ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第75話「初めての里帰り」

あらすじ

結婚から3年ぶりに、布美枝(松下奈緒)は藍子を連れて、安来の実家に帰ってきた。父・源兵衛(大杉漣)をはじめ、大家族の飯田家は昔と変わらない、にぎやかさだった。弟の貴司(星野源)には、縁談が持ち上がっていた。源兵衛が実家の酒屋のほかに、新しく2軒目の店をだす計画で、それを貴司に継がせるつもりでいることを布美枝は知る。布美枝は、町内の洋食屋で貴司と見知らぬ女性が連れ立って入ってくるのに出くわす。

75話ネタバレ

飯田家

居間

源兵衛「もう着いても ええ頃だが…。」

ミヤコ「あ~ そろそろですねえ。」

源兵衛「汽車 遅れとらんだろうな。」

ミヤコ「貴司が 駅まで 迎えに行っちょ~ますけん 遅れたら 電話してくるでしょう。」

源兵衛「ああ。 おっ!」

ミヤコ「お父さん?」

源兵衛「店に 誰か来たようだ。」

ミヤコ「誰も来ちょ~ませんよ。」

布美枝「ただいま~。」

ミヤコ「あっ。」

源兵衛「あっ!」

貴司「姉ちゃん 着いたぞ。」

ミヤコ「お帰りなさい。」

布美枝「ただいま戻りました。」

ミヤコ「長旅で 疲れただらが? 藍子 よう来たね!」

布美枝「お父さん… ただいま戻りました。」

源兵衛「うむ…。」

布美枝「ほら 藍子 おじいちゃんですよ。」

源兵衛「おお よう来たな。 ほら おじいちゃんのとこへ来い。 ほら 笑(わら) 笑た!」

ミヤコ「よかったですねえ。」

源兵衛「藍子 よう 帰ったのう。 ばあちゃんだぞ。 ミヤコさんだ。 源兵衛さんです。 アハハハ…。」

飯田酒店

克江「フミちゃん 戻ったかね?」

留蔵「子供は どげした?」

貴司「連れてきと~よ。 姉ちゃん!」

布美枝「は~い。 おじさん おばさん。 ごぶさたしてます。」

克江「あら~ まめなかねえ。」

布美枝「おかげさまで。」

留蔵「初めての里帰りだけん こっちの魚 たっぷり 食べてもらおうと思ってね。」

克江「生きのええの 持ってきたけんね。」

布美枝「あ~がとうございます。」

ユキエ「フミちゃん 戻っとる?」

布美枝「ユキ姉ちゃん!」

貴司「大きな荷物しょって どげした?」

ユキエ「フミちゃんに うちの野菜 うんと食べてもらおうと思って。 お帰り!」

布美枝「ただいま!」

(2人の笑い声)

居間

ミヤコ「はい どうぞ。」

源兵衛「おお。」

ミヤコ「いただきます。」

俊文「藍子 これ 食え。」

布美枝「藍子は まだ食べれんわ。」

(一同の笑い声)

一同「アハハハ 笑った 笑った…。」

哲也「村井さんは どげしとる?」

布美枝「うん 忙しくしとるよ。」

哲也「それは 何よりだな」

ユキエ「東京は 楽しい? あちこち 見て回っとるんでしょう? 銀座とか 東京タワーとか。」

布美枝「そげなとこ 全然行っとらんわ。 うちの周りは 畑ばっかりだし 大塚の方が開けとるわ。」

ユキエ「ふ~ん 映画や テレビで見るのとは 違うね。」

哲也「それ いずみにも 言ってやったらええわ。 あいつ 最近 『東京行きたい』って うるさいけん。」

源兵衛「いや まだ 子供だ。 夢みたいな事 言っちょ~わ。」

布美枝「いずみ 遅いね。」

貴司「テニスだか クラブ活動だか 言っとった。 じき 戻ってくるだろう。」

源兵衛「おてんばで どげだいならん。 松江の短大に出したのが 失敗だったかもっしぇんな。」

貴司「おやじ いずみには 甘いけんな。」

源兵衛「そげな事 ないわ!」

哲也「いや~ 甘い甘い。」

ユキエ「私らの頃なんて ちょっこし町に出ただけでも 大騒ぎしとったのに。 なあ フミちゃん?」

布美枝「うん。」

源兵衛「時代が違うわ 時代が! なあ?」

(一同の笑い声)

