぶてしいにも ほどがあるよ。」

茂「いや そういうつもりでは…。」

内崎「ハ~…。 これ以上 支払いが遅れるんだったら… 出るとこ出て 争っても いいんですよ。」

茂「い~や~…。」

水木家

居間

布美枝「戌井さんところ そんなに大変なんですか?」

茂「値上げ交渉は 当分 無理だなあ。 もらった金も 右から左で 不動産屋に渡してしまったしなあ。 しかたない 仕事の本を売るか…。」

布美枝「けど 本は 必要ですし…。」

茂「うん…。」

布美枝「お父ちゃん。 …藍子から借りましょうか?」

茂「え?!」

布美枝「これ… 実家から届いたんです。 『初節句のひな人形を買うように』 って…。」

茂「初節句か…。」

布美枝「ひな祭りは 毎年 ありますけん。 無理して… 今年 買わんでもね! これがあれば 不動産屋さんに もう少し返せますし…。」

茂「う~ん… しかたないな。」

仕事部屋

茂「あ~…! どげしたもんかなあ…。 おい いつまで おるつもりだ!」

茂「あ~ 腹 減ったなあ!」

居間

茂「おい 風邪 ひくぞ。」

布美枝「うん…。」

玄関前

布美枝「ひな祭りらしいもん これしか買えんだった。」

玄関

布美枝「ただいま戻りました~!」

茂「お お母ちゃんが帰ってきたぞ。」

布美枝「藍子 ぐずりませんでした?」

茂「ああ 機嫌よくしとったぞ。 それより 早こと上がれ。 ひな祭りの用意ができとるぞ。」

布美枝「え?」

茂「うん。 な?」

居間

茂「ちょっこし 藍子 頼む。」

布美枝「はい。 …よいしょ。」

茂「ほれ!」

布美枝「ああ… これ!」

茂「どげだ。 立派なもんだろう。」

布美枝「私が 折った 折り紙?」

茂「お内裏様だけでは 寂しいけん 七段飾りにしておいた。」

布美枝「うわ~ 豪華ですね!」

茂「ああ 初節句だけん デラックスに祝わんと!」

布美枝「うん。」

布美枝「♬『あかりをつけましょ ぼんぼりに』 あ 火が入った。 お父ちゃん 上手ですねえ。」

茂「当たり前だ 漫画家だけんなあ。」

布美枝「そうですね。」

茂「OK いいだろう。 灯 出来たぞ。 さて 何から食うか…。」

布美枝「じゃ まず お白酒 いただきましょうか?」

茂「よし。 ほれ。」

布美枝「はい。」

茂「俺も飲むかな。 と 白酒を飲んだつもり。」

布美枝「うん おいしいですね。」

茂「ああ これは すきっ腹に効くなあ。 と 白酒で酔ったつもり。」

布美枝「フフッ。 ほら お父ちゃん 酔っ払っちゃいましたよ。 どげしましょう。」

茂「酒は これぐらいにして 次は… ひしもちを食うか。」

布美枝「ひしもちは もう少し飾っておきましょうよ。」

茂「と 叱るお母ちゃんの目を盗んで 一口 ぱくっと食べたつもり。 うっ あっ…。」

布美枝「ウフフ お父ちゃん?」

茂「慌てて食べたんで ひしもちが のどに詰まった。 ああ…。」

布美枝「アハハ… お父ちゃんは 食いしん坊ですねえ。」

(藍子の笑い声)

茂「お 藍子も笑っとるぞ!」

<ひな飾りも ごちそうも 絵に描いたものしか ありませんでした。 初節句のお祝いまで 生活費に 消えてしまった悲しさを 布美枝は そっと 胸にしまいました>

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