ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第66話「貧乏神をやっつけろ」

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」】66話のネタバレです。

あらすじ

布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)は、大蔵省の役人の言葉に“ついに家を失う”と覚悟を決めていた。しかし、翌日もうひとりの役人がやって来て「土地が大蔵省のものであるというのは帳簿の記載ミスであった」とわびる。あっけにとられ、脱力する布美枝と茂。意味もなくほんろうされたことに対する怒りが茂を突き動かし、自分たちを追い詰めるばかりの世界への呪詛(じゅそ)に満ちた強烈な作品「悪魔くん」が生まれることに。

66話ネタバレ

水木家

<大蔵省の職員を名乗る人物が 突如 村井家を訪ねてきたのは 昨日の事でした>

仕事部屋

回想

男「大蔵省の土地の上では 困りますので どいて頂かないと。」

回想終了

茂「とうとう 家まで取られるのか…。」

居間

布美枝♬『埴生の宿も』

茂「藍子の具合は どげだ?」

布美枝「もう 熱 下がりました。 大丈夫です。」

茂「そげか…。」

布美枝♬『玉の装 うらやまじ』

茂「随分 落ち着いとるんだな。」

布美枝「え?」

茂「今度こそ 家が取られるかもしれんのに。 相手は お役所だぞ。 勝ち目は ないかもしれん。 お前 心配じゃないのか?」

布美枝「心配ですよ。 けど… そうなったら そうなった時です。 なるようにしか ならんのですけん。 藍子も おるんですけんね…。 まあ… なんとか な~わね。」

茂「なるようにしかならんか。 フフフ…。 お母ちゃんは たくましいな。」

布美枝「え?」

茂「いざとなると 肝が据わるらしい。」

布美枝「何を言っとるんですか。」

茂「よし! 俺も仕事するか。 なんとか な~わな。」

玄関

茂「はあっ 間違いだった?!」

大蔵省の男「申し訳ありません。」

茂「昨日の人は 地図まで引っ張り出して 『大蔵省の土地だ』と 言っとったんですよ。」

大蔵省の男「帳簿の間違いだった事が 分かりまして 早速 おわびにあがったしだいです。」

茂「ほんなら このまま住んどっても かまわん訳ですね?」

大蔵省の男「何ら 問題はございません。」

2人「はあ…。」

居間

茂「『狐につままれたようだ』とは この事だな。」

布美枝「昨日の今日で… どげしたんでしょう?」

茂「分からん…。」

布美枝「もう こっちは 先の事 考えて 心配で 一晩中 眠れんだったのに。」

茂「ふ~ん。」

布美枝「何ですか?」

茂「腹の据わったような事 言っとったが やっぱり 先行き不安だったのか。」

布美枝「当たり前じゃないですか。」

茂「しかし… あれ ほんとに 大蔵省の役人だったのかな。」

回想

男「私 大蔵省の者ですが。」

回想終了

茂「ひょっとして 貧乏神が 俺達を からかってったのかもしれんぞ。」

布美枝「貧乏神?! 塩 まきましょう 塩!」

玄関前

布美枝「貧乏神 退散! ああ もったいない。」

茂「そこは ケチらず 景気よく まけ!」

布美枝「お父ちゃん。」

茂「ん?」

布美枝「お父ちゃんの 言うとおりだわ。 ほんとに… 世の中 不公平にできとるね。 一生懸命 生きとるのに どうして 次から次へと 困った事ばっかり起きるんだろう。 やっつけて下さいね。」

茂「え?」

布美枝「貧乏神。 うちや 戌井さんとこや 一生懸命 やっても やっても 報われん人達に 取りついとる 貧乏神。 お父ちゃんが やっつけて下さい。」

茂「むちゃ 言うな。」

布美枝「むちゃな事 ない! お父ちゃんは 漫画家なんですけん 漫画で ガツンと やって下さい!」

茂「ガツンとか…。」

布美枝「やられっぱなしは つまらんですけん。」

茂「そげだな…。 やられっぱなしでは つまらんな。」

仕事部屋

茂「『人は 昔から 祈り 願ってきた。 不運や 貧乏を 打ち砕く力が欲しい。 たとえ それが 悪魔の力でも…』。 もしも… 超人的な頭脳を持つ 少年が現れて 悪魔を呼び出す術を 使ったとしたら…。]

茂「この子が 地底から悪魔を呼び出し 世の中を変えていく。 『エロイムエッサイム エロイムエッサイム。 我は 求め 訴えたり』。 悪魔を しもべに使う 悪魔的頭脳を持った少年。 悪魔…悪魔くん。 そうだ! この子の名前は 『悪魔くん』だ!」

戌井「理想社会を目指して 世の中と戦う少年ですか…。」

茂「1万年に1人という 天才的頭脳で 地底から悪魔を呼び出すんです! 世の中は 不公平なもんです。 努力は 報われんし 貧乏人は つらい目にばっかり遭う。 幸福なんて どこにもない。 だったら せめて 漫画の中だけでも 世界を変えたい。 そうは 思わんですか?」