源兵衛「何だ?」

いずみ「お姉ちゃん 戻っとる? お帰り!」

布美枝「ただいま!」

いずみ「わあ 藍子だ~!」

源兵衛「騒がしいなあ もう…。」

(一同の笑い声)

輝子「布美枝!」

布美枝「叔母ちゃん!」

いずみ「さっき そこで 一緒になったのよ。」

輝子「元気そうだねえ。」

布美枝「うん…。」

輝子「心配しとったんだよ。 『様子見に 東京行こうか』って 姉さんと話しとったんだわ!」

源兵衛「ええっ そげな話は 聞いとらんぞ。」

ミヤコ「はあ…。」

輝子「藍子! 叔母ちゃん お土産 作ってきたよ。 はい! お手玉!」

(一同の歓声)

<久しぶりの実家は 結婚前と 少しも変わらず 賑やかで 温かでした>

飯田酒店

ユキエ「ほんならね。」

布美枝「わざわざ ありがとう。」

ユキエ「ほんとはね みんな 心配しとったんだよ。 あんたが 里帰りもできんほど お金に困っと~だないかって。 けど 顔見て 安心したわ。 フミちゃん ええ顔しとる。」

布美枝「姉ちゃん…。」

ユキエ「大変だろうけど 村井さんと 藍子と 3人で頑張~なさいね。」

布美枝「うん。 だんだん。」

飯田家

居間

輝子「兄さん この間の返事 もう せなならんのですけど…。 あの話 進めても かまわんですか?」

源兵衛「うむ…。」

布美枝「この間の話って?」

邦子「貴司さんの縁談。」

布美枝「縁談?!」

輝子「先方さんは 会ってみたいと 言っとられますよ。 あんた 写真見たでしょう? どげかね?」

貴司「うん…。

輝子「なんだい はっきりせんねえ。 あんたも 30にな~だけん もう 嫁さんもらわんと いけんわ。 なあ 姉さん?」

ミヤコ「そげだねえ。」

輝子「おとなしい 働き者の娘さんらしいよ。 ちょうどええわ。 会うだけでも 会ってみたら?」

貴司「うん…。」

源兵衛「その話 進めてごせ。 先の事 考えたら もう 嫁をもらっておかんと いけんわ。」

輝子「先の事?」

源兵衛「ああ。 …実はな 町の方に もう一軒 酒屋を出す事に決めた。」

一同「えっ!」

源兵衛「貴司に所帯持たせて その店 任そうと思っとるんだ。 飯田家の跡継ぎは もちろん 長男の哲也だが 学校の先生と 酒屋は 両方は やれんだろう?」

哲也「ああ。」

源兵衛「わしも 近頃は 市議会の仕事が忙しいけん これを機会に 酒屋の仕事を貴司に譲って ここと 今度 出す店と 両方やらせたらええ思っとる。」

ミヤコ「店を出すって… お父さん そげな事 いつの間に…。」

源兵衛「酒屋 開くのに ちょうどええ出物 見つけたんだ。 場所も ええし 値段も 手頃だけん 早々に 手付けだけでも 打ってくるわ。 哲也 お前 それでええか?」

哲也「ああ。 俺は ええよ。 お前は ええのか?」

源兵衛「ええに決まっとるわ。 これは 貴司のために 考えた事だ。 なあ?」

貴司「ああ…。」

輝子「ほんなら 見合いの話 早こと 進めんといけんですね?」

源兵衛「酒屋2軒の切り盛りだけんな。 嫁の手も借りんと どげだいならんわ。」

貴司「あのな…。」

輝子「早速先方さんに連絡せんと。」

いずみ「ほんとに ええの? 貴司兄ちゃん さっきから ひとっ言も言っとらんけど。」

貴司「おい… いずみ!」

いずみ「何も言わんで こんまま 話が進まんでも ええの?」

源兵衛「こら いずみ 子供が 口を出すな。」

貴司「おやじ 俺…。」

源兵衛「貴司の気持ちは わしが よう分かっとう。 長いこと一緒に 酒屋の仕事を やっと~だけんな。」

(源兵衛と輝子の笑い声)