戌井「はい。」

茂「昔から 魔法に興味を持っとって 資料も集めとるんです。」

戌井「はあ~ すごいな。」

茂「話なら 幾らでも作れます。」

戌井「やりましょう! どうせなら 思い切って 長編大作をやりましょう。」

茂「大作というと?」

戌井「まずは 5冊。 うまくいったら 続編 さらに 続編で 出していきましょう。」

茂「ちょっと待ちなさい。 これは 漫画家としてではなく 北西出版 特別顧問として 言いますが 長編で 5冊というのは… あんたのとこには 荷が重すぎる。 それだけ 製作費も かかるんですよ。」

戌井「借金してでも 金は集めますから。」

茂「いや 無理をしては いけんです。」

戌井「いや しかし…。」

布美枝「失礼します。 すみません。 お茶の葉 切らしてまして 白湯で申し訳ないんですけど…。」

戌井「いただきます。」

茂「何か つまむもの ないのか? 大根漬け あったろう?」

布美枝「もう なくなりました。」

茂「え? あ…。」

布美枝「そうだ カボチャの種 いりましょうか?」

戌井「あの もう いいですから。 大丈夫です。」

布美枝「バカにしたもんじゃないですよ。 いったら おいしいんですから。 すぐ 作ります。」

戌井「水木さん… 勝負の時ですよ! 零細出版としては 冒険なのは 分かります。 しかし チマチマチマチマ 内野安打を打っていたんでは 今の悪い状況は 変わらない。 ホームランです。 大ホームランを かっ飛ばして 逆転を狙いましょう。 『悪魔くん』に 僕らの貧乏を 叩きつぶしてもらいましょう。」

居間

布美枝「戌井さん 力が入ってましたねえ。」

茂「全5冊の超大作というのが どうも… 危なっかしい。 ホームランが出りゃええが 5打席 連続三振をくらってみろ。 そこで 試合終了だ。」

布美枝「ええ…。」

茂「失敗は できんな。]

仕事部屋

茂『エロイムエッサイム エロイムエッサイム』。」

<茂は 5冊のノートに びっしりと ストーリーと アイデアを書き込んで 『悪魔くん』に 取りかかったのです>

茂「『我は 求め 訴えたり』。」

<貧しい中でも 藍子は すくすく育ち 布美枝は 活発に動き回る藍子から 目が離せない毎日でした>

居間

布美枝「あら! また 底が見えとる。」

(藍子の声)

布美枝「心配ないけんね。 お父ちゃん あんたを飢えさせるような 事だけは 絶対 せんけんね!」

戌井家

居間

早苗「水木さんとこ 8か月? それじゃ かわいい盛りでしょう。」

茂「いやいや うちのは ずっと 食い盛りですわ。 全く 誰に似たんでしょうな。」

早苗「フフッ。」

戌井「水木さん ちょっと出ましょう。」

茂「え?」

玄関前

茂「おい ちょっと。 どげしました?」

戌井「僕は… なんと言ったらいいのか。 僕の漫画が 初めて本になった時と 同じくらい 興奮しています。 ほら!」

茂「そんなに手が震えて…。 まさか… 酒の飲み過ぎで?」

戌井「名作です。 これは 名作ですよ! きっと 特大ホームランをかっ飛ばす。 いや そんなもんじゃないな。 僕は これが 今の貸本漫画を 衰退から救う 救世主になるかもしれんと 思います! 傑作だ!」

茂「買いかぶりすぎですよ。」

戌井「どうしてですか? こんなに面白いのに。」

茂「自分でも よう描けてると 思いますよ。 自信もあります。 けど… だからといって 当たるとは 限らん。」

戌井「そんな弱気な事 言わないで下さいよ。 これは いけますよ! この分だと 来月から 原稿料を 値上げできるかも しれませんなあ。 アハハハ…。」

茂「そうだとええんだが…。」

<『墓場鬼太郎』も『河童の三平』も 大ヒットの期待を込めて 描いたのです。 けれど どれ一つとして 売れたものは ありませんでした。 今度もまた 期待は 裏切られるかもしれないのです>

サン模型店

茂「これは… すごい!」

水木家

居間

茂「帰ったぞ。」

布美枝「お帰りなさい。」

茂「『悪魔くん』 第1巻の原稿料 約束どおり 3万円 きっちり もらってきたぞ。」

布美枝「はい…。」

茂「戌井さんも これについちゃ 相当 腹をくくって 臨んどるらしい。 金の工面も ちゃんと つけとった。」

布美枝「父ちゃん それ…?」

茂「戦艦長門だ! 縮尺 700分の1だけんなあ。 俺が 手作りしたやつより ずっと大きいし 細かいとこまで よう出来とるわ! ホホホ…。」

布美枝「それ… 買ってきたんですか?!」

<やっと入った原稿料で 戦艦の模型を買ってくるなんて>

布美枝「お父ちゃん…?」

<布美枝には 茂が 何を考えているのか さっぱり分かりませんでした>

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