2階

布美枝「変わっとらんなあ。 この部屋も… 昔のまんまだ。 ギシギシしちょ~ ミシン油 あったかいな?」

貴司「お前 みんながおるとこで 余計な事 言うなよ。」

いずみ「見合いの話 進んでもええの? お兄ちゃん 酒屋 継ぐ気なの? 意気地なしねぇ。 お父さんの言いなりになって。」

貴司「俺だって いろいろ 考えとる。 おやじも 家の事 思って やっと~だけん 俺だけ 好き勝手する訳にいかん。」

いずみ「ほんなら 満智子さんの事は どげする気?」

布美枝「いずみ?」

いずみ「…何?」

布美枝「ミシン油 持っとるかいね?」

貴司「えっ ミシン…。」

いずみ「私は 持っとらん。」

布美枝「そう。 …何かあったの?」

貴司「俺 店 片づけんと。」

いずみ「手伝うわ。」

布美枝「何だろう?」

居間

源兵衛「酒屋の物件 手付け打つなら 大安の日がええな。 貴司と 飯田坂店の 将来が かかっちょ~けん。」

ミヤコ「もう 決めるんですか?」

源兵衛「ん? いつまでも 次男坊の冷や飯食い には しておけんだろう。 いずれは 分家して 酒屋をやらそうと わしは 前から そう思っとったんだ。 家のために よう働いてごいたけん 親として 店の一軒ぐらいは 持たせてやらんとな。」

ミヤコ「でも 見合いの話 あまり 乗り気には見えんでしたけど…。」

源兵衛「え~っと 今月のうちで大安は あ ここか。 お~ ここにもあるな。」

洋食・トカミ

チヨ子「藍子ちゃん 連れてきたら よかったのに。」

布美枝「お父さんが 『藍子は 置いていき』 言って 離さんのよ。」

チヨ子「どこも 孫は かわいいのねえ。」

布美枝「初めて連れてきたけん もの珍しいんだわ。」

チヨ子「一人で置いてきても 泣かんの?」

布美枝「うん 平気。 初めて来た家なのに ど~んと落ち着いとる。 うちの人に似たのか ええ度胸しと~わ。」

チヨ子「フミちゃんだって 子供の頃から いざとなったら 度胸の据わるとこ あったけんね。」

布美枝「そげかなぁ?」

チヨ子「夜泣きはせんの?」

布美枝「うん。 よう寝る子で。」

チヨ子「ええね。 節子のとこなんて 夜泣きが ひどくて 旦那さんと コレ。」

布美枝「そげかね。 藍子が おとなしい子で 助かるわ。 うちは 家しか 仕事場がないけんね。」

チヨ子「旦那さんは どげしとる? この間は 会えんで 残念だったけど。」

布美枝「ごめんな。」

チヨ子「ん?」

布美枝「あの時は 仕事が忙しいけん うちには呼べんなんて 言ったけど ほんとは うちが あまりにボロ屋なんで 恥ずかしかったけん。」

チヨ子「えっ?」

布美枝「うちの人 仕事は 一生懸命しとるけど お金 あんまり入ってこんの。」

チヨ子「なして?」

布美枝「貸本漫画は もうからんのよ。 だけん 日々 貧乏との闘い。」

チヨ子「あらまあ… 大変だ。」

布美枝「うん。」

チヨ子「けど ほんなら よかったわ。」

布美枝「え?」

チヨ子「家に友達も呼べんような 気難しい人なのかと思って 心配しとったのよ。」

布美枝「気難しい事はないわね。 おおらかな人だけん。」

チヨ子「それは ええわ。 旦那さんの機嫌とるのに 苦労するより お金の苦労の方が ずっとマシよ。」

布美枝「そげかなあ。」

チヨ子「うん。 あ 私 ちょっと お姑さんに 電話してくる。 子供を預けとるけん ゆっくりしても ええかどうか 様子 聞いてみるわ。」

布美枝「うん。」

(ドアベル)

(ドアベル)

布美枝「あれ 貴司…?」

貴司「すまん…。」

満智子「(泣き声)」

布美枝「えっ… 何?!」

貴司「けど… 俺も ど どげしたらええか よう分からんで…。」

及川満智子「ほんなら… これで 終わりですか? 私達…。」

貴司「いや…。 マチちゃん…。」

(ドアベル)

チヨ子「ごめん フミちゃん。 子供が 熱 出しって。 私 先 戻るわ。」

貴司「姉ちゃん…。」

<布美枝は とんだところに 居合わせてしまったようです>

